特集 続・総合診療外来に“実装”したい最新エビデンス My Best 3
ISSN | 2188-8051 |
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定価 | 2,750円 (本体2,500円+税) |
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Editorial
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プライマリ・ケアの“3つのルール”と“創発特性”
藤沼康樹(医療福祉生協連 家庭医療学開発センター)
複雑性科学の最も魅力的な原理の1つは、複雑なシステムの動作が単純なルールで説明できる場合があるということだ。たとえば、鳥の驚異的に複雑な群れ行動は、以下の 3 つの単純なルールによって生み出されると言われている。
▪ 整列:近くの鳥たちときちんと並ぶ。
▪ 密着:周囲の鳥たちの中に出現する中心集団に向かって進む。
▪ 別々:衝突しないように隣の鳥と等距離になるようにする。
さてEtzら1)は、現代の医療の主流コンセプトや組織化、評価・測定法は、実はこの“鳥の群れ”と同様に、以下の3つのシンプルなルールから生成されていると言う。これらは「専門医」の行動原則であるとも言えよう。
▪ 治療対象となる疾患を同定し分類する。
▪ 各科の専門的知識により解釈する。
▪ 治療計画を生み出し、実行する。
たしかに専門医は、患者が自分の専門分野である病気に罹患しているかどうかを特定し、その専門知識に焦点を当てる方法で対象の病気を診断・治療することが中心的な仕事である。このやり方は、単一の問題に繰り返し集中することで構築された知識や技術を必要とするタイプの患者に対しては非常に有用である。しかし、この“専門医のルール”をシステム全体、特に「プライマリ・ケア」に適用すると、ケアが断片化され、高コストかつ低価値になる危険性がつきまとうことになるだろう。
では、プライマリ・ケアの一見すると複雑な特徴、たとえば「全人性」「継続性」「包括性」「回復・癒やし」「地域指向性」などを生み出すルールは何だろうか? プライマリ・ケアチームが毎日対応している健康問題の集積や、患者の年齢・性別ごとの数、関わるスタッフの労働時間など、いわゆる診療統計や活動記録をいくら積み重ねても表現できないこれらの特徴は、なぜ生じるのか? Etzら 1)は、以下のシンプルなルールがこうした特徴を生み出していると主張している。
▪ 幅広い多種多様な問題点や関わりの機会を認識する。
▪ 健康や回復・癒やし、さまざまなつながりを促進することを目的とした関心・行動を優先する。
▪ 地域という文脈のなかで、個人あるいは家族の特性に基づく個別化されたケアを行う。
この3つのルールは、まさに真正のプライマリ・ケアを実施するチームの特徴でもあり、ジェネラリスト医師の行動原則そのものであると言える。そして、このルールは、プライマリ・ケア活動を表面的に見ているだけでは見えないものである。このルールがあって初めて、複雑なシステムであるプライマリ・ケア活動の“創発特性”としての「全人性」「継続性」が顕れてくるのだ。であれば、総合診療医・家庭医の教育は、この“3つのルール”を中心に実施されねばならないのではないだろうか。
※創発特性……個が統合され全体(システム)として機能して初めて顕現する、個にはみられない、またその総和にとどまらない新たな性質。
文献
1)Etz R, et al : Simple rules that guide generalist and specialist care. Fam Med 53(8) : 697-700, 2021. [PMID]34587265
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特集 続・総合診療外来に“実装”したい最新エビデンス My Best 3
■総論
EBMの最近の進歩
安原千晴|岡田 悟
■各論 最新エビデンスMy Best 3
①認知症
佐治直樹
②Parkinson病
関 守信
③慢性腰痛症
長谷川 優|南郷栄秀
④difficult patient encounters(対応困難な状況)
鋪野紀好
⑤発達障害
今村弥生
⑥サルコペニア
若林秀隆
⑦不眠症
高野裕太|井上雄一
⑧甲状腺機能低下症
高瀬了輔|大塚文男
⑨非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
上村顕也
⑩下肢閉塞性動脈硬化症
山本洋平|工藤敏文
⑪肺塞栓症
近藤真未
⑫前立腺肥大症
小路 直
⑬HIV感染症
田島靖久
⑭過敏性腸症候群(IBS)
田中由佳里
⑮高齢者の便秘
田中由佳里
⑯小児の起立性調節障害
柳夲嘉時
⑰女性の更年期障害
吉持盾信|森田修平|小林駿介|鳴本敬一郎
⑱LGBTQと医療
吉田絵理子
⑲複雑な健康問題のケア
青木拓也
⑳がんサバイバーシップ
高橋 都
㉑外来における医学生教育
高村昭輝
今月の「めざせ!総合診療専門医!」問題
●Editorial
プライマリ・ケアの“3つのルール”と“創発特性”
藤沼康樹
●What’s your diagnosis?|251
たるんどるよ! 簡単じゃないか!
吉田常恭|酒見英太(監修)
●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|43
医療によるトラウマ
池田裕美枝
●対談|医のアートを求めて|5
医療×ナラティブ──ノンフィクション作家が見た命の現場 ハッピー・エンド・オブ・ライフとは何か?
佐々涼子|平島 修
●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|82
帯状疱疹で入院した高齢患者の意識レベルが良くなりません…
山田 衛|與那覇忠博|新里 敬|佐藤直行、他(監修)
●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|44
乗り物酔いを克服する
上田剛士
●臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン|10
本当にベンキョーになる「勉強会」の話
木村武司|佐田竜一|長野広之
●臨床医のためのライフハック|限りある時間を有効に使う仕事術|8
ウェブ発信② 「リクルート」や「人脈形成」に活かすウェブ発信術
中島 啓
●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|8
「死後硬直」と「四肢」を診る
森田沙斗武
●投稿 GM Clinical Pictures
進行大腸癌で下痢が生じた理由は?
梶原祐策
●投稿 総合診療病棟
減量チームによる集学的介入が喘息コントロールの改善につながった肥満喘息の1例
井上拓弥|住谷充弘|北浜誠一|竹嶋 好|中島進介
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