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第2841号 2009年8月3日


研修病院見学ルポ
~いい病院のええとこ取りをめざして~

【第4回】洛和会音羽病院

水野 篤(聖路加国際病院 内科)


前回からつづく

特色

朝に教育レクチャー,昼にアドリブでのケースカンファレンスを行っている。
大リーガー医をはじめとした有名講師の講義が特徴。
強力な総合診療科を持つ。

Profile
病床数:588床(一般428床,医療療養型50床,認知症病床60床,回復期リハ病床50床)
救急車受入れ台数:4650台(うちCPR111件)/年(2008年度)
救急受入れ人数:3万655人/年(2008年度)

Opening

 朝7時50分に医局に集合した。早速白衣に着替えるためロッカーに移動しようとすると「ん?」,院長の松村理司先生が見えるような……。見ると院長室が医局にある!! いきなり驚愕であった。さすがに気安く声をかける雰囲気ではなかったが,カンファレンスにはガンガン参加していた。ほかの病院では見たことのない形だ。

医局の雰囲気とカンファレンス

 研修医の机は一人一つずつあり,ロッカーもあった。机の一つひとつがLANの接続ができる環境。カンファレンスは基本的に朝8時と昼12時30分の1日2回。カンファレンスの中身は,身体所見,ケースカンファという文字が目立つ(図)。さすが診断学を売りにしている総合診療科のカンファレンスである。“こうあるべきだ”という確固たる意志がみえる。

総合診療科 洛和会音羽病院(2009年3月)
3月1日 2
08:00身体所見
12:30外来症例カンファ
3
07:30心電図レクチャー
12:30ケースカンファ
4
08:00クリンダマイシン
12:30ER症例よろず
5
08:00身体所見
12:30感染症カンファ
6
08:00抗MRSA薬
12:30ケースカンファ
15:00上野先生の膠原病
18:00京都GIMカンファレンス
7
08:00ER実験室
12:30退院カンファ
8 9
08:00身体所見
12:30外来症例カンファ
10
07:30心電図レクチャー
12:30ケースカンファ
11
08:00急性腹性(3)
12:30ER症例よろず
12
08:00身体所見
12:30感染症カンファ
13
08:00ER整形合同カンファ
12:30ケースカンファ
15:00上野先生の膠原病
14
08:00内容未定
12:30退院カンファ
15 16
08:00身体所見
12:30外来症例カンファ
17
07:30心電図レクチャー
12:30ケースカンファ
18
08:00研修総括発表(研修医)
12:30ER症例よろず
19
08:00研修総括発表(研修医)
12:30感染症カンファ
20 21
08:00症例発表
12:30退院カンファ
22 23
08:00身体所見
12:30外来症例カンファ
24
07:30心電図レクチャー
12:30ケースカンファ
25
08:00小児の診察
12:30ER症例よろず
26
08:00禁煙指導について
12:30感染症カンファ
27
12:30ケースカンファ
28
08:00ER症例集
12:30退院カンファ
29 30
08:00身体所見
12:30外来症例カンファ
31
07:30心電図レクチャー
12:30ケースカンファ
4月1日
12:30ER症例よろず
2
12:30感染症カンファ
3
12:30ケースカンファ
18:00京都GIMカンファレンス
4
12:30退院カンファ
 豊富なカンファレンス

 さて,カンファレンスルームで朝のレクチャーが始まった。今回のテーマは感染症科のシニアレジデントによる「抗MRSA薬」。内容は実際の投与方法なども含んでおり,研修医の実務にも即した内容であった。洛和会京都医学教育センター所長の酒見英太先生をはじめ上級医も参加し,研修医にとっては非常に恵まれた環境である。同時にビデオ撮影も行っていたので,話を聞いてみると(音羽病院研修医を含む)山科医師会のドクターが再度Onlineで見ることができるそうである(研修医はそんなに利用していないらしいが……)。

さて,回診だ

 カンファレンスの終了後,回診となった。総合診療科はチーム別になっており,通常は卒後約7年目のリーダー,3年目前後,1年目,学生という編成。今回は酒見先生も参加しての回診となった。病室前でそれぞれの受け持ち患者に対してベッドサイドプレゼンテーション。簡単なプロフィールと年齢・性別,今回の入院契機,プロブレムを端的に述べ,短いディスカッションの後にベッドサイドへ向かった。General appearanceを中心に,酒見先生から身体所見のone pointアドバイスが入る。いわゆるclinical pearlsを耳学問する王道のスタイルだ。今週から総合診療科をローテーションしているという1年目の研修医が,プレゼンを担当したのは約4人であり,今後もう少し受け持ち人数は増えてくるとのことであった。理想的なスタイルであり,方法は本連載第1回の沖縄県立中部病院と似ていると思われる。今回は酒見先生と一緒に回診を行ったが,これは毎回ではないとのこと。この回診スタイルは総合診療科だけであり,他科では主治医と研修医の2人チームで,適宜質問しながら行う方法ということであるが,今回,直接見学はしなかった。

 そのほかの回診の感想として,膠原病科の先生がたまたまチームに参加しており,膠原病の視点も含めたディスカッションが行われたことが非常に興味深かった。また症例も多く,実に勉強になった。

驚きのアドリブ――昼のカンファレンス

 12時30分から昼食時のケースカンファレンスを行った。先ほどのチームリーダーと同年代の医師がfacilitatorとなって進行。症例は直前まで決めず,人数が集まってきた時点で何か興味深い症例がある人にプレゼンを開始してもらうという方法で,完全にアドリブであった。最高のかたちと筆者は考えたが,どうなることやら。

 その日は入院中の39歳女性の胸痛。難治性中耳炎での治療歴がある。プロフィール,現病歴,既往歴の順番で報告し,問診でいったんまとめる。Facilitator自らやオーディエンスからも質問を投げかけ,身体所見後,problem listに至る。亜急性の胸痛で鼻中隔彎曲があり,ここ2日ほどの血痰あり。病歴からVINDICATE I/Iで分類し,Wegener肉芽腫の仮診断に至り検査結果を出す。c-ANCA陽性で胸部X線でも空洞を伴う結節陰影を認め,確定診断のため生検は結果待ち。その場で症例を決めたが,うまくまとまった。簡単にまとめていたがこの間に酒見先生や松村院長も参加し,かなりいろいろなclinical pearlsを追加していた。なかなかすごいシステムだ。

午後の見学では

 その後,1年目の研修医からも病院についての話を聞いた。病院自体にはおおむね満足しているようだ。15時からは『リウマチ病診療ビジュアルテキスト』(医学書院)の著者である膠原病科の上野征夫先生を交えてのディスカッション。かなりざっくりとしたカンファレンスではあるが,スタイルはすべてフルプレゼンテーションからディスカッションを行うもので,このときはざっと検査結果も出していた。興味深い症例ばかりであった。ビジュアルテキストは個人的にも愛読していたので,ミーハーな筆者としてはその部分でも楽しかった。

GIMカンファレンス

 18時からは京都GIMカンファレンスで,『診断力強化トレーニング』(医学書院)のもとになったカンファレンスである。今回は市立堺病院,天理よろづ相談所病院,音羽病院の各病院が担当で症例を提示していた。それぞれ現病歴で質問しながら進めるケースカンファレンスと同様の方法だ。最後にclinical pearlsというスライドを必ず追加していたところにこだわりを感じる。プレゼンテーションは各病院ごとに特徴があり,またディスカッションでさらに他の病院の医師の意見も聞けるという点がよいと思われた。中心はやはり松村先生,酒見先生となる印象。ふむふむ,満足。これまた面白い一日であった。

聖路加国際病院との共通点

 GIMカンファレンスが聖路加の「グランドカンファレンス」に相当する。筆者はこのような問題解決型のカンファレンスが好きなので楽しかった。若干異なるのはGIMカンファレンスは他院の医師も入り,基本的には総合内科の立場で行うのに対し,聖路加では当院医師が中心で各専門内科のスタッフという形をとっている点である。

Point!
多くの魅力あふれるカンファレンスはもちろんのこと,この病院の素晴らしいところは総合診療科・内科における診断に至るまでの根本的な考え方が学べるところであろう。内科の概念としては当たり前のことであるが,自信を持って学べる場所は実はごく少ないのである。

つづく

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