人工呼吸管理レジデントマニュアル
「まずは、ここから」。初心者が身につけたい人工呼吸管理のポイントがこの1冊に!
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「まずは、ここから」。人工呼吸器の操作方法、基本モード、NIV、HFNC、気道抵抗とコンプライアンス、鎮痛・鎮静、呼吸器離脱、疾患別の呼吸器設定例、アラームとトラブルシューティング、患者-人工呼吸器間の非同調、食道内圧モニタリング……。初心者が身につけたい人工呼吸管理のポイントがこの1冊に!
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | レジデントマニュアル |
---|---|
編集 | 則末 泰博 |
執筆 | 片岡 惇 / 鍋島 正慶 |
発行 | 2019年03月判型:B6変頁:218 |
ISBN | 978-4-260-03834-8 |
定価 | 4,180円 (本体3,800円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
- 正誤表
序文
開く
序
人工呼吸管理に必要な知識とは何でしょうか? 人工呼吸器の設定方法,モニター上のさまざまな数字やグラフィックの解釈などがすぐに思い浮かぶと思います.しかし,呼吸不全の患者に対して実際に人工呼吸管理を行うには,少なくとも以下の判断や知識が必要になります.
本書では,これらの知識を簡潔にわかりやすく説明しています.図や写真が多いことも本書の特徴です.長い文章は避け,1つの文章に1つのメッセージが含まれるように,箇条書き方式にしました.また本書の知識が即戦力となるように,具体的な症例や人工呼吸器の設定例を多く載せました.完全な初心者はもちろんのこと,すでにある程度の知識と経験がある中級者でも,新たな発見を得られるような考え方,知識そしてコツが随所にちりばめられています.ぜひとも本書をベッドサイドでお役立て下さい.
2019年2月
東京ベイ・浦安市川医療センター
救急・集中治療科集中治療部門部長/
呼吸器内科部長
則末泰博
人工呼吸管理に必要な知識とは何でしょうか? 人工呼吸器の設定方法,モニター上のさまざまな数字やグラフィックの解釈などがすぐに思い浮かぶと思います.しかし,呼吸不全の患者に対して実際に人工呼吸管理を行うには,少なくとも以下の判断や知識が必要になります.
・ | 目の前の患者に気管挿管と人工呼吸が必要か? |
・ | 非侵襲的な酸素療法や陽圧換気で気管挿管を回避することはできないか? |
・ | 安全で確実な気管挿管の方法 |
・ | さまざまな種類の人工呼吸器の始動と操作の方法 |
・ | 病態に合わせた人工呼吸器の設定 |
・ | アラームとトラブルへの対処 |
・ | 呼吸器グラフィックの読み方 |
・ | 鎮痛や鎮静が適切か? |
・ | 患者の呼吸と人工呼吸器の動作が同調しているか? |
・ | 現在の人工呼吸器設定や患者の呼吸努力がさらなる肺傷害を起こしていないか? |
・ | 人工呼吸器からの離脱と抜管は可能か? |
・ | 安全な抜管の手順 |
・ | 人工呼吸器の電源の落とし方 |
本書では,これらの知識を簡潔にわかりやすく説明しています.図や写真が多いことも本書の特徴です.長い文章は避け,1つの文章に1つのメッセージが含まれるように,箇条書き方式にしました.また本書の知識が即戦力となるように,具体的な症例や人工呼吸器の設定例を多く載せました.完全な初心者はもちろんのこと,すでにある程度の知識と経験がある中級者でも,新たな発見を得られるような考え方,知識そしてコツが随所にちりばめられています.ぜひとも本書をベッドサイドでお役立て下さい.
2019年2月
東京ベイ・浦安市川医療センター
救急・集中治療科集中治療部門部長/
呼吸器内科部長
則末泰博
目次
開く
1章 人工呼吸器の操作方法
1 Puritan Bennett™840
2 Puritan Bennett™980
3 EVITA® Infinity® V500
4 Hamilton G5
5 AVEA®
6 Servo i
7 Oxylog® 3000 Plus
8 パラパック
2章 人工呼吸/挿管の適応
1 人工呼吸・気管挿管の適応
2 NIVまたは気管挿管による人工呼吸の適応例
3章 酸素療法
1 酸素投与法の分類と特性
2 低流量システム
3 リザーバーシステム
4 高流量システム
5 モニタリング
4章 NIV
1 NIVの適応
2 NIVの禁忌
3 モード
4 COPD急性増悪のときの初期設定例
5 心原性肺水腫のときの初期設定例
6 一般的な導入の流れ
5章 ハイフローネーザルカニュラ
1 ハイフローネーザルカニュラの効果
2 実際の使用方法
3 その他
6章 挿管の方法
1 評価・準備
2 ABCプランニング
3 SOAPMD
4 挿管に必要な器具
5 前酸素化
6 前投薬と薬剤
7 体位
8 換気
9 挿管
10 確認
7章 設定の基本知識
1 酸素化に関連する設定(FIO2とPEEP)
2 換気に関連する設定(1回換気量と呼吸回数)
3 初期設定の際の注意点(プラトー圧とAuto PEEP)
4 トリガーの設定
8章 基本モード
1 送気方法
1) 従量式(VCV)
2) 従圧式(PCV)
3) 圧補助(PSV)
2 モード
1) A/C(アシストコントロール)
2) SIMV
3) 自発呼吸モード(CPAP±PS)
9章 その他のモード
1 PRVC
2 PSV以外の自発呼吸モード
1) (A)TC
2) VS
3 APRV
4 Closed loop system
1) PAV
2) NAVA
3) SmartCare/PS
4) ASV
10章 酸素化の評価と設定
1 低酸素血症のメカニズム
2 低酸素血症の鑑別表
3 酸素化の目標と指標
4 PEEPの生理学的作用
5 FIO2とPEEPの決め方
6 その他のPEEPの決め方
7 リクルートメントマニューバー
11章 換気の評価と設定
1 換気のメカニズム
2 高CO2血症のメカニズム
3 EtCO2モニター
4 換気に関連する設定とpermissive hypercapnia
12章 気道抵抗とコンプライアンス
1 VCVの圧波形から肺メカニクスを知る
2 PCVのフロー波形から肺メカニクスを知る
3 Auto PEEP
13章 人工呼吸管理中の鎮痛・鎮静
1 疼痛の評価方法
2 痛みの管理
3 鎮静深度の評価と鎮静薬の使用方法
4 ICUにおけるせん妄
5 ABCDEバンドル
14章 呼吸器離脱
1 ウィーニングとDaily SBT
2 「離脱のプロセスに進めるか」の判断
3 自発呼吸トライアル(SBT)
4 抜管の手順
5 抜管後の管理,再挿管の予防
6 上気道の問題
7 カフリークテストの実施方法
8 気管切開の利点・欠点・時期
15章 疾患別の呼吸器設定例
1 ARDS
2 心不全
3 COPD急性増悪
4 気管支喘息重責発作
5 頭蓋内圧上昇
6 神経筋疾患
16章 アラームとトラブルシューティング
1 アラームの設定方法
2 アラームとバックアップ換気の初期設定(成人)の目安
3 アラーム対応の原則
4 低酸素アラームおよび急性に発症した著しい低酸素血症への緊急対応
17章 人工呼吸管理の合併症
1 人工呼吸器関連肺傷害(VALI)
2 人工呼吸器関連肺炎(VAP)
3 人工呼吸器誘発性横隔膜機能不全(VIDD)
4 ICU関連筋力低下(ICU-AW)
18章 患者-人工呼吸器間の非同調
1 非同調(asynchrony)とは?
2 非同調を見つける方法
3 非同調の分類
1) トリガーによる非同調
2) 送気速度による非同調
3) 送気終了のタイミングによる非同調
19章 食道内圧モニタリング
1 経肺圧と生理学的背景
2 実際の測定方法
3 経肺圧測定の意義
4 食道内圧モニタリングが有用になりうる場面
索引
Column
OとVの裏に隠されたもう1つの適応
臨床上大切なのはPaO2ではなくSaO2
NIVが心原性肺水腫とCOPDに効果がある生理学的な理由
ヘルメット型マスク
RSI(rapid sequence intubation)
立ち上がり時間
EvitaシリーズにおけるAutoFlow
EvitaシリーズにおけるATC
BiLevel/Bi-Vent とAPRV
肺コンプライアンスと胸郭コンプライアンス
時定数(time constant)
時定数(time constant):実例編①
時定数(time constant):実例編②
1 Puritan Bennett™840
2 Puritan Bennett™980
3 EVITA® Infinity® V500
4 Hamilton G5
5 AVEA®
6 Servo i
7 Oxylog® 3000 Plus
8 パラパック
2章 人工呼吸/挿管の適応
1 人工呼吸・気管挿管の適応
2 NIVまたは気管挿管による人工呼吸の適応例
3章 酸素療法
1 酸素投与法の分類と特性
2 低流量システム
3 リザーバーシステム
4 高流量システム
5 モニタリング
4章 NIV
1 NIVの適応
2 NIVの禁忌
3 モード
4 COPD急性増悪のときの初期設定例
5 心原性肺水腫のときの初期設定例
6 一般的な導入の流れ
5章 ハイフローネーザルカニュラ
1 ハイフローネーザルカニュラの効果
2 実際の使用方法
3 その他
6章 挿管の方法
1 評価・準備
2 ABCプランニング
3 SOAPMD
4 挿管に必要な器具
5 前酸素化
6 前投薬と薬剤
7 体位
8 換気
9 挿管
10 確認
7章 設定の基本知識
1 酸素化に関連する設定(FIO2とPEEP)
2 換気に関連する設定(1回換気量と呼吸回数)
3 初期設定の際の注意点(プラトー圧とAuto PEEP)
4 トリガーの設定
8章 基本モード
1 送気方法
1) 従量式(VCV)
2) 従圧式(PCV)
3) 圧補助(PSV)
2 モード
1) A/C(アシストコントロール)
2) SIMV
3) 自発呼吸モード(CPAP±PS)
9章 その他のモード
1 PRVC
2 PSV以外の自発呼吸モード
1) (A)TC
2) VS
3 APRV
4 Closed loop system
1) PAV
2) NAVA
3) SmartCare/PS
4) ASV
10章 酸素化の評価と設定
1 低酸素血症のメカニズム
2 低酸素血症の鑑別表
3 酸素化の目標と指標
4 PEEPの生理学的作用
5 FIO2とPEEPの決め方
6 その他のPEEPの決め方
7 リクルートメントマニューバー
11章 換気の評価と設定
1 換気のメカニズム
2 高CO2血症のメカニズム
3 EtCO2モニター
4 換気に関連する設定とpermissive hypercapnia
12章 気道抵抗とコンプライアンス
1 VCVの圧波形から肺メカニクスを知る
2 PCVのフロー波形から肺メカニクスを知る
3 Auto PEEP
13章 人工呼吸管理中の鎮痛・鎮静
1 疼痛の評価方法
2 痛みの管理
3 鎮静深度の評価と鎮静薬の使用方法
4 ICUにおけるせん妄
5 ABCDEバンドル
14章 呼吸器離脱
1 ウィーニングとDaily SBT
2 「離脱のプロセスに進めるか」の判断
3 自発呼吸トライアル(SBT)
4 抜管の手順
5 抜管後の管理,再挿管の予防
6 上気道の問題
7 カフリークテストの実施方法
8 気管切開の利点・欠点・時期
15章 疾患別の呼吸器設定例
1 ARDS
2 心不全
3 COPD急性増悪
4 気管支喘息重責発作
5 頭蓋内圧上昇
6 神経筋疾患
16章 アラームとトラブルシューティング
1 アラームの設定方法
2 アラームとバックアップ換気の初期設定(成人)の目安
3 アラーム対応の原則
4 低酸素アラームおよび急性に発症した著しい低酸素血症への緊急対応
17章 人工呼吸管理の合併症
1 人工呼吸器関連肺傷害(VALI)
2 人工呼吸器関連肺炎(VAP)
3 人工呼吸器誘発性横隔膜機能不全(VIDD)
4 ICU関連筋力低下(ICU-AW)
18章 患者-人工呼吸器間の非同調
1 非同調(asynchrony)とは?
2 非同調を見つける方法
3 非同調の分類
1) トリガーによる非同調
2) 送気速度による非同調
3) 送気終了のタイミングによる非同調
19章 食道内圧モニタリング
1 経肺圧と生理学的背景
2 実際の測定方法
3 経肺圧測定の意義
4 食道内圧モニタリングが有用になりうる場面
索引
Column
OとVの裏に隠されたもう1つの適応
臨床上大切なのはPaO2ではなくSaO2
NIVが心原性肺水腫とCOPDに効果がある生理学的な理由
ヘルメット型マスク
RSI(rapid sequence intubation)
立ち上がり時間
EvitaシリーズにおけるAutoFlow
EvitaシリーズにおけるATC
BiLevel/Bi-Vent とAPRV
肺コンプライアンスと胸郭コンプライアンス
時定数(time constant)
時定数(time constant):実例編①
時定数(time constant):実例編②
書評
開く
実臨床において必要なことをよくここまで網羅しましたね
書評者: 小尾口 邦彦 (市立大津市民病院救急診療科・集中治療部 診療部長)
数年前,某出版社担当者と評者の会話。
担当者:若手医師を対象とし,人工呼吸を網羅しかつシンプルでポケットに入るサイズのテキストを書いてくださいよ~!!
評者の心の中:ずいぶん,注文が多いな。「ポケットに入る」ということは,例え話を使った説明は長すぎて使えないし,指導医と研修医の会話形式も使えないし,図が多いとスペースを取るし……。そもそも人工呼吸の一般論だけでなく新しい話を採り入れたいところだけれど,そうするとページ数がいくらあっても足りないし……。
怠惰な評者は早々と白旗を上げた。
初期研修医向けマニュアルとレジデント向けマニュアルの間で,「求められるもの」の違いは何であろうか(本書評では後期研修医〔専攻医〕をレジデントとする)。評者が考えるに,研修医マニュアルはできる限りシンプルであるべきだ。ついつい「あれも,これも」と盛り込みたくなるが,初学者には知識の混乱を招くノイズとなりがちである。極論を言えば,100回のうち95回正しいのであれば,「これがすべて正しい!!」と言い切ることも時に必要である。あくまでも,極論ですよ。王道の知識を盛り込むことが重要であり,木で例えるなら,「幹をしっかり太く」しなければならない。
一方,レジデントマニュアルに求められるものはおそらく異なる。ある程度,知識や経験があることを前提とし,臨床で出会うリアルな問題に対応できなければならない。読者は重要な基礎的事項にまだまだもろい面があり,これらはしっかり押さえたい。新しい知識も,これから広く受け入れられる可能性があるものなら盛り込みたい。木で例えるなら,「幹を太く育てながら,豊かな枝も茂らせたい」のである。
評者も相当お世話になった医学書院の「レジデントマニュアル」シリーズに,このたび「人工呼吸管理」が加わった。少し人工呼吸管理に携われば,さまざまな疑問が涌いてくる。例えば,人工呼吸中患者に吸入気管支拡張薬を投与したい時,回路にスペーサーを挟まなければならない。人工呼吸回路ではロスが出るため,通常使用量の数倍投与することになるが,意外にもそれに触れられている成書はほぼない。本書には吸入気管支拡張薬の投与法まで解説される。例えば,人工呼吸管理において患者自発呼吸との非同調に悩まされることは多いが,やはり意外にも解説されることは少ない。本書では,さまざまな非同調の背景まで解説される。つまり,実臨床において必要なことが盛り込まれているのである。ただし,優れた本を自分の物とするためには,何回も読み込むことが重要である。2回目には1回目に見えなかった世界が,3回目には2回目に見えなかった世界が見えてくる。
これまで評者はレジデントに,「『感染症レジデントマニュアル』(藤本卓司先生著)を押さえれば,一般臨床医は十分やでー」と指導してきた。今後,評者は「『人工呼吸管理レジデントマニュアル』を押さえれば,他のたいていの医師を凌駕できることは間違いないでー。ただし気合を入れて何回も読んでやー」と説くこととなるのである。
人工呼吸管理のベッドサイドで必ず役に立つマニュアル
書評者: 喜舎場 朝雄 (沖縄県立中部病院呼吸器内科部長)
このほど,東京ベイ・浦安市川医療センターの則末泰博先生の編集で若手医師向けの人工呼吸管理レジデントマニュアルが発刊された。
本書は裏表紙のMOVESで始まる人工呼吸管理の語呂合わせで読者の肩の力を抜かせて本文へのスムーズな誘いが展開されている。序文に記されているように人工呼吸の導入を考えるに当たって必須の判断や知識のエッセンスの理解が大切である。本書は19章から構成され,実際の挿管方法,代表的な疾患別の具体的な人工呼吸器の設定方法,管理中の鎮静,アラームとトラブルシューティング,合併症,最終章では経肺圧の意義と実際の測定にも触れている。
本書で一貫していることは若手医師にやや苦手意識のある人工呼吸器の設定をより具体的にきめ細かく平易な言葉で記述され,設定の生理学的な意義と影響をわかりやすく書いていることである。また,視覚にしっかりと訴えるために実際のモニターや機器の写真や図をふんだんに用いることで読者にあたかも現場にいるような臨場感を感じてもらいながら患者さんと人工呼吸器が奏でるシーンが想起できるような構成になっている。
実際の機器の写真を鮮明にかつ数字なども明瞭に示し従来のマニュアルには見られない実際の現場のニーズに応える内容になっている。各章でポイントになることを箇条書きで明確に伝えようという筆者らの意図が随所に伺える。
若手医師が最もスリルを感じ,医師の醍醐味の手技の一つである挿管の章でも一つひとつのステップを丁寧に図示しながら安全にそして正確に手技を完遂するための道しるべをきちんと提示している。
個々の表にも読者への配慮が垣間見ることができ,第10章の病態生理に基づいた低酸素血症の鑑別表はそれぞれの疾患での人工呼吸器の役割と抜管の目安を病態生理を意識して考えるのに極めて有用である。
第16章の低酸素アラームへの対応のアルゴリズムも確認事項別に具体的に記載されていて,ベッドサイドで観察する看護師をはじめとする全ての医療従事者に,大変理解が進む図になっている。
13のコラムは日頃,なかなか理解し難いまたは質問し難い項目をさりげなく取り上げ,優しく解説している。
このように本マニュアルは白衣のポケットサイズで軽くいつでも身につける携帯性に優れ内容も多岐にわたるが読者に優しく語りかける構成で統一されており,大変見やすいマニュアルになっている。本書は主な対象とする若手医師,集中医療に携わる看護師や臨床工学技士のみならず,われわれのようなキャリアを積んだ専門医も手に取ることで人工呼吸管理のベッドサイドでの応用に必ず役に立つマニュアルであると自信を持って薦めるものである。
なんとすっきり!!!
書評者: 北野 夕佳 (聖マリアンナ医大横浜市西部病院 救命救急センター)
「ノリスエ先生,ちょっと教えてもらいたいんですけど!」
秘密をバラすと,本書ご編集の則末泰博先生は私の集中治療の家庭教師です。しかも月謝なし。写真は,私が難渋した人工呼吸器の設定調整過程を動画に撮っておいて,自分の行った臨床の論理が合っていたのかを振り返りとして聞きに行った時のものです註)。しかもこの時だけではなく,「コソっと相談」は何回もあります。大感謝。
今回,東京ベイ・浦安市川医療センター集中治療部の則末組,片岡惇先生と鍋島正慶先生の経験と知識を詰め込んだ『人工呼吸管理レジデントマニュアル』が刊行されました。書評を依頼されたことが光栄で,文字通り最初から最後まで読ませていただきました。
感想:
・究極に知識のある集中治療医集団だからこそ書ける,究極に簡潔化された一般論を凝縮
・イラストが多用され,極めてわかりやすい
・実務が回せることを重視したマニュアル
・病態生理に基づいた論理的な記載
・何度でもここに戻ってくるべき一生モノの本
・臨床家だからこそ書ける臨床パールが満載
人工呼吸管理については,こだわりのある先生方はたくさんおられると思います。だからこそ,私のような集中治療の非専門医にとっては,どこまでが「患者利益のために外してはいけないエビデンスのある一般論」であって,どこからが「流派によるこだわりポイント」なのかが混沌としてきます。しかし,この書籍を読めば,それらの悩みが全て解決します。これだけコンパクトにもかかわらず,記載の正確さ,引用文献の質の高さは圧倒的です。むしろ,簡潔にコンパクトに,それでいて必要十分な一義的で明確な記載にそぎ落とすことにかなりの努力をされたのだろうと拝察します。多忙な読者への愛情ですね。
この努力の結晶の書籍を,日本全国で活用していけることは素晴らしいことだと思います。再度,あらためて,このような書籍を世に出してくださったことに感謝。
註)ARDSの症例。超重症というわけではなかったのですが,A/C(PCV)にすると補助呼吸筋も使って,写真のように人工呼吸器に非同調,鎮痛・鎮静薬や人工呼吸器設定を調整してみても見た目が苦しそうな呼吸が続きます。SpontにしてEsens 1%にするとTV9 mL/kgくらい入ってしまうものの,とても気持ちよさそうに呼吸され,レスピのグラフィックスもよくなります。私の判断として,鎮静をさらに深くしたり筋弛緩をかけたりして「レスピの見た目をよくする」よりも,後者のSpontの状態でこの患者さんにはそれほど経肺圧はかかっていないはずと判断して,管理しました。結果的に患者さんは改善され抜管できましたが,次からも同じ思考過程で良いのか100%定かではなく,則末先生に聞きに行ったという次第です。症例振り返りのノリスエ塾の内容,気になりますか? 本書の第15章ARDS,第18章非同調,第19章食道内圧を読めば,わかります。
書評者: 小尾口 邦彦 (市立大津市民病院救急診療科・集中治療部 診療部長)
数年前,某出版社担当者と評者の会話。
担当者:若手医師を対象とし,人工呼吸を網羅しかつシンプルでポケットに入るサイズのテキストを書いてくださいよ~!!
評者の心の中:ずいぶん,注文が多いな。「ポケットに入る」ということは,例え話を使った説明は長すぎて使えないし,指導医と研修医の会話形式も使えないし,図が多いとスペースを取るし……。そもそも人工呼吸の一般論だけでなく新しい話を採り入れたいところだけれど,そうするとページ数がいくらあっても足りないし……。
怠惰な評者は早々と白旗を上げた。
初期研修医向けマニュアルとレジデント向けマニュアルの間で,「求められるもの」の違いは何であろうか(本書評では後期研修医〔専攻医〕をレジデントとする)。評者が考えるに,研修医マニュアルはできる限りシンプルであるべきだ。ついつい「あれも,これも」と盛り込みたくなるが,初学者には知識の混乱を招くノイズとなりがちである。極論を言えば,100回のうち95回正しいのであれば,「これがすべて正しい!!」と言い切ることも時に必要である。あくまでも,極論ですよ。王道の知識を盛り込むことが重要であり,木で例えるなら,「幹をしっかり太く」しなければならない。
一方,レジデントマニュアルに求められるものはおそらく異なる。ある程度,知識や経験があることを前提とし,臨床で出会うリアルな問題に対応できなければならない。読者は重要な基礎的事項にまだまだもろい面があり,これらはしっかり押さえたい。新しい知識も,これから広く受け入れられる可能性があるものなら盛り込みたい。木で例えるなら,「幹を太く育てながら,豊かな枝も茂らせたい」のである。
評者も相当お世話になった医学書院の「レジデントマニュアル」シリーズに,このたび「人工呼吸管理」が加わった。少し人工呼吸管理に携われば,さまざまな疑問が涌いてくる。例えば,人工呼吸中患者に吸入気管支拡張薬を投与したい時,回路にスペーサーを挟まなければならない。人工呼吸回路ではロスが出るため,通常使用量の数倍投与することになるが,意外にもそれに触れられている成書はほぼない。本書には吸入気管支拡張薬の投与法まで解説される。例えば,人工呼吸管理において患者自発呼吸との非同調に悩まされることは多いが,やはり意外にも解説されることは少ない。本書では,さまざまな非同調の背景まで解説される。つまり,実臨床において必要なことが盛り込まれているのである。ただし,優れた本を自分の物とするためには,何回も読み込むことが重要である。2回目には1回目に見えなかった世界が,3回目には2回目に見えなかった世界が見えてくる。
これまで評者はレジデントに,「『感染症レジデントマニュアル』(藤本卓司先生著)を押さえれば,一般臨床医は十分やでー」と指導してきた。今後,評者は「『人工呼吸管理レジデントマニュアル』を押さえれば,他のたいていの医師を凌駕できることは間違いないでー。ただし気合を入れて何回も読んでやー」と説くこととなるのである。
人工呼吸管理のベッドサイドで必ず役に立つマニュアル
書評者: 喜舎場 朝雄 (沖縄県立中部病院呼吸器内科部長)
このほど,東京ベイ・浦安市川医療センターの則末泰博先生の編集で若手医師向けの人工呼吸管理レジデントマニュアルが発刊された。
本書は裏表紙のMOVESで始まる人工呼吸管理の語呂合わせで読者の肩の力を抜かせて本文へのスムーズな誘いが展開されている。序文に記されているように人工呼吸の導入を考えるに当たって必須の判断や知識のエッセンスの理解が大切である。本書は19章から構成され,実際の挿管方法,代表的な疾患別の具体的な人工呼吸器の設定方法,管理中の鎮静,アラームとトラブルシューティング,合併症,最終章では経肺圧の意義と実際の測定にも触れている。
本書で一貫していることは若手医師にやや苦手意識のある人工呼吸器の設定をより具体的にきめ細かく平易な言葉で記述され,設定の生理学的な意義と影響をわかりやすく書いていることである。また,視覚にしっかりと訴えるために実際のモニターや機器の写真や図をふんだんに用いることで読者にあたかも現場にいるような臨場感を感じてもらいながら患者さんと人工呼吸器が奏でるシーンが想起できるような構成になっている。
実際の機器の写真を鮮明にかつ数字なども明瞭に示し従来のマニュアルには見られない実際の現場のニーズに応える内容になっている。各章でポイントになることを箇条書きで明確に伝えようという筆者らの意図が随所に伺える。
若手医師が最もスリルを感じ,医師の醍醐味の手技の一つである挿管の章でも一つひとつのステップを丁寧に図示しながら安全にそして正確に手技を完遂するための道しるべをきちんと提示している。
個々の表にも読者への配慮が垣間見ることができ,第10章の病態生理に基づいた低酸素血症の鑑別表はそれぞれの疾患での人工呼吸器の役割と抜管の目安を病態生理を意識して考えるのに極めて有用である。
第16章の低酸素アラームへの対応のアルゴリズムも確認事項別に具体的に記載されていて,ベッドサイドで観察する看護師をはじめとする全ての医療従事者に,大変理解が進む図になっている。
13のコラムは日頃,なかなか理解し難いまたは質問し難い項目をさりげなく取り上げ,優しく解説している。
このように本マニュアルは白衣のポケットサイズで軽くいつでも身につける携帯性に優れ内容も多岐にわたるが読者に優しく語りかける構成で統一されており,大変見やすいマニュアルになっている。本書は主な対象とする若手医師,集中医療に携わる看護師や臨床工学技士のみならず,われわれのようなキャリアを積んだ専門医も手に取ることで人工呼吸管理のベッドサイドでの応用に必ず役に立つマニュアルであると自信を持って薦めるものである。
なんとすっきり!!!
書評者: 北野 夕佳 (聖マリアンナ医大横浜市西部病院 救命救急センター)
「ノリスエ先生,ちょっと教えてもらいたいんですけど!」
秘密をバラすと,本書ご編集の則末泰博先生は私の集中治療の家庭教師です。しかも月謝なし。写真は,私が難渋した人工呼吸器の設定調整過程を動画に撮っておいて,自分の行った臨床の論理が合っていたのかを振り返りとして聞きに行った時のものです註)。しかもこの時だけではなく,「コソっと相談」は何回もあります。大感謝。
今回,東京ベイ・浦安市川医療センター集中治療部の則末組,片岡惇先生と鍋島正慶先生の経験と知識を詰め込んだ『人工呼吸管理レジデントマニュアル』が刊行されました。書評を依頼されたことが光栄で,文字通り最初から最後まで読ませていただきました。
感想:
・究極に知識のある集中治療医集団だからこそ書ける,究極に簡潔化された一般論を凝縮
・イラストが多用され,極めてわかりやすい
・実務が回せることを重視したマニュアル
・病態生理に基づいた論理的な記載
・何度でもここに戻ってくるべき一生モノの本
・臨床家だからこそ書ける臨床パールが満載
人工呼吸管理については,こだわりのある先生方はたくさんおられると思います。だからこそ,私のような集中治療の非専門医にとっては,どこまでが「患者利益のために外してはいけないエビデンスのある一般論」であって,どこからが「流派によるこだわりポイント」なのかが混沌としてきます。しかし,この書籍を読めば,それらの悩みが全て解決します。これだけコンパクトにもかかわらず,記載の正確さ,引用文献の質の高さは圧倒的です。むしろ,簡潔にコンパクトに,それでいて必要十分な一義的で明確な記載にそぎ落とすことにかなりの努力をされたのだろうと拝察します。多忙な読者への愛情ですね。
この努力の結晶の書籍を,日本全国で活用していけることは素晴らしいことだと思います。再度,あらためて,このような書籍を世に出してくださったことに感謝。
註)ARDSの症例。超重症というわけではなかったのですが,A/C(PCV)にすると補助呼吸筋も使って,写真のように人工呼吸器に非同調,鎮痛・鎮静薬や人工呼吸器設定を調整してみても見た目が苦しそうな呼吸が続きます。SpontにしてEsens 1%にするとTV9 mL/kgくらい入ってしまうものの,とても気持ちよさそうに呼吸され,レスピのグラフィックスもよくなります。私の判断として,鎮静をさらに深くしたり筋弛緩をかけたりして「レスピの見た目をよくする」よりも,後者のSpontの状態でこの患者さんにはそれほど経肺圧はかかっていないはずと判断して,管理しました。結果的に患者さんは改善され抜管できましたが,次からも同じ思考過程で良いのか100%定かではなく,則末先生に聞きに行ったという次第です。症例振り返りのノリスエ塾の内容,気になりますか? 本書の第15章ARDS,第18章非同調,第19章食道内圧を読めば,わかります。
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。