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第2759号 2007年12月3日


実践で学ぶコミュニケーション

「がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修会」開催


 患者自身ががんを受けとめ,適切な治療法を選択するためには,患者-医師間のコミュニケーションが重要な位置を占める。本年6月に閣議決定されたがん対策推進基本計画の中にも,がんを伝える際のコミュニケーションには特段の配慮が必要であることから,医師のコミュニケーション技術の向上に努めることが明確に盛り込まれた。また,告知を受けた患者の精神・心理的サポートを行う人材の育成,体制整備に向けて研究を進めていくことになった。これに基づき,厚労省委託事業として「がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修会」(主催=医療研修推進財団,協力=日本サイコオンコロジー学会)が,本年度より大阪を皮切りに全国4か所で開催されることとなった。本紙では11月18-19日の大阪会場(大阪市・天満研修センター)を取材した。

少人数でみっちり

 本研修会は,定員16名の少人数制。受講者は4人ずつ4グループに分かれ,2名のファシリテーター(がん治療医と精神科医/臨床心理士のペア)が各グループを担当する。「(主催者にとって)コストパフォーマンスはよくないが,そのぶん力がつく」と語る藤森麻衣子氏(国立がんセンター)は,コミュニケーションプロトコールSHAREの開発者である。さらには,研修会参加者の中から次のファシリテーターを育てようという考えだ。ファシリテーター希望者は研修会を受講または見学した後,2日間の養成講習会を4回受講する。今回のファシリテーターの中にも,この研修会で研修を受け,今年2月にデビューしたメンバーがいる。本研修会の主催者の1人で,コミュニケーションプロトコールSHAREの共同開発者でもある内富庸介氏(国立がんセンター)は,開会に際し「今回参加された先生方は,今後地元の病院や,地域全体でも活動を広めていただきたい。また,地域での活動を支える意味でも,次はファシリテーターとして全国に広めていただきたい」と挨拶。本研修会では参加者に加えてファシリテーター候補の見学者が10名出席した。「がん医療におけるよりよいコミュニケーションを全国で」という動きは着実に広まりつつある。

ロールプレイでなければできないこと

 研修会のメニューは各グループにおいて,(1)グループワーク,(2)講義,(3)ロールプレイの順に行われる。グループワークでは受講者同士が他己紹介の形で,意気込みや研修会への参加理由などを述べた。その中には「緩和ケアにスムーズに移るためのスキルを学びたい」「コミュニケーション・スキルを磨くことで病院全体としてのレベルアップを計りたい」などのほかに,「自分自身も疲れないようにしたい」といった声もあり,患者に悪い知らせを伝えることは,医師にとってもストレスとなっていることが浮き彫りとなった。

 ファシリテーターによる講義と,ビデオでのSHARE実践例の確認後,実際に模擬患者を前にしてロールプレイを実施。ロールプレイに用いられるシナリオは「難治がんを伝える」「再発・転移を知らせる」「抗がん治療の中止を伝える」の3種類で,専門分野に合わせて,肺がん,大腸がん,乳がんをはじめ23のがん種から選ばれる。参加者は2日間で,1人1回1時間程度のロールプレイを2回行う中で,診察場面を疑似体験する。ロールプレイは頻繁に中断してはスキルを確認し,そのつど他の参加者からこまめなフィードバックが与えられる。ちょっとした表現や声掛けの工夫で,模擬患者の反応は大きく変化することや,沈黙に堪えることで患者の本心からの言葉を引き出せることが実体験できる。ロールプレイのいい点は「やり直し」ができること。模擬患者の反応を見ながら何度もやり直し,より患者が受け止めやすく,前向きに適切に治療を受けられるようなコミュニケーション方法を繰り返し模索することができる。

 研修2日目を迎えると,返答に困る質問への対応や,質問を質問で返された時の対処法など,難しい事例にどう対応するかについても,参加者同士で熱い議論が交わされるようになった。