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第2745号 2007年8月27日


生命科学の時代に基本体系確立を

第33回日本看護研究学会の話題から


 第33回日本看護研究学会が7月28-29日の両日,石井トク会長(日赤北海道看護大,前・岩手県立大)のもと,「生命科学時代における知と技とこころ」をメインテーマに盛岡市民文化ホール(盛岡市)にて開催された。本紙では,米本昌平氏(東大先端研)による教育講演「先端医療技術の進歩と未来」のもようを報告する。


 「21世紀は生命科学の時代」は枕詞のように用いられるが,その背景に何があるのか。21世紀が生命科学なら,20世紀は何の時代だったのだろうか。

 米本氏は「20世紀後半の科学技術を特徴づけたのは米ソ冷戦である」と指摘。冷戦解体によって自然科学の主流は物理学から生命科学へ,中でも人体研究に移ってきた。歴史上これほどまでに人体という「内なる自然」に科学研究の焦点が合わさったことはなく,科学に対する考え方を改める必要があるというのが氏の見解だ。

 欧米の対応はここで分かれた。米国はインフォームド・コンセントと自己決定権に委ねた結果,“人体組織の商品化”が進んだ。フランスでは「人体は人格そのものであり,人権の座である」との考えから1994年に生命倫理法が成立。人体の取り扱いを国家の直轄業務として法制化する考えは,欧州共通の価値観として広まっている。

 自己責任の米国,法制化をめざす欧州に対し,日本の対応を「暗黙の共通価値と法によらない規制」と氏は表現。これら先進3極に生命理論の議論が蓄積されていない非先進地域を加えて「生命倫理への対応は3+1極の状態」と指摘した。さらに,日本は立法府が機能不全に陥っているとし,個別対応ではなく基本体系を定める必要があることを強調した(韓国ではアジア初の生命倫理法が2005年から施行されている)。看護職に対しては,自らの実践を言語・理論化したうえで,学会レベルでアジアにおける対話の場を持つことを勧め,講演を閉じた。