理学療法ジャーナル Vol.54 No.12
2020年 12月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • EOI : essences of the issue
  • 収録内容

開く

歩行 PART 2 運動器疾患と歩行指導

 前号「脳神経疾患と歩行」に続いて歩行を取り上げた.近年,理学療法士が予防活動にかかわる機会が増えたが,その対象の多くは複数の慢性的な運動器疾患をもつ高齢者であり,歩行指導は単に運動器疾患予防だけでなく,体力低下や転倒予防も加味する必要がある.本特集では,「歩行」をどのように指導するかについて目的別に整理し,主に慢性的な運動器疾患の異常歩行とその理学療法について具体的に解説する.

歩くことをどう教えるか?―目的に見合った歩行指導のために 石井慎一郎
 歩行指導における普遍的な2つの要素,「上半身重心の配置の適正化」と「下肢の抗重力伸展活動の強化」は,すべての患者に共通して盛り込まれるべき歩行指導の内容となる.これに加えて,機能障害の改善が難しい患者には,代償方法の指導も必要となる.また,環境や動作課題に適応的に歩行動作を変化させるための指導も,歩行を日常生活の移動手段として実用化するためには必要不可欠な指導だと言える.

歩行指導の基本と応用歩行 小玉裕治,他
 慢性的な運動器疾患における歩行指導や応用歩行指導では,関節へ生じる負荷を評価し,指導により負荷を軽減させることによる疼痛緩和や進行予防への効果を検証していくことが重要である.日常生活における活動内容や活動量を問診し,患者自身が実施できる内容,頻度,時間を評価・指導していく.また歩行補助具による関節への負荷軽減についても疼痛緩和や進行予防において有効となる.

足部・足関節に起因する歩行障害の評価と治療 越野裕太
 足部・足関節の傷害や解剖学的構造異常は歩行障害の原因となる.足部・足関節傷害に関しては疾患特異的な歩行異常を認め,再損傷予防や患部の保護のために注意深い動作観察が必要となる.足部構造に関しては,後・中足部の単一評価のみではなく前足部を含めた足部の細かな評価が歩行障害を把握する際に有用である.足部・足関節に起因する歩行障害の改善のためには足部・足関節の構造的・機能的な評価と治療が必要である.

膝関節に起因する歩行障害の評価と治療 赤坂清和
 膝関節機能不全は,痛み,筋力低下,アライメント異常,モーターコントロール異常などに起因し,それらが原因となり機能的脚長差が生じることがある.機能的脚長差は,転倒の素因となることや代償的な体幹や頸部の側屈などが慢性的に続くと腰痛や頭痛などの原因となることもある.本稿では,膝関節のアライメント異常に起因する歩行障害の評価および理学療法について論述する.

股関節に起因する歩行障害の評価と治療 石羽 圭,他
 股関節は上半身と下半身をつなぐ機能的な連結部位であり,その部位が障害される変形性股関節症は強い跛行を呈する疾患と言える.わが国において変形性股関節症は寛骨臼形成不全に起因した二次性の股関節症が多くを占めている.本稿では寛骨臼形成不全の形態的特徴と立位姿勢や歩行動作との関係,歩行動作における股関節ストレス,変形性股関節症における特徴的な歩行について説明するとともに,その治療や指導方法について述べる.

体幹の運動器疾患に起因する歩行障害の評価と治療 藤本鎮也
 腰部脊柱管狭窄症患者の多くは神経性間欠跛行を呈する.神経性間欠跛行では,歩行中の腰椎伸展や足部接床時の衝撃が脊柱管の狭窄を強めて臀部や下肢に痛みを引き起こす.症状を軽減するために腰椎屈曲姿勢をとる患者も多いが,過度な腰椎屈曲姿勢を継続すると腰背筋の萎縮や黄色靱帯の肥厚につながる可能性がある.そのため,歩行練習においては,脊柱の安定性機能と下肢の衝撃吸収機能の向上が重要となる.

運動器疾患をもつ高齢者の歩行指導 高橋浩平
 運動器疾患をもつ高齢者は栄養障害やサルコペニアを合併していることが少なくない.特に,低栄養状態で過度な運動を行うと,機能が低下することがある.そのため,ウォーキングなど歩行指導をする際には,運動機能の評価のみならず,栄養障害やサルコペニアの有無と原因を評価し,それに応じた介入が必要となる.また,栄養管理を併用することで,ウォーキングがより効果的になる可能性がある.

転倒・骨折予防のための歩行評価とアプローチ 神先秀人,他
 歩行中の転倒の原因としてつまずきやふらつき,不適切な体重移動などが報告されている.予防対策としては,評価による転倒ハイリスク者の判別とともに,個人の有するリスク因子に合わせた多角的アプローチやバランス,筋力,歩行などを中心とした複合トレーニングが有効である.歩行観察では,動的不安定性が高まる初期接地直前と安定性を回復する立脚初期に注目し,重心の運動方向と速度を考慮に加えることで,より詳細な評価と指導ができると考える.

開く

医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

歩くことをどう教えるか?――目的に見合った歩行指導のために
石井 慎一郎

歩行指導の基本と応用歩行
小玉 裕治,他

足部・足関節に起因する歩行障害の評価と治療
越野 裕太

膝関節に起因する歩行障害の評価と治療
赤坂 清和

股関節に起因する歩行障害の評価と治療
石羽 圭,他

体幹の運動器疾患に起因する歩行障害の評価と治療
藤本 鎮也

運動器疾患をもつ高齢者の歩行指導
高橋 浩平

転倒・骨折予防のための歩行評価とアプローチ
神先 秀人,他

■Close-up 理学療法士としての有意義な「同職種連携」
よりよい治療の質のために――理学療法士の院内同職種連携
中谷 知生

シームレスな理学療法のために――病期を超えた同職種連携
徳久 謙太郎

理学療法士を育てる――養成校と実習指導者の同職種連携
(1)養成校の視点から
玉利 誠

(2)実習指導者の視点から
小林 賢


●とびら
失敗から逃げない.初心にかえる.
和田 陽介

●目で見てわかる 今日から生かせる感染対策・5
白衣の正しい洗浄法は?
森本 ゆふ,他

●脳画像から読み取る障害像と理学療法・最終回
いろいろな脳画像と歩行
吉尾 雅春

●内科疾患患者における理学療法介入に必要なアセスメント・最終回
がん・腫瘍疾患の理学療法介入に必要なフィジカルアセスメント
明崎 禎輝,他

●質的研究の魅力と可能性・最終回
作業療法分野における質的研究の動向と可能性
佐川 佳南枝

●理学療法士が知っておきたいヘルスケア産業・最終回
進化する在宅介護用ベッド
小池 清貴

●国試から読み解く・12
X線写真とフローボリューム曲線を読み解く
正保 哲

●臨床実習サブノート 運動器疾患の術後評価のポイント―これだけは押さえておこう!・9
腱板断裂
石川 博明

●HOT NEWS
令和3年度介護報酬改定の主な議論と今後の行方――理学療法を中心に
村松 拓也

●甃のうへ
明るいほうへ
信太 奈美

●Relay Message
“寄り添う”
秋吉 哉花

●症例報告
成人麻疹脳炎後に急性散在性脳脊髄炎,ギランバレー症候群を合併した症例の理学療法経験
野倉 豊文,他

●ひろば
老人と海――超高齢者の生きざま
奈良 勲

●卒業論文のひろば
運動教室後の自主活動者の運動機能および認知機能の変化
伊藤 里紗,他

●文献抄録
山口 将希・櫻井 陽子・今井 孝樹・二宮 省悟

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。