神経眼科 第4版
臨床のために
難解な神経眼科学をやさしく解説した名著が、最新の動向を踏まえ改訂
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難解な神経眼科学を臨床的な視点からわかりやすくまとめた「初学者向けの実践的入門書」。『“いま目の前にいる患者さん”のために良きように』という原著者・藤野貞先生の信条をもとに、自筆のイラストに箇条書きの明快な解説を加え、まとめられた一冊。第4版では神経眼科学の最新の動向を踏まえ、さらなるブラッシュアップを図る。付録「神経眼科用検査器具」付き。
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2024.09.12
- 序文
- 目次
- 書評
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序文
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第4版の序(清澤源弘)/本書の構成について(江本博文)
第4版の序
今回,江本博文博士の手で「神経眼科──臨床のために」第4版が改訂された。まことに喜ばしい。本書の最初の著者である藤野貞先生は,機械に頼らない神経眼科臨床を唱えられた。そして,彼はこの書籍の第1版を1991年に著し,10年後の2001年に大分厚くなった第2版を上程した。2005年に藤野先生は逝去され,この本が我々東京医科歯科大学の神経眼科グループに残された。2011年,我々は当時大学院生であった江本博文氏を中心に分担して第3版の原稿を募った。
その後,更に10余年を経て,医学書院から改版のお話をいただいた。私は大学を離れて久しく,前版も江本博文氏が中心になってまとめたことからも,「今回の改訂も江本博士に」と対応した。それから約2年を経て今回,第4版の原稿を見せていただくことができた。
今回の原稿は,江本氏が一人で改訂を担当している。これは最近の医学書では稀なことで,一人の著者のもつ神経眼科に対する哲学がそこかしこに現れている。
最初のページから目を通してみると,藤野先生が自ら描かれた線画を生かしながら,まずこの10年で学会が様変わりした部分が大幅に改訂された。それは,視神経炎の部分,眼瞼痙攣,そしてビジュアルスノウその他である。この期間に神経眼科学が変貌した部分は見事に一新されている。
診断のフローチャートを付記することがこの原稿でも大幅に取り入れられた。また新たな診断の鑑別表も多用されている。
今回の原稿では,引用文献が前版と大幅に入れ替えられている。全体が厚くなるのを避けるため,文献数は抑え気味である。教科書における引用文献は原著論文の場合とは異なり,さらに詳しく調べたい場合に何を読むか? を指し示すのが目的である。そのためには新しい年代の物であることとともに,大学を離れた医師にはネット検索ができることも重要である。また,藤野先生は日本語文献を優先されていたが,自動翻訳も改善されたので英文文献も増やされてよかったと思う。
最後に,この本の以前からの最大の特徴であった「ポケットに入る神経眼科検査用器具とその使用法」が残された。この本を手にする方には,ぜひ微細な視野の特徴の見方や特徴的な眼球運動の見方を,もう一度確かめていただきたいと思う。そうすると視野検査や眼球運動の検査結果が,さらに正しく確認できると思われる。
2023年2月
自由が丘清澤眼科 院長
清澤源弘
本書の構成について
前版から10 年以上が経ち,実際の症例でレジデントや医局,紹介元,他科の医師の方々から質問があった疾患や項目を多数取り入れてアップデートしました。
疾患群の構成がわかりやすいように各章の初めに目次を掲載しました。また,鑑別診断の際にも使えるよう目次を構成し,図表やフローチャートも取り入れています。
エビデンスを重視し,文献にPMID をつけました。正確には原著を参照してください。
医療機器が目覚しく進歩し,優れた研究が盛んに行われるようになった現在でも,神経眼科疾患の患者さんは診断治療を求めて苦労されております。本書が一助となることを願っております。
本版の作成に協力していただいた諸先生方,医学書院の方々に厚く御礼申し上げます。
2023年3月
東京医科歯科大学眼科
江本博文
目次
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第1部 神経眼科臨床の解剖・生理
1 網膜から視神経へ
2 網膜内視神経線維走行
3 視神経の血管
4 眼窩内の血管
5 視神経交叉,視索,外側膝状体と視野
6 視放線
7 有線領
8 視路全図(水平断)
9 瞳孔散大神経路(眼交感神経路)
10 対光反応経路(副交感神経路)
11 眼球運動神経核
12 垂直眼球運動の神経機構
13 眼球運動皮質中枢から脳幹皮質下機構へ
14 眼球運動に関与する動脈
15 小脳と眼球運動
16 頭蓋底の神経と静脈
第2部 症状・徴候より診断へ
1 眼科検査の基本事項
2 視力障害
3 視野異常
4 一過性視覚障害
5 乳頭の異常
6 瞳孔の異常
7 複視,(明瞭な)眼球運動障害
8 軽い複視,軽い眼球運動障害
9 第一眼位,眼球運動障害の記録
10 眼振(その1,主として振子眼振)
11 眼振(その2,主として律動眼振)
12 自発性異常眼球運動
13 眼瞼の異常,眼球突出
第3部 各論
第1章 乳頭の異常
A 乳頭腫脹
B 偽うっ血乳頭
C 乳頭の先天異常
D うっ血乳頭
E 特発性頭蓋内圧亢進症
F 静脈洞血栓症・静脈洞狭窄
第2章 視神経疾患
A 視神経炎
B 虚血性視神経症
C 圧迫性・浸潤性視神経症
D 中毒性視神経症・栄養欠乏性視神経症
E 遺伝性視神経症
F 外傷性視神経症
G その他の視神経症
H 視神経萎縮
I 心因性視覚障害
J 視覚障害者のロービジョンケア
第3章 視交叉,視交叉後,および後頭葉視領の病変
A 同名半盲と異名半盲
B 視交叉病変
C 視索病変
D 外側膝状体病変
E 視放線の病変
F 後頭葉,視皮質の病変
第4章 高次視覚障害
A 大脳性色覚異常
B 視覚失認
C 失読
D 視空間障害
E 視覚陽性現象
第5章 眼疾患と全身疾患
A 眼内の血管性病変
B 神経疾患類似の症状を起こす眼疾患
C 神経・全身疾患と関係深い眼疾患
D 神経眼科と関係深い神経・全身疾患
第6章 眼球運動障害
A 複視
B 神経疾患による眼球運動障害
C 神経筋接合部疾患による眼球運動障害
D 筋疾患による眼球運動障害
E 代謝障害による眼球運動障害
第7章 眼振と眼振様運動
A 眼球運動に関する用語
B 概略
C 生理的眼振
D 病的眼振
E 眼振様運動
F 意識障害下の自発性眼球運動
第8章 瞳孔異常
A 正常瞳孔
B 瞳孔反応異常
C 縮瞳
D 散瞳
E その他の瞳孔異常
第9章 眼瞼・顔面表情筋の障害
A 眼瞼の位置と運動
B 眼瞼下垂
C 眼瞼の不随意運動
D 開瞼/閉瞼困難
E 瞬目異常
F 瞼裂開大
G 眼瞼の矛盾運動
第10章 眼窩疾患と海綿静脈洞病変
A 眼球突出と眼球陥凹
B 眼窩腫瘍
C その他の眼窩疾患
D 海綿静脈洞病変
第11章 片頭痛,その他の頭痛
A 頭痛症候群の分類
B 片頭痛
C 緊張型頭痛
D 群発頭痛および三叉神経・自律神経性頭痛
E その他の頭痛,顔面痛
付録 ポケットに入る神経眼科用検査器具とその使用法
A 視力,中心視野の検査
B 瞳孔,前眼部の検査
C 眼球運動の検査
D 核上性眼球運動の検査
E その他
F 眼底検査法
索引
書評
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完成度の高い,日本におけるこの領域の歴史的教科書
書評者:若倉 雅登(医療法人社団済安堂井上眼科病院名誉院長)
臨床神経眼科は神経科学と眼科学が統合された独立分野で,その萌芽は20世紀初頭の米国にあった。1947年Frank B Walsh(1895~1978)の『Clinical Neuro-ophthalmology』が上梓されるに及び,神経眼科学は広く認知された。やがてこの国は,W.F.Hoyt(1926~2019),J. Lawton Smith(1929~2011)らその道の泰斗を輩出し,神経眼科学は黄金時代を迎えた。
この時代にマイアミ大に留学した日本人医師がいた。藤野貞(ただし)(1922~2005),本書の初版版の著者である。長崎大助教授を辞して,この新領域を学びに渡米したのである。そこでは臨床だけでなく,視交叉血管の研究にも打ち込んだ。そして,この新領域の臨床医学をひっさげて67年に帰国すると,東京,東京医科歯科,慶應義塾,北里,大分医科などの大学や都立病院で神経眼科臨床を実践し,85年には今も続く夏の勉強会を立ち上げた。日本の弱点とされる臨床実践教育のため,彼はいずれの常勤職にもならずに全国を奔走した。
その集大成『神経眼科―臨床のために』(医学書院)は1991年10月に誕生した。当時,眼科,神経内科,脳外科の医師たちは神経眼科という名称は側聞していても,どこか近寄り難い難しい分野だと遠ざけがちだった。ただ,実臨床をしていると,この領域にかかわる症例にいやでも遭遇するから学習しやすいテキストブックを誰もが渇望していた。
藤野の教科書は,他の神経科学の教科書で多用される画像診断,電気生理学的診断の図は一つもなく,代わりに著者自らが描いた解剖図,イラストがふんだんに使われた。また,近代装備を使わなくても十分高度な診療が可能だと「ポケットに入る神経眼科用検査用具」が紹介され,一部は付録としてつけられた。各項の記述は簡潔で,かつ引用文献は読者の学びやすさを考えた代表的和文論文が中心だった。時代的欲求と親しみやすさから,この出版は大反響を呼び5刷もの増刷を重ねた。2001年には第2版が出版され,これも6刷の爆発的売れ行きだったが,この間に藤野氏は惜しくも逝去された。
東京医科歯科大で藤野から実践教育を受けた江本博文,清澤源弘の2人の神経眼科医が,遺志を継いで第3版を執筆,2011年に出版。それから10年余,新知識は積み重なる。そして今回2023年4月,待望の第4版が完成。初版からみてページ数は倍加しているものの,初学者もベテラン医師もひもときたくなる簡明さは確実に受け継がれている。
第3版までは記述がないか少なかったCRION, visual snow症候群,脳脊髄液減少症,抗NMDA受容体脳炎,CLIPPERS症候群などにも,しっかり新知識が盛り込まれ,欧文索引もついた。最近日本神経眼科学会から新診療ガイドラインが出た「眼瞼痙攣」についてもページ数を割いて詳述された。
総じて完成度の高い,かつ非常に親しみやすい教科書となっており,たちまち増刷の声が聞かれそうである。
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。