シミュレーション教育の効果を高める
ファシリテーター Skills & Tips
教育の効果を高めたい! これからの看護教育を担うすべての指導者必読の1冊
もっと見る
主体的に学ぶ人材を育成するには——準備段階から振り返り(シナリオ作成~デブリーフィング)まで、年間300以上のシミュレーションを行う著者による指導者のためのスキルとコツが満載。アクティブラーニングに関するキーワードは、実際の活用法のみならず知識としてコラムで解説。「つい、誘導してしまう」「思うように動いてくれない」というお悩みに答えてくれる1冊。
●本書の著者お二人の対談が掲載されています!
京都科学WEBマガジン SimSim
1)シミュレーション教育 現場からのホンネ【前編】どのように「場」をつくるか?
2)シミュレーション教育 現場からのホンネ【後編】「やってみる」「失敗した」を積み重ねて見出したコツ
京都科学WEBマガジン SimSim
1)シミュレーション教育 現場からのホンネ【前編】どのように「場」をつくるか?
2)シミュレーション教育 現場からのホンネ【後編】「やってみる」「失敗した」を積み重ねて見出したコツ
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
はじめに
シミュレーション教育は「人」が教材
この本を手にとっていただき、ありがとうございます。
最近は、なんでもシミュレーションだなと感じることも多いのではないでしょうか。シミュレーション教育を新しい教育手法としてとらえている方もいると思いますが、実は看護の世界では以前からシミュレーション教育を取り入れ人材育成を行っていたのです。
現代のシミュレーション教育の過去との大きな違いは、教授システム学や教育学、心理学などさまざまな他領域の学問を積極的に取り入れ、理論やモデルに基づいた教授設計がなされている点です。また、技術の進歩に伴いシミュレーターも高度化し、人工知能の搭載で会話ができるものまで登場しました。さらには、医療安全への意識が高まる中、各施設においてシミュレーションセンターが開設され、よりリアルな環境でのトレーニングが可能となりました。
海外では、シミュレーションで急変対応トレーニングを行っている診療科を対象に、医療過誤保険の掛金を減額する保険会社もあり、その地位が確立してきています。
ただし、あらゆるハイレベルな環境が整っていたとしても、それを使いこなす指導者が育っていなければ、十分な教育効果を引き出すことは難しいのです。そこで、今注目されているのが「ファシリテーター」であり「ファシリテーション」なのです。
ファシリテーターとは教師でも指導者でもなく、「集団による知的相互作用を促進させるようプロセスを管理し、チームの成果が最大になるよう中立的立場で支援する人」のことをいいます。
当然、「教えてやる」という上から目線はNGです。ファシリテーターはあくまで黒子であり、そこに関わる一人ひとりが自分で考え、学び、気づき、想像する“きっかけ”を投げかけることによって、学習者が主体的に取り組めるよう環境を調整していきます。最終的に学習者が「自分たちで成し遂げた!」と思えることこそが、シミュレーション教育における大成功なのです。
ファシリテーションという概念を、日本に広めた中野民夫氏は、ファシリテーターを「愛をもって見守る人」と表現しています*1。参加者(学習者)に対し愛情、つまりは関心をもちつつ、関わるべきときには関わり、待つべきときには待つという姿勢が大切なのです。
それでは、その「見守る愛」を発揮するために、教育におけるファシリテーションには具体的にどのようなスキルが必要なのでしょうか。いわゆる、一般的な教育のファシリテーションスキルとしては、大きく3つ、(1)場づくり(関係構築力)、(2)“きく”スキル(傾聴力と発問力)、(3)デザインする力(構成力)が挙げられています*2。
本書では、これらファシリテーションスキルを、「看護教育におけるシミュレーション」のファシリテーターに求められるスキルとして焦点化し、私自身の実践に基づいてまとめました。もちろん、本書の内容も、シミュレーションだけでなく日常の指導場面や会議、授業、または旅行や子育てなど日常生活の中でも広く活用できるスキルになっています。
シミュレーションも教育も、「人」こそ宝であり、あなた自身が貴重な教材です。ぜひ、ファシリテーターとしてスキルアップしていきましょう。
2017年2月
内藤知佐子
シミュレーション教育は「人」が教材
この本を手にとっていただき、ありがとうございます。
最近は、なんでもシミュレーションだなと感じることも多いのではないでしょうか。シミュレーション教育を新しい教育手法としてとらえている方もいると思いますが、実は看護の世界では以前からシミュレーション教育を取り入れ人材育成を行っていたのです。
現代のシミュレーション教育の過去との大きな違いは、教授システム学や教育学、心理学などさまざまな他領域の学問を積極的に取り入れ、理論やモデルに基づいた教授設計がなされている点です。また、技術の進歩に伴いシミュレーターも高度化し、人工知能の搭載で会話ができるものまで登場しました。さらには、医療安全への意識が高まる中、各施設においてシミュレーションセンターが開設され、よりリアルな環境でのトレーニングが可能となりました。
海外では、シミュレーションで急変対応トレーニングを行っている診療科を対象に、医療過誤保険の掛金を減額する保険会社もあり、その地位が確立してきています。
ただし、あらゆるハイレベルな環境が整っていたとしても、それを使いこなす指導者が育っていなければ、十分な教育効果を引き出すことは難しいのです。そこで、今注目されているのが「ファシリテーター」であり「ファシリテーション」なのです。
ファシリテーターとは教師でも指導者でもなく、「集団による知的相互作用を促進させるようプロセスを管理し、チームの成果が最大になるよう中立的立場で支援する人」のことをいいます。
当然、「教えてやる」という上から目線はNGです。ファシリテーターはあくまで黒子であり、そこに関わる一人ひとりが自分で考え、学び、気づき、想像する“きっかけ”を投げかけることによって、学習者が主体的に取り組めるよう環境を調整していきます。最終的に学習者が「自分たちで成し遂げた!」と思えることこそが、シミュレーション教育における大成功なのです。
ファシリテーションという概念を、日本に広めた中野民夫氏は、ファシリテーターを「愛をもって見守る人」と表現しています*1。参加者(学習者)に対し愛情、つまりは関心をもちつつ、関わるべきときには関わり、待つべきときには待つという姿勢が大切なのです。
それでは、その「見守る愛」を発揮するために、教育におけるファシリテーションには具体的にどのようなスキルが必要なのでしょうか。いわゆる、一般的な教育のファシリテーションスキルとしては、大きく3つ、(1)場づくり(関係構築力)、(2)“きく”スキル(傾聴力と発問力)、(3)デザインする力(構成力)が挙げられています*2。
本書では、これらファシリテーションスキルを、「看護教育におけるシミュレーション」のファシリテーターに求められるスキルとして焦点化し、私自身の実践に基づいてまとめました。もちろん、本書の内容も、シミュレーションだけでなく日常の指導場面や会議、授業、または旅行や子育てなど日常生活の中でも広く活用できるスキルになっています。
シミュレーションも教育も、「人」こそ宝であり、あなた自身が貴重な教材です。ぜひ、ファシリテーターとしてスキルアップしていきましょう。
2017年2月
内藤知佐子
*1 中野民夫:ファシリテーション革命,岩波書店,2003
*2 石川一喜,小貫仁編:教育ファシリテーターになろう!——グローバルな学びをめざす参加型授業,弘文堂,2015
目次
開く
はじめに…シミュレーション教育は「人」が教材
Prologue 学習者の主体性を引き出す指導者像
1 今、なぜ看護教育に「ファシリテーターマインド」が必要なのか
2 指導者の樹——やっぱり根っこが大事
3 ファシリテーター型指導者になるための7つの心構え
4 知っておきたい成人教育の5つのコツ
本書の構造と読み方
Chapter 1 シナリオ作成
シナリオ作成の手順とスキル活用マップ
シナリオサンプル
シナリオ作成に必要なスキル
Skill 1 学習者のニーズとレディネスを的確にとらえるスキル
-1 インシデントレポートを調査する
-2 具体的なアンケートをとる
-3 「現場が何を求めているか」を調査する
Skill 2 ニーズにフィットしたシナリオを作り上げるスキル
-1 教材を見直す
-2 既存シナリオを使いこなす
-3 目標の「動詞表現」にこだわる
-4 スモールステップを抽出する
-5 学習環境をコーディネートする
-6 グループサイズを考える
-7 空間デザインを考える
Skill 3 振り返り(デブリーフィング)の準備をするスキル
-1 デブリーフィングガイド作成のポイントを押さえる
-2 構造的な枠組みを活用する
-3 失敗例を知っておく
-4 「問い」の切り口を具体的にしておく
-5 評価方法を選択する
-6 学習者目線でテストランしてみる
Skill 4 ファシリテーター側でビジョンを共有するスキル
-1 指導者間でゴールを共有しておく
-2 協力的ではない人の協力を引き出す
Chapter 2 ブリーフィング
ブリーフィングの手順とスキル活用マップ
ブリーフィングに必要なスキル
Skill 5 積極的な参加を促すスキル
-1 安心・安全な学習の場をつくる
-2 チームで学ぶ雰囲気をつくる
-3 体験型学習のための姿勢を整える
-4 消極的な学習者をフォローする
Skill 6 緊張をほぐす・集中を高めるスキル
-1 テーマにつながるアイスブレイクを選択する
-2 学習者の状況でアイスブレイクを使い分ける
-3 チームビルディングを意識する
-4 学習の意義とグランドルールを伝える
-5 学習環境の説明を十分に行う
-6 シミュレーターや模擬患者に触れてもらう
Skill 7 関心を引き出すスキル
-1 学習者に「ワクワク」を起こす
-2 目標を意識しやすくする
-3 目標を復唱してもらう
Skill 8 心理的負担を和らげるスキル
-1 トップバッターを適切に指名する
-2 「作戦会議」をしてもらう
Skill 9 学習の場の価値を高めるスキル
-1 学習者に対する期待を示す
-2 「振り返り」を意識させる
Chapter 3 セッション
セッションの手順とスキル活用マップ
セッションに必要なスキル
Skill 10 集中できる学習環境を維持するスキル
-1 スムーズにストーリーを始める
-2 タイミングよくキューイングを行う
-3 威圧感を与えない
-4 説明の抜けをフォローする
-5 想定外のアドリブに対応する
-6 積極的すぎる学習者をうまくフォローする
Skill 11 学習者の動きを読む・促進するスキル
-1 動きが止まったら「促進」する
-2 「待つ時間」を大切にする
-3 模擬患者の演技で促進する
-4 セッションを止めるべきときを見極める
Skill 12 振り返り(デブリーフィング)につなげるスキル
-1 学習者の「感覚」を引き出す声掛けをする
-2 ビデオ/メモを活用する
Chapter 4 デブリーフィング
デブリーフィングの手順とスキル活用マップ
デブリーフィングに必要なスキル
Skill 13 学習姿勢を切り替えるスキル
-1 感情を吐き出してもらう
-2 目標を再確認する
Skill 14 行動や思考を「見える化」するスキル
-1 枠組み(Plus/Delta、GAS法)を使う
-2 整理するツール(ホワイトボード等)を活用する
-3 ビデオ映像は部分的に活用する
-4 図解のツールで整理する
-5 問題解決のプロセスを段階的に振り返る
Skill 15 問いを投げかけるスキル
-1 「構造」と「軸」を意識して問いを展開する
-2 発言の多様性を受け入れる
-3 認識していない思考に焦点を当てる
-4 感情に焦点を当てる
-5 生活体験を土台に問いかける
Skill 16 「場の力」を利用するスキル
-1 協同学習の技法で全員を巻き込む
-2 承認欲求を満たす声掛けをする
-3 発言する学習者の様子を見極める
Skill 17 看護実践につなぐスキル
-1 行動レベルで確認する
-2 「間違い」はもち帰らせない
-3 看護のプロは何をするのかを伝える
-4 成功体験として研修を締めくくる
-5 事後課題を投げかける
Epilogue ファシリテーターの質向上のために
1 ファシリテーターのガイドラインと評価ツールの紹介
2 ファシリテーター自身の振り返りで大事にしたいこと
協力者一覧
謝辞
付録 アイスブレイク集
索引
Prologue 学習者の主体性を引き出す指導者像
1 今、なぜ看護教育に「ファシリテーターマインド」が必要なのか
2 指導者の樹——やっぱり根っこが大事
3 ファシリテーター型指導者になるための7つの心構え
4 知っておきたい成人教育の5つのコツ
本書の構造と読み方
Chapter 1 シナリオ作成
シナリオ作成の手順とスキル活用マップ
シナリオサンプル
シナリオ作成に必要なスキル
Skill 1 学習者のニーズとレディネスを的確にとらえるスキル
-1 インシデントレポートを調査する
-2 具体的なアンケートをとる
-3 「現場が何を求めているか」を調査する
Skill 2 ニーズにフィットしたシナリオを作り上げるスキル
-1 教材を見直す
-2 既存シナリオを使いこなす
-3 目標の「動詞表現」にこだわる
-4 スモールステップを抽出する
-5 学習環境をコーディネートする
-6 グループサイズを考える
-7 空間デザインを考える
Skill 3 振り返り(デブリーフィング)の準備をするスキル
-1 デブリーフィングガイド作成のポイントを押さえる
-2 構造的な枠組みを活用する
-3 失敗例を知っておく
-4 「問い」の切り口を具体的にしておく
-5 評価方法を選択する
-6 学習者目線でテストランしてみる
Skill 4 ファシリテーター側でビジョンを共有するスキル
-1 指導者間でゴールを共有しておく
-2 協力的ではない人の協力を引き出す
Chapter 2 ブリーフィング
ブリーフィングの手順とスキル活用マップ
ブリーフィングに必要なスキル
Skill 5 積極的な参加を促すスキル
-1 安心・安全な学習の場をつくる
-2 チームで学ぶ雰囲気をつくる
-3 体験型学習のための姿勢を整える
-4 消極的な学習者をフォローする
Skill 6 緊張をほぐす・集中を高めるスキル
-1 テーマにつながるアイスブレイクを選択する
-2 学習者の状況でアイスブレイクを使い分ける
-3 チームビルディングを意識する
-4 学習の意義とグランドルールを伝える
-5 学習環境の説明を十分に行う
-6 シミュレーターや模擬患者に触れてもらう
Skill 7 関心を引き出すスキル
-1 学習者に「ワクワク」を起こす
-2 目標を意識しやすくする
-3 目標を復唱してもらう
Skill 8 心理的負担を和らげるスキル
-1 トップバッターを適切に指名する
-2 「作戦会議」をしてもらう
Skill 9 学習の場の価値を高めるスキル
-1 学習者に対する期待を示す
-2 「振り返り」を意識させる
Chapter 3 セッション
セッションの手順とスキル活用マップ
セッションに必要なスキル
Skill 10 集中できる学習環境を維持するスキル
-1 スムーズにストーリーを始める
-2 タイミングよくキューイングを行う
-3 威圧感を与えない
-4 説明の抜けをフォローする
-5 想定外のアドリブに対応する
-6 積極的すぎる学習者をうまくフォローする
Skill 11 学習者の動きを読む・促進するスキル
-1 動きが止まったら「促進」する
-2 「待つ時間」を大切にする
-3 模擬患者の演技で促進する
-4 セッションを止めるべきときを見極める
Skill 12 振り返り(デブリーフィング)につなげるスキル
-1 学習者の「感覚」を引き出す声掛けをする
-2 ビデオ/メモを活用する
Chapter 4 デブリーフィング
デブリーフィングの手順とスキル活用マップ
デブリーフィングに必要なスキル
Skill 13 学習姿勢を切り替えるスキル
-1 感情を吐き出してもらう
-2 目標を再確認する
Skill 14 行動や思考を「見える化」するスキル
-1 枠組み(Plus/Delta、GAS法)を使う
-2 整理するツール(ホワイトボード等)を活用する
-3 ビデオ映像は部分的に活用する
-4 図解のツールで整理する
-5 問題解決のプロセスを段階的に振り返る
Skill 15 問いを投げかけるスキル
-1 「構造」と「軸」を意識して問いを展開する
-2 発言の多様性を受け入れる
-3 認識していない思考に焦点を当てる
-4 感情に焦点を当てる
-5 生活体験を土台に問いかける
Skill 16 「場の力」を利用するスキル
-1 協同学習の技法で全員を巻き込む
-2 承認欲求を満たす声掛けをする
-3 発言する学習者の様子を見極める
Skill 17 看護実践につなぐスキル
-1 行動レベルで確認する
-2 「間違い」はもち帰らせない
-3 看護のプロは何をするのかを伝える
-4 成功体験として研修を締めくくる
-5 事後課題を投げかける
Epilogue ファシリテーターの質向上のために
1 ファシリテーターのガイドラインと評価ツールの紹介
2 ファシリテーター自身の振り返りで大事にしたいこと
協力者一覧
謝辞
付録 アイスブレイク集
索引
書評
開く
あらゆるファシリテーションの場で指導者に役立つ一冊
書評者: 阿部 幸恵 (東京医大教授・基礎看護学/シミュレーションセンター長)
評者が著者内藤氏と出会ってから早10年が過ぎる。シミュレーション教育の指導に関していえば,同志のようなものだと感じている。そんな評者が本書を一読して感じたことは,シミュレーション教育だけでなく,あらゆるファシリテーションの場で指導者に役立つ一冊となっているということだ。
それは,prologue「学習者の主体性を引き出す指導者像」に凝縮されている。そこには,Skills & TipsといったHow toを学ぶのみにとどまるのではなく,指導者マインドという指導者としての「根っこ」を指導者各々がしっかりと張る努力を怠らないこと,指導者は常に黒子であり,自身の教育観や看護観を「愛」をもって周囲に伝える努力をすることなど,本書をひもとく指導者らに真に伝えたい内藤氏のメッセージが込められている。本書は,どこからでも読み解くことができるが,ぜひ,このprologueだけは最初に読むことを薦めたい。自身の指導者観を振り返り,深める内容となっている。
次に本書には,シミュレーション教育の指導に必要となるSkills & Tipsが散りばめられているのだが,その全てが,内藤氏自身の経験に基づいているというところが素晴らしい。ともにシミュレーション教育を行ってきた評者は,本書を内藤氏のポートフォリオ集と受け止めたい。
目次を開くと,シミュレーション教育の準備,シミュレーション当日の各セッション(ブリーフィング,シミュレーション,デブリーフィング)で必要となるスキルを17に整理して提示してある。目次を見るだけで初学者は,シミュレーション教育の各セッションでどのようなスキルが必要なのかを理解することができる。また,経験ある指導者にとっては,自分のスキルを振り返り,さらなるスキルを身につけるためのチェックリストのようにも使える。さらに,巻末の「困った!場面別索引」と合わせて使えば,指導者が指導で困ったときに,すぐに解決へのヒントが書かれているページを開くことができる。即効薬的書籍である。
内藤氏の相手を忖度する細やかさを感じるのは,32のTipsである。自身の経験に基づいたSkillsを提示しただけでなく,読者がより実践できるようにと17のSkillsに関連させたコツ(Tips)を付け加えたところである。そして,もう一人の著者である伊藤氏の「Ito teacher’s Lecture」が読者の学問的ニーズに応えるエッセンスとなっている。きっと内藤氏自身の経験の中で「これって何?」と教育の専門用語を調べてきた経験から,読者のツボに効くLectureを取り入れることになったのだろう。49の「Ito teacher’s Lecture」のみを読み連ねても十分に知識欲が満たされるものとなっている。
本書は,シミュレーション教育の指導についての入門書として,困ったときの指南書として,指導者を育成する際の参考書として,薦めたい一冊である。
看護師のモチベーションアップ,看護の質向上に役立つ一冊
書評者: 笠松 由利 (兵庫医大病院看護部教育担当次長)
本書は,看護基礎教育だけでなく,看護師現任教育の場でも活発に行われているシミュレーション教育の中で最も重要な「シミュレーションファシリテーター育成」に焦点を当てた,著者の実践を基に書かれたものである。シミュレーションファシリテーターに興味を持ち,その役割の重要性は理解していても,具体的にどのようなスキルが必要なのかがわからない,あるいはスキルをうまく使いこなせず,自信を持って実践できていない看護師は多いのではないだろうか。本書はこれらのことを一気に解決してくれる。
シミュレーションに必須のChapter 1「シナリオ作成」に始まり,シミュレーション当日のChapter 2「ブリーフィング」,Chapter 3「セッション」,Chapter 4「デブリーフィング」でシミュレーション教育に必要なスキルについて,具体的にわかりやすく書かれている。
初学者は“既存シナリオを使いこなす”ことで,準備段階での疲弊を回避できるだろう。また,デブリーフィングガイド作成段階での失敗事例が紹介されており,ついやってしまいがちな言動にハッとし,日頃の自分自身を振り返るよい機会となるだろう。さらに“声かけの仕方”や“良い例・悪い例”など,明日から使えるスキルが満載である。“成長には振り返りが大切”との考えで,ファシリテーターとともに研修での振り返りを欠かさない著者だからこその一冊である。
他方,本書に散りばめられた多くの理論が魅力である。組織行動学,教育学,心理学など,さまざまな理論を活用し,スキルの根拠を教えてくれる。理論を苦手とする臨床の看護師にもわかりやすく,「へえ~,そうなんだ!」と思えるものばかりである。教える立場にある看護師にとっては,自分の実践がさまざまな理論に基づいていることを知り,スキルの偉大さに驚くとともに,それを使いこなせたときの自身の成長を誇りに思うに違いない。さらにこれらの理論は,ファシリテーターだけではなく,成人学習者と向き合う組織の管理者にも役立つであろう。
看護師は教育者ではないため,他者への教え方を学んでいないことが,職場の人間関係や中堅看護師の疲弊の要因にもなっている。ぜひとも組織全体で教え方を学び,Skill 17の「看護実践につなぐスキル」を身につけていただきたい。中堅看護師のモチベーションアップや,看護の質向上に本書は大いに貢献するだろう。
会議,面接,研修など,あらゆる場面で活用できるファシリテーションスキル。今や看護職にとっても必須のスキルである。まずは身近な後輩育成に活用できれば,その効果はいずれ教育の枠を超え,看護師をさらなる成長へ導くに違いない。
肩肘を張らずにシミュレーション教育について学べる一冊
書評者: 武田 聡 (慈恵医大主任教授・救急医学)
今の医療教育は大きな変革期を迎えており,これまでの座学による受動的な教育から,自ら学びお互いに学び合う,より主体的な教育への移行が急がれています。その中で以前から注目を集めているのが“シミュレーション教育”です。
“シミュレーション教育”というと,高額なシミュレーター(マネキン)や素晴らしいシミュレーションセンターに注目が集まりがちですが,シミュレーターやシミュレーションセンターだけがあっても質の高い教育は提供できないのは皆さんもお気づきの通りで,実は一番大切なのは指導するファシリテーターの技量です。シミュレーターがなくても,シミュレーションセンターがなくても,優れたファシリテーターさえいれば,教育の効果を高めることができるはずです。
本書は“シミュレーション教育”の現場に即した進め方で記載されており,また本来ですと難しいと思われがちな教育理論“インストラクショナルデザイン”をわかりやすい言葉と表現で説明しています。
最初の「Prologue」では全体像を明示し,Chapter 1「シナリオ作成」ではシミュレーション教育のシナリオ作成に大切なポイントを解説。Chapter 2「ブリーフィング」では実際にシミュレーション教育を始める前の場の作り方を解説し,Chapter 3「セッション」では実際のシミュレーション教育でのセッションの進め方について細かいアドバイスが満載です。Chapter 4「デブリーフィング」では進め方に悩むことが多いデブリーフィングで自ら考えさせ,お互いに議論される方法について解説しています。最後の「Epilogue」では,さらなるファシリテーター技術向上のための最新の有益な情報まで紹介しており,まさに“シミュレーション教育”効果を高めるファシリテーターのための“Skills & Tips”が満載の一冊になっています。
ところどころに散りばめられた「Tips」や「Ito teacher’s Lecture」ではファシリテーターに必要なアイデアや用語の説明も充実しており,さらに本書の最後の見返しにある「困った!場面別索引」では,実際の“シミュレーション教育”の現場にこの一冊を持ち込めば,何か困ったことがあってもすぐにその解決策を探し出すことができそうです。
このように,本書は京都大学の伊藤先生と内藤先生および「内藤組」の皆さんによる本当に素晴らしい一冊に仕上がっています。本書の中にもファシリテーターとは「愛をもって見守る人」との解説(「はじめに」より)がありますが,まさに内藤組の皆さんの“愛”を感じられる一冊です。肩肘を張らずに気軽にシミュレーション教育について学べるお薦めの一冊ですので,ぜひご一読ください。
本当に知りたいマインドとスキルをわかりやすい言葉でお届け!(雑誌『看護教育』より)
書評者: 内海 桃絵 (大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)
シミュレーション教育をやってみたいけど難しそう,何から始めればいいのだろう。そんなとき,真っ先に読みたい書籍が発売された。著者は,“愛のある学びの循環”をテーマに,幅広くファシリテーターや看護職の育成を行っている内藤知佐子先生と,同じく人材育成とシミュレーション教育のエキスパートである伊藤和史先生である。
本書は,プロローグ「学習者の主体性を引き出す指導者像」から始まる。ここでは,看護教育にファシリテーターマインドが必要な理由,ファシリテーター型指導者になるための7つの心構え,成人教育の5つのコツが書かれている。本編は,4つの章に分かれており,第1章は「シナリオ作成」,第2章は「ブリーフィング」,第3章は「セッション」,そして第4章は「デブリーフィング」である。各章は,「手順とスキル活用マップ」「必要なスキル」「各スキル実践法の解説」の3部構成になっており,全体の流れを把握し,各場面に必要なスキルを確認してから,実践のための具体的な活用方法がわかる仕組みになっている。
まず,必ず読んでいただきたいのがプロローグである。ここで内藤先生は,ファシリテーターを1本の樹にたとえ,樹でいちばん大事な根にあたる部分がファシリテーターとしての心構え,幹が看護観や教育観,枝葉の部分がスキルであると述べている。根を十分に張り,幹を太くしなければせっかくのスキルも活かせない。How toばかりが大きい今にも倒れそうな樹=指導者にならないために必須となる,指導者マインドに関する内容がクイズ形式でわかりやすく解説されている。
本編の各章では,内藤先生のこれまでの実践から蓄積されたノウハウが惜しげもなく披露されている。たとえば,第4章「デブリーフィング」では,進め方として,指導者の問いかけと学習者の反応,双方のやり取りがセリフ形式で書かれており,目の前で内藤先生がシミュレーションのセッションを行っているような気持ちになる。これからシミュレーション教育に挑戦する読者が本当に知りたいことを,詳細に具体的な言葉で説明されていることは本書の大きな魅力となっている。本文のキーワードとなる教育技法や用語については,伊藤先生による解説(Ito teacher’s Lecture)があり,読者の理解を助けてくれる。過不足ない解説は本書のアクセントとなり,内容に深みを与えている。解説を拾い読みするのもおすすめである。
本書で紹介されているファシリテーターマインドとスキルは,シミュレーション教育以外のあらゆる看護教育にも共通するエッセンスであり,患者指導や学生指導,授業などにも活用できる。それだけでなく,同僚や友人,家族との人間関係をよりよくするためのヒントにもなるだろう。ぜひ,手に取っていただきたい良書である。
(『看護教育』2017年6月号掲載)
書評者: 阿部 幸恵 (東京医大教授・基礎看護学/シミュレーションセンター長)
評者が著者内藤氏と出会ってから早10年が過ぎる。シミュレーション教育の指導に関していえば,同志のようなものだと感じている。そんな評者が本書を一読して感じたことは,シミュレーション教育だけでなく,あらゆるファシリテーションの場で指導者に役立つ一冊となっているということだ。
それは,prologue「学習者の主体性を引き出す指導者像」に凝縮されている。そこには,Skills & TipsといったHow toを学ぶのみにとどまるのではなく,指導者マインドという指導者としての「根っこ」を指導者各々がしっかりと張る努力を怠らないこと,指導者は常に黒子であり,自身の教育観や看護観を「愛」をもって周囲に伝える努力をすることなど,本書をひもとく指導者らに真に伝えたい内藤氏のメッセージが込められている。本書は,どこからでも読み解くことができるが,ぜひ,このprologueだけは最初に読むことを薦めたい。自身の指導者観を振り返り,深める内容となっている。
次に本書には,シミュレーション教育の指導に必要となるSkills & Tipsが散りばめられているのだが,その全てが,内藤氏自身の経験に基づいているというところが素晴らしい。ともにシミュレーション教育を行ってきた評者は,本書を内藤氏のポートフォリオ集と受け止めたい。
目次を開くと,シミュレーション教育の準備,シミュレーション当日の各セッション(ブリーフィング,シミュレーション,デブリーフィング)で必要となるスキルを17に整理して提示してある。目次を見るだけで初学者は,シミュレーション教育の各セッションでどのようなスキルが必要なのかを理解することができる。また,経験ある指導者にとっては,自分のスキルを振り返り,さらなるスキルを身につけるためのチェックリストのようにも使える。さらに,巻末の「困った!場面別索引」と合わせて使えば,指導者が指導で困ったときに,すぐに解決へのヒントが書かれているページを開くことができる。即効薬的書籍である。
内藤氏の相手を忖度する細やかさを感じるのは,32のTipsである。自身の経験に基づいたSkillsを提示しただけでなく,読者がより実践できるようにと17のSkillsに関連させたコツ(Tips)を付け加えたところである。そして,もう一人の著者である伊藤氏の「Ito teacher’s Lecture」が読者の学問的ニーズに応えるエッセンスとなっている。きっと内藤氏自身の経験の中で「これって何?」と教育の専門用語を調べてきた経験から,読者のツボに効くLectureを取り入れることになったのだろう。49の「Ito teacher’s Lecture」のみを読み連ねても十分に知識欲が満たされるものとなっている。
本書は,シミュレーション教育の指導についての入門書として,困ったときの指南書として,指導者を育成する際の参考書として,薦めたい一冊である。
看護師のモチベーションアップ,看護の質向上に役立つ一冊
書評者: 笠松 由利 (兵庫医大病院看護部教育担当次長)
本書は,看護基礎教育だけでなく,看護師現任教育の場でも活発に行われているシミュレーション教育の中で最も重要な「シミュレーションファシリテーター育成」に焦点を当てた,著者の実践を基に書かれたものである。シミュレーションファシリテーターに興味を持ち,その役割の重要性は理解していても,具体的にどのようなスキルが必要なのかがわからない,あるいはスキルをうまく使いこなせず,自信を持って実践できていない看護師は多いのではないだろうか。本書はこれらのことを一気に解決してくれる。
シミュレーションに必須のChapter 1「シナリオ作成」に始まり,シミュレーション当日のChapter 2「ブリーフィング」,Chapter 3「セッション」,Chapter 4「デブリーフィング」でシミュレーション教育に必要なスキルについて,具体的にわかりやすく書かれている。
初学者は“既存シナリオを使いこなす”ことで,準備段階での疲弊を回避できるだろう。また,デブリーフィングガイド作成段階での失敗事例が紹介されており,ついやってしまいがちな言動にハッとし,日頃の自分自身を振り返るよい機会となるだろう。さらに“声かけの仕方”や“良い例・悪い例”など,明日から使えるスキルが満載である。“成長には振り返りが大切”との考えで,ファシリテーターとともに研修での振り返りを欠かさない著者だからこその一冊である。
他方,本書に散りばめられた多くの理論が魅力である。組織行動学,教育学,心理学など,さまざまな理論を活用し,スキルの根拠を教えてくれる。理論を苦手とする臨床の看護師にもわかりやすく,「へえ~,そうなんだ!」と思えるものばかりである。教える立場にある看護師にとっては,自分の実践がさまざまな理論に基づいていることを知り,スキルの偉大さに驚くとともに,それを使いこなせたときの自身の成長を誇りに思うに違いない。さらにこれらの理論は,ファシリテーターだけではなく,成人学習者と向き合う組織の管理者にも役立つであろう。
看護師は教育者ではないため,他者への教え方を学んでいないことが,職場の人間関係や中堅看護師の疲弊の要因にもなっている。ぜひとも組織全体で教え方を学び,Skill 17の「看護実践につなぐスキル」を身につけていただきたい。中堅看護師のモチベーションアップや,看護の質向上に本書は大いに貢献するだろう。
会議,面接,研修など,あらゆる場面で活用できるファシリテーションスキル。今や看護職にとっても必須のスキルである。まずは身近な後輩育成に活用できれば,その効果はいずれ教育の枠を超え,看護師をさらなる成長へ導くに違いない。
肩肘を張らずにシミュレーション教育について学べる一冊
書評者: 武田 聡 (慈恵医大主任教授・救急医学)
今の医療教育は大きな変革期を迎えており,これまでの座学による受動的な教育から,自ら学びお互いに学び合う,より主体的な教育への移行が急がれています。その中で以前から注目を集めているのが“シミュレーション教育”です。
“シミュレーション教育”というと,高額なシミュレーター(マネキン)や素晴らしいシミュレーションセンターに注目が集まりがちですが,シミュレーターやシミュレーションセンターだけがあっても質の高い教育は提供できないのは皆さんもお気づきの通りで,実は一番大切なのは指導するファシリテーターの技量です。シミュレーターがなくても,シミュレーションセンターがなくても,優れたファシリテーターさえいれば,教育の効果を高めることができるはずです。
本書は“シミュレーション教育”の現場に即した進め方で記載されており,また本来ですと難しいと思われがちな教育理論“インストラクショナルデザイン”をわかりやすい言葉と表現で説明しています。
最初の「Prologue」では全体像を明示し,Chapter 1「シナリオ作成」ではシミュレーション教育のシナリオ作成に大切なポイントを解説。Chapter 2「ブリーフィング」では実際にシミュレーション教育を始める前の場の作り方を解説し,Chapter 3「セッション」では実際のシミュレーション教育でのセッションの進め方について細かいアドバイスが満載です。Chapter 4「デブリーフィング」では進め方に悩むことが多いデブリーフィングで自ら考えさせ,お互いに議論される方法について解説しています。最後の「Epilogue」では,さらなるファシリテーター技術向上のための最新の有益な情報まで紹介しており,まさに“シミュレーション教育”効果を高めるファシリテーターのための“Skills & Tips”が満載の一冊になっています。
ところどころに散りばめられた「Tips」や「Ito teacher’s Lecture」ではファシリテーターに必要なアイデアや用語の説明も充実しており,さらに本書の最後の見返しにある「困った!場面別索引」では,実際の“シミュレーション教育”の現場にこの一冊を持ち込めば,何か困ったことがあってもすぐにその解決策を探し出すことができそうです。
このように,本書は京都大学の伊藤先生と内藤先生および「内藤組」の皆さんによる本当に素晴らしい一冊に仕上がっています。本書の中にもファシリテーターとは「愛をもって見守る人」との解説(「はじめに」より)がありますが,まさに内藤組の皆さんの“愛”を感じられる一冊です。肩肘を張らずに気軽にシミュレーション教育について学べるお薦めの一冊ですので,ぜひご一読ください。
本当に知りたいマインドとスキルをわかりやすい言葉でお届け!(雑誌『看護教育』より)
書評者: 内海 桃絵 (大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)
シミュレーション教育をやってみたいけど難しそう,何から始めればいいのだろう。そんなとき,真っ先に読みたい書籍が発売された。著者は,“愛のある学びの循環”をテーマに,幅広くファシリテーターや看護職の育成を行っている内藤知佐子先生と,同じく人材育成とシミュレーション教育のエキスパートである伊藤和史先生である。
本書は,プロローグ「学習者の主体性を引き出す指導者像」から始まる。ここでは,看護教育にファシリテーターマインドが必要な理由,ファシリテーター型指導者になるための7つの心構え,成人教育の5つのコツが書かれている。本編は,4つの章に分かれており,第1章は「シナリオ作成」,第2章は「ブリーフィング」,第3章は「セッション」,そして第4章は「デブリーフィング」である。各章は,「手順とスキル活用マップ」「必要なスキル」「各スキル実践法の解説」の3部構成になっており,全体の流れを把握し,各場面に必要なスキルを確認してから,実践のための具体的な活用方法がわかる仕組みになっている。
まず,必ず読んでいただきたいのがプロローグである。ここで内藤先生は,ファシリテーターを1本の樹にたとえ,樹でいちばん大事な根にあたる部分がファシリテーターとしての心構え,幹が看護観や教育観,枝葉の部分がスキルであると述べている。根を十分に張り,幹を太くしなければせっかくのスキルも活かせない。How toばかりが大きい今にも倒れそうな樹=指導者にならないために必須となる,指導者マインドに関する内容がクイズ形式でわかりやすく解説されている。
本編の各章では,内藤先生のこれまでの実践から蓄積されたノウハウが惜しげもなく披露されている。たとえば,第4章「デブリーフィング」では,進め方として,指導者の問いかけと学習者の反応,双方のやり取りがセリフ形式で書かれており,目の前で内藤先生がシミュレーションのセッションを行っているような気持ちになる。これからシミュレーション教育に挑戦する読者が本当に知りたいことを,詳細に具体的な言葉で説明されていることは本書の大きな魅力となっている。本文のキーワードとなる教育技法や用語については,伊藤先生による解説(Ito teacher’s Lecture)があり,読者の理解を助けてくれる。過不足ない解説は本書のアクセントとなり,内容に深みを与えている。解説を拾い読みするのもおすすめである。
本書で紹介されているファシリテーターマインドとスキルは,シミュレーション教育以外のあらゆる看護教育にも共通するエッセンスであり,患者指導や学生指導,授業などにも活用できる。それだけでなく,同僚や友人,家族との人間関係をよりよくするためのヒントにもなるだろう。ぜひ,手に取っていただきたい良書である。
(『看護教育』2017年6月号掲載)