義肢装具学 第4版
PT・OT養成校向けの定評あるテキストブック
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理学療法士・作業療法士養成校向けの教科書として版を重ねる好評書。改版に際し、講義のしやすさ、学生の学びやすさを追求して、目次立てを再編成した。各部位ごとの義肢、疾患に則った装具に関する内容はもちろん、バイオメカニクス、切断に関する総論的な記述、生活支援に関わる補装具なども、図解、写真を数多く取り入れて解説している。
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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第4版の序
本書『義肢装具学』出版の端緒は,当時大阪労災病院にて毎週開いていた有志による義肢装具勉強会にあります。常連の参加者であった鈴木重行,千住秀明の両氏から,「義肢装具学についてまとまったよい教科書がなく,理学療法士/作業療法士の養成校で義肢装具学を教える先生方が困っておられる」という話がありました。それでは知識の寄せ集めでない,現場の経験や雰囲気を感じられる生き生きとした本をわれわれ自身で作ろうではないかということになったと記憶しています。
さらにもう一つ力を注いだことは,その当時,義肢装具に関して当たり前,常識と思われていることへの挑戦でした。例えば,「荷重のかからない遊脚相には,自由に屈曲できて荷重時には自動的にブレーキ力の働く大腿義足の荷重ブレーキ膝機構」が合理的とされていましたが,われわれは「ブレーキ力が作動していない(膝折れ防止機能がまだ働いていない)のに,どうして荷重をかけることができるのか?」という疑問をもち,その解決の糸口を探りました。
このような趣旨の教科書作りを目指しましたが,引き受けていただく出版社探しには難航しました。そのとき,われわれの企画意図に理解と賛同をしてくださった竹内孝仁先生により医学書院へ橋渡ししていただき,当時の国立身体障害者リハビリテーションセンター総長であった故津山直一先生からは「推薦の序」もいただいて,竹内先生と私の共同編集による初版『義肢装具学』の発行が1992年に実現しました。
今回の改訂版(第4版)に目を向けますと,これまで編集協力をお願いしてきた作業療法士/理学療法士の教育現場で豊富な経験をお持ちの古川 宏先生,林 義孝先生に編集者としてより積極的に,また新たに陳 隆明先生には私と同様に医師の立場からの編集者として,それぞれ参画をお願いし改訂作業に着手いたしました。
実のところ,第4版では前版に引き続いて担当をお願いしている項目が多くあります。その理由は,各項目がその道の専門家によって執筆され,版を重ねるごとに積み上げられ,完成度の高い内容となっているためです。その一方で,より教えやすく,学びやすい教科書を目指すという視点から目次の並び替えを行っております。
具体的には,「義肢」の部に含まれていた「切断」を独立させ,術式とリハビリテーションを中心とした項目で構成しました。「義肢」の部には,進歩の著しい「筋電義手」も新設しております。前版までは,車いす,座位保持装置,自助具などが「装具」の部に含まれており,違和感を覚えられた方もいたかと思います。今版では,この領域の需要拡大に併せて,「その他の補装具」というまとまりを設けてさらに詳しく解説しております。
高齢化社会が到来し,装具に関しては多様性が出ており,これまで以上に教育現場でもその重要性が増しております。本書では,まず総論的に装具の全体像をとらえたうえで,以降の疾患を中心とした各論にスムースにつながるよう配慮しております。学生にとっては,疾患に関する知識とその経過とともに,対応する装具を具体的にイメージできるようになっており,その点も本書の特徴ではないかと思います。
前版から好評のコラムには「感覚フィードバック装置」を新設し,さまざまな視点から義肢装具をとらえることができるような工夫をしております。
全項目を通して,新たに各項目のはじめとおわりに「学習」と「復習」のポイントをまとめ,さらに学生レベルでは理解が困難と思われるキーワードを囲みにしてわかりやすい解説を加えました。
本書が干天に慈雨のように迎えられ,ここに第4版を数えることができたのは感無量であります。長年にわたって本書を支えていただいた共同執筆者の先生方,理学療法士/作業療法士養成校の先生方,さらには読者のみなさんに心から深い感謝の意を表します。
これからも従来にも増して『義肢装具学』をご支援いただければ幸いです。
2009年1月
編集者を代表して 川村次郎
本書『義肢装具学』出版の端緒は,当時大阪労災病院にて毎週開いていた有志による義肢装具勉強会にあります。常連の参加者であった鈴木重行,千住秀明の両氏から,「義肢装具学についてまとまったよい教科書がなく,理学療法士/作業療法士の養成校で義肢装具学を教える先生方が困っておられる」という話がありました。それでは知識の寄せ集めでない,現場の経験や雰囲気を感じられる生き生きとした本をわれわれ自身で作ろうではないかということになったと記憶しています。
さらにもう一つ力を注いだことは,その当時,義肢装具に関して当たり前,常識と思われていることへの挑戦でした。例えば,「荷重のかからない遊脚相には,自由に屈曲できて荷重時には自動的にブレーキ力の働く大腿義足の荷重ブレーキ膝機構」が合理的とされていましたが,われわれは「ブレーキ力が作動していない(膝折れ防止機能がまだ働いていない)のに,どうして荷重をかけることができるのか?」という疑問をもち,その解決の糸口を探りました。
このような趣旨の教科書作りを目指しましたが,引き受けていただく出版社探しには難航しました。そのとき,われわれの企画意図に理解と賛同をしてくださった竹内孝仁先生により医学書院へ橋渡ししていただき,当時の国立身体障害者リハビリテーションセンター総長であった故津山直一先生からは「推薦の序」もいただいて,竹内先生と私の共同編集による初版『義肢装具学』の発行が1992年に実現しました。
今回の改訂版(第4版)に目を向けますと,これまで編集協力をお願いしてきた作業療法士/理学療法士の教育現場で豊富な経験をお持ちの古川 宏先生,林 義孝先生に編集者としてより積極的に,また新たに陳 隆明先生には私と同様に医師の立場からの編集者として,それぞれ参画をお願いし改訂作業に着手いたしました。
実のところ,第4版では前版に引き続いて担当をお願いしている項目が多くあります。その理由は,各項目がその道の専門家によって執筆され,版を重ねるごとに積み上げられ,完成度の高い内容となっているためです。その一方で,より教えやすく,学びやすい教科書を目指すという視点から目次の並び替えを行っております。
具体的には,「義肢」の部に含まれていた「切断」を独立させ,術式とリハビリテーションを中心とした項目で構成しました。「義肢」の部には,進歩の著しい「筋電義手」も新設しております。前版までは,車いす,座位保持装置,自助具などが「装具」の部に含まれており,違和感を覚えられた方もいたかと思います。今版では,この領域の需要拡大に併せて,「その他の補装具」というまとまりを設けてさらに詳しく解説しております。
高齢化社会が到来し,装具に関しては多様性が出ており,これまで以上に教育現場でもその重要性が増しております。本書では,まず総論的に装具の全体像をとらえたうえで,以降の疾患を中心とした各論にスムースにつながるよう配慮しております。学生にとっては,疾患に関する知識とその経過とともに,対応する装具を具体的にイメージできるようになっており,その点も本書の特徴ではないかと思います。
前版から好評のコラムには「感覚フィードバック装置」を新設し,さまざまな視点から義肢装具をとらえることができるような工夫をしております。
全項目を通して,新たに各項目のはじめとおわりに「学習」と「復習」のポイントをまとめ,さらに学生レベルでは理解が困難と思われるキーワードを囲みにしてわかりやすい解説を加えました。
本書が干天に慈雨のように迎えられ,ここに第4版を数えることができたのは感無量であります。長年にわたって本書を支えていただいた共同執筆者の先生方,理学療法士/作業療法士養成校の先生方,さらには読者のみなさんに心から深い感謝の意を表します。
これからも従来にも増して『義肢装具学』をご支援いただければ幸いです。
2009年1月
編集者を代表して 川村次郎
目次
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I部 義肢装具の基礎知識
1 歩行のバイオメカニクス (江原義弘・山本澄子)
2 義肢装具のバイオメカニクス (川村次郎)
II部 切断
1 切断総論 (陳隆明・川村次郎)
2 切断者のリハビリテーション (林義孝)
III部 義肢
1 義肢総論 (川村次郎)
2 義手 (古川宏・北山一郎)
3 筋電義手 (陳隆明・松原裕幸)
4 下腿義足 (陳隆明)
5 大腿義足 (蜂須賀研二・大峯三郎)
6 股義足 (陳隆明)
7 膝義足 (小嶋功・中川昭夫)
8 サイム義足 (吉村理)
9 足部部分義足 (長尾竜郎)
IV部 装具
1 装具総論 (渡辺英夫)
2 脳卒中片麻痺の装具 (浅見豊子)
3 対麻痺の下肢装具 (田中宏太佳)
4-A 小児装具-股関節装具 (井上明生)
4-B 小児装具-二分脊椎に対する装具療法 (芳賀信彦)
4-C 小児装具-筋萎縮症の下肢装具 (鈴木重行)
5 整形外科的治療装具 (亀山順一)
6 靴型装具,足装具 (加倉井周一)
7 体幹装具 (瀬本喜啓)
8 脳性麻痺の装具 (江口壽榮夫)
9 関節リウマチの装具 (伊勢眞樹)
10 末梢神経損傷の装具 (椎名喜美子・志水宏行)
11 手の外科の術前・術後の装具 (木野義武)
12 頸髄損傷の上肢装具 (福井信佳)
13 スポーツ傷害の装具 (中江徳彦・小柳磨毅・井上悟)
V部 その他の補装具
1 車いす (伊藤利之)
2 座位保持装具 (君塚葵)
3 杖,歩行補助具 (飛松好子)
4 起居移乗用具(ベッド・リフトなど) (古田恒輔・古川宏)
5-A 食事関連用具 (古田恒輔・古川宏)
5-B 排泄・入浴・整容・更衣関連用具 (野田和恵・古川宏)
6 障害者スポーツ用補装具 (田中理・川村慶・松田靖史)
附録 義肢装具の材料学 (大澤傑)
索引
1 歩行のバイオメカニクス (江原義弘・山本澄子)
2 義肢装具のバイオメカニクス (川村次郎)
II部 切断
1 切断総論 (陳隆明・川村次郎)
2 切断者のリハビリテーション (林義孝)
III部 義肢
1 義肢総論 (川村次郎)
2 義手 (古川宏・北山一郎)
3 筋電義手 (陳隆明・松原裕幸)
4 下腿義足 (陳隆明)
5 大腿義足 (蜂須賀研二・大峯三郎)
6 股義足 (陳隆明)
7 膝義足 (小嶋功・中川昭夫)
8 サイム義足 (吉村理)
9 足部部分義足 (長尾竜郎)
IV部 装具
1 装具総論 (渡辺英夫)
2 脳卒中片麻痺の装具 (浅見豊子)
3 対麻痺の下肢装具 (田中宏太佳)
4-A 小児装具-股関節装具 (井上明生)
4-B 小児装具-二分脊椎に対する装具療法 (芳賀信彦)
4-C 小児装具-筋萎縮症の下肢装具 (鈴木重行)
5 整形外科的治療装具 (亀山順一)
6 靴型装具,足装具 (加倉井周一)
7 体幹装具 (瀬本喜啓)
8 脳性麻痺の装具 (江口壽榮夫)
9 関節リウマチの装具 (伊勢眞樹)
10 末梢神経損傷の装具 (椎名喜美子・志水宏行)
11 手の外科の術前・術後の装具 (木野義武)
12 頸髄損傷の上肢装具 (福井信佳)
13 スポーツ傷害の装具 (中江徳彦・小柳磨毅・井上悟)
V部 その他の補装具
1 車いす (伊藤利之)
2 座位保持装具 (君塚葵)
3 杖,歩行補助具 (飛松好子)
4 起居移乗用具(ベッド・リフトなど) (古田恒輔・古川宏)
5-A 食事関連用具 (古田恒輔・古川宏)
5-B 排泄・入浴・整容・更衣関連用具 (野田和恵・古川宏)
6 障害者スポーツ用補装具 (田中理・川村慶・松田靖史)
附録 義肢装具の材料学 (大澤傑)
索引
書評
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義肢装具学の教科書の中の教科書
書評者: 森本 茂 (西大和リハビリテーション病院リハビリテーション科)
この本の初版出版は1992年である。今回の序文にも「当初,PT,OT用の義肢装具学の教科書がなかったので作成に踏み切った」とあり,編者らの強い志を持って企画された。初版は当時のPT,OTの教育に当たっていた教師陣の待望の書であった。それから17年間で3回の改訂がなされ,今回第4版が出版された。義肢装具関連の書籍がそれほど多くはない中で,改訂を重ねて行っている書である。つまり長く活用されている歴史のある書籍の待望の最新版といえる。
本文中の“学習のポイント” “復習のポイント”は授業の進行と理解度の確認に役立ち,特に“復習のポイント”は学生のみならず日ごろの診療に携わる臨床家にも即刻役に立つ。写真・シェーマが非常に多く,理解を助けてくれるだけでなく,勉強の意欲を高めてくれる。キーワード解説も親切である。7つのコラムは,読み物としても楽しめる。
この本の初版からの特徴的な方針は,歩行のバイオメカニズムを大切に解説するところである。歩行運動学の基本がまず述べられている。義肢装具学のほかの書籍も,この様式を手本にしているのではないかと思われる。
リハビリテーション手技についての説明も多く,特に切断のリハビリテーションについては,1節を割いている。筋電義手については,最新の内容が詳しく述べられている。筆頭編者の「義肢の感覚装置」についてのコラムには特に思いが込もっている。
義肢装具以外にも,障害者の生活の向上をめざした自助具など生活支援に関する項目が充実している。義肢装具にとどまらず,障害者の生活全体の向上を目標にした教科書である。車いす・座位保持装置・自助具,生活アシストエイドにもページを割いている。それは,筆頭編者がAssistive Technologyに精通されており,障害者を支援する工学技術の利用応用から,在宅生活,社会生活,障害者のスポーツ用補助装具に至るまで,本来のリハビリテーションの思想に沿って,障害者の生活すべてを含めての援助を考えているからであろう。さらには,義肢装具の材料学についても詳しい。
もともと索引が充実した書であったが,第4版ではさらに索引が充実している。目次,索引ともによくできており,特に索引は類似書籍の中では最も語数が多いと思われる。教科書としてあるいは教科書的に使われるこの書にとって,読者の便をよく考えてくれている。執筆者全員が経験症例豊富であり,そのおかげで写真とシェーマが非常に多く理解の助けとなる。
義肢装具学の教科書として幅広い範囲をカバーしており,読みやすく,義肢装具学を勉強するためには必読の書である。
今,PT・OTに求められる知識が詰まった1冊
書評者: 清水 順市 (金沢大教授・作業療法学)
本書は,改編しながら4版を重ねている。編者の「初版の序」に書かれているように,初版が出版された17年前は義肢と装具を詳細に記載した専門書は少なく,理学療法士・作業療法士に必携となるようにまとめられた本はなかったのではないか。当時はそのような中で,総合病院の整形外科外来やリハビリテーション外来において,医師,義肢装具士,理学療法士,作業療法士が参加して「義肢装具外来」や「義肢クリニック」などと称し,実践を繰り返しながら知識を積み重ねてきたようである。そのような中から生まれた本書は,臨床家に必須な内容が十分に含まれている。
本書には川村次郎氏を中心に関西地域で活躍されている医師,理学療法士,作業療法士が編者として参画している。川村氏は毎年,義肢装具学会へ出席され,多くのセッションにおいて質問され,常に新しい情報を得ようとされている。その努力を続けておられる姿勢に,私自身も見習わなければならないといつも思い知らされている。
われわれは,「義肢装具の歴史を知るため」「現在,使用されている義肢・装具の型を知るため」「一般的な知識を知るため」などの理由により専門書を必要とする。この3つ観点から本書を見ると,「現在,使用されている義肢・装具・補装具の情報を得るため」「一般的な知識を知るため」の目的に対して十分答えてくれる。その理由として,本書は改編を重ねて,今回は義肢・装具・補装具に携わっておられる41名の専門家がそれぞれの立場から詳細に記述されているからである。
内容に触れてみると5部から構成されている。I部は「義肢装具の基礎知識」として,歩行のバイオメカニクスから義足歩行の考え方がわかりやすく述べられている。II部の「切断」では断端管理を含めたリハビリテーションの考え方が詳細に記述されている。III部の「義肢」は,義手と義足に分かれている。義手そのものの構造や部品自体はここ数十年間あまり進歩が見られないが,筋電義手においては駆動用モーターと電池が小型化および高出力化するなど大きな発展をしている。今回は筋電義手の項が新規に掲載されたのでとても参考になる。
IV部の「装具」は臨床で遭遇する疾患,障害別に記述されて,さらに部位別など多面的である。同時に各項において臨床での装着例の写真が多岐にわたって掲載されているので大変わかりやすい。
V部の「その他の補装具」はページの関係で詳細に掲載できなかったものと思われ,読書としてはもう少し内容を深めてほしいところであるので次回の改訂に期待したい。
最後に,多くの施設では理学療法士は義足と体幹・下肢装具,作業療法士は義手とスプリントと業務分担をして進めてきたところが多い。しかし,近年,施設内リハビリテーションから在宅・地域でのリハビリテーションへ比重が変容し,入院・入所期間が短縮化してきている。
その上,理学療法士・作業療法士に求められる知識・技術の範囲は拡大し,「理学療法士だから義手・上肢装具はわからない,作業療法士だから義足・下肢装具は知らない」という領域分担の考えは通用しないことを思い知らされる。養成施設の教科書としてだけでなく,地域・在宅で活動している人たちの副読本として,本書を携帯することにより不足する知識を補強することが可能である。
学生・教員・臨床家の共通言語と共通概念のテキスト
書評者: 永冨 史子 (川崎医大病院リハビリテーションセンター・理学療法士)
リハビリテーションで重要な役割を担う義肢装具は,いわば一種の道具である。「義肢装具の構造と機能」についていかに詳しくても,「身体機能」と関連づけ理解していなければ,その義肢装具の機能を生かすことはできない。義肢装具を用いずに治療を行う場合でも,根拠あるアプローチの実践に,義肢装具の知識は重要である。
本書は,理学療法・作業療法学生のためのテキストとして,1992年に初版が発行された。義肢装具と関連内容を十分網羅したこの書は,編者の意図通り,地域を問わず,現在非常に多くの大学・専門学校で教科書や参考書に指定されている。
このたび,第3版の内容にさらに斬新に改訂を加え,第4版が発行された。第4版では,すべての項目に「学習のポイント」と「復習のポイント」を設け理解すべきことを明確に示し,随所の「キーワード解説」と「コラム」で,専門用語や重要な視点が解説されている。これは教員にとっても有益だろう。
II部の「切断」では「切断総論」「切断者のリハビリテーション」の項が独立し,「切断者のリハビリテーション」で大腿・下腿義足の異常歩行チェックアウトも解説されている。ダイナミック・アライメントは義足チェックの最終段階ではなく,非切断肢・断端を含む切断者のリハビリテーションに含まれる,という医師・療法士への示唆がある。
一方,上肢切断のリハビリテーションの詳細は,「義手」の項にある。緻密な義手調整と練習の同時進行が理解しやすく,「義手の機能面,重量,感覚,装飾面に限界がある」など課題にも触れて,最近の義手開発や筋電義手の項へと解説が続く。義手の全般的理解を助ける構成である。
IV部の「装具」は種類別解説に加え,疾患別に装具が解説されている。装具とは人体の病態に合わせ適用されるもの,という発想の理解に不可欠な構成である。養成校では,「装具」の項に登場する疾患の講義と義肢装具学の講義とが前後または同時期のことも少なくないだろう。いずれにしても,「疾患」で学ぶ「障害」と,その「補装具」との関連を学ぶ格好の教材として,種々の講義のネットワークに組み込まれ利用できる内容である。
「装具」から「その他の補装具」を独立させることで「装具」の範疇がより明確となった。「その他の補装具」の内容は,杖,シーティング,自助具など幅広く,すべてにおいて適応と適合が重要であることが,具体的な説明ともに丁寧に解説されている。
初版発行から今日まで,想定する主な読者は,理学療法士・作業療法士・義肢装具士の養成校学生,義肢装具の臨床経験の浅い理学療法士,作業療法士,医師,とのことである。しかし日々義肢装具に接するベテラン臨床家にとっても,基本に立ち返るよい参考書となる,との印象を持った。
多くの学生・教員・臨床家の共通言語と共通概念のテキストとして,チームでリハビリテーションを実践する際のバイブルとして,また,どの義肢装具が必要か適応とならないか,その意義ある臨床判断にも役立てたい一冊である。
書評者: 森本 茂 (西大和リハビリテーション病院リハビリテーション科)
この本の初版出版は1992年である。今回の序文にも「当初,PT,OT用の義肢装具学の教科書がなかったので作成に踏み切った」とあり,編者らの強い志を持って企画された。初版は当時のPT,OTの教育に当たっていた教師陣の待望の書であった。それから17年間で3回の改訂がなされ,今回第4版が出版された。義肢装具関連の書籍がそれほど多くはない中で,改訂を重ねて行っている書である。つまり長く活用されている歴史のある書籍の待望の最新版といえる。
本文中の“学習のポイント” “復習のポイント”は授業の進行と理解度の確認に役立ち,特に“復習のポイント”は学生のみならず日ごろの診療に携わる臨床家にも即刻役に立つ。写真・シェーマが非常に多く,理解を助けてくれるだけでなく,勉強の意欲を高めてくれる。キーワード解説も親切である。7つのコラムは,読み物としても楽しめる。
この本の初版からの特徴的な方針は,歩行のバイオメカニズムを大切に解説するところである。歩行運動学の基本がまず述べられている。義肢装具学のほかの書籍も,この様式を手本にしているのではないかと思われる。
リハビリテーション手技についての説明も多く,特に切断のリハビリテーションについては,1節を割いている。筋電義手については,最新の内容が詳しく述べられている。筆頭編者の「義肢の感覚装置」についてのコラムには特に思いが込もっている。
義肢装具以外にも,障害者の生活の向上をめざした自助具など生活支援に関する項目が充実している。義肢装具にとどまらず,障害者の生活全体の向上を目標にした教科書である。車いす・座位保持装置・自助具,生活アシストエイドにもページを割いている。それは,筆頭編者がAssistive Technologyに精通されており,障害者を支援する工学技術の利用応用から,在宅生活,社会生活,障害者のスポーツ用補助装具に至るまで,本来のリハビリテーションの思想に沿って,障害者の生活すべてを含めての援助を考えているからであろう。さらには,義肢装具の材料学についても詳しい。
もともと索引が充実した書であったが,第4版ではさらに索引が充実している。目次,索引ともによくできており,特に索引は類似書籍の中では最も語数が多いと思われる。教科書としてあるいは教科書的に使われるこの書にとって,読者の便をよく考えてくれている。執筆者全員が経験症例豊富であり,そのおかげで写真とシェーマが非常に多く理解の助けとなる。
義肢装具学の教科書として幅広い範囲をカバーしており,読みやすく,義肢装具学を勉強するためには必読の書である。
今,PT・OTに求められる知識が詰まった1冊
書評者: 清水 順市 (金沢大教授・作業療法学)
本書は,改編しながら4版を重ねている。編者の「初版の序」に書かれているように,初版が出版された17年前は義肢と装具を詳細に記載した専門書は少なく,理学療法士・作業療法士に必携となるようにまとめられた本はなかったのではないか。当時はそのような中で,総合病院の整形外科外来やリハビリテーション外来において,医師,義肢装具士,理学療法士,作業療法士が参加して「義肢装具外来」や「義肢クリニック」などと称し,実践を繰り返しながら知識を積み重ねてきたようである。そのような中から生まれた本書は,臨床家に必須な内容が十分に含まれている。
本書には川村次郎氏を中心に関西地域で活躍されている医師,理学療法士,作業療法士が編者として参画している。川村氏は毎年,義肢装具学会へ出席され,多くのセッションにおいて質問され,常に新しい情報を得ようとされている。その努力を続けておられる姿勢に,私自身も見習わなければならないといつも思い知らされている。
われわれは,「義肢装具の歴史を知るため」「現在,使用されている義肢・装具の型を知るため」「一般的な知識を知るため」などの理由により専門書を必要とする。この3つ観点から本書を見ると,「現在,使用されている義肢・装具・補装具の情報を得るため」「一般的な知識を知るため」の目的に対して十分答えてくれる。その理由として,本書は改編を重ねて,今回は義肢・装具・補装具に携わっておられる41名の専門家がそれぞれの立場から詳細に記述されているからである。
内容に触れてみると5部から構成されている。I部は「義肢装具の基礎知識」として,歩行のバイオメカニクスから義足歩行の考え方がわかりやすく述べられている。II部の「切断」では断端管理を含めたリハビリテーションの考え方が詳細に記述されている。III部の「義肢」は,義手と義足に分かれている。義手そのものの構造や部品自体はここ数十年間あまり進歩が見られないが,筋電義手においては駆動用モーターと電池が小型化および高出力化するなど大きな発展をしている。今回は筋電義手の項が新規に掲載されたのでとても参考になる。
IV部の「装具」は臨床で遭遇する疾患,障害別に記述されて,さらに部位別など多面的である。同時に各項において臨床での装着例の写真が多岐にわたって掲載されているので大変わかりやすい。
V部の「その他の補装具」はページの関係で詳細に掲載できなかったものと思われ,読書としてはもう少し内容を深めてほしいところであるので次回の改訂に期待したい。
最後に,多くの施設では理学療法士は義足と体幹・下肢装具,作業療法士は義手とスプリントと業務分担をして進めてきたところが多い。しかし,近年,施設内リハビリテーションから在宅・地域でのリハビリテーションへ比重が変容し,入院・入所期間が短縮化してきている。
その上,理学療法士・作業療法士に求められる知識・技術の範囲は拡大し,「理学療法士だから義手・上肢装具はわからない,作業療法士だから義足・下肢装具は知らない」という領域分担の考えは通用しないことを思い知らされる。養成施設の教科書としてだけでなく,地域・在宅で活動している人たちの副読本として,本書を携帯することにより不足する知識を補強することが可能である。
学生・教員・臨床家の共通言語と共通概念のテキスト
書評者: 永冨 史子 (川崎医大病院リハビリテーションセンター・理学療法士)
リハビリテーションで重要な役割を担う義肢装具は,いわば一種の道具である。「義肢装具の構造と機能」についていかに詳しくても,「身体機能」と関連づけ理解していなければ,その義肢装具の機能を生かすことはできない。義肢装具を用いずに治療を行う場合でも,根拠あるアプローチの実践に,義肢装具の知識は重要である。
本書は,理学療法・作業療法学生のためのテキストとして,1992年に初版が発行された。義肢装具と関連内容を十分網羅したこの書は,編者の意図通り,地域を問わず,現在非常に多くの大学・専門学校で教科書や参考書に指定されている。
このたび,第3版の内容にさらに斬新に改訂を加え,第4版が発行された。第4版では,すべての項目に「学習のポイント」と「復習のポイント」を設け理解すべきことを明確に示し,随所の「キーワード解説」と「コラム」で,専門用語や重要な視点が解説されている。これは教員にとっても有益だろう。
II部の「切断」では「切断総論」「切断者のリハビリテーション」の項が独立し,「切断者のリハビリテーション」で大腿・下腿義足の異常歩行チェックアウトも解説されている。ダイナミック・アライメントは義足チェックの最終段階ではなく,非切断肢・断端を含む切断者のリハビリテーションに含まれる,という医師・療法士への示唆がある。
一方,上肢切断のリハビリテーションの詳細は,「義手」の項にある。緻密な義手調整と練習の同時進行が理解しやすく,「義手の機能面,重量,感覚,装飾面に限界がある」など課題にも触れて,最近の義手開発や筋電義手の項へと解説が続く。義手の全般的理解を助ける構成である。
IV部の「装具」は種類別解説に加え,疾患別に装具が解説されている。装具とは人体の病態に合わせ適用されるもの,という発想の理解に不可欠な構成である。養成校では,「装具」の項に登場する疾患の講義と義肢装具学の講義とが前後または同時期のことも少なくないだろう。いずれにしても,「疾患」で学ぶ「障害」と,その「補装具」との関連を学ぶ格好の教材として,種々の講義のネットワークに組み込まれ利用できる内容である。
「装具」から「その他の補装具」を独立させることで「装具」の範疇がより明確となった。「その他の補装具」の内容は,杖,シーティング,自助具など幅広く,すべてにおいて適応と適合が重要であることが,具体的な説明ともに丁寧に解説されている。
初版発行から今日まで,想定する主な読者は,理学療法士・作業療法士・義肢装具士の養成校学生,義肢装具の臨床経験の浅い理学療法士,作業療法士,医師,とのことである。しかし日々義肢装具に接するベテラン臨床家にとっても,基本に立ち返るよい参考書となる,との印象を持った。
多くの学生・教員・臨床家の共通言語と共通概念のテキストとして,チームでリハビリテーションを実践する際のバイブルとして,また,どの義肢装具が必要か適応とならないか,その意義ある臨床判断にも役立てたい一冊である。