標準救急医学 第5版
医師としての必須の知識とスキル。コアカリや国試出題基準の項目もカバー
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日本救急医学会がその総力を挙げて編んだ救急医学教科書の最新版。心肺蘇生法や重症救急病態、災害医療など患者の救命に直結する救急医療のエッセンスをはじめ、医の原点とも言うべき救急医療のすべての領域について、将来の専門分野を超えて医師として不可欠な知識と臨床スキルを懇切に解説。コアカリキュラムや国試出題基準をカバーし、各章の冒頭には全体像の把握に役立つ「構成マップ」を掲載した。
● | 『標準医学シリーズ 医学書院eテキスト版』は「基礎セット」「臨床セット」「基礎+臨床セット」のいずれかをお選びいただくセット商品です。 |
● | 各セットは、該当する領域のタイトルをセットにしたもので、すべての標準シリーズがセットになっているわけではございません。 |
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第5版の刊行にあたって(行岡哲男)/第5版 序(有賀 徹)
第5版の刊行にあたって
救急医学は実学です.実学とは,現場活動に役立つ学問のことです.本書は,救急診療のいろいろな場面で必須である意思決定を支え,役立つ知識を体系化し記述した成書です.日本救急医学会が総力をあげて刊行したものであり,我が国の救急医学の標準書籍と呼ぶにふさわしいものです.
本書は初版よりすでに20年以上がたち,今回第5版が刊行されることになりました.初版からの内容の変遷をみると,20世紀から21世紀に向かう救急医学の歴史を知ることができます.しかし,第5版を読む人の多くは2010年代の救急医学を学ぶことが主な目的でしょう.そこで読者にぜひともお願いしたいことが2つあります.
まず,本書は通読を願いたい.読む章の順番は相前後することはあっても,最初から最後までひと通り読み通すことをお願いしたい.救急医学は守備範囲が広く,また個々の知識はネットワークのように互いに繋がっています.ある部分だけ読むことは理解の偏りや,ネットワーク的な繋がりが失われ知識の断片化が起こります.偏りのある理解や断片化した知識は,救急診療では役立ちません.
2つ目の願いは自分で考えることです.何を,どのように考えるのでしょうか.本書の個々の知識は,やがて書き換えられます.すなわち,救急医学の進歩は,本書の改訂に反映されてきましたし,これは今後も変わりません.本書に書かれていることは未来永劫不変の真理ではなく,現代の救急医の間で「これが妥当だ」という共通了解が成立したことです.われわれの間で強固で広範な共通了解が成立しているところもあれば,やっと皆の了解を得られた事柄もあります.通読をされたら,どこが強固でどの部分が未だ脆弱か,その理由を自分で考えてみてください.これが2つ目の願いです.自分で考えることこそが医学をより深く学ぶことに繋がります.この姿勢は,読者自身による新たな発見やその知識の普遍化へと繋がり,さらに将来の本書改訂に関わるきっかけにもなりえます.
読者へのこの2つの願いは,およそ医療に関わるものなら何らかの形で必ず救急医療と接点をもつという事実を背景にしています.この救急医療を支えるのが救急医学であり,本書の読者はこの実学への関与者(ステークホルダー)であることを避けえません.その具体的な関わり方の手始めを2つの願いとして記しました.
本書が,読者の医療者としてのより善き活動と人生に資することを心より願います.
2013年11月
一般社団法人 日本救急医学会代表理事 行岡哲男
第5版 序
我が国は先の大戦の終焉をもって,名実ともに民主的な立憲君主国となり,その後も発展の途を辿り,今や健康・長寿という側面で世界の冠たる水準に達することができた.そして,このことから,我が国は世界に先駆けて,高齢化に伴うさまざまな課題を負うことにもなった.そこでは社会的な諸策を通じて,高齢者も豊かに暮らせる社会を構築することなどが求められている.
さて,このような社会情勢の下,医師を志す者の将来,ないし若手医師のキャリアパスを考察するにあたり,我が国の専門医制度の現状について知る必要がある.日本専門医制評価・認定機構は,計18の基本領域を定め,それぞれの専門医を基本領域の専門医として認定している.救急医学は,内科学,外科学などと同様に,日本専門医制評価・認定機構によって基本領域の1つとされ,その専門医(救急科専門医)が基本領域専門医として認められている.現在19番目の基本領域専門医として,総合診療に関するものが俎上に載せられている.これは上述の社会構造の変化と大いに関係している.高齢者がいかなる主訴をもって来院しようと,その背景には複数の医学的な課題がありそうなことは容易に想像でき,また高齢者が社会的・経済的な課題などを抱えている場合も少なくなかろう.
しかし,救急医学は急性期医療において,すでにこのような課題を克服する方法論をもって発展してきた歴史がある.患者の主訴が意識障害であれ,ショック状態であれ,またはどのようであれ,目前の病態への治療と鑑別診断とを同時に進めつつ,具体的には当初の対症療法から,漸次根治療法へと展開するものである.このような急性期医療の実践は,患者の示す病態がどのようなものであれ,基本的に同じである.すなわち,救急医学の方法論は急性期における総合診療ということができる.これは,救急外来における救急プライマリケアと称してもよかろう.また,いわゆる三次救急医療施設(救命救急センターなど)における方法論は,急性期における集中治療を要する総合診療でもある.
また,救急医学の守備範囲は病院に患者が搬送されるより前方へも展開している.ドクターカーやドクターヘリに搭乗して医師が救急現場に赴くこともあるが,そのほかに,地域の自治体消防に属する救急隊員も患者の搬送時に行う病院前救護や医行為の質を維持・向上させる責務を担っているのである.あらかじめ決められた通信手段を用いて,救急隊員の行う医行為を直接的に指示することや,普段から彼らへの教育と行った医行為の検証などに協力することが,いわゆるメディカルコントロール体制の下で行われている.災害医療においても救急科専門医は,災害現場に急行するdisaster medical assistance team(DMAT)の中心的な役割を演じている.
このように,救急医学は時代の要請を受けるなどしながら,急性期医療について多大の社会貢献をなしていて,今後にそのような期待は益々高まるに違いない.このような現状と将来性を踏まえて,『標準救急医学』第5版が発刊されることとなった.今版は,救急医学・救急医療に精通した執筆者によって,従来にも増して充実した内容を誇っている.本書が医学部学生や,臨床研修医を含めた多くの医師によって活用され,我が国における急性期医療の一層の充実・発展に役立つことを切に希望する.
2013年11月
昭和大学教授 有賀 徹
第5版の刊行にあたって
救急医学は実学です.実学とは,現場活動に役立つ学問のことです.本書は,救急診療のいろいろな場面で必須である意思決定を支え,役立つ知識を体系化し記述した成書です.日本救急医学会が総力をあげて刊行したものであり,我が国の救急医学の標準書籍と呼ぶにふさわしいものです.
本書は初版よりすでに20年以上がたち,今回第5版が刊行されることになりました.初版からの内容の変遷をみると,20世紀から21世紀に向かう救急医学の歴史を知ることができます.しかし,第5版を読む人の多くは2010年代の救急医学を学ぶことが主な目的でしょう.そこで読者にぜひともお願いしたいことが2つあります.
まず,本書は通読を願いたい.読む章の順番は相前後することはあっても,最初から最後までひと通り読み通すことをお願いしたい.救急医学は守備範囲が広く,また個々の知識はネットワークのように互いに繋がっています.ある部分だけ読むことは理解の偏りや,ネットワーク的な繋がりが失われ知識の断片化が起こります.偏りのある理解や断片化した知識は,救急診療では役立ちません.
2つ目の願いは自分で考えることです.何を,どのように考えるのでしょうか.本書の個々の知識は,やがて書き換えられます.すなわち,救急医学の進歩は,本書の改訂に反映されてきましたし,これは今後も変わりません.本書に書かれていることは未来永劫不変の真理ではなく,現代の救急医の間で「これが妥当だ」という共通了解が成立したことです.われわれの間で強固で広範な共通了解が成立しているところもあれば,やっと皆の了解を得られた事柄もあります.通読をされたら,どこが強固でどの部分が未だ脆弱か,その理由を自分で考えてみてください.これが2つ目の願いです.自分で考えることこそが医学をより深く学ぶことに繋がります.この姿勢は,読者自身による新たな発見やその知識の普遍化へと繋がり,さらに将来の本書改訂に関わるきっかけにもなりえます.
読者へのこの2つの願いは,およそ医療に関わるものなら何らかの形で必ず救急医療と接点をもつという事実を背景にしています.この救急医療を支えるのが救急医学であり,本書の読者はこの実学への関与者(ステークホルダー)であることを避けえません.その具体的な関わり方の手始めを2つの願いとして記しました.
本書が,読者の医療者としてのより善き活動と人生に資することを心より願います.
2013年11月
一般社団法人 日本救急医学会代表理事 行岡哲男
第5版 序
我が国は先の大戦の終焉をもって,名実ともに民主的な立憲君主国となり,その後も発展の途を辿り,今や健康・長寿という側面で世界の冠たる水準に達することができた.そして,このことから,我が国は世界に先駆けて,高齢化に伴うさまざまな課題を負うことにもなった.そこでは社会的な諸策を通じて,高齢者も豊かに暮らせる社会を構築することなどが求められている.
さて,このような社会情勢の下,医師を志す者の将来,ないし若手医師のキャリアパスを考察するにあたり,我が国の専門医制度の現状について知る必要がある.日本専門医制評価・認定機構は,計18の基本領域を定め,それぞれの専門医を基本領域の専門医として認定している.救急医学は,内科学,外科学などと同様に,日本専門医制評価・認定機構によって基本領域の1つとされ,その専門医(救急科専門医)が基本領域専門医として認められている.現在19番目の基本領域専門医として,総合診療に関するものが俎上に載せられている.これは上述の社会構造の変化と大いに関係している.高齢者がいかなる主訴をもって来院しようと,その背景には複数の医学的な課題がありそうなことは容易に想像でき,また高齢者が社会的・経済的な課題などを抱えている場合も少なくなかろう.
しかし,救急医学は急性期医療において,すでにこのような課題を克服する方法論をもって発展してきた歴史がある.患者の主訴が意識障害であれ,ショック状態であれ,またはどのようであれ,目前の病態への治療と鑑別診断とを同時に進めつつ,具体的には当初の対症療法から,漸次根治療法へと展開するものである.このような急性期医療の実践は,患者の示す病態がどのようなものであれ,基本的に同じである.すなわち,救急医学の方法論は急性期における総合診療ということができる.これは,救急外来における救急プライマリケアと称してもよかろう.また,いわゆる三次救急医療施設(救命救急センターなど)における方法論は,急性期における集中治療を要する総合診療でもある.
また,救急医学の守備範囲は病院に患者が搬送されるより前方へも展開している.ドクターカーやドクターヘリに搭乗して医師が救急現場に赴くこともあるが,そのほかに,地域の自治体消防に属する救急隊員も患者の搬送時に行う病院前救護や医行為の質を維持・向上させる責務を担っているのである.あらかじめ決められた通信手段を用いて,救急隊員の行う医行為を直接的に指示することや,普段から彼らへの教育と行った医行為の検証などに協力することが,いわゆるメディカルコントロール体制の下で行われている.災害医療においても救急科専門医は,災害現場に急行するdisaster medical assistance team(DMAT)の中心的な役割を演じている.
このように,救急医学は時代の要請を受けるなどしながら,急性期医療について多大の社会貢献をなしていて,今後にそのような期待は益々高まるに違いない.このような現状と将来性を踏まえて,『標準救急医学』第5版が発刊されることとなった.今版は,救急医学・救急医療に精通した執筆者によって,従来にも増して充実した内容を誇っている.本書が医学部学生や,臨床研修医を含めた多くの医師によって活用され,我が国における急性期医療の一層の充実・発展に役立つことを切に希望する.
2013年11月
昭和大学教授 有賀 徹
目次
開く
カラーグラフ
第1章 救急医学総論
A 救急医学について
B 救急医療体制
C 法的諸問題
第2章 救急初療に必要な処置
A 一次救命処置
B 二次救命処置
C 高度な気道確保
D 静脈路の確保
E 中心静脈カテーテルの挿入
F 動脈カニュレーション
G 胃チューブ・胃洗浄
H Sengstaken-Blakemore(S-B)チューブ
I イレウス管
J 尿道留置カテーテル
K 心嚢穿刺
L 胸腔穿刺・胸腔ドレナージ
M 腰椎穿刺(髄液検査)
N 腹腔穿刺・腹腔洗浄
O 膀胱穿刺・膀胱瘻造設
P 止血
Q 小切開
R 排膿
S 縫合
T 輸液・輸血
U 救急医薬品
第3章 症状・徴候からみた救急疾患
A 救急診断
B ショック
C 呼吸困難
D 意識障害
E 痙攣
F 運動麻痺
G 感覚障害
H 失神
I 頭痛
J 胸痛
K 腹痛
L 腰背部痛
M 発熱・発疹
N 脱水
O めまい
P 動悸
Q 喀血
R 嘔吐
S 下痢
T 吐血・下血
U 鼻出血
V 尿の異常
第4章 重症救急患者の管理
A 生体侵襲と生体反応
B 循環管理
C 呼吸管理
D 意識障害患者の管理
E 体液管理
F 血液浄化
G 血液凝固・線溶系の管理
H 栄養管理
I 感染症
J 敗血症
K 脳死
第5章 内因性の救急疾患
A 中枢神経系
B 呼吸器系
C 循環器系
D 消化器系
E 内分泌代謝系
F 腎泌尿器系,産婦人科,小児科,精神科
第6章 外因性の救急疾患
A 外傷総論
B 多発外傷
C 頭部外傷
D 顔面・頸部外傷
E 胸部外傷
F 腹部外傷
G 骨盤外傷
H 四肢・脊椎外傷
I 皮膚・軟部組織損傷
J 熱傷
K 化学損傷
L 電撃傷
M 急性中毒
N 熱中症・低体温症
第7章 災害医療
A 災害医学の概念
B 自然災害
C 人為災害
D 緊急被ばく医療
付録:略語一覧
和文索引
欧文索引
第1章 救急医学総論
A 救急医学について
B 救急医療体制
C 法的諸問題
第2章 救急初療に必要な処置
A 一次救命処置
B 二次救命処置
C 高度な気道確保
D 静脈路の確保
E 中心静脈カテーテルの挿入
F 動脈カニュレーション
G 胃チューブ・胃洗浄
H Sengstaken-Blakemore(S-B)チューブ
I イレウス管
J 尿道留置カテーテル
K 心嚢穿刺
L 胸腔穿刺・胸腔ドレナージ
M 腰椎穿刺(髄液検査)
N 腹腔穿刺・腹腔洗浄
O 膀胱穿刺・膀胱瘻造設
P 止血
Q 小切開
R 排膿
S 縫合
T 輸液・輸血
U 救急医薬品
第3章 症状・徴候からみた救急疾患
A 救急診断
B ショック
C 呼吸困難
D 意識障害
E 痙攣
F 運動麻痺
G 感覚障害
H 失神
I 頭痛
J 胸痛
K 腹痛
L 腰背部痛
M 発熱・発疹
N 脱水
O めまい
P 動悸
Q 喀血
R 嘔吐
S 下痢
T 吐血・下血
U 鼻出血
V 尿の異常
第4章 重症救急患者の管理
A 生体侵襲と生体反応
B 循環管理
C 呼吸管理
D 意識障害患者の管理
E 体液管理
F 血液浄化
G 血液凝固・線溶系の管理
H 栄養管理
I 感染症
J 敗血症
K 脳死
第5章 内因性の救急疾患
A 中枢神経系
B 呼吸器系
C 循環器系
D 消化器系
E 内分泌代謝系
F 腎泌尿器系,産婦人科,小児科,精神科
第6章 外因性の救急疾患
A 外傷総論
B 多発外傷
C 頭部外傷
D 顔面・頸部外傷
E 胸部外傷
F 腹部外傷
G 骨盤外傷
H 四肢・脊椎外傷
I 皮膚・軟部組織損傷
J 熱傷
K 化学損傷
L 電撃傷
M 急性中毒
N 熱中症・低体温症
第7章 災害医療
A 災害医学の概念
B 自然災害
C 人為災害
D 緊急被ばく医療
付録:略語一覧
和文索引
欧文索引