私は2007年4月25日から28日の4日間,カナダのトロントで開催された第30回米国総合内科学会(Society of General Internal Medicine:SGIM)の年次総会に参加し,トヨタ記念病院で得た一症例についてポスターで発表してきました。この学会の特徴は普通の医学会と異なり,医学生やレジデントが,有名な上級医と親密な話し合いができるようにプランされていたことです。実際に今学会に出席し,その有様を見て,大変有益な情報を得ることができたので,その内容を報告させていただきます。
SGIMは米国医学部や教育病院でプライマリケアを専門とする約3000人の会員からなる団体で,医学生やレジデントの内科教育の他,成人プライマリケアや予防医学領域における教育に主眼をおいた学会です。特に今回のSGIM年次総会では医学生やレジデントの臨床医学教育や研究の質を向上させるためにはどのような教育をすればよいかに重点が置かれ,独創的な情報の交換やディスカッションをする場が用意されていました。
医学生やレジデントにとって,医学会での議論のレベルは高すぎて理解しがたいものがほとんどであると思いますが,この学会では医学生やレジデントを対象としたセッションも数多く用意され,同じような視点を持つ若者同士での意見交換が活発に行われるシーンを数多く見ることができました。
例えば,“Getting your clinical vignette published in JGIM or other journals”(症例報告をJGIMやその他のジャーナルに投稿してアクセプトされるにはどうしたらよいか?)というテーマのワークショップでは,レジデントたちが小グループに分かれ,上級医が個々の症例を紹介しながら出席者といろいろ議論をし,その後,そのケースを医学雑誌に投稿してアクセプトされるための具体的なポイントを教えてくれました。また,口頭プレゼンテーションの準備の仕方や,学会発表のコツを教えてくれるワークショップでは,それに関する実践的な知識を得ることができました。
面白かったのは,“One-on-One Mentoring”という集まりでした。これは,学生やレジデントが,メンターとなる上級医とあたかも「お見合い」をするように,一対一で話ができるというプログラムでした。事前に履歴書を提出することでこの集まりに参加することが可能でした。医学生やレジデントが自分の勤める病院以外で活躍している有名な医師と会って直接話ができるということで,その願ってもない機会に,多くのレジデントが殺到しました。自分の顔を広め,次のステップであるフェローとしてよい病院に採用されるように自分をアピールするよい機会でした。高名な上級医の目に留まればその後の進路の選択の際にも有利になるのです。私自身はこの機会を逃しましたが,アメリカ人のみならず,米国留学を考えている外国人レジデントにも大変な人気であったようでした。
そのほかにも“Meet the professor”というセッションもあり,主に学生やレジデントを対象にして,大学教授(教員)が一定のテーマを決めずに参加者と自由に討論できる場が提供されていました。特にその教授がどのような経歴を持ち,どのようにキャリアを形成してきたかを知る大変よい機会となり,若いレジデントの今後の進路形成に参考になるものだと思いました。
具体的には「若年者の頭痛に静脈洞血栓症が隠れている!」「若年者の脳梗塞の原因として認識すべきものは何か」「喘息を見くびると危ないぞ!」「大腸ファイバー準備中の落とし穴は何か」「クレブシエラ肝膿瘍が米国でも発見された」「結核を忘れるな」などなど,決して珍しくないありふれた個々の症例がラーニングポイントを的確にして提示されていました。今総会では総計240の症例が報告され,すべての発表に学会所属の上級医がやってきてそれに対してフィードバックがなされ,より一層教育的なものになっていました。
私の症例は,研修医1年次に経験した「マイコプラズマ肺炎治療奏功後に発症した脊髄脳炎の1症例」でしたが,多くの人からフィードバックを受けました。ラーニングポイントの的確性や発表内容はもちろんのこと,ポスターのデザイン性,見やすさなどの評価も受けました。
この学会の詳細を知りたい方はURL=http://www.sgim.orgを参照してください。