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第2759号 2007年12月3日


第27回日本臨床麻酔学会開催

麻酔科医不足のなか,求められる役割は広がる


 本年,施行されたがん対策基本法には,すべてのがん患者に適切な緩和ケアを提供することが盛り込まれた。これに伴い,緩和ケア医の育成が急がれ,痛みのスペシャリストである麻酔科医には多くの期待が集まる。また在院日数短縮に向け,合併症の予防も含めた周術期のトータルマネジメントの役割も求められている。一方,慢性的な麻酔科医不足の解消は焦眉の課題だ。

 このようななか,さる10月25-27日,東京国際フォーラムにおいて,第27回日本臨床麻酔学会が開催された。本紙ではこの演題のなかから報告を行う。


 がん対策基本法の附帯決議で「施設によらずどこでも緩和ケアの教育が求められる」と定められたことに伴い,医学生や臨床医に対する緩和ケア教育の取り組みが全国で始まっている。

 パネルディスカッション「緩和医療と麻酔科」のなかで,国立がんセンター中央病院の下山直人氏は,同院の緩和ケア医・後期研修プログラムを紹介した。「これまで日本の緩和ケア医は皆,自ら道を切り開くしかなかった」と自らの来し方を振り返り,「若い先生方には不自由をさせないように臨床実践を重視した研修を行っている」と述べた。

 麻酔科出身の緩和ケア医として,オーダーや患者・家族への説明に困難を感じた下山氏自身の経験をプログラムに反映,3年間の研修では内科での1年間の研修を必須とし,治療チーム内での内科がん診療を経験させている。チーフレジデントを経て5年間を修了した医師も誕生しており,化学療法や合併症を熟知したうえでマネジメントができる緩和ケア医が育ってきた,とプログラムを評価した。

 同院がリードし,全国の地域がん診療拠点病院で緩和ケアを推進する指導医の育成も開始されているが,現状は座学に留まる。下山氏は「ケアマインドを教えるには不十分。実践が重要」と今後の課題を提示した。

 また下山氏は,急増する外来化学療法の現場で,化学療法が無効になった時点で突然,緩和ケアに移行する状況が数多く発生している現状を憂慮。「ケアとキュアは早期から並行して行われるべき。緩和ケアが敗北の医療になってはならない」と医療者にさらなる意識改革を求めた。在宅においても骨転移患者への対応など麻酔科医の活躍の場があり,今後は在宅医療と麻酔科医の連携も期待される。

 東海大病院は,民間シンクタンクによる戦略的な経営分析を取り入れ,昨年の新築時に1133床から833床まで大幅減床,急性期に特化した。この機に「効率的手術運営」の観点からさまざまな新機軸を導入,在院日数の短縮,患者単価の向上に成功している。同大麻酔科・鈴木利保氏がこの分析報告を行った。

 まず「病棟では外来の2-3割増しの経費がかかることから,入院医療の外来化と,出来高請求が可能な手術件数の増加が,収益構造好転の鍵になる」と述べ,新築にあたっては,“断らない手術室”を目標に掲げ,日帰りを含めた短期入院手術数の増加をめざし,ハード・ソフトの設計を行ったとした。

 ハード面では麻酔科外来,16床のリカバリーベッドを備えた短期入院手術センターを設置,麻酔科が術前から術後まで主体的に支える。また「各手術に合わせた手術室を個別に造る」という発想から,各手術に弾力的に対応可能な,旧来より広めで同じ構造の手術室を複数造り,そこに医療者や器械が移動する発想にシフト。併せて導入された院内全体で確認ができる手術進捗管理システムを使い,遅れている手術を早く空いた手術室に変更し,効率的な運用を行っている。連動して麻酔科医の待機時間も減少したという。

 またソフト面の充実として,収益性の高い中央部へのコメディカルの配置について論考。コーディネーターナースや手術室薬剤師などリエゾン的役割を担う専門スタッフを配置し,より効率的な運営が可能になった。

 この結果,手術件数は2004年度の8391件から新築初年度の2006年度には9333件まで増加。また,月平均の在院日数も全国の私立医大附属病院で最短の12.41日まで短縮した。