理学療法ジャーナル Vol.55 No.9
2021年 09月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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チーム医療におけるコラボレーション

 医療現場では,さまざまな専門職種がチームを組んで,経験や知識,技術を集約し,最も適した最新の治療にあたるチーム医療が実践されている.チーム医療とは,同じ目標に向かって異なる専門職がその専門性を発揮し,相互統制的な関係のなかで行動するコラボレーション(collaboration:連携,協働)である.本特集では医療現場のさまざまなチームのなかで,理学療法士がよりよい協力関係でコラボレーションする実践的な取り組みについて述べていただいた.

理学療法士が知っておくべきチーム医療の基本と組織運営 神戸晃男
 医療現場では以前からチーム医療が重視されているが,それを編成する職種はさまざまである.しかし,社会環境の変遷に伴い国民の価値観も多様化しているため,医療現場では,患者満足度やQOL の向上をめざして組織を変革し,新たなチーム結成や見直しがされている.このような状況下では,リハビリテーション部門における中堅および管理者のマネジメントや強いリーダーシップが必要であり,組織的な人材育成が急務である.

転倒予防チームのなかで 井上靖悟,他
 転倒対策には活動性向上と転倒リスクの両視点からマネジメントすることが重要である.転倒予防チームは,委員会や患者担当者で構成するチームなどあらゆる場面に存在し,理学療法士はそれぞれのチームで専門分野のみならず部門横断的に多職種で協働することが大切である.当院では多職種で転倒予防対策を行うためのシステムを構築し運用している.また全スタッフが共通認識をもって行動できるよう積極的に教育活動を実践している.

高度急性期医療チームのなかで 對東俊介
 理学療法士は高度急性期医療チームの一員として,重症患者を“生活者”として捉える役割を有する.重症患者のADLの維持・改善・再獲得に多職種でかかわることで,QOL改善をめざしている.本稿では,高度急性期医療における理学療法の目的と高度急性期医療において患者に生じる問題と対策について述べたうえで,具体的な対策例や高度急性期医療チームとしてのコラボレーションのコツや工夫について紹介する.

栄養サポートチームのなかで 脇野昌司,他
 静脈経腸栄養ガイドラインにおいて栄養サポートチームは,栄養改善に加え,感染性合併症予防や入院期間の短縮など種々の効果が認められており強く推奨されている.高齢の理学療法対象者は低栄養を呈していることが多く,NSTを活用した適切な栄養管理に基づくサルコペニア評価を含めた運動負荷量の設定と多職種協働による積極的かつシームレスな連携が理学療法士に求められている.

摂食・嚥下チームのなかで 戸渡敏之,他
 リハビリテーション医療において,摂食嚥下障害を有するケースに介入する機会は増加している.高齢化に伴い病態は多様化・潜在化してきており,多職種と連携してアプローチすることが要求される.摂食・嚥下チームに所属する理学療法士は,専門知識を活用し,多職種との相乗効果を最大限に還元したいという意識をもつ必要がある.また嚥下に関する基礎知識の学習と協働スタッフに向けた情報の発信,良好なチームワークの維持といった総合的な能力を高めていくことが重要となる.

呼吸ケアチームのなかで 鵜澤吉宏
 呼吸ケアチームは各部署からの代表者から構成され,各診療科への支援をする役割である.呼吸ケアチーム内の情報やリソース管理をすることでチーム内の共有認識を保つ必要がある.診療支援では各診療科の意向を確認し,その役割に徹するかかわりをする.またチーム内でのメンバー間や各診療科とコラボレーションするためにはコミュニケーションが重要であり,院内で共通したツールを使用することで安心感を伴い実施できる.

緩和ケアチームのなかで 村岡法彦
 緩和ケアチームにおける理学療法士の役割として,可能な限りのADLやQOLの維持向上を目的として専門的知識や技能を患者・家族に提供する必要がある.また,リハビリテーション担当者への教育や啓蒙,他職種との協働,緩和ケアチームへのコンサルテーションなど間接介入を行うことも求められている.本稿では教育的立場として間接介入した症例を通して緩和ケアチームのなかで果たすべき理学療法士の役割を紹介する.

認知症ケアチームのなかで 安原千亜希
 認知症はさまざまな要因が絡み合って社会的に問題が生じるため,多角的視点でのアセスメントや多職種によるチームアプローチが有効である.認知症を合併する身体疾患のリハビリテーションの機会が増えており,理学療法士もかかわり方を考慮し,認知症ケアチームへ積極的に関与することが,機能回復やADL向上につながる.筆者の所属する大誠会内田病院における認知症ケアチームの実践を例に,連携の実際と理学療法士の役割について紹介する.

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理学療法士が知っておくべきチーム医療の基本と組織運営
神戸晃男

転倒予防チームのなかで
井上靖悟,他

高度急性期医療チームのなかで
對東俊介

栄養サポートチームのなかで
脇野昌司,他

摂食・嚥下チームのなかで
戸渡敏之,他

呼吸ケアチームのなかで
鵜澤吉宏

緩和ケアチームのなかで
村岡法彦

認知症ケアチームのなかで
安原千亜希


■Close-up 留学と留学生の受け入れ
留学を取り巻く現状と課題
鈴木秀彦

理学療法における留学と国際交流
丸山仁司

私の留学体験――その思いと展望
 ・来日12年――留学生から病院理学療法士までの道
  鄭 伃廷

 ・The study abroad experience as an international student in Japan
  Abdul Chalik Meidian

 ・秋田大学での留学生活とこれからの展望
  クルーカス輝恩

 ・オーストラリアで学んだ型がある理学療法
  野澤 涼


●とびら
なぜ,学ぶのか?
一柳純子

●再考します 臨床の素朴な疑問
野球肘は運動療法で発生を減少させることが可能か?
坂田 淳

●診療参加型臨床実習
診療参加型臨床実習の取り組みの現状と展望 外来・クリニック
片岡亮人

●国試から読み解く
フローボリューム曲線から薬剤の効能を推測する
正保 哲

●臨床実習サブノート 診療参加型臨床実習――「ただ見ているだけ」にならないように!
脊椎除圧術・固定術
和田 崇

●私のターニングポイント
さまざまな方との出会い
森野佐芳梨

●報告
高齢腰椎疾患患者における6分間歩行テストによる手術前後歩行能力の経時的変化
米花沙代,他

●報告
思春期腰椎分離症患者の理学療法介入効果――疼痛・柔軟性ならびに骨癒合に着目して
明日 徹,他

●報告
大腿骨近位部骨折患者における退院後の歩行自立度低下に影響する因子の検討
桑原大輔,他

●文献抄録
藤野雄次・宮森隆行・青木由依・荒牧瑠花
 

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