知っておきたい神経眼科診療
「臨床家のための」神経眼科診療の実践書、ついに登場
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眼科診療のエキスパートを目指すための好評シリーズの1冊。難解と言われながらも避けては通れない神経眼科疾患について、近年の診療ガイドラインの整備、神経画像検査・OCTなど診断補助手段の進歩、薬物療法や手術手技の変化などを踏まえ、教科書的な知識ではなく、臨床に直結した実践的な情報を網羅。各項目に「一般眼科医へのアドバイス」を掲載し、明日からの診療にすぐに役立つ。神経眼科診療に携わるすべての人の必携書。
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- 目次
- 書評
序文
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序
神経眼科学は視覚系,眼球運動系,自律神経系など幅広い領域を含み,神経内科学や神経生理学などと密接に関連して発展してきた分野です.神経眼科学は,私たちの視機能を知るうえで非常に重要な分野でありながら,これまでは眼科の他の分野に比べると難解なもの,とっつきにくいものとして苦手意識をもたれる眼科臨床医が多かったのではないでしょうか.しかし,急速な高齢化社会の進行とともに眼科医を受診する患者のなかに虚血性眼運動神経麻痺や虚血性視神経症,さらには高齢者の重症筋無力症など神経眼科疾患の患者の比率が急増しつつあり,今や神経眼科学の知識は眼科を標榜する医師にとって必須のものになりつつあります.
本書では,できるだけわかりやすくするためにMRIやOCTなど最新器械による画像情報も積極的に内容に取り入れています.例えばSD-OCTでは乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)厚や網膜神経節細胞を含む網膜内層厚(GCCあるいはGCA)が簡便に測定・記録できるようになり,年齢をマッチさせた正常対照群と比べて有意の菲薄化や腫脹が一目で認識できるようになっています.以前はわかりにくかった視神経萎縮や乳頭腫脹が一瞬で判別でき,視神経炎や虚血性視神経症だけでなく,遺伝性視神経症や圧迫性視神経症までもが乳頭腫脹から菲薄化(萎縮)の過程を観察記録できるようになっています.またこれまでは球後視神経炎と誤診しやすく,鑑別には多局所網膜電図(VERIS)が必要であった網膜外層症も簡単にOCTで診断できるようになりました.このように神経眼科疾患はもはや神経眼科のスペシャリストだけのものではなく,一般眼科臨床医が診療できる対象疾患になったのです.本書はそのような時代の変化に対応して,神経眼科疾患を一般眼科医により親しいものにするために企画されたものです.眼科臨床エキスパートシリーズの特徴でもある長めの総説・総論で,視神経疾患や眼球運動障害などについて概説したうえで,各論の各疾患ではスペシャリストからの「一般眼科医へのアドバイス」をできるだけ挿入しています.本書はあなたのまわりにも潜在的な患者が多い神経眼科疾患を学ぶ最良の成書の1つであり,きっと読者諸兄のこれからの神経眼科診療のお役に立てるはずです.
最後に,本書の分担執筆をご快諾いただいた日本神経眼科学会のメンバーと,編集と校正にご尽力いただいた医学書院の皆様に深謝いたします.
2016年3月
編集 三村 治,谷原秀信
神経眼科学は視覚系,眼球運動系,自律神経系など幅広い領域を含み,神経内科学や神経生理学などと密接に関連して発展してきた分野です.神経眼科学は,私たちの視機能を知るうえで非常に重要な分野でありながら,これまでは眼科の他の分野に比べると難解なもの,とっつきにくいものとして苦手意識をもたれる眼科臨床医が多かったのではないでしょうか.しかし,急速な高齢化社会の進行とともに眼科医を受診する患者のなかに虚血性眼運動神経麻痺や虚血性視神経症,さらには高齢者の重症筋無力症など神経眼科疾患の患者の比率が急増しつつあり,今や神経眼科学の知識は眼科を標榜する医師にとって必須のものになりつつあります.
本書では,できるだけわかりやすくするためにMRIやOCTなど最新器械による画像情報も積極的に内容に取り入れています.例えばSD-OCTでは乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)厚や網膜神経節細胞を含む網膜内層厚(GCCあるいはGCA)が簡便に測定・記録できるようになり,年齢をマッチさせた正常対照群と比べて有意の菲薄化や腫脹が一目で認識できるようになっています.以前はわかりにくかった視神経萎縮や乳頭腫脹が一瞬で判別でき,視神経炎や虚血性視神経症だけでなく,遺伝性視神経症や圧迫性視神経症までもが乳頭腫脹から菲薄化(萎縮)の過程を観察記録できるようになっています.またこれまでは球後視神経炎と誤診しやすく,鑑別には多局所網膜電図(VERIS)が必要であった網膜外層症も簡単にOCTで診断できるようになりました.このように神経眼科疾患はもはや神経眼科のスペシャリストだけのものではなく,一般眼科臨床医が診療できる対象疾患になったのです.本書はそのような時代の変化に対応して,神経眼科疾患を一般眼科医により親しいものにするために企画されたものです.眼科臨床エキスパートシリーズの特徴でもある長めの総説・総論で,視神経疾患や眼球運動障害などについて概説したうえで,各論の各疾患ではスペシャリストからの「一般眼科医へのアドバイス」をできるだけ挿入しています.本書はあなたのまわりにも潜在的な患者が多い神経眼科疾患を学ぶ最良の成書の1つであり,きっと読者諸兄のこれからの神経眼科診療のお役に立てるはずです.
最後に,本書の分担執筆をご快諾いただいた日本神経眼科学会のメンバーと,編集と校正にご尽力いただいた医学書院の皆様に深謝いたします.
2016年3月
編集 三村 治,谷原秀信
目次
開く
第1章 総説
神経眼科疾患の診療概論
I.2大診断補助手段の進歩と神経眼科医の役割
II.血液検査が変えた疾患概念と免疫抑制維持療法
III.診断から治療へ
IV.患者へのインフォームド・コンセントの重要性
V.神経眼科学は決して難解ではない
第2章 視神経疾患
I 視神経疾患の診断総論
I.問診
II.眼科検査
III.全身検査
IV.画像検査
V.遺伝子検査
II 疾患各論
A 特発性頭蓋内圧亢進症
I.概念・病態
II.診断
III.機序
IV.治療
B 視神経炎と多発性硬化症
I.概念・病態
II.多発性硬化症に関連する視神経炎の機序と臨床
Topics
視神経疾患のOCT
C 抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎
I.診断
II.治療
D 小児の視神経炎
I.概念・病態
II.疫学
III.臨床症状
IV.診断
V.治療
VI.視力予後
VII.全身の脱髄疾患との関連
E 視神経周囲炎
I.概念・病態
II.臨床症状
III.画像検査
IV.補助的検査
V.鑑別疾患
VI.治療・予後
F 動脈炎性虚血性視神経症
I.概念・病態
II.巨細胞性血管炎による動脈炎性虚血性視神経症
III.巨細胞性血管炎以外による動脈炎性虚血性視神経症
G 非動脈炎性虚血性視神経症
I.概念
II.病態
III.臨床症状
IV.検査所見
V.臨床経過
VI.治療
VII.後部虚血性視神経症
Topics
糖尿病乳頭症
H 外傷性視神経症
I.概念
II.病態・機序
III.臨床症状
IV.検査
V.治療
VI.重要な鑑別疾患としての機能性(心因性)視覚障害と詐盲
Topics
経角膜電気刺激
I Leber遺伝性視神経症
I.概念・臨床的特徴
II.ミトコンドリア遺伝子変異
III.Leber遺伝性視神経症発症の修飾因子
IV.模索中の治療法
J 常染色体優性遺伝性視神経萎縮
I.概念
II.疫学
III.臨床症状
IV.鑑別
V.病因
VI.治療
Topics
メラノプシン含有網膜神経節細胞と視神経症
K 甲状腺性視神経症
I.診断
II.治療法
III.治療戦略・治療結果
IV.経涙丘眼窩内壁減圧手術
L 鼻性視神経症
I.概念・病態
II.診断
III.治療
M 圧迫性視神経症
I.概念・病態
II.眼窩部圧迫性視神経症
III.眼窩先端部圧迫性視神経症
IV.視交叉部圧迫性視神経症
V.視索部圧迫性視神経症
VI.外側膝状体から視中枢
N 中毒性視神経症
I.概念・病態
II.エタンブトール視神経症
III.シンナー中毒性視神経症
IV.その他の薬剤性視神経症
O AZOORとAZOOR complex
I.概念・病態
II.AZOOR
III.AZOOR complex
IV.AZOOR/AZOOR complexの謎
P 浸潤性視神経症
I.概念・病態
II.視神経乳頭腫脹
III.白血病性視神経症
IV.癌性髄膜症
Q 視神経の腫瘍
I.概念・病態
II.視神経膠腫
III.視神経鞘髄膜腫
IV.転移性視神経腫瘍
R 視神経異形成
I.概念・病態
II.中隔視神経異形成
III.視神経部分低形成
IV.朝顔症候群
V.乳頭コロボーマ
VI.視神経乳頭小窩
S 半盲と病変部位
I.概念・病態
II.視交叉症候群
III.視索症候群
IV.外側膝状体症候群
V.外側膝状体より後方の視路障害
Topics
OCTからみた経シナプス逆行性変性
第3章 眼球運動障害
I 眼球運動障害の診断総論
I.問診
II.眼科検査
III.全身検査
IV.画像検査
V.遺伝子検査
II 疾患各論
A 核上性眼球運動障害
I.概念・病態
II.側方注視麻痺
III.内側縦束症候群(核間麻痺)
IV.one-and-a half症候群
V.垂直注視麻痺
VI.斜偏位,ocular tilt reaction
B Fisher症候群
I.Guillain-Barré症候群
II.Fisher症候群
III.抗ガングリオシド抗体と免疫性神経疾患
IV.分子相同性仮説
C 進行性核上性麻痺
I.概念・病態
II.診断
III.画像検査
IV.治療・経過
D 上斜筋ミオキミア
I.概念
II.病態
III.臨床症状
IV.診断
V.治療
E 眼振
I.概念・病態
II.生理的眼振
III.先天眼振
IV.後天眼振
F Duane症候群
I.概念・病態
II.機序
III.診断・鑑別
IV.治療
G 眼運動神経麻痺
I.総論
II.各論
III.治療・経過・予後
H 固定内斜視
I.強度近視性斜視による固定内斜視
II.高度な外転神経麻痺による固定内斜視
III.「眼軸が正常な固定内斜視」およびsagging eye syndromeに関する最近の知見
I 甲状腺性ミオパチー
I.概念・病態
II.診断
III.治療
J 外眼筋線維症
I.概念・病態
II.原因遺伝子からみた分類
III.治療
IV.病因
V.視機能
K 外眼筋ミオパチー
I.概念
II.慢性進行性外眼筋麻痺
III.筋ジストロフィ
L 核下性および機械的眼球運動障害の治療
I.概念・病態
II.核下性眼球運動障害
III.機械的眼球運動障害
第4章 眼窩・眼瞼・全身疾患
A 眼窩筋炎
I.概念
II.特発性眼窩筋炎の臨床症状・徴候
III.特発性眼窩筋炎の分類
IV.画像検査
V.特発性眼窩筋炎の病態生理
VI.その他の眼窩筋炎
VII.眼窩筋炎と他の疾患との鑑別
VIII.治療
IX.症例
B IgG4関連眼疾患
I.疾患概念の誕生
II.病因論と免疫応答
III.臨床での病態
IV.診断基準
V.鑑別
VI.治療・予後
C 肥厚性硬膜炎
I.概念・病態
II.各論
III.治療・予後
IV.今後における展望
D 眼窩吹き抜け骨折
I.概念・病態
II.症状
III.診断・検査
IV.手術
V.症例
Topics
眼窩吹き抜け骨折の手術時期
E 頸動脈海綿静脈洞瘻
I.概念・病態
II.特発性頸動脈海綿静脈洞瘻
F 重症筋無力症
I.概念・病態
II.疫学
III.診断
IV.治療
V.経過
VI.眼瞼下垂および斜視に対する手術療法その他
G 傍腫瘍症候群と神経眼科
I.概念・病態
II.傍腫瘍性網膜症
III.その他の傍腫瘍性神経症候群
H 眼瞼痙攣
I.概念・病態
II.病因
III.疫学
IV.診断
V.治療
I 片側顔面痙攣
I.概念
II.診断
III.鑑別
IV.治療
J 上眼瞼後退症
I.概念・病態
II.甲状腺眼症の上眼瞼後退症
III.診断
IV.治療
Topics
低髄液圧症候群と眼症状
和文索引
欧文索引
神経眼科疾患の診療概論
I.2大診断補助手段の進歩と神経眼科医の役割
II.血液検査が変えた疾患概念と免疫抑制維持療法
III.診断から治療へ
IV.患者へのインフォームド・コンセントの重要性
V.神経眼科学は決して難解ではない
第2章 視神経疾患
I 視神経疾患の診断総論
I.問診
II.眼科検査
III.全身検査
IV.画像検査
V.遺伝子検査
II 疾患各論
A 特発性頭蓋内圧亢進症
I.概念・病態
II.診断
III.機序
IV.治療
B 視神経炎と多発性硬化症
I.概念・病態
II.多発性硬化症に関連する視神経炎の機序と臨床
Topics
視神経疾患のOCT
C 抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎
I.診断
II.治療
D 小児の視神経炎
I.概念・病態
II.疫学
III.臨床症状
IV.診断
V.治療
VI.視力予後
VII.全身の脱髄疾患との関連
E 視神経周囲炎
I.概念・病態
II.臨床症状
III.画像検査
IV.補助的検査
V.鑑別疾患
VI.治療・予後
F 動脈炎性虚血性視神経症
I.概念・病態
II.巨細胞性血管炎による動脈炎性虚血性視神経症
III.巨細胞性血管炎以外による動脈炎性虚血性視神経症
G 非動脈炎性虚血性視神経症
I.概念
II.病態
III.臨床症状
IV.検査所見
V.臨床経過
VI.治療
VII.後部虚血性視神経症
Topics
糖尿病乳頭症
H 外傷性視神経症
I.概念
II.病態・機序
III.臨床症状
IV.検査
V.治療
VI.重要な鑑別疾患としての機能性(心因性)視覚障害と詐盲
Topics
経角膜電気刺激
I Leber遺伝性視神経症
I.概念・臨床的特徴
II.ミトコンドリア遺伝子変異
III.Leber遺伝性視神経症発症の修飾因子
IV.模索中の治療法
J 常染色体優性遺伝性視神経萎縮
I.概念
II.疫学
III.臨床症状
IV.鑑別
V.病因
VI.治療
Topics
メラノプシン含有網膜神経節細胞と視神経症
K 甲状腺性視神経症
I.診断
II.治療法
III.治療戦略・治療結果
IV.経涙丘眼窩内壁減圧手術
L 鼻性視神経症
I.概念・病態
II.診断
III.治療
M 圧迫性視神経症
I.概念・病態
II.眼窩部圧迫性視神経症
III.眼窩先端部圧迫性視神経症
IV.視交叉部圧迫性視神経症
V.視索部圧迫性視神経症
VI.外側膝状体から視中枢
N 中毒性視神経症
I.概念・病態
II.エタンブトール視神経症
III.シンナー中毒性視神経症
IV.その他の薬剤性視神経症
O AZOORとAZOOR complex
I.概念・病態
II.AZOOR
III.AZOOR complex
IV.AZOOR/AZOOR complexの謎
P 浸潤性視神経症
I.概念・病態
II.視神経乳頭腫脹
III.白血病性視神経症
IV.癌性髄膜症
Q 視神経の腫瘍
I.概念・病態
II.視神経膠腫
III.視神経鞘髄膜腫
IV.転移性視神経腫瘍
R 視神経異形成
I.概念・病態
II.中隔視神経異形成
III.視神経部分低形成
IV.朝顔症候群
V.乳頭コロボーマ
VI.視神経乳頭小窩
S 半盲と病変部位
I.概念・病態
II.視交叉症候群
III.視索症候群
IV.外側膝状体症候群
V.外側膝状体より後方の視路障害
Topics
OCTからみた経シナプス逆行性変性
第3章 眼球運動障害
I 眼球運動障害の診断総論
I.問診
II.眼科検査
III.全身検査
IV.画像検査
V.遺伝子検査
II 疾患各論
A 核上性眼球運動障害
I.概念・病態
II.側方注視麻痺
III.内側縦束症候群(核間麻痺)
IV.one-and-a half症候群
V.垂直注視麻痺
VI.斜偏位,ocular tilt reaction
B Fisher症候群
I.Guillain-Barré症候群
II.Fisher症候群
III.抗ガングリオシド抗体と免疫性神経疾患
IV.分子相同性仮説
C 進行性核上性麻痺
I.概念・病態
II.診断
III.画像検査
IV.治療・経過
D 上斜筋ミオキミア
I.概念
II.病態
III.臨床症状
IV.診断
V.治療
E 眼振
I.概念・病態
II.生理的眼振
III.先天眼振
IV.後天眼振
F Duane症候群
I.概念・病態
II.機序
III.診断・鑑別
IV.治療
G 眼運動神経麻痺
I.総論
II.各論
III.治療・経過・予後
H 固定内斜視
I.強度近視性斜視による固定内斜視
II.高度な外転神経麻痺による固定内斜視
III.「眼軸が正常な固定内斜視」およびsagging eye syndromeに関する最近の知見
I 甲状腺性ミオパチー
I.概念・病態
II.診断
III.治療
J 外眼筋線維症
I.概念・病態
II.原因遺伝子からみた分類
III.治療
IV.病因
V.視機能
K 外眼筋ミオパチー
I.概念
II.慢性進行性外眼筋麻痺
III.筋ジストロフィ
L 核下性および機械的眼球運動障害の治療
I.概念・病態
II.核下性眼球運動障害
III.機械的眼球運動障害
第4章 眼窩・眼瞼・全身疾患
A 眼窩筋炎
I.概念
II.特発性眼窩筋炎の臨床症状・徴候
III.特発性眼窩筋炎の分類
IV.画像検査
V.特発性眼窩筋炎の病態生理
VI.その他の眼窩筋炎
VII.眼窩筋炎と他の疾患との鑑別
VIII.治療
IX.症例
B IgG4関連眼疾患
I.疾患概念の誕生
II.病因論と免疫応答
III.臨床での病態
IV.診断基準
V.鑑別
VI.治療・予後
C 肥厚性硬膜炎
I.概念・病態
II.各論
III.治療・予後
IV.今後における展望
D 眼窩吹き抜け骨折
I.概念・病態
II.症状
III.診断・検査
IV.手術
V.症例
Topics
眼窩吹き抜け骨折の手術時期
E 頸動脈海綿静脈洞瘻
I.概念・病態
II.特発性頸動脈海綿静脈洞瘻
F 重症筋無力症
I.概念・病態
II.疫学
III.診断
IV.治療
V.経過
VI.眼瞼下垂および斜視に対する手術療法その他
G 傍腫瘍症候群と神経眼科
I.概念・病態
II.傍腫瘍性網膜症
III.その他の傍腫瘍性神経症候群
H 眼瞼痙攣
I.概念・病態
II.病因
III.疫学
IV.診断
V.治療
I 片側顔面痙攣
I.概念
II.診断
III.鑑別
IV.治療
J 上眼瞼後退症
I.概念・病態
II.甲状腺眼症の上眼瞼後退症
III.診断
IV.治療
Topics
低髄液圧症候群と眼症状
和文索引
欧文索引
書評
開く
神経眼科領域が身近になる一冊
書評者: 池田 恒彦 (大阪医大教授・眼科学)
このたび,医学書院から『≪眼科臨床エキスパート≫ 知っておきたい神経眼科診療』が上梓された。本書の特徴としては以下の四つが挙げられる。
第一に,一般の眼科臨床医がやや難解と感じ敬遠しがちな「神経眼科」という領域を,非常にわかりやすく,しかも興味深く読めるように企画されている点である。編集を担当された三村治教授,谷原秀信教授の企画力の素晴らしさは言うまでもないが,実際に執筆されている先生方は,現在の各領域で最もアクティブに活躍されている先生方であり,全員が編者の意図をよく理解し,同じコンセプトを共有しながら熱意を持って執筆されていることが,ひしひしと伝わってくる。各論では,われわれが日常臨床でしばしば遭遇する疾患から,比較的稀だが重要な疾患まで,神経眼科領域におけるほぼ全ての疾患が網羅されている。
第二に,画像をふんだんに使用して,視覚的に印象に残りやすい構成になっている点である。最近の日本神経眼科学会雑誌の論文や同学会の演題を見ていても感じることだが,従来のMRIやCTといった画像以外に,最近は光干渉断層計(OCT)が日常臨床で使用される頻度が激増している。その影響もあり,神経眼科と緑内障や網膜疾患との垣根も従来に比較して格段に低くなってきており,その他いろいろな領域とオーバーラップする内容も多くなってきている。神経眼科を専門にしていない眼科医でも,とっつきやすい書き方がされているので,読者にとっては非常にありがたい教科書と言える。また,各画像のクオリティが非常に高いのも特筆すべき点である。
第三に各論では,「一般眼科医へのアドバイス」という項目を設けて,一般眼科医が日常臨床において潜在的な神経眼科疾患を見逃さないポイントを明記している点である。この内容はどれも非常に重要で,日常臨床に役立つこと請け合いである。このコーナーを読むことで,日常臨床で何気なく通りすぎていく症例の中から,重要な神経眼科疾患が数多く見つかることを期待したい。
最後に,「Topics」という項目で,最新のホットな話題を提供している点である。これらの内容も非常に興味深く,学会のシンポジウムに出てくるような内容を教科書で学べることは非常にありがたい。今まで治療法がなかった疾患に対する新治療の可能性や,新たな診断法などが,コンパクトにまとめられているので,とても勉強になる。
上記のように本書を読むことで,一般眼科医が神経眼科疾患をより身近に感じられるようになることは間違いなく,その結果日本の眼科臨床レベルが向上するものと確信している。特に若い世代の先生方にはぜひ本書を活用していただき,今後,神経眼科を専門にする先生がどんどん出てきてほしいと願っている。現在のわが国の眼科はやや領域に偏りが見られるのも事実であり,本書がその突破口となるものと期待される。最後に本書を企画,執筆された多くの先生方の熱意に心から敬意を表したい。
書評者: 池田 恒彦 (大阪医大教授・眼科学)
このたび,医学書院から『≪眼科臨床エキスパート≫ 知っておきたい神経眼科診療』が上梓された。本書の特徴としては以下の四つが挙げられる。
第一に,一般の眼科臨床医がやや難解と感じ敬遠しがちな「神経眼科」という領域を,非常にわかりやすく,しかも興味深く読めるように企画されている点である。編集を担当された三村治教授,谷原秀信教授の企画力の素晴らしさは言うまでもないが,実際に執筆されている先生方は,現在の各領域で最もアクティブに活躍されている先生方であり,全員が編者の意図をよく理解し,同じコンセプトを共有しながら熱意を持って執筆されていることが,ひしひしと伝わってくる。各論では,われわれが日常臨床でしばしば遭遇する疾患から,比較的稀だが重要な疾患まで,神経眼科領域におけるほぼ全ての疾患が網羅されている。
第二に,画像をふんだんに使用して,視覚的に印象に残りやすい構成になっている点である。最近の日本神経眼科学会雑誌の論文や同学会の演題を見ていても感じることだが,従来のMRIやCTといった画像以外に,最近は光干渉断層計(OCT)が日常臨床で使用される頻度が激増している。その影響もあり,神経眼科と緑内障や網膜疾患との垣根も従来に比較して格段に低くなってきており,その他いろいろな領域とオーバーラップする内容も多くなってきている。神経眼科を専門にしていない眼科医でも,とっつきやすい書き方がされているので,読者にとっては非常にありがたい教科書と言える。また,各画像のクオリティが非常に高いのも特筆すべき点である。
第三に各論では,「一般眼科医へのアドバイス」という項目を設けて,一般眼科医が日常臨床において潜在的な神経眼科疾患を見逃さないポイントを明記している点である。この内容はどれも非常に重要で,日常臨床に役立つこと請け合いである。このコーナーを読むことで,日常臨床で何気なく通りすぎていく症例の中から,重要な神経眼科疾患が数多く見つかることを期待したい。
最後に,「Topics」という項目で,最新のホットな話題を提供している点である。これらの内容も非常に興味深く,学会のシンポジウムに出てくるような内容を教科書で学べることは非常にありがたい。今まで治療法がなかった疾患に対する新治療の可能性や,新たな診断法などが,コンパクトにまとめられているので,とても勉強になる。
上記のように本書を読むことで,一般眼科医が神経眼科疾患をより身近に感じられるようになることは間違いなく,その結果日本の眼科臨床レベルが向上するものと確信している。特に若い世代の先生方にはぜひ本書を活用していただき,今後,神経眼科を専門にする先生がどんどん出てきてほしいと願っている。現在のわが国の眼科はやや領域に偏りが見られるのも事実であり,本書がその突破口となるものと期待される。最後に本書を企画,執筆された多くの先生方の熱意に心から敬意を表したい。