総合リハビリテーション Vol.51 No.8
2023年 08月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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特集 運動処方──有害事象のリスクがある患者への対応

 運動療法が数多くの疾患,循環器・呼吸器疾患や運動器疾患だけでなく,がんなどの内部疾患,うつ病などの精神科疾患の予防や改善によい影響を与えることが,近年多く報告されています.積極的に運動療法を行う施設も増え,運動負荷試験などの評価を基にした適切な運動処方とその確実な実施も根付いてきているといえます.一方,その対象が拡大するにつれ,慎重に運動処方すべき例も多くなっており,「リスク管理」と「効果的な運動負荷」のはざまで悩む臨床場面も増えてきていると考えます.そこで今回は,運動処方の原則と,これまで運動療法実施にリスクがあり慎重に行うべきとされてきた疾患・病態に対しての運動処方を中心に解説していただきました.

運動処方の原則 東 宏一郎 氏
 運動処方の際には,Frequency(運動頻度,F)・Intensity(運動強度,I)・Time(運動時間,T)・Type(運動の種類,T)を考える必要があり,FITTの原則といわれる.有酸素運動,レジスタンス運動それぞれのFITTについて解説した.胸部症状などの自覚症状がある・運動習慣がない・合併症がある,などでは運動開始前に医学的リスク評価が必要であり,運動負荷試験が行われることもある.運動負荷試験を行うことで,安全性の確認とともに,より精密なオーダーメードの運動強度設定が可能になる.

呼吸・循環リスクがある患者に対する運動処方 神谷 健太郎 氏ら
 呼吸・循環器疾患患者に対するリハビリテーション治療の有効性や安全性は多く報告されているが,急性期や不安定な病状の患者に対しては個別の病態に応じた対応が必要となる.積極的な運動療法が禁忌となる疾患や病態・重症例に対する運動のリスクを示し,重症例に対する運動療法の進め方の流れを示した.運動中のモニタリング指標・カットオフ値の目安も提示したが,重症例ではその許容範囲などが異なることもあるため,個別にカンファランスなどで確認することも重要である.

Overwork weaknessのリスクがある神経筋疾患患者に対する運動処方 花山 耕三 氏
 Overwork weaknessを来す場面には,短期間に負荷の多い運動を行い筋傷害を起こしたと考えられるものと,生活上の過負荷がある程度の期間続いたため筋力低下を生じたものがある.運動処方を行う際には,動作・運動における筋力分布を綿密に確認し,特定の筋・関節に過負荷がかからないようにする.また,血清クレアチンキナーゼ値がベースラインから上昇していないか,疲労(特に生理的疲労)の有無をモニターする.心筋症や不整脈,中枢性低換気など,各疾患に特有の運動制限・禁忌も十分に確認する必要がある.筋ジストロフィー,炎症性筋疾患,Charcot-Marie-Tooth病,筋萎縮性側索硬化症,ポリオ後遺症における運動療法の実際・留意点についても解説した.

腎臓機能・肝臓機能障害がある患者に対する運動処方 上月 正博 氏
 慢性腎臓病患者では,フレイル・サルコペニアの割合が高く,運動療法・食事療法と水分管理,薬物療法や教育,精神心理的サポートなど長期にわたる包括的な腎臓リハビリテーションプログラムが行われる.透析患者においても,安全な範囲でしっかりとした強度の運動療法を行うことが必要である.肝臓機能障害の基礎疾患は数多くあるが,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)が増えてきており,運動療法と栄養療法が治療の基本となっている.肝機能項目や,貧血・血小板数,体液貯留による循環動態など個々の患者の病態や合併症を把握しリスク管理をしながら実施していく.

骨関節障害・骨関連事象のリスクがある患者に対する運動処方 小澤 里恵 氏ら
 筋骨格系の疼痛がある患者は多く,リハビリテーション治療場面でも問題になることが多い.腰痛・背部痛,四肢および関節痛について,頻度の高い疾患と,運動を行ううえで早期に診断・治療を要する緊急性の高い疾患を解説した.腰痛では,転移性脊椎腫瘍・化膿性脊椎炎・圧迫骨折による病的骨折や椎体圧壊,それに伴う脊髄圧迫は緊急性が高く,特に重要である.関節痛では,化膿性関節炎・転移性骨腫瘍が重要であり,関節破壊や骨折に留意しながらの運動が必要となる.

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特集 運動処方──有害事象のリスクがある患者への対応

運動処方の原則
東 宏一郎

呼吸・循環リスクがある患者に対する運動処方
神谷 健太郎,他

Overwork weaknessのリスクがある神経筋疾患患者に対する運動処方
花山 耕三

腎臓機能・肝臓機能障害がある患者に対する運動処方
上月 正博

骨関節障害・骨関連事象のリスクがある患者に対する運動処方
小澤 里恵,他


●巻頭言
慢性疼痛とリハビリテーション
矢吹 省司

●入門講座
小児リハビリテーションに必要な評価法⑧
二分脊椎
真野 浩志

●実践講座
精神科作業療法のエッセンス④
アルコール依存症
浪久 悠,他

●研究と報告
高齢者に対する手指巧緻運動と認知課題のデュアルタスクが実行機能に与える影響
渡辺 裕生,他

●短報
回復期リハビリテーション病棟脳卒中患者におけるEQ-5D-5Lの測定特性の検討──臨床的に意義のある最小変化量(MCID)について
泉 良太,他


●スポーツ用義足の最新事情③
ダンス用義足
出口 雄介

●研究費獲得への道③
臨床家として研究費獲得をめざす
野﨑 園子

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
伊藤整の『発掘』──昭和40年代の脳卒中患者
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「あなたの微笑み」──映画と映画館が微笑む明日に向かって今日も歩くのだ
二通 諭

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