これだけは知っておきたい整形外科

本書を読まれるみなさんへ

　医療現場は忙しい。特に学校を卒業してしばらくは、覚えるべき業務の種類と量が膨大で、先輩の指示どおりにこれをこなそうとするだけで精一杯。そのうえ一歩間違えば取り返しのつかない結果をまねくかもしれないという緊張感でみなぎり、気がついたら一日が終わっていたということも多でしょう。ゆっくりものを考えたり、勉強する時間などとれるはずがないという人もいます。慣れれば大丈夫、先輩と同じように真似ていればいい、という意見もあります。確かに要領よく「慣れ」れば、無難に仕事をこなせるかもしれません。しかし、本当にそれでいいのでしょうか。
　人間の身体はそれぞれ異なります。臓器の形や大きさ、働き、反応など、どれを取っても同じということはありません。千差万別の患者さんを前にして、あらゆる状況に対応するためには応用力が必要です。応用力は、自分の頭で考えることでしか生まれてきません。いくら「慣れ」ても、応用力は生まれないのです。
　本書は、整形外科に配属されて間もない看護師に、基礎から患者指導の実際を幅広く学んでいただくために企画されました。他の参考書や辞典を開く必要がないよう平易な表現を用い、放射線画像やイラストを多用して、視覚的にも理解しやすいよう心がけました。一方で、重要な部分は深く掘り下げ、詳細な説明が必要な部分や用語解説は「コラム」や「Note」で補っていますので、最前線で勤務されている看護師や医師にも知識の整理や復習に活用できる内容となっています。執筆者の方々には、旧来の教科書にとらわれず、最新の知見も含めてご自身が理解して咀嚼できたものだけを記述していただきましたので、読者の皆さんの頭にしみるように入ってくるはずです。
　見るもの聞くもの全てが新鮮な時期に、本書を傍らに置いて何度も何度も読み返し、考える習慣を身につけていただきたいと思います。本書が「慣れ」ではなく自分の頭で考えて応用力を発揮できるエキスパートナースとなるための一助となれば幸いです。

　2011年11月吉日
　細野　昇

　本書を読まれるみなさんへ

Part. 1　頚椎・腰椎・脊椎
1　頚椎
　脊椎の機能解剖
　頚椎症性脊髄症
　頚椎後縦靱帯骨化症
　頚椎椎間板ヘルニア
　頚部神経根症
　上位頚椎不安定症
　転移性頚椎腫瘍と破壊性脊椎関節症（DSA）
　頚肩腕症候群と胸郭出口症候群
　外傷性頚部症候群－頚椎捻挫、むちうち損傷、低髄液圧症候群
2　腰椎
　腰椎の機能解剖
　腰椎椎間板ヘルニア
　腰部脊柱管狭窄症
　腰椎すべり症
　腰椎圧迫骨折
　転移性脊椎腫瘍
　化膿性脊椎炎・結核性脊椎炎・腸腰筋膿瘍
　いわゆる腰痛症（非特異的腰痛）
3　脊椎・その他
　黄色靱帯骨化症
　脊柱変形－側弯症と後弯
　脊髄損傷
　脊髄腫瘍

Part. 2　上肢
4　肩周辺
　肩の機能解剖
　肩関節周囲炎
　上腕骨近位端骨折
　肩腱板損傷
　肩関節脱臼と反復性脱臼
　鎖骨骨折と肩鎖関節脱臼
　上腕二頭筋長頭腱断裂
　腕神経叢損傷
　橈骨神経麻痺
5　肘関節
　上腕骨外側上顆炎
　肘部管症候群と尺骨神経麻痺
6　手関節と手指
　手関節の機能解剖
　ドゥケルバン病
　橈骨遠位端骨折とその後遺症
　手根管症候群と正中神経麻痺
　ガングリオン
　成人のばね指
　ヘバーデン結節とブシャール結節
　手関節と手指の関節リウマチ

Part. 3　股関節
7　股関節と大腿骨
　股関節の機能解剖
　変形性股関節症
　大腿骨頚部・転子部骨折
　大腿骨骨幹部骨折と大腿骨顆上骨折
　大腿骨頭壊死症
　股関節の関節リウマチと寛骨臼底突出症

Part. 4　下肢
8　膝関節と下腿
　膝関節の機能解剖
　変形性膝関節症
　膝靱帯損傷・捻挫
　半月板損傷
　結晶性関節炎
　膝の特発性骨壊死
　化膿性膝関節炎
　離断性骨軟骨炎
　膝の関節リウマチ
　脛骨骨幹部骨折
　蜂窩織炎と骨髄炎
　膝蓋骨亜脱臼
9　足関節・足部・足趾
　足関節捻挫と靱帯損傷
　足関節果部骨折
　アキレス腱断裂
　外反母趾

Part. 5　骨軟部腫瘍・小児の疾患
10　骨軟部腫瘍
　骨軟部腫瘍
　化学療法
　放射線治療
　四肢腫瘍
　骨盤部腫瘍
11　小児の疾患
　小児肘関節周囲骨折－上腕骨顆上骨折と上腕骨外顆骨折
　先天性股関節脱臼
　小児股関節疾患
　小児骨端症
　成長痛
　小児のＯ脚・Ｘ脚
　小児期の足部疾患－先天性内反足・先天性垂直距骨・扁平足
　児童虐待

付録　主な装具と使用方法

　索引