肝疾患レジデントマニュアル 第3版
C型肝炎は経口薬で95%が治る時代-激変する肝疾患診療の最新知識を収載
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基本コンセプトは、研修医をはじめとする経験の浅い若手臨床医にとって、真に役立つ知識をコンパクトにまとめること。今版では、専門医取得をめざす臨床医にも広く読んでもらうことを想定し、基本的なことや教育的な内容には多くのページを割かず、読者が本当に知りたいこと、最新知見を効率よく学ぶことができることに力点を置いた。臨床現場のみならず、昨今の肝疾患診療の知識の整理にもぜひご活用いただきたい。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | レジデントマニュアル |
---|---|
編集 | 柴田 実 / 加藤 直也 |
発行 | 2017年06月判型:B6変頁:308 |
ISBN | 978-4-260-03042-7 |
定価 | 4,950円 (本体4,500円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
序
本書は肝疾患の診療に携わる全ての医療者,特に研修医,若い医師,肝臓専門医をめざす医師のために作りました.
本書の特徴は以下の通りです
・実地臨床にすぐ役立つ内容を厳選して網羅した.
・白衣のポケットに入れどこにでも持ち歩けるサイズとした.
・冗長な記載を避け,短時間で必要な情報が入手できる本とした.
・図表を多くし理解しやすい構成とした.
・最新の治療内容,医学情報を集めた.
・第一線の臨床現場で活躍している,若手~中堅医師に執筆を依頼した.
・臨床的に優れた執筆者ならではの診療のコツを「memo」というコラムで掲載した
本書の歴史は,医学書院より1999年に発行された『これからの肝疾患診療マニュアル』から始まります.昭和大学にいた柴田に医学書院の安藤恵氏から,若い先生のための肝疾患の本を,若い先生達と作りましょうと話があり,企画・出版したマニュアルです.当時の本を開くと,B型肝炎の治療はインターフェロン療法とステロイド離脱療法とプロパゲルマニウム療法のみでした.インターフェロンは4週間しか保険適用がありませんでした.ラミブジンは臨床試験が欧米で開始されたことを紹介するに留まっています.C型肝炎の治療は,インターフェロン単独24週療法とウルソデオキシコール酸と強力ネオミノファーゲン療法のみでした.リバビリンはまだ登場しておりません.その後のウイルス肝炎の治療薬の進歩には,実にめざましいものがありました!
B型肝炎にはペグインターフェロン48週投与,様々な核酸アナログ製剤が登場し,C型肝炎にはペグインターフェロン+リバビリン併用療法,様々な直接型抗ウイルス薬が登場し,インターフェロンを必要としない経口薬のみの治療が主流となりました.現在,B型肝炎は肝不全に進行する患者が激減し,C型肝炎は経口薬で95%が治る時代となりました.
治療薬の進歩に追いつくように,2004年に『肝疾患レジデントマニュアル』,2008年に『肝疾患レジデントマニュアル 第2版』を出版し,このたび『肝疾患レジデントマニュアル 第3版』の出版となりました.第3版では,加藤直也先生に編集において全面的な協力を仰ぎました.加藤直也先生は本書の企画時は東京大学医科学研究所におられましたが,その後千葉大学の教授に就任されました.2017年に頼んでいたらご多忙で断られたと思います.その前に頼んでおいて本当によかったと思っています.おかげで日本中を網羅するように第一線の専門家を執筆者に選ぶことができました.
本書が肝疾患の診療に従事する全ての医療者の役に立ち,ひいては患者さんの健康と幸せに貢献できることを期待して出版いたします.
最後に,本書の制作に多大な努力を重ねていただいた医学書院の安藤恵氏,玉森政次氏に感謝いたします.安藤恵氏は1999年の『これからの肝疾患診療マニュアル』から4作目の長い付き合いをさせていただき,あらためて深謝いたします.
2017年4月
編者を代表して 柴田 実
本書は肝疾患の診療に携わる全ての医療者,特に研修医,若い医師,肝臓専門医をめざす医師のために作りました.
本書の特徴は以下の通りです
・実地臨床にすぐ役立つ内容を厳選して網羅した.
・白衣のポケットに入れどこにでも持ち歩けるサイズとした.
・冗長な記載を避け,短時間で必要な情報が入手できる本とした.
・図表を多くし理解しやすい構成とした.
・最新の治療内容,医学情報を集めた.
・第一線の臨床現場で活躍している,若手~中堅医師に執筆を依頼した.
・臨床的に優れた執筆者ならではの診療のコツを「memo」というコラムで掲載した
本書の歴史は,医学書院より1999年に発行された『これからの肝疾患診療マニュアル』から始まります.昭和大学にいた柴田に医学書院の安藤恵氏から,若い先生のための肝疾患の本を,若い先生達と作りましょうと話があり,企画・出版したマニュアルです.当時の本を開くと,B型肝炎の治療はインターフェロン療法とステロイド離脱療法とプロパゲルマニウム療法のみでした.インターフェロンは4週間しか保険適用がありませんでした.ラミブジンは臨床試験が欧米で開始されたことを紹介するに留まっています.C型肝炎の治療は,インターフェロン単独24週療法とウルソデオキシコール酸と強力ネオミノファーゲン療法のみでした.リバビリンはまだ登場しておりません.その後のウイルス肝炎の治療薬の進歩には,実にめざましいものがありました!
B型肝炎にはペグインターフェロン48週投与,様々な核酸アナログ製剤が登場し,C型肝炎にはペグインターフェロン+リバビリン併用療法,様々な直接型抗ウイルス薬が登場し,インターフェロンを必要としない経口薬のみの治療が主流となりました.現在,B型肝炎は肝不全に進行する患者が激減し,C型肝炎は経口薬で95%が治る時代となりました.
治療薬の進歩に追いつくように,2004年に『肝疾患レジデントマニュアル』,2008年に『肝疾患レジデントマニュアル 第2版』を出版し,このたび『肝疾患レジデントマニュアル 第3版』の出版となりました.第3版では,加藤直也先生に編集において全面的な協力を仰ぎました.加藤直也先生は本書の企画時は東京大学医科学研究所におられましたが,その後千葉大学の教授に就任されました.2017年に頼んでいたらご多忙で断られたと思います.その前に頼んでおいて本当によかったと思っています.おかげで日本中を網羅するように第一線の専門家を執筆者に選ぶことができました.
本書が肝疾患の診療に従事する全ての医療者の役に立ち,ひいては患者さんの健康と幸せに貢献できることを期待して出版いたします.
最後に,本書の制作に多大な努力を重ねていただいた医学書院の安藤恵氏,玉森政次氏に感謝いたします.安藤恵氏は1999年の『これからの肝疾患診療マニュアル』から4作目の長い付き合いをさせていただき,あらためて深謝いたします.
2017年4月
編者を代表して 柴田 実
目次
開く
A 肝疾患の身体所見と症候
B 肝疾患の画像検査・病理検査
1 画像検査
a 超音波検査
b CT
c MRI
2 肝生検・病理学的検査
a 肝生検
b 肝臓病理
C 肝疾患各論
1 急性肝炎
2 劇症肝炎
3 慢性肝炎
a 総論
b B型慢性肝炎
c C型慢性肝炎
4 肝硬変
5 門脈圧亢進症
6 肝腫瘍
7 自己免疫性肝疾患
8 アルコール性肝障害
9 NAFLD/NASH
10 薬物性肝障害
11 その他の肝疾患
D 肝移植
E 付録
1 役に立つサイトの紹介
索引
memo
1 柑皮症に注意
2 本当に腹水なのか?
3 腹部触診の重要性
4 肝臓の触診のしかたのコツ
5 肝細胞性黄疸でD/T比低下したら重症
6 黄疸例の徴候
7 肝性胸水
8 心窩部痛の原因は胃にあらず
9 ティッシュハーモニック画像
10 脂肪肝
11 ヨード造影剤の禁忌
12 「早期膿染,後期wash out」の落とし穴
13 A-Pシャントのさまざま
14 腎機能低下例における造影CT,MRIの適応変遷
15 腹腔内出血
16 エラストグラフィ(肝硬度)
17 B型急性肝炎患者への問診のポイント
18 急性肝炎の重症度把握のポイント
19 急性肝炎患者説明のポイント
20 他科への紹介のポイント
21 抗ウイルス薬使用時の注意事項
22 先行肝疾患の有無について
23 移植の時機を見逃さない
24 サルコペニア(sarcopenia)
25 B型肝炎ワクチン
26 B型肝炎ウイルスの再活性化
27 DAAによる治療失敗例ウイルス変異
28 肝機能障害の身体障害者手帳制度の見直し(身体障害者福祉法)
29 トロンボポエチン受容体アゴニスト
30 非B非C型肝細胞癌の増加
31 進行肝癌に対する今後の治療展開
32 直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場
33 治療の落とし穴
34 アルコール健康障害対策基本法
35 NAFLD/NASHの新たな薬物療法
36 DILI症例の遺伝子分析
37 回虫の総胆管迷入
38 伝染性単核球症の診かた
39 肝細胞癌に対する肝移植におけるミラノ基準
40 生体肝移植ドナーの諸問題
B 肝疾患の画像検査・病理検査
1 画像検査
a 超音波検査
b CT
c MRI
2 肝生検・病理学的検査
a 肝生検
b 肝臓病理
C 肝疾患各論
1 急性肝炎
2 劇症肝炎
3 慢性肝炎
a 総論
b B型慢性肝炎
c C型慢性肝炎
4 肝硬変
5 門脈圧亢進症
6 肝腫瘍
7 自己免疫性肝疾患
8 アルコール性肝障害
9 NAFLD/NASH
10 薬物性肝障害
11 その他の肝疾患
D 肝移植
E 付録
1 役に立つサイトの紹介
索引
memo
1 柑皮症に注意
2 本当に腹水なのか?
3 腹部触診の重要性
4 肝臓の触診のしかたのコツ
5 肝細胞性黄疸でD/T比低下したら重症
6 黄疸例の徴候
7 肝性胸水
8 心窩部痛の原因は胃にあらず
9 ティッシュハーモニック画像
10 脂肪肝
11 ヨード造影剤の禁忌
12 「早期膿染,後期wash out」の落とし穴
13 A-Pシャントのさまざま
14 腎機能低下例における造影CT,MRIの適応変遷
15 腹腔内出血
16 エラストグラフィ(肝硬度)
17 B型急性肝炎患者への問診のポイント
18 急性肝炎の重症度把握のポイント
19 急性肝炎患者説明のポイント
20 他科への紹介のポイント
21 抗ウイルス薬使用時の注意事項
22 先行肝疾患の有無について
23 移植の時機を見逃さない
24 サルコペニア(sarcopenia)
25 B型肝炎ワクチン
26 B型肝炎ウイルスの再活性化
27 DAAによる治療失敗例ウイルス変異
28 肝機能障害の身体障害者手帳制度の見直し(身体障害者福祉法)
29 トロンボポエチン受容体アゴニスト
30 非B非C型肝細胞癌の増加
31 進行肝癌に対する今後の治療展開
32 直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場
33 治療の落とし穴
34 アルコール健康障害対策基本法
35 NAFLD/NASHの新たな薬物療法
36 DILI症例の遺伝子分析
37 回虫の総胆管迷入
38 伝染性単核球症の診かた
39 肝細胞癌に対する肝移植におけるミラノ基準
40 生体肝移植ドナーの諸問題
書評
開く
肝疾患診療に携わる全ての医師に推薦したい
書評者: 上野 文昭 (米国内科学会(ACP)日本支部・支部長)
近年,肝疾患診療の変貌が著しい。一昔前であれば,肝疾患は自然に治るか,治らずに進行するものと考えられていた。従来わが国でよく使われていた肝疾患治療薬は,その有効性に関するエビデンスが乏しく,世界的にはまったく評価されていなかった。一時期は画期的であったインターフェロンなどの抗ウイルス薬も限界は明らかであった。しかし現在は状況が一変した。特にインパクトが大きいのがウイルス肝炎の治療であり,現在では治癒が望める疾患の筆頭となっている。
このたび医学書院より『肝疾患レジデントマニュアル 第3版』が上梓された。肝疾患診療必携の書として定評のあった本書は,ようやくここにきて9年の歳月を経て新版となった。進歩の著しかったこの数年間を考えると,改訂は遅きに失したという批判もあろうが,評者はそうは思わない。書籍は医学雑誌と異なり,最新の知見を盛り込めばよいというものではない。華々しく登場した検査法や治療法が,5年程度で廃れてしまうことが少なくない。せっかく購入した書籍がすぐに役立たなくなるのは悲しい。新しい診療行為が学術報告され,十分に臨床使用され,実績と定評が確立してから成書とすべきであろう。C型肝炎に対する直接型抗ウイルス薬が出そろい,その有効性と有害性に関する評価が定着した現在が,改訂版を世に出す素敵なタイミングであったと考える。ついでに言えば,PBCの病名変更も間に合ったし,IgG4関連肝胆道疾患やNAFLDの新しい知見も含むことができた。いささか「あと出しじゃんけん」で勝っている感もあるが,その恩恵を受けるのは読者である。
初版から筆頭編集者である柴田実氏は,評者が最も信頼する肝臓専門医である。医育施設や基幹病院に在籍時代から肝疾患の臨床研究と診療に没頭され,診療に多忙な実地医家となられてからも研究や執筆活動を継続している姿勢には敬服する。一般に医学論文を吟味する際,高名な著者による論文の評価をついつい高めてしまうことをAuthor Biasといい,EBMでは禁じ手である。本書は柴田実氏と素晴らしい仲間たちの作品ということで,どうしてもこのバイアスを排除できないが,これは適切な方向に作用していると考えたい。
本書は院内外どこへでも持ち運べるコンパクトサイズで,まさに必携の書といえる。旧版よりもスリムになったが,巻末に肝疾患診療に関連したウェブサイトのリストが掲載されており,随時必要な最新情報を入手するのに役立つ内容に不足はない。変貌を遂げた肝疾患診療の実際を詳細に把握しているのは,おそらく肝臓専門医だけであろう。それ以外の消化器内科医や他の内科医,他科の医師がそれを十分理解しているとは思えない。したがって研修医のみならず,肝疾患診療に携わる全ての医師に本書を推薦したい。
書評者: 上野 文昭 (米国内科学会(ACP)日本支部・支部長)
近年,肝疾患診療の変貌が著しい。一昔前であれば,肝疾患は自然に治るか,治らずに進行するものと考えられていた。従来わが国でよく使われていた肝疾患治療薬は,その有効性に関するエビデンスが乏しく,世界的にはまったく評価されていなかった。一時期は画期的であったインターフェロンなどの抗ウイルス薬も限界は明らかであった。しかし現在は状況が一変した。特にインパクトが大きいのがウイルス肝炎の治療であり,現在では治癒が望める疾患の筆頭となっている。
このたび医学書院より『肝疾患レジデントマニュアル 第3版』が上梓された。肝疾患診療必携の書として定評のあった本書は,ようやくここにきて9年の歳月を経て新版となった。進歩の著しかったこの数年間を考えると,改訂は遅きに失したという批判もあろうが,評者はそうは思わない。書籍は医学雑誌と異なり,最新の知見を盛り込めばよいというものではない。華々しく登場した検査法や治療法が,5年程度で廃れてしまうことが少なくない。せっかく購入した書籍がすぐに役立たなくなるのは悲しい。新しい診療行為が学術報告され,十分に臨床使用され,実績と定評が確立してから成書とすべきであろう。C型肝炎に対する直接型抗ウイルス薬が出そろい,その有効性と有害性に関する評価が定着した現在が,改訂版を世に出す素敵なタイミングであったと考える。ついでに言えば,PBCの病名変更も間に合ったし,IgG4関連肝胆道疾患やNAFLDの新しい知見も含むことができた。いささか「あと出しじゃんけん」で勝っている感もあるが,その恩恵を受けるのは読者である。
初版から筆頭編集者である柴田実氏は,評者が最も信頼する肝臓専門医である。医育施設や基幹病院に在籍時代から肝疾患の臨床研究と診療に没頭され,診療に多忙な実地医家となられてからも研究や執筆活動を継続している姿勢には敬服する。一般に医学論文を吟味する際,高名な著者による論文の評価をついつい高めてしまうことをAuthor Biasといい,EBMでは禁じ手である。本書は柴田実氏と素晴らしい仲間たちの作品ということで,どうしてもこのバイアスを排除できないが,これは適切な方向に作用していると考えたい。
本書は院内外どこへでも持ち運べるコンパクトサイズで,まさに必携の書といえる。旧版よりもスリムになったが,巻末に肝疾患診療に関連したウェブサイトのリストが掲載されており,随時必要な最新情報を入手するのに役立つ内容に不足はない。変貌を遂げた肝疾患診療の実際を詳細に把握しているのは,おそらく肝臓専門医だけであろう。それ以外の消化器内科医や他の内科医,他科の医師がそれを十分理解しているとは思えない。したがって研修医のみならず,肝疾患診療に携わる全ての医師に本書を推薦したい。