ここに注目!
実践,リスク管理読本

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若手PTの悩みを解決する「理学療法NAVI」シリーズの第5弾! リスクを見逃すことなく、リハビリテーションを実施するための基本的なポイントをまとめた1冊。患者の気を付けなければならない症状・症候や検査データの読み方、高齢者特有の問題や疾患特異的なリスクの把握方法など、臨床で押さえておかなければならないリスク回避のポイントを伝授。リスクに気が付き、対応できるセラピストになろう!
*「理学療法NAVI」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 理学療法NAVI
高橋 哲也
発行 2018年07月判型:A5頁:368
ISBN 978-4-260-03623-8
定価 3,740円 (本体3,400円+税)

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シリーズ刊行にあたって 「理学療法NAVIシリーズ」のねらい(網本 和)/はじめに(高橋哲也)

シリーズ刊行にあたって
「理学療法NAVIシリーズ」のねらい

New Approach for Various Issues)
 今日,多くの理学療法課程を学ぶ学生が存在し,新人理学療法士もまた急増している.一人ひとりの学生や新人にとってみれば,学ぶべき医学的事項は飛躍的に増加し,膨大化する情報は錯綜している.このような状況においては,真に必要で価値のある基本的な知識と新しい技術の修得が求められる.ここでのNAVIはナビゲーション(航海術)を表しており,情報の大海のなかで座礁することなく海路を拓いてゆくための方略である.
 本「理学療法NAVIシリーズ」は,理学療法,リハビリテーション医療において,きわめて基本的で不可欠な情報を厳選して示すことで,この世界に踏み出そうとするフロンティアのための水先案内人となることを志向している.

 2016年9月
 首都大学東京・教授 網本 和


はじめに

 1966年に理学療法士の国家資格が日本に誕生してから50年以上が経過しました.巷では「リハビリテーション」という言葉が日常的に使われ,理学療法や理学療法士が一般の方々にも理解されるようになってきました.一方,この50年で,医療の形態やそこに生じる諸問題も大きく変化し理学療法士に対する社会の期待と要望が大きく膨らんでいます.国民の認識度が高まれば,理学療法士をみる目も厳しくなり,職業倫理に対する社会的要求も高まってきます.対象者とのよき信頼関係を確立するためにも,高い職業倫理感と情報収集能力,幅広い知識と応用能力,そして,対象者を決して危険(リスク)にさらさない確かな技術が必要です.
 今回,《理学療法NAVI》シリーズに,リスク管理の指南書である『ここに注目! 実践,リスク管理読本』が加わります.この本は,私が以前から温めていたアイデアをもとに構成したもので,理学療法士として働く際に必要なコア・コンピテンシー(core competencies)が含まれた内容になっています.コア・コンピテンシーとは,「核となる能力水準」や「必須の実践能力」で,仕事上の役割や機能をうまくこなすために,個人に必要とされる測定可能な知識,技術,能力,行動,およびその他の特性のパターンといわれています.すなわち,理学療法士として働く際に知っておかなければならない内容に加え,他職種に真似できない核となる能力が含まれています.「勉強しろ,自ら学べ,問題解決能力をつけろ」といくら先輩がいっても,学生や新人は実際に何をどうすればいいかわかりません.私の経験でも,やみくもに本を読んでも効率が悪く,問題解決にならないことがほとんどです.そんな時に,この『《理学療法NAVI》ここに注目! 実践,リスク管理読本』を手に取ってみてください.また,若手や学生の指導を任されたとき,本書を思い出してください.若手の臨床力を上げるヒントがきっと見つかるはずです.
 本書のエッセンスが,理学療法士のコア・コンピテンシーとなり,正しく対象者に還元されることを期待しています.

 2018年6月
 高橋哲也

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序章 リスクとは何か?

第1章 リスク管理の用語と基準
  医療事故,医療過誤
  アクシデント,インシデント(ヒヤリ・ハット)
  代表的なリスク管理基準
  訴訟対策

第2章 リスク管理のためのメディカルチェックリスト
 1.気を付けなければならない患者の訴え,背景疾患
  めまい
  呼吸困難
  頭痛
  動悸
  胸痛(胸苦しさ)
  発熱
  下血
  悪心・嘔吐
  浮腫
  腹痛
  高血圧
  肥満
  糖尿病
  慢性腎臓病
  脂質異常症
 2.気になる“検査値”の読み方,考え方
  総蛋白(TP),アルブミン(Alb)
  ビリルビン(Bil)
  AST(GOT),ALT(GPT)
  クレアチンキナーゼ(CK)
  尿素窒素(BUN),クレアチニン(Cr),糸球体濾過量(GFR)
  電解質〔ナトリウム(Na),カリウム(K),塩素(Cl)〕
  C反応性蛋白(CRP)
  脂質指標
  血糖(BS),糖化ヘモグロビン(HbA1c)
  白血球数(WBC),赤血球数(RBC)
  ヘモグロビン(Hb)
  Dダイマー,PT(INR)
  ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)

第3章 見逃せない! リスクになり得る高齢者の特徴的症状
  年齢・性別
  認知機能低下
  抑うつ
  せん妄
  骨粗鬆症
  尿失禁
  便秘
  低栄養・食欲不振
  褥瘡
  嚥下困難
  転倒
  視力低下
  多剤併用
  貧血
  難聴
  冷え
  しびれ
  関節痛
  サルコペニア
  フレイル

第4章 廃用症候群のリスク管理

第5章 中枢神経疾患のリスク管理
 1.脳卒中の病態と治療方針
 2.脳卒中(急性期)
 3.脳卒中(回復期)
 4.脳卒中(維持期)
 5.パーキンソン病

第6章 運動器疾患のリスク管理
 1.人工股関節置換術(THA)
 2.人工膝関節置換術(TKA)
 3.大腿骨近位部骨折

索引

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全てのセラピストに薦めたいリスク管理の「指南書」!
書評者: 下雅意 崇亨 (神戸市立医療センター中央市民病院リハビリテーション技術部)
 『ここに注目! 実践,リスク管理読本』は,2016年9月からシリーズ刊行され,理学療法士にとって,基本的で必須な情報が厳選されていることで評判の高い《理学療法NAVI》シリーズの待望の最新刊です。

 リスク管理に関する著書はリハビリテーション領域において昨今多く見かけます。また,リハビリテーションの進行基準や中止基準なども多く見られますが,実際,理学療法士としてそれらをどのように捉え,どのように「活用」するかお困りではないでしょうか? 理学療法の展開に際し,それらの基準を当てはめるだけに終始していないでしょうか?

 本書は,350ページ強の内容の中,冒頭の「リスクとは何か」という導入から,各徴候の見逃せないチェックポイントや臨床的意義まで丁寧な解説が施されており,さらに高齢者や各疾患特有のリスク管理のポイントまで具体的に整理され,まとめられています。理学療法士としてどの部分に実際に注意すればよいのか,どう治療に結び付けていくのかといった内容にも踏み込んで書かれています。また,図表も豊富に掲載され視覚的な理解がしやすいため,大変読み進めやすく,すぐに臨床場面に生かすことのできる内容となっています。

 最善の理学療法を行うには,患者を診る・知ることから始まります。その見逃してはならない評価の根幹を占める「リスク管理」に対し,「なぜ・何を・どのように」するべきかを提示し,われわれ理学療法士が行うべきことを具体的かつ明瞭にまとめているのが本書の特長であると思います。

 リスク管理は,患者をリスクから守り,回避させるだけのもの……ではもはやありません。患者のリスクを管理しつつ,理学療法の治療に結び付けることが肝要です。その意味では,患者の病態変化が大きい急性期のみならず,患者が重複疾患を有し,病態が複雑化してきている昨今では,回復期や生活期でも適切なリスク管理能力が強く求められます。

 ハイリスク患者に対する理学療法を行う際,時には急性期や回復期にて,他職種と共通知識・認識を持ち議論する機会があるでしょうし,またある時には生活期の在宅場面で独力での臨床判断が迫られることもあるでしょう。そのような中で,どの時期の理学療法においても適切な「次の一手」を考えていくために,大いに本書が生かされることは間違いないと確信しています。

 また,現在日本では年間約1万人が理学療法士となっている中で,若手理学療法士が複雑でさまざまなリスク管理に直面し,現場での教育を要する場面も増えてきているように思います。私自身,学生や新人を教育・指導しつつ,自らも学び理学療法を実践していく立場にありますが,本書から多くの「患者のリスク」を整理でき,実践し,教育に生かせていることを実感しています。

 若手の指導者・初学者を問わず,急性期から生活期の時期を問わず,全ての理学療法士に必須ともいえるリスク管理の「指南書」として,ぜひともお薦めしたい良書です。
ヒトに目を向けたリスク管理を説く一冊!
書評者: 飯田 有輝 (JA愛知厚生連海南病院リハビリテーション科課長/藤田保健衛生大客員講師・麻酔・侵襲制御医学)
 「リハビリテーションの主たる対象は臓器障害ではなく,臓器障害を持ったヒトである」。

 心臓リハビリテーションの第一人者であり,わが国の内部障害系ならびに集中治療領域のリハビリテーションを先導してきた高橋哲也先生のメッセージを本書の随所で感じた。

 リハビリテーションのリスク管理というと,多くの若手理学療法士は病態の進行や合併症発生への対処,転倒転落防止を考えるのではないか。あるいは病態の不安定な時期における離床や運動療法に伴うバイタルサインの変動を読み取るスキルを思い浮かべるかもしれない。臨床上いずれも重要な事項であることに間違いはない。実際,リスク管理をタイトルに持つ書籍には,適応や中止についてさまざまな基準や学会ガイドラインの記述が並ぶものが多い。

 しかし,リスク管理は単にリスクとベネフィットのバランスから「やる」「やらない」を決めることではない。病前の状態や疾病の重症度,病態の経過など「確定因子」を把握し,リハビリテーションによって加わる運動負荷や侵襲でどの程度リスクが生じるのかを予測し対処することに重点が置かれるべきである。

 この点について本書では,病態,チェックポイント,対策について実に明解な要点が示されている。具体的には「リスクになり得る高齢者の特徴的症状」,あるいは「患者とのファーストコンタクトで気づくべき『ポイント』」など,臨床症状や検査値,さらには視覚的容態からどこにどのようなリスクがあるのか,安全にリハビリテーションを実施する上で何を指標にすれば良いのか,とてもよく整理されている。さらに,そのリスクについて患者・家族に説明し,同意を得ながらリハビリテーションを進めていく重要さも説いている。冒頭の表現を借りれば,理学療法士は臓器障害のリスク管理だけではなく,臓器障害を持つヒトのリスク管理に主眼を置かなければならない。

 若手理学療法士にとって,本書が担当した患者の病態やリスクを解読するのに最適なのはもちろんであるが,加えて部門の管理者やリスクマネジャーにはぜひ,第1章「リスク管理の用語と基準」も一読していただきたい。理学療法士のリスク管理に対する考え方や位置付けについて大変わかりやすく書かれている。

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