総合リハビリテーション Vol.51 No.7
2023年 07月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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特集 心臓リハビリテーションの新しい潮流

 わが国の心臓リハビリテーションには新しい動きがみられます.「心血管疾患におけるリハビリテーションガイドライン」が2021年に改訂され最新のガイドラインに基づく臨床実践がなされています.2022年には診療報酬改定で回復期リハビリテーション病棟での心大血管リハビリテーション算定が認められ,療養・就労両立支援指導料の算定対象に心疾患が追加されました.一方,わが国は世界でも例のない未曾有の少子高齢社会になり,循環器疾患領域では心不全が多発し,いわゆる「心不全パンデミック」が懸念されています.このような背景のもと,心臓リハビリテーションの進歩の状況や新たな課題への対応など,本特集では先進的にこれらの課題に取り組んでいるエキスパートの方々に解説をお願いしました.蓄積されたエビデンスをどのように臨床に応用し心疾患患者の予後を改善できるのか,リハビリテーション医療に携わる方々に読んでいただきたい内容です.

心臓リハビリテーションのエビデンス 牧田 茂 氏
 わが国の循環器診療をはじめ心臓リハビリテーションを取り巻く状況が大きく変わり,9年ぶりにガイドラインが改訂され「2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」が公表された.前回のガイドラインに比べ,各循環器疾患に対する心臓リハビリテーションの推奨クラスとエビデンスレベルが高くなっている.改訂ガイドラインの主要項目に関して,臨床面での活用について言及がある.今後の課題として急性期以降の心臓リハビリテーション,すなわち回復期リハビリテーションにおける発展が鍵になるとしている.

急性冠症候群に対する心臓リハビリテーションの実践 横山 美帆 氏
 近年,急性冠症候群患者は経皮的冠動脈インターベンションや内科薬物療法の確立によって生命予後が改善したうえに,入院期間の短縮や早期社会復帰も実現した.同上患者に対して,運動療法を中心とする心臓リハビリテーションは血管保護,すなわち内皮機能の改善と,組織および血中の炎症を抑制し動脈硬化の進展を抑制する.多くのエビデンスが蓄積されているものの,わが国では外来心臓リハビリテーションの普及や達成率が低いことが課題である.外来通院型心臓リハビリテーション参加の最も強力な予測因子は担当医が心臓リハビリテーションへの参加を強く促すことであるという研究報告がある.

慢性心不全に対するリハビリテーション治療の実践 河野 裕治 氏ら
 わが国で急増している高齢心不全患者の特徴は,女性に多い,左室収縮能が保持された心不全(拡張不全)が多い,低栄養や認知機能低下の合併症が多い,自宅退院率が低く社会福祉資源活用が必要,他疾患も含めた再入院率が高いことである.運動療法を主とした包括的リハビリテーションは,心不全患者の運動耐容能や症状,生活の質を改善し,さらには長期予後も改善する.わが国の大規模コホート研究では,外来心臓リハビリテーションの継続症例は全入院心不全患者のわずが7%であり,その一方で急性期病院に入院した心不全患者の60%は入院期ですらリハビリテーション医療が提供されていないことが示されている.まずは,急性期病院での心不全患者に対するリハビリテーション医療の普及が第一である.

回復期リハビリテーション病棟における心大血管リハビリテーション 鶴川 俊洋 氏
 「廃用症候群リハビリテーション」として回復期リハビリテーション病棟でも少なからず実施されていた現状から,今回の算定を機に現場ではさまざまな変化がみられている.心臓リハビリテーションへの取り組みや実践が,わが国の診療報酬や医療制度の変化に合わせて時系列に紹介,解説されている.わが国の心臓リハビリテーションの発展を現場で経験してきた著者ならではの視点で読み応えがある.回復期リハビリテーション病棟にも多くの課題があるが,心臓リハビリテーションに取り組める各科医師やスタッフの信頼関係構築が今まで以上に重要であり,この関係性が運動療法と教育指導が必要とされる患者群に対する心臓リハビリテーションの新しい潮流を生み出す源になるとしている.

心疾患の治療と仕事の両立支援 久原 聡志 氏ら
 以前より,診療報酬算定外でも心疾患に対する治療と仕事の両立支援の取り組みは実施されていたが,心疾患の算定対象追加を機に,医療機関と事業所の連携が図られている.心疾患では重量物の運搬など業務起因性の病状増悪リスクが存在するため,作業内容に運動耐容能が適しているかどうかが重要である.心疾患患者の仕事の作業強度と運動耐容能,メンタルヘルスの変化を分析した著者らの研究では,運動耐容能より作業強度が高く,業務上の配慮が不十分であった場合にはメンタルヘルスの増悪を来すことを報告している.就労している心疾患患者に対する治療と仕事の両立支援は,復職や業務内容の調整,運動療法の継続などの課題を解決する有効な手法となる可能性がある.

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特集 心臓リハビリテーションの新しい潮流

心臓リハビリテーションのエビデンス
牧田 茂

急性冠症候群に対する心臓リハビリテーションの実践
横山 美帆

慢性心不全に対するリハビリテーション治療の実践
河野 裕治,他

回復期リハビリテーション病棟における心大血管リハビリテーション
鶴川 俊洋

心疾患の治療と仕事の両立支援
久原 聡志,他


●巻頭言
計測するということ
緒方 徹

●入門講座
小児リハビリテーションに必要な評価法 ⑦
脳性麻痺のリハビリテーションにおける検査──GMFCS, MAS, GMFM
田中 弘志

●実践講座
精神科作業療法のエッセンス ③
神経症性障害
織田 靖史

●症例報告
多数指中手骨骨折術後の総指伸筋腱癒着に対するフロッシング介入効果を示した1例
青木 啓一郎,他

●調査
ポリオ罹患者の腰痛が日常生活に及ぼす影響
村上 武史,他


●研究費獲得への道 ②
競争的研究費の獲得への準備
舘林 大介

●スポーツ用義足の最新事情 ②
下肢切断者へのスポーツ支援・情報提供
山本 一樹

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
夏目漱石とモンテーニュ──アロマテラピーの先駆者
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「コーダ あいのうた」──家族の中でひとりだけ耳が聞こえる子供の人生とは
二通 諭

●私の3冊
大本 将之

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