アクティブラーニングの活用
学習活動に学生が関与するための授業展開がアクティブラーニング
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グループワークだけがアクティブラーニングではなく、学生が学習活動にコミット(関与)する授業こそがアクティブラーニングである。本書ではこの観点から、学生の主体的な学びを促す方法や工夫を紹介する。新しい手法を身につけなくてはアクティブラーニングを実践できないわけではない。これまでの授業方法を少し変えるだけで学生の学習活動への関与を大いに促すことはできる。テストですらアクティブラーニングはできる。
*「看護教育実践シリーズ」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 看護教育実践シリーズ 4 |
---|---|
シリーズ編集 | 中井 俊樹 |
編集 | 小林 忠資 / 鈴木 玲子 |
発行 | 2018年09月判型:A5頁:196 |
ISBN | 978-4-260-03646-7 |
定価 | 2,640円 (本体2,400円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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「看護教育実践シリーズ」刊行にあたって(中井俊樹)/はじめに(小林忠資・鈴木玲子)
「看護教育実践シリーズ」刊行にあたって
看護教員を対象とした研修を担当すると,参加者の教育に対する情熱に圧倒されることがあります。学生が就職してからも困らないように,教室の内外においてさまざまな試行錯誤をしていることがわかります。教育に対する思いや情熱は最も重要なのかもしれません。しかし,思いや情熱だけでは効果的に教育することはできません。
「看護教育実践シリーズ」は,看護教育に求められる知識と技能を教育学を専門とする教員が中心となって体系的に提示することで,よりよい授業をしたいと考える看護教員を総合的に支援しようとするものです。つまり,教育学という観点から,看護教員の情熱をどのように学生に注げばよいのかを具体的にまとめたものです。
読者として想定しているのは,第一に看護学生を指導する教員です。加えて,看護教員を目指す方,看護教員の研修を担当する方,病院で看護学生を指導する方にも役立つと考えています。看護分野の授業文脈で内容はまとめられていますが,他分野の医療職教育などにかかわる方にとっても役立つ内容が含まれています。
看護教育のシリーズ本はこれまでにも刊行されてきました。医学書院で刊行された「わかる授業をつくる看護教育技法」や「看護教育講座」のように看護教育の方法を体系的にまとめたシリーズ本です。これらは,看護教員の教育実践の質を高めることに大きく寄与しました。本シリーズは,これらの貴重な成果を踏まえ,近年の教育学や看護教育学の理論と実践の進展に対応することで,新たな形にまとめたものです。
本シリーズは全5巻で構成されています。『1 看護教育の原理』『2 授業設計と教育評価』『3 授業方法の基礎』『4 アクティブラーニングの活用』『5 体験学習の展開』です。それぞれが,1冊の書籍としても読めるようになっていますが,全5巻を通して読むことによって看護教育の重要な内容を総合的に理解できます。
本シリーズを作成するにあたって,各巻の全執筆者との間で執筆の指針として共有したことが3点あります。第一に,内容が実践に役立つことです。読んだ後に授業で試してみたいと思うような具体的な内容を多数盛り込むようにしました。第二に,内容が体系的であることです。シリーズ全体において,看護教育にかかわる重要な内容を整理してまとめました。第三に,内容が読みやすいことです。幅広い読者層を念頭に,できるだけわかりやすく書くことを心がけました。つまり,役立つという点では良質な実用書であり,網羅するという点では良質な事典であり,読みやすいという点では良質な物語であるようなシリーズを提供したいと考えて作成しました。
本シリーズが多くの読者に読まれ,読者のもつさまざまな課題を解決し,看護教育の質を向上させる取り組みが広がっていくことを願っています。
「看護教育実践シリーズ」編集
中井俊樹
はじめに
2012年の中央教育審議会答申のなかでアクティブラーニングが取り上げられたことをきっかけに,多くの教育機関においてアクティブラーニングが推進されています。
アクティブラーニングという用語は目新しいかもしれませんが,これまでアクティブラーニング自体が存在しなかったわけではありません。アクティブラーニングを学生が能動的に学習活動を行うことを指す言葉とすれば,学生が書く,議論する,発表する,小テストを受ける,体験するなど,多くの授業で行われてきました。その一方で,アクティブラーニングの意義や特徴を教員が十分に理解しないまま授業が展開してきたことから,学生が単に活動するだけという例も散見されます。アクティブラーニングの学習効果を高めるためには教員の考え方の転換と授業の工夫が求められるのです。
本書は,アクティブラーニングを用いて授業をよりよくしたい,学生の学びを深めたいと考える看護教員に向けて,アクティブラーニングの実践の指針と具体的な方法を提供するものです。実践に役立つように,さまざまな具体例を組み込み,看護教育の文脈でアクティブラーニングをどのように活用できるのかという観点で内容をまとめています。
本書では,アクティブラーニングの学習効果を高めるには2つの視点が重要であることを示しています。1つは,アクティブラーニングを授業のなかにどのように組み込んだらよいのかという設計の観点です。もう1つは,どのように学生を学習活動に積極的に参加させることができるのかという関与の視点です。アクティブラーニングの方法を授業の設計と学生の関与という2つの視点でまとめたという点が,本書の内容の特徴であると考えています。
本書で使用する用語についてあらかじめ説明します。本書のタイトルにも含まれる「アクティブラーニング」という用語は,英語のactive learningの訳語として使用しています。「アクティブ・ラーニング」や「能動的学習」などと表記する文献もありますが,本書では引用箇所を除き「アクティブラーニング」で統一します。また,政策文書などで「学修」という用語が「学習」と区別して使用されますが,現時点ではこの2つの用語の差異が広く明確に共有されていないため,引用箇所を除き「学習」を使用します。「グループ」と「チーム」の2つの用語についても,同様に差異が広く明確に共有されていないため,アクティブラーニングの技法の名称を除き「グループ」で統一します。
また,アクティブラーニングには,学生が体験を通して学習する体験学習という要素もありますが,本書では,学生の主体的な学びに焦点を当ててまとめることにいたします。学生が体験を通して学ぶという視点は,本シリーズの『5 体験学習の展開』の巻でまとめたいと思います。
本書の刊行にあたり,看護教育に携わっている方をはじめさまざまな方々にご協力をいただきました。岡多枝子氏(人間環境大学),眞鍋瑞穂氏(人間環境大学),三並めぐる氏(人間環境大学),山口乃生子氏(埼玉県立大学)には,コラムをご執筆いただきました。須藤文氏(久留米大学),竹中喜一氏(愛媛大学),内藤知佐子氏(京都大学),牧野葵氏(福井市医師会看護専門学校)ほか多くの方々に,本書の草稿段階において貴重なアドバイスをいただきました。また,宮崎裕子氏(国立成育医療研究センター,前愛媛大学医学部看護学科学生),野村夏奈氏(愛媛大学医学部看護学科学生)には,資料の作成や書式の統一などにご協力いただきました。そして,医学書院の藤居尚子氏,木下和治氏,大野学氏には,本書の企画のきっかけをくださっただけでなく,多岐にわたる有益なアドバイスを伺うことができました。この場をお借りして,ご協力いただいた皆さまに御礼申し上げます。
2018年7月
編者 小林忠資・鈴木玲子
「看護教育実践シリーズ」刊行にあたって
看護教員を対象とした研修を担当すると,参加者の教育に対する情熱に圧倒されることがあります。学生が就職してからも困らないように,教室の内外においてさまざまな試行錯誤をしていることがわかります。教育に対する思いや情熱は最も重要なのかもしれません。しかし,思いや情熱だけでは効果的に教育することはできません。
「看護教育実践シリーズ」は,看護教育に求められる知識と技能を教育学を専門とする教員が中心となって体系的に提示することで,よりよい授業をしたいと考える看護教員を総合的に支援しようとするものです。つまり,教育学という観点から,看護教員の情熱をどのように学生に注げばよいのかを具体的にまとめたものです。
読者として想定しているのは,第一に看護学生を指導する教員です。加えて,看護教員を目指す方,看護教員の研修を担当する方,病院で看護学生を指導する方にも役立つと考えています。看護分野の授業文脈で内容はまとめられていますが,他分野の医療職教育などにかかわる方にとっても役立つ内容が含まれています。
看護教育のシリーズ本はこれまでにも刊行されてきました。医学書院で刊行された「わかる授業をつくる看護教育技法」や「看護教育講座」のように看護教育の方法を体系的にまとめたシリーズ本です。これらは,看護教員の教育実践の質を高めることに大きく寄与しました。本シリーズは,これらの貴重な成果を踏まえ,近年の教育学や看護教育学の理論と実践の進展に対応することで,新たな形にまとめたものです。
本シリーズは全5巻で構成されています。『1 看護教育の原理』『2 授業設計と教育評価』『3 授業方法の基礎』『4 アクティブラーニングの活用』『5 体験学習の展開』です。それぞれが,1冊の書籍としても読めるようになっていますが,全5巻を通して読むことによって看護教育の重要な内容を総合的に理解できます。
本シリーズを作成するにあたって,各巻の全執筆者との間で執筆の指針として共有したことが3点あります。第一に,内容が実践に役立つことです。読んだ後に授業で試してみたいと思うような具体的な内容を多数盛り込むようにしました。第二に,内容が体系的であることです。シリーズ全体において,看護教育にかかわる重要な内容を整理してまとめました。第三に,内容が読みやすいことです。幅広い読者層を念頭に,できるだけわかりやすく書くことを心がけました。つまり,役立つという点では良質な実用書であり,網羅するという点では良質な事典であり,読みやすいという点では良質な物語であるようなシリーズを提供したいと考えて作成しました。
本シリーズが多くの読者に読まれ,読者のもつさまざまな課題を解決し,看護教育の質を向上させる取り組みが広がっていくことを願っています。
「看護教育実践シリーズ」編集
中井俊樹
はじめに
2012年の中央教育審議会答申のなかでアクティブラーニングが取り上げられたことをきっかけに,多くの教育機関においてアクティブラーニングが推進されています。
アクティブラーニングという用語は目新しいかもしれませんが,これまでアクティブラーニング自体が存在しなかったわけではありません。アクティブラーニングを学生が能動的に学習活動を行うことを指す言葉とすれば,学生が書く,議論する,発表する,小テストを受ける,体験するなど,多くの授業で行われてきました。その一方で,アクティブラーニングの意義や特徴を教員が十分に理解しないまま授業が展開してきたことから,学生が単に活動するだけという例も散見されます。アクティブラーニングの学習効果を高めるためには教員の考え方の転換と授業の工夫が求められるのです。
本書は,アクティブラーニングを用いて授業をよりよくしたい,学生の学びを深めたいと考える看護教員に向けて,アクティブラーニングの実践の指針と具体的な方法を提供するものです。実践に役立つように,さまざまな具体例を組み込み,看護教育の文脈でアクティブラーニングをどのように活用できるのかという観点で内容をまとめています。
本書では,アクティブラーニングの学習効果を高めるには2つの視点が重要であることを示しています。1つは,アクティブラーニングを授業のなかにどのように組み込んだらよいのかという設計の観点です。もう1つは,どのように学生を学習活動に積極的に参加させることができるのかという関与の視点です。アクティブラーニングの方法を授業の設計と学生の関与という2つの視点でまとめたという点が,本書の内容の特徴であると考えています。
本書で使用する用語についてあらかじめ説明します。本書のタイトルにも含まれる「アクティブラーニング」という用語は,英語のactive learningの訳語として使用しています。「アクティブ・ラーニング」や「能動的学習」などと表記する文献もありますが,本書では引用箇所を除き「アクティブラーニング」で統一します。また,政策文書などで「学修」という用語が「学習」と区別して使用されますが,現時点ではこの2つの用語の差異が広く明確に共有されていないため,引用箇所を除き「学習」を使用します。「グループ」と「チーム」の2つの用語についても,同様に差異が広く明確に共有されていないため,アクティブラーニングの技法の名称を除き「グループ」で統一します。
また,アクティブラーニングには,学生が体験を通して学習する体験学習という要素もありますが,本書では,学生の主体的な学びに焦点を当ててまとめることにいたします。学生が体験を通して学ぶという視点は,本シリーズの『5 体験学習の展開』の巻でまとめたいと思います。
本書の刊行にあたり,看護教育に携わっている方をはじめさまざまな方々にご協力をいただきました。岡多枝子氏(人間環境大学),眞鍋瑞穂氏(人間環境大学),三並めぐる氏(人間環境大学),山口乃生子氏(埼玉県立大学)には,コラムをご執筆いただきました。須藤文氏(久留米大学),竹中喜一氏(愛媛大学),内藤知佐子氏(京都大学),牧野葵氏(福井市医師会看護専門学校)ほか多くの方々に,本書の草稿段階において貴重なアドバイスをいただきました。また,宮崎裕子氏(国立成育医療研究センター,前愛媛大学医学部看護学科学生),野村夏奈氏(愛媛大学医学部看護学科学生)には,資料の作成や書式の統一などにご協力いただきました。そして,医学書院の藤居尚子氏,木下和治氏,大野学氏には,本書の企画のきっかけをくださっただけでなく,多岐にわたる有益なアドバイスを伺うことができました。この場をお借りして,ご協力いただいた皆さまに御礼申し上げます。
2018年7月
編者 小林忠資・鈴木玲子
目次
開く
「看護教育実践シリーズ」刊行にあたって
はじめに
本書の構成と使い方
第1部 アクティブラーニングの特徴と指針
1章 アクティブラーニングの特徴を理解する
1 アクティブラーニングの定義を理解する
2 アクティブラーニングの効果を理解する
3 アクティブラーニングの課題を理解する
2章 アクティブラーニングを設計する
1 設計が効果を左右する
2 どのように授業のなかに位置づけるのか
3 アクティブラーニングを組み立てる
4 学習課題を工夫する
3章 学生の関与を高める
1 アクティブラーニングに必要な学生の関与
2 学生の学習姿勢をつくる
3 学習活動のプロセスを支援する
4 学習環境を整える
第2部 アクティブラーニングの基本的な方法
4章 書く活動を通して思考を促す
1 書くことは学習を促す
2 目的に応じて書く活動を組み込む
3 書く活動におけるさまざまな工夫
5章 学習を促すテストを組み込む
1 学習したことを長期的に記憶させる
2 テストの方法を理解する
3 さまざまな方法でテストを取り入れる
6章 ディスカッションを導く
1 ディスカッションを授業に組み込む
2 ディスカッションの種類を理解する
3 効果的なディスカッションを導く
4 ディスカッションに必要な能力を高める
7章 グループ学習の効果を高める
1 グループ学習の特徴を理解する
2 グループ学習を効果的に進める
3 グループ学習のさまざまな技法
第3部 発展的なアクティブラーニングの方法
8章 ジグソー法で知識を構成する
1 ジグソー法を理解する
2 ジグソー法を授業に組み込む
3 適切な学習課題をつくる
4 ジグソー法の効果を高める
9章 チーム基盤型学習を実践する
1 TBLを理解する
2 TBLの進め方
3 TBLの学習課題を作成する
4 グループでの議論を活性化する
10章 問題基盤型学習を実践する
1 PBLを理解する
2 PBLの進め方
3 PBLの教材を開発する
4 PBLの効果を高める
11章 探究学習に挑戦する
1 探究学習を理解する
2 問いをつくる
3 探究学習のプロセスを支援する
4 探究学習の成果を共有する
付録 授業に役立つ資料
1 個人での活動を中心に展開する授業の学習指導案の例
2 グループ学習を中心に展開する授業の学習指導案の例
3 ジグソー法を用いた授業の学習指導案の例
4 TBLのRATと応用課題の例
5 PBLの授業スケジュールの例
6 PBLで使用する教材の例
7 アイスブレイクの技法:3つ選んで自己紹介
8 アイスブレイクの技法:アタック25
9 用語集
文献
執筆者プロフィール
索引
はじめに
本書の構成と使い方
第1部 アクティブラーニングの特徴と指針
1章 アクティブラーニングの特徴を理解する
1 アクティブラーニングの定義を理解する
2 アクティブラーニングの効果を理解する
3 アクティブラーニングの課題を理解する
2章 アクティブラーニングを設計する
1 設計が効果を左右する
2 どのように授業のなかに位置づけるのか
3 アクティブラーニングを組み立てる
4 学習課題を工夫する
3章 学生の関与を高める
1 アクティブラーニングに必要な学生の関与
2 学生の学習姿勢をつくる
3 学習活動のプロセスを支援する
4 学習環境を整える
第2部 アクティブラーニングの基本的な方法
4章 書く活動を通して思考を促す
1 書くことは学習を促す
2 目的に応じて書く活動を組み込む
3 書く活動におけるさまざまな工夫
5章 学習を促すテストを組み込む
1 学習したことを長期的に記憶させる
2 テストの方法を理解する
3 さまざまな方法でテストを取り入れる
6章 ディスカッションを導く
1 ディスカッションを授業に組み込む
2 ディスカッションの種類を理解する
3 効果的なディスカッションを導く
4 ディスカッションに必要な能力を高める
7章 グループ学習の効果を高める
1 グループ学習の特徴を理解する
2 グループ学習を効果的に進める
3 グループ学習のさまざまな技法
第3部 発展的なアクティブラーニングの方法
8章 ジグソー法で知識を構成する
1 ジグソー法を理解する
2 ジグソー法を授業に組み込む
3 適切な学習課題をつくる
4 ジグソー法の効果を高める
9章 チーム基盤型学習を実践する
1 TBLを理解する
2 TBLの進め方
3 TBLの学習課題を作成する
4 グループでの議論を活性化する
10章 問題基盤型学習を実践する
1 PBLを理解する
2 PBLの進め方
3 PBLの教材を開発する
4 PBLの効果を高める
11章 探究学習に挑戦する
1 探究学習を理解する
2 問いをつくる
3 探究学習のプロセスを支援する
4 探究学習の成果を共有する
付録 授業に役立つ資料
1 個人での活動を中心に展開する授業の学習指導案の例
2 グループ学習を中心に展開する授業の学習指導案の例
3 ジグソー法を用いた授業の学習指導案の例
4 TBLのRATと応用課題の例
5 PBLの授業スケジュールの例
6 PBLで使用する教材の例
7 アイスブレイクの技法:3つ選んで自己紹介
8 アイスブレイクの技法:アタック25
9 用語集
文献
執筆者プロフィール
索引
書評
開く
ベテラン教員にこそ読んでほしい。自らの教育実践を言語化できるようになる書
書評者: 近藤 麻理 (関西医大大学院教授・国際看護学)
「今さら教育学のシリーズ本ですか……」と,看護教育の実践者の方々のつぶやきを想像しながら書評を書いております。
この手の本は,新人教員が読むべきだとの思い込みはありませんでしょうか。特に,“アクティブラーニング”と書名にドーンと書かれていれば,なおさらかもしれません。実のところ,私もそう思っていました。しかし,今回書評しなければならないので本書をくまなく読みました。すると,教育経験者が読んだほうが,より面白いことに気付いたのでご紹介させていただきます。
ベテラン教員たちの普段の授業の中に,本書に登場する数多くのアクティブラーニングの手法を見つけ出すことができます。自分で考えたやり方だと思っていたけれど,「私のやったあの方法には,こういう名前がついていた」と感心したり,「外国でも共通に使われていたんだ」と世界中の教員とつながったような気分になれたりするのです。また,アクティブラーニングの効果として,コミュニケーション能力はもちろん,チームワーク,タイムマネジメント,人の話を傾聴する,相手に伝わるように話すなどの社会的スキルが知識と同時に身につくわけです。これは,一石二鳥ですよね。
本書には二つの利用方法があると思います。一つは,初学者として教育を学ぶ教員が,学生の学習を保障するために基礎的な講義法を学ぶための必読書としてです。もう一つは,ベテランも含めて全ての教員が,自分の教育の実践を客観的に振り返り,学生の学習の質を高めるための参考書としてです。
組織的に教育成果を評価する際には,学生が積極的に関与して学習できたかどうかが重要であり,そのためには具体的な授業方法を世界共通の言語で表現することが欠かせません。私たち看護教員は,アクティブラーニングをやってこなかったのではなく,むしろ,ずっとやっていたのです。しかし,何をやっているかを表現する言語を持っていなかったのです。本書を参考に個々の教員が自らの教育実践を言語化できるようになるのではないかと思っています。
私は本書を読みながら,教育学者とともに,看護教育の展望について,堅苦しくなく,コーヒーでも飲みながら語れる日がいつか訪れるといいなあと思っています。そのような対話の実現に向けて,「看護教育実践シリーズ」をこれからも注目していきたいです。
学生だけでなく,教員も主体的に授業に取り組むための書(雑誌『看護教育』より)
書評者: 阿形 奈津子 (京都中央保健看護大学校看護学科学科長)
看護教育実践シリーズの編集者である中井俊樹先生とは,本書のシリーズ『2 授業設計と教育評価』『3 授業方法の基礎』の発刊と「看護の教育をよくするために」をテーマとした座談会の席で初めてお会いしました。中井先生は愛媛大学で教育・学生支援機構の教授であり教育の専門家であります。看護教育には専門学校や大学の講師として長年かかわられ,看護教員が教育に多くの悩みがあることを知られたとお聞きしました。そこで今回,看護教育を担当される方のためにシリーズで出版されたわけです。先生はとても物腰が柔らかく,看護教育を教育学の視点から優しく,ていねいに語っておられたことが印象的に残っています。本書もそのようなていねいで,細やかな書籍です。
さて,この書籍のなかには数多くの手法があり,多くの先生方の実践や工夫があり,特にコラムには事例などをとおしてわかりやすく書かれています。授業展開にこれらの手法を活用することで,学生が学習活動にコミット(関与)する授業となると考えます。ただし,この本は手法をそのまま活用するようなhow-to本ではありません。多くの手法を教員独自で,学習集団のレディネスや教授内容を吟味し精選して活用していくものです。学生にアクティブラーニングを求めるのなら,教員も主体的に授業を構築し,自らがつくり上げる授業を展開しなくてはなりません。
図や表,ワークシートなどは,著者のみなさんがよりわかりやすく伝えるために具体的に表わされています。特に,第4章「書く活動を通して思考を促す」でのノートの取り方(コーネル式ノートテイキング)は,学生が授業で書くノートをワンランク上のものに変える方法だと思います。学生の学びや疑問が見えるノートがあれば,授業での学生個々の学びの確認と支援につながります。また,多くの看護教員は臨地のカンファレンスでディスカッションを効果的にしたいと願っていると思います。しかしなかなかうまく運営できないことが多く,悩みでもあります。そこで,第6章「ディスカッションを導く」では,ディスカッションの意義から展開方法,テーマ,発問の例などがていねいに解説されています。ぜひ活用して,臨地のカンファレンスで学生たちが有意義なディスカッションができる支援者になってください。
その他,どこを見ても,教員の日ごろの悩みに少しヒントを与えてくれるものになっています。
学生が活き活きと授業に主体的に取り組むこと,これは教員の願いでもあり,目標でもあります。この書籍を活用し,アクティブラーニングが展開される授業を主体的につくり上げてください。明日から授業に使える1冊として本書をお勧めします。
(『看護教育』2018年11月号掲載)
書評者: 近藤 麻理 (関西医大大学院教授・国際看護学)
「今さら教育学のシリーズ本ですか……」と,看護教育の実践者の方々のつぶやきを想像しながら書評を書いております。
この手の本は,新人教員が読むべきだとの思い込みはありませんでしょうか。特に,“アクティブラーニング”と書名にドーンと書かれていれば,なおさらかもしれません。実のところ,私もそう思っていました。しかし,今回書評しなければならないので本書をくまなく読みました。すると,教育経験者が読んだほうが,より面白いことに気付いたのでご紹介させていただきます。
ベテラン教員たちの普段の授業の中に,本書に登場する数多くのアクティブラーニングの手法を見つけ出すことができます。自分で考えたやり方だと思っていたけれど,「私のやったあの方法には,こういう名前がついていた」と感心したり,「外国でも共通に使われていたんだ」と世界中の教員とつながったような気分になれたりするのです。また,アクティブラーニングの効果として,コミュニケーション能力はもちろん,チームワーク,タイムマネジメント,人の話を傾聴する,相手に伝わるように話すなどの社会的スキルが知識と同時に身につくわけです。これは,一石二鳥ですよね。
本書には二つの利用方法があると思います。一つは,初学者として教育を学ぶ教員が,学生の学習を保障するために基礎的な講義法を学ぶための必読書としてです。もう一つは,ベテランも含めて全ての教員が,自分の教育の実践を客観的に振り返り,学生の学習の質を高めるための参考書としてです。
組織的に教育成果を評価する際には,学生が積極的に関与して学習できたかどうかが重要であり,そのためには具体的な授業方法を世界共通の言語で表現することが欠かせません。私たち看護教員は,アクティブラーニングをやってこなかったのではなく,むしろ,ずっとやっていたのです。しかし,何をやっているかを表現する言語を持っていなかったのです。本書を参考に個々の教員が自らの教育実践を言語化できるようになるのではないかと思っています。
私は本書を読みながら,教育学者とともに,看護教育の展望について,堅苦しくなく,コーヒーでも飲みながら語れる日がいつか訪れるといいなあと思っています。そのような対話の実現に向けて,「看護教育実践シリーズ」をこれからも注目していきたいです。
学生だけでなく,教員も主体的に授業に取り組むための書(雑誌『看護教育』より)
書評者: 阿形 奈津子 (京都中央保健看護大学校看護学科学科長)
看護教育実践シリーズの編集者である中井俊樹先生とは,本書のシリーズ『2 授業設計と教育評価』『3 授業方法の基礎』の発刊と「看護の教育をよくするために」をテーマとした座談会の席で初めてお会いしました。中井先生は愛媛大学で教育・学生支援機構の教授であり教育の専門家であります。看護教育には専門学校や大学の講師として長年かかわられ,看護教員が教育に多くの悩みがあることを知られたとお聞きしました。そこで今回,看護教育を担当される方のためにシリーズで出版されたわけです。先生はとても物腰が柔らかく,看護教育を教育学の視点から優しく,ていねいに語っておられたことが印象的に残っています。本書もそのようなていねいで,細やかな書籍です。
さて,この書籍のなかには数多くの手法があり,多くの先生方の実践や工夫があり,特にコラムには事例などをとおしてわかりやすく書かれています。授業展開にこれらの手法を活用することで,学生が学習活動にコミット(関与)する授業となると考えます。ただし,この本は手法をそのまま活用するようなhow-to本ではありません。多くの手法を教員独自で,学習集団のレディネスや教授内容を吟味し精選して活用していくものです。学生にアクティブラーニングを求めるのなら,教員も主体的に授業を構築し,自らがつくり上げる授業を展開しなくてはなりません。
図や表,ワークシートなどは,著者のみなさんがよりわかりやすく伝えるために具体的に表わされています。特に,第4章「書く活動を通して思考を促す」でのノートの取り方(コーネル式ノートテイキング)は,学生が授業で書くノートをワンランク上のものに変える方法だと思います。学生の学びや疑問が見えるノートがあれば,授業での学生個々の学びの確認と支援につながります。また,多くの看護教員は臨地のカンファレンスでディスカッションを効果的にしたいと願っていると思います。しかしなかなかうまく運営できないことが多く,悩みでもあります。そこで,第6章「ディスカッションを導く」では,ディスカッションの意義から展開方法,テーマ,発問の例などがていねいに解説されています。ぜひ活用して,臨地のカンファレンスで学生たちが有意義なディスカッションができる支援者になってください。
その他,どこを見ても,教員の日ごろの悩みに少しヒントを与えてくれるものになっています。
学生が活き活きと授業に主体的に取り組むこと,これは教員の願いでもあり,目標でもあります。この書籍を活用し,アクティブラーニングが展開される授業を主体的につくり上げてください。明日から授業に使える1冊として本書をお勧めします。
(『看護教育』2018年11月号掲載)