医師による医師のためのChatGPT入門 0(ゼロ)
なぜ,あの医師はAIを使わないのか
「ゼロ」だからこそ見える景色がある。心の動きから読み解く生成AI入門
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好評の『医師による医師のためのChatGPT入門』シリーズ最新刊。AIの進化とともに歩んできた道のりから、いったん立ち止まり、原点に還る一冊です。開業30年、AIに懐疑的な鉄扉先生が新たに登場。おーつか先生との対話に「行動経済学×AI」を掛け合わせ、初心者には生成AIを安全に踏み出せる第一歩を、既刊読者には新たな気づきを届けます。各章とも実用パート付きで、現場で使えるノウハウも得られる1冊です。
| シリーズ | 医師による医師のためのChatGPT入門 |
|---|---|
| 著 | 大塚 篤司 |
| 発行 | 2026年10月判型:B5頁:264 |
| ISBN | 978-4-260-06676-1 |
| 定価 | 4,400円 (本体4,000円+税) |
更新情報
- 序文
- 目次
- 付録・特典
序文
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序
ある地方医師会の講演会で,こう怒鳴られたことがある.
「先生,こんなもの使ってたら若い医者が育たんでしょう!」
質疑応答の時間であった.会場の後ろから飛んできた太い声に,100人ほどの視線がいっせいに動いた.内科の開業医で,30年以上,その地域で患者を診てきた先生であった.
私は壇上で一瞬,言葉を失った.だが,あとで落ち着いて考えてみて,思ったのはこうである.
あの先生は,遅れていたのではない.守るべきものを持っていただけである.
本書は,その日の会場にいらした先生のような方のために書いた.
生成AIが気になっていても触っていない.若手に勧められても,はぐらかしてしまう.自分が遅れているのではという,わずかな後ろめたさはある.それでも,30年かけて積み上げてきた臨床の感覚を,得体の知れないものに預ける気にはなれない──.
その慎重さは,恥ずかしいことでも,遅れていることでもない.むしろ,患者を守るために慎重でいたいという,医師として当然の感覚であると私は考える.
本書は,シリーズ『医師による医師のための ChatGPT入門』の4冊目で,「ゼロ」と名づけた.知識ゼロから読めるという意味であると同時に,AIとの心理的な距離をゼロにすることを目指している.ChatGPTの細かい機能を網羅する本ではない.「なぜ使えないのか」「なぜためらうのか」という心の動きに向き合いながら,安全に最初の一歩を踏み出すための本である.
既刊1~3を読んでくださった方にも,本書がはじめてという方にも,同じ入口で読めるよう構成した.1~3の内容は,本書を読むのに必要ではない.
本書には,もう1つの読み方がある.各章に散りばめた行動経済学のキーワードである.現状維持バイアス,損失回避,アンカリング効果──こうした心の仕組みを知ることは,AIを使うかどうかの判断だけでなく,日々の臨床や患者とのコミュニケーションにも役立つはずである.
先ほど紹介した,会場で怒鳴った先生には,鉄扉 開(てっぴ ひらく)という名前の医師として,本書に登場していただく.私と鉄扉先生の,1年あまりの対話が,本書の骨格となっている.
それでは,物語を始める.ある夏の午後,私の研究室に,1人の若い医師が訪ねてくる場面から.
2026年8月
大塚篤司
目次
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▪ 登場人物紹介
▪ Web付録の使い方
プロローグ──ある産休前の午後
第1章 出会い──あの日,講演会で怒鳴られた AIを「使わない」には,ちゃんと理由がある
・ 講演会で怒鳴られた日
・ 懇親会にて──「本当は気になっとる」
・ [解説] なぜ人は新しいものを拒むのか──プロスペクト理論と損失回避
・ 僕が ChatGPTに初めて触れた日
・ [実践] ChatGPTに「一言だけ」話しかけてみる
・ [解説] 損失回避を乗り越えるコツ──小さな成功体験の力
・ 第1章のまとめ
第2章 最初の一歩──なぜ聞き方で答えが変わるのか AIを使いこなす秘訣は「話しかけ方」にある
・ 「やっぱり使えん機械じゃ」
・ 聞き方を変えると,別の機械になる
・ [解説] なぜ聞き方で答えが変わるのか──アンカリング効果とフレーミング効果
・ [悪/良プロンプト] 治療について判断したいとき(フレーミング効果)
・ 僕も最初は「一般論しか出てこない」に悩んだ
・ [実践] プロンプト基本6原則──覚えるのはこれだけ
・ 【悪いプロンプト/良いプロンプト】を並べてみる
・ [悪/良プロンプト] 薬の選び方を相談したいとき
・ 「いい質問」は,医師がすでに持っている技術
・ [解説] プロンプトは“問診”に似ている
・ 第2章のまとめ
第3章 まずは安全に使う 30年の守秘義務に,現代の道具を足す
・ 「ワシは何を,どう怖がればいいんじゃ」
・ 怖さを感覚で扱わない
・ 信号機ルール
・ 迷ったときの3秒判断
・ 診療所で迷いやすい5つの例
・ 守るべきものは4本しかない
・ 「学習オフ」と「ZDR」は別物
・ 患者一人ひとりに同意を取る話なのか
・ 入力前のセルフチェック5項目
・ 「効率化」と「省略」はまったく別物
・ 第3章のまとめ
第4章 クリニックの日常業務で使ってみる① 文書作成編 “最初の1枚”は,患者情報を一切含まないところから
・ 「ワシは何から始めればいい?」
・ [実践] 最初の一歩は“●の文書作成”から
・ 例①:院内掲示文──“夏季休診のお知らせ”
・ [悪/良プロンプト] 夏季休診の掲示文を書きたいとき
・ 例②:患者向けお知らせ──“インフルエンザ予防接種のご案内”
・ これは“告知不要”な使い方
・ [解説] デフォルト効果とナッジ──“良い初期設定”が日常業務を軽くする
・ 例③:紹介状のたたき台──ここから●領域
・ [危険/安全なプロンプト] 紹介状のたたき台を作りたいとき
・ 紹介状でAI告知は必要か
・ [実践] 「自分専用デフォルト」を作って貼っておく──プロンプトの型の資産化
・ 第4章のまとめ
第5章 クリニックの日常業務で使ってみる② 情報収集・学習編 AIは“答え”ではなく“自分では集めない視点”を運ぶ道具
・ 「ガイドラインが多すぎて,読みきれんのじゃ」
・ [解説] 確証バイアス──“自分の意見を補強する情報”ばかり集めてしまう
・ [悪/良プロンプト] 自分の治療方針を確認したいとき
・ 例①:ガイドラインの要点整理(●参照元明示つき)
・ [悪/良プロンプト] ガイドラインを読む順番を整えたいとき
・ [実践] “反論を教えてください”プロンプト──確証バイアスを意図的に崩す
・ [解説] 情報過多(Information Overload)──多すぎると,人は動けなくなる
・ 例②:論文の下読み──“この論文を読むべきか”をAIに判断させる
・ [解説] ハルシネーション──“知らないことも自信満々に答えてしまう”
・ [実践] 別AIによるクロスチェックの基本
・ [悪/良プロンプト] 最新エビデンスを聞きたいとき
・ 例③:院内勉強会の骨子づくり(●)
・ [実践] AIに“楽しいこと”をさせない──疲れる作業を仕分ける
第6章 「若い医者がバカになる」は本当か? AIを先に使うと考える力が弱くなり,自分で考えたあとで使うと強くなる
・ 「先生,ワシはまだ納得してないぞ」
・ [解説] 自動化バイアス──AIの答えを,なぜか信じてしまう
・ AIが当たるようになると,何が起きるか
・ [解説] 権威バイアス──「大企業のAIだから正確だ」
・ [悪/良プロンプト] 最新の薬の情報を聞きたいとき
・ [解説] 認知的オフローディング──“考える”をAIに預けると,考える力そのものが鈍る
・ 「AIありでできる」と「AIなしでできる」は,違う
・ [解説] deskilling(脱技能化)──使わない能力は,静かに落ちる
・ 余談──僕の英語力は,AIと引き換えに,だいぶ錆びた
・ 患者の“前提”に,AIが引きずられる──最初の“前提”に支配されるリスク
・ [悪/良プロンプト] 鑑別診断の幅を広げたいとき
・ 外来に“来なかった”患者──AIで「大丈夫」と言われた人たち
・ 安全面──医師法第20条の“自ら診察”という重さ
・ [実践] 本書の●を,第6章の視点で確定する
・ “AI後出しルール”──先に自分,次にAI
・ 道具紹介:臨床医のための OpenEvidence
・ [悪/良プロンプト] OpenEvidenceに臨床疑問を投げるとき
・ 「若い医者がバカになる」への回答
第7章 クリニック経営にAIを活かす──そして,引き継ぎへ 「医師でない部分の仕事」を,30年分ほぐしてみる
・ 「経営の話は,ワシの苦手分野じゃ」
・ [解説] サンクコスト効果──“もうこれだけやってきたから”が判断を歪める
・ 例①:クリニックのホームページを,AIと一緒に書き直す(●)
・ [解説] ホームページにAI文書を載せるときの“医師の責任”
・ 例②:求人票と面接質問(●採用情報の線引きは注意)
・ [解説] 採用情報の線引き──“採用プロセス”に応募者情報は入れない
・ [解説] 双曲割引──“いまの面倒”が“将来の楽”より重く感じる
・ 例③:患者向け FAQ(●)
・ [解説] AIを使ったことを,患者にどう伝えるか──3段階の基準
・ おまけ:AIが電話もかけてくれる時代に
・ 後継者への引き継ぎ──“30年をどう渡すか”
・ [解説] 引き継ぎ資料と患者情報──個別症例は書かない,パターンとして残す
・ 鉄扉先生への宿題
第8章 ChatGPTだけじゃない──生成AIの使い分け 「結局どれを使えばいいんじゃ?」への,答え方の話
・ 「ChatGPTだけで,いいのかねえ」
・ [解説] 選択のパラドックスと“満足化”
・ ブランドではなく“機能軸”で並べてみる
・ [実践] “業界1位のAI”に振り回されない──マイ・ベンチマークの作り方
・ [悪/良プロンプト] “マイ・ベンチマーク”で候補AIを比べる
・ “最強”より“十分”──満足化の実践
・ [実践] 満足化でAIを1つ決める3ステップ
・ 契約条項の読み方──“機能で選ぶ”ではなく“契約で選ぶ”
・ [悪/良プロンプト] AIサービス選びの相談
・ 鉄扉先生の“マイ・AIセット”を決める
・ 最後に──次に作るのは,“自分だけの道具”
第9章 自分だけの道具をつくる──アイさん,画面の向こうから 「ワシの手元に,チェッカーが欲しい」
・ 「診療は楽になった.だが,1つだけ残っとる」
・ 画面越しに3世代が揃う
・ なぜ“自分で作ったもの”は,買ってきたものより手になじむのか
・ [解説] IKEA効果──自分で組み立てたものは,買ってきたものより価値が高く感じる
・ Claude Coworkという道具──“会話で作る”を可能にする
・ 先に線を引く──医療機器との境界
・ フォルダ1つだけの約束──Claude Coworkの契約と運用
・ アイさんのヒアリング──6原則がそのままスキル定義になる
・ 画面を見ながら,道具が立ち上がる
・ ここで1回,悪い例を見る
・ [悪/良プロンプト] 机上の“飲み合わせ思い出し補助”を依頼する
・ 鉄扉先生の手による,1セルずつの作業
・ アイさんの一言──30年は,道具に宿る
・ 画面が切れたあとの,2人の対話
・ 3か月後を見据えて──“育てる”ためのプロンプト
・ [悪/良プロンプト] 3か月後にチェッカーを育てる
エピローグ──花咲アイ,戻ってくる
・ [最後に] ナラティブバイアスと,ピークエンドの法則
付録
A 本書プロンプト集
B チェックリスト集
C 用語集
D ワークシート
E 療機関向け生成AIサービス確認シート
・ 参考文献
索引
付録・特典
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