救急超音波診療ガイド[Web動画付]
本邦初 日本救急医学会監修による救急超音波診療テキスト
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「日本救急医学会救急point-of-care超音波診療指針」に準拠した救急超音波診療テキスト。指針をもとに実践的な内容を解説し、上級者向けのPOCUSや、知識として知っておくべきことについても適宜言及。手技や病態・疾患に関する画像・動画を豊富に盛り込み、独学でも知識と技術の習得に役立つ内容とした。救急科専門医・専攻医だけでなく、研修医や急性期診療に従事する医師の手引きとして活用できる1冊。
監修 | 一般社団法人 日本救急医学会 |
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編集 | 日本救急医学会Point-of-Care超音波推進委員会 |
編集協力 | 一般社団法人 日本集中治療医学会 / 公益社団法人 日本超音波医学会 / 一般社団法人 日本小児救急医学会 / 一般社団法人 日本ポイントオブケア超音波学会 |
発行 | 2023年11月判型:B5頁:392 |
ISBN | 978-4-260-05346-4 |
定価 | 8,800円 (本体8,000円+税) |
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序/本書について
序
小生が,Point-of-Care超音波(POCUS)の基本となる概念,すなわち超音波検査の第一の目的が画像診断ではなく治療の迅速な意思決定にあることを,1990年にWestern Trauma Associationに発表してから33年の月日が経ちました.この秋に日本救急医学会を中心に各関連学会からお墨付きをいただいたPOCUSの成書が出版されることとなったことは,誠に感慨深いことであります.
上記の発表は大変な反響を呼び,1991年のJournal of Traumaに掲載されて以来,120近くの論文に引用されてきました.論文に書かれている小生のアイデアは,隅々まで瞬く間に米国の研究者によって検証され,彼らによってfocused assessment with sonography for trauma(FAST)と名付けられました.FASTの発展の舞台は海外となり,本邦には逆輸入されるような形で広まることになりました.小生としては,方法論の本質的な部分を見破ったのは日本人ではなく米国人であったことが少々残念でありましたが,適応する対象が鈍的体幹外傷からほぼ全身のさまざまな傷病に拡張され,さらにPOCUSとして体系化されていくのを目の当たりにして,世界の人々の思考は極めて柔軟性が高く,拡大した方法論を統合した概念に集約するインテリジェンスがあることに感銘を受けました.それを教育普及する体制も当然のことながら欧米のほうが先進し,日本は周回遅れの状態でありました.
そのような状況下において,本書編集主幹の亀田徹氏を中心に,若手救急医が結集して日本救急医学会内に日本救急医学会Point-of-Care超音波推進委員会を設置し,その遅れを取り戻そうと精力的に活動を続けてきております.本書は同委員会活動の一環として執筆ならびに編集されたものであり,POCUSの包括的な指針として救急診療を行っている医師に広く読まれ,本邦の救急医療の質向上に多少なりとも貢献していくことを切に望むものであります.
2023年10月
木村昭夫
国立国際医療研究センター病院・救命救急センター長
本書について
──救急科専門医・専攻医,臨床研修医,急性期診療に従事する医療従事者の手引きとして──
point-of-care ultrasonography(POCUS)という概念の共有,臨床研究に基づいた知見の蓄積,ポータブル型・携帯型超音波診断装置の急速な普及により,急性期診療における超音波検査の重要性は年々高まっている.2022年に「日本救急医学会 救急point-of-care超音波診療指針」(日本救急医学会雑誌.2022;33:338-383.)が示され,救急科専門医にとっての超音波診療の概要と方向性が示された.ただ,各項目の詳細,手技や超音波画像の解説など実践的な内容については別途示す必要があった.また救急領域のPOCUSを用いた診療を「救急超音波診療」と定義し,日本救急医学会が中心となって救急超音波診療を体系的・包括的に捉える作業を行うことは,今後この領域の発展に大きく寄与するものと考える.全身の評価,診断,意思決定,手技の安全性を向上させるために救急超音波診療を実践することで,患者ケアの質向上につながる.そのような観点で日本救急医学会Point-of-Care超音波推進委員会が本書を企画し,日本救急医学会監修のもとで編集を担当した.
〈本書編集方針〉
◆「救急point-of-care超音波診療指針」をベースとし,指針で示されている主要項目と付加項目を中心に実践で役立つ内容を示した.
◆救急超音波診療の発展と拡大を視野に,指針で取り上げなかった上級者向けPOCUSや他領域の超音波検査,知識として知っておくべき内容を加えた.
◆独学でも知識と技術の習得に役立つように配慮し,手技や病態・疾患に関する画像・動画を盛り込んだ.
◆救急超音波診療指導者講習会,各地域や施設での講習会に際し,受講者・指導者双方にとっての手引きとしての役割を果たせるようにした.
◆救急科専門医・専攻医だけではなく,臨床研修医,広く急性期診療に従事する医療従事者の手引きとしても活用いただけるように配慮した.
編集にあたり,日本集中治療医学会,日本超音波医学会,日本小児救急医学会,日本ポイントオブケア超音波学会からご協力いただき,多くの先生方からいただいた貴重なご意見を本書に反映させていただいた.編集を担当した同委員会を代表し篤く御礼申し上げる.
亀田 徹
日本救急医学会Point-of-Care超音波推進委員会 委員長
目次
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[主]:主要項目 [付]:付加項目
「日本救急医学会 救急point‒of‒care超音波診療指針」に設定の到達目標.詳細は「救急超音波診療の到達目標」の項参照.
第1章 総論
1 救急超音波診療について
1 歴史
2 POCUSの概要
3 本邦における救急超音波診療の発展に向けて
2 救急超音波診療の到達目標
1 救急科専門医の到達目標
2 海外のガイドライン
3 救急超音波教育
1 救急診療におけるon-the-job training
2 講習会
3 遠隔ハンズオン教育
第2章 超音波検査の基礎
1 音響工学 [主]
1 音響工学を学ぶ意義
2 Bモード画像の成り立ちと音響インピーダンス
3 画像調整とパラメータ
4 今後への提案
2 プローブの取り扱いと画像表示 [主]
1 プローブの選択
2 画像表示の取り決め
3 オリエンテーション
4 プローブ操作法
5 プローブの保守・管理
3 装置本体の取り扱いとBモード画像の適正化 [主]
1 モードの選択
2 プリセットの選択
3 深度・ゲイン・フォーカス・STCの調整
4 空間コンパウンドイメージング
5 フリーズ,シネ操作,静止画保存,動画保存
6 超音波診断装置の保守・管理
4 ドプラ法
1 POCUSにおける位置づけ
2 カラーフローマッピング法(カラードプラ法)
3 パルスドプラ法
4 連続波ドプラ法
5 アーチファクト [主]
1 音響陰影
2 後方エコー増強
3 多重反射
4 ミラーイメージ
5 スライス幅によるアーチファクト
6 twinkling artifact
6 超音波検査と医療安全 [主]
1 超音波の生体作用と安全性
2 超音波出力の強さとALARAの原則
3 感染対策
4 他の合併症・検査時の注意点
第3章 領域別活用
1 気道 [主][付]
1 正常解剖と画像描出
2 気管挿管の確認
3 輪状甲状靱帯の同定・切開
2 頸動脈
1 対象患者
2 検査環境
3 検査体位
4 超音波診断装置の選択
5 プローブ(探触子)の選択
6 条件設定
7 検査手順
8 頸動脈超音波検査で判断したい代表的疾患
3 肺・胸郭 [主][付]
1 正常解剖と画像描出
2 気胸
3 心原性・非心原性肺水腫
4 肺炎,無気肺
5 胸水,血胸,胸腔穿刺
6 横隔膜
7 肋骨・胸骨骨折
4 心臓
(1) basic FoCUS [主]
1 正常解剖と画像描出
2 左室収縮能
3 右室拡大(肺血栓塞栓症)
4 心膜液(タンポナーデ),心膜穿刺
5 下大静脈
6 心腔内腫瘤(血栓,疣腫,腫瘍)
7 慢性変化(心房・心室拡大,壁肥厚)
(2) advanced FoCUS
① 弁逆流と弁狭窄の評価
1 大動脈弁逆流(AR)
2 大動脈弁狭窄(AS)
3 僧帽弁逆流(MR)
4 僧帽弁狭窄(MS)
5 三尖弁逆流(TR)
6 今後に向けて
② 急性冠症候群の評価
1 急性冠症候群とは
2 ガイドラインにおける心エコー図検査の位置づけ
3 冠動脈の灌流領域と壁運動異常評価の基準
4 壁運動異常を見逃さないために──解釈のポイントと検査のピットフォール
5 急性冠症候群の急性期診断フロー──FoCUSによる専門医との効果的連携
6 急性期合併症,併存症の診断(心不全,機械的合併症,右室梗塞)
7 治療効果の判定に心エコー図検査を活用する
5 大動脈 [主][付]
1 正常解剖と画像描出
2 腹部大動脈瘤・破裂
3 急性大動脈解離(胸部)
6 消化器・腹腔内液体貯留 [主][付]
1 正常解剖と描出
2 疾患・病態別,超音波画像の解釈
7 尿路・男性生殖器 [主][付]
1 正常解剖と画像描出
2 尿管結石
3 尿閉
4 尿道カテーテル挿入時のガイド
5 急性陰囊症(精巣捻転,精巣上体炎)
6 陰囊外傷
8 女性生殖器・周産期 [付]
1 正常解剖と画像描出
2 子宮・付属器疾患
3 正常妊娠,異所性妊娠
4 周産期救急
5 産婦人科医との連携
9 深部静脈 [主]
1 正常解剖と画像描出
2 下肢深部静脈血栓症(2部位法による評価,近位下肢全体の評価)
10 皮膚軟部組織・運動器 [付]
1 骨折
2 関節液と関節穿刺
3 腱・靱帯損傷
4 皮膚軟部組織感染症,異物
11 眼球・視神経鞘
1 正常解剖と画像描出
2 評価可能な眼科疾患(眼部外傷)
3 眼外傷
4 頭蓋内圧亢進
5 施行時の注意点
12 神経ブロック・腰椎穿刺 [付]
1 神経ブロック概論
2 肩関節:腕神経叢ブロック斜角筋間アプローチ
3 前腕~手:腕神経叢ブロック腋窩アプローチ
4 手~手指:wrist block
5 股関節・大腿骨:大腿神経ブロック
6 下腿:坐骨神経ブロック膝窩アプローチ
7 多発肋骨骨折:前鋸筋膜面ブロック
8 腰椎穿刺
13 血管穿刺 [主]
1 中心静脈穿刺〔内頸静脈,鎖骨下(腋窩)静脈,大腿静脈〕
2 末梢静脈穿刺(末梢静脈挿入中心静脈カテーテル挿入,末梢静脈路確保)
3 動脈穿刺
4 REBOA,ECMO
14 小児領域 [付]
1 海外のコンセンサスと日本の現状
2 成人との相違点
3 消化器
4 泌尿器
5 皮膚軟部組織・運動器
第4章 症候別・領域横断的活用
1 FAST・EFAST [主]
1 外傷診療とPOCUS
2 FAST
3 EFAST
4 FASTの実践的活用
2 ショックと呼吸困難(ABCアプローチ) [主]
1 ABCアプローチについて
2 ショック
3 呼吸困難
3 急性腹症
1 急性腹症におけるPOCUSの役割
2 急性腹症診療におけるPOCUSの活用方法
3 妊婦の急性腹症
4 心停止 [主]
1 心停止時に超音波検査で評価すべき病態
2 心停止時の超音波プロトコル
5 新型コロナウイルス感染症
1 COVID-19肺炎における肺超音波検査
2 COVID-19肺炎管理における肺超音波検査
3 臨床での肺超音波検査の活用
4 心血管合併症評価のためのFoCUS
5 DVT超音波検査
6 感染対策を意識したPOCUS
7 超音波診断装置の感染対策
6 rapid response system
1 RRSにおけるPOCUSの活用法
7 病院前救急
1 病院前における超音波検査
2 遠隔診療
8 災害医療
1 災害医療における超音波検査の位置づけ
2 災害の種類による超音波診断装置活躍の場
3 災害の時相と活動場所からみた超音波診断装置活躍の場
4 災害医療における超音波検査のこれから
第5章 救急超音波診療と連携
1 救急外来と集中治療室の連携
1 想定される連携場面
2 救急外来,ICUにおけるPOCUS診断,診断精度
3 救急外来から,ICU,各診療科への連携
4 POCUSを用いたモニタリング
2 救急外来と手術室の連携
1 周術期超音波
2 救急医と麻酔科医,手術を行う各診療科との連携
3 救急外来で取得した超音波所見を手術室で活かすために
4 手術室は画像の目慣らしの場として活用する
5 救急外来と手術室の連携の実際
3 救急外来と超音波検査部門との連携
1 超音波検査と資格認定
2 救急外来と超音波検査部門との連携例
3 展望
4 看護師が行う救急集中治療領域の超音波検査
1 看護師が行う救急集中治療領域の超音波検査の研究成果
2 看護師がPOCUSを学び,実践していくには
索引