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日本うつ病学会 うつ病診療ガイドライン2025

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ゼロベースから全面的に再構築されたガイドライン。システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し、益と害のバランスを勘案のうえ、最適と考えられる推奨を提示する。臨床的必要性に即した構成のもと、ライフステージ、重症度、治療フェーズに応じた個別性の高い診療を実現。患者と医療者の相互理解と納得のもとで治療選択を支援する。複雑なうつ病診療で迷わないための、確かな地図となる一冊。

監修 日本うつ病学会
編集 うつ病診療ガイドライン 作成ワーキンググループ
発行 2026年06月判型:B5頁:296
ISBN 978-4-260-06533-7
定価 6,930円 (本体6,300円+税)

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 日本うつ病学会は,2012年に初版の「日本うつ病学会治療ガイドラインII.大うつ病性障害」を公表し,その後2013年,2016年と計2度の改訂を行ってきた.これらの改訂では,初版の構成を維持したまま,新たな知見や臨床現場のニーズを反映しながら必要な内容を加筆・修正し新たな治療手段や科学的根拠(エビデンス)をアップデートしてきた.しかしながら,その結果として全体の構成が複雑化し,読者にとってガイドラインの全体像や主旨が把握しにくくなっていたことは否めない.
 一方で,近年では診療ガイドラインに対する国際的な要請として,作成過程の科学的妥当性,透明性,体系性の確保が一層重視されるようになってきた.特に日本医療機能評価機構による「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」は,国内においても診療指針の質を担保する共通基盤として機能しており,精神科領域でもその重要性が増している.当学会が2023年に公表した『日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023』では,Mindsの作成基準に準拠した全面的な再構築が行われ,これが本ガイドライン大改訂の直接的な先例ともなった.
 本うつ病診療ガイドライン(2025年版)は,こうした要請を踏まえ,従来の加筆修正型の手法から脱却し,ゼロベースから全面的に構築された初の改訂版である.第1の特徴は,Mindsマニュアルに則り,エビデンスに基づく推奨を,システマティックレビュー(SR)を通じて体系的に導出した点にある.これは「健康に関する重要な課題について,医療利用者と提供者の意思決定を支援するために,システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し,益と害のバランスを勘案して,最適と考えられる推奨を提示する」という診療ガイドラインの定義に則った取り組みである.
 第2の特徴として,本改訂では実臨床に即した課題設定を重視し,臨床的必要性と乖離しない構成を追求した点がある.第1章では「治療計画の策定」に焦点を当て,うつ病診療の出発点となる重要なプロセスをナラティブに整理している.各章の構成においては,冒頭で提示するBQX-1において「その治療に際してなにを考慮すべきか?」という臨床的視点からの問いかけを提示し,続くCQX-2ではSRの概要に加え,SR実施が困難だったが臨床上重要と考えられる文献情報を取り上げている.また,児童・思春期,周産期,老年期といったライフステージや重症度,そして睡眠障害やDSM-5以降用いられている特定用語といったこれまで以上に詳細に分類した“サブタイプ”に対応した横軸と,後続治療(初回の抗うつ薬で効果が不十分な場合),さらなる段階の治療(後続治療で効果不十分な場合),維持期治療といった,“治療過程のフェーズ”に対応した縦軸という観点から独立した章設定を行い,より個別性の高い診療支援を実現している.さらに,SRの形式に適さないが臨床上重要,あるいは今後さらなる臨床活用が期待されると判断された7つのテーマについては「トピックス」として構成した.加えて,図表やフローチャートを多用することで,読者が臨床実践のなかで自らの診療課題と照らし合わせながら,複雑なうつ病診療で迷わない地図として読み進められるよう工夫を施している.
 本改訂版は,患者,家族,支援者,医療従事者,法曹関係者といった多様なステークホルダーとの協働により作成された.精神科医の専門的視点に加え,薬剤師,心理職,看護師,作業療法士などのメディカルスタッフ,そして患者や家族の立場から寄せられた臨床上の疑問や推奨内容に関するご意見を積極的に取り入れ,慎重に検討を重ねた.
 この場を借りて,貴重なご協力を賜ったメディカルスタッフおよび患者・家族の皆様に対し,心より深く感謝申し上げる.
 また,本改訂にあたっては,日本精神神経学会に協力団体としてキックオフ会議より参画いただき,各種検討会議および推奨決定会議を通じて,同学会からの建設的かつ実践的なご意見が随時フィードバックされ,本ガイドラインの内容にも反映された.
 本ガイドラインは,うつ病の診療に携わる医療従事者を支援することを目的として作成されたものであり,診療現場における医師の裁量権を制限するものではない.また,いかなる意味においても法的拘束力を有するものではなく,個々の患者の背景や症状,価値観に応じた柔軟な臨床判断が常に尊重されるべきである.標準的な推奨を提供することはあくまで出発点であり,すべてのケースにおいてそれが唯一の「正解」となるわけではない.医療提供者は本ガイドラインを参考としつつ,各患者の状況に応じた最善の対応を選択していく必要がある.
 本ガイドラインはまた,医療提供者と患者がともに治療方針を考える共同意思決定(shared decision making:SDM)を推進するための実用的資料としても活用されることを期待している.推奨の背景には,治療効果・副作用・費用・実現可能性など,多面的な視点が組み込まれており,患者と医療者の相互理解と納得のもとで治療選択を進める支援となるだろう.
 今後も,うつ病診療をめぐる新たな科学的知見や社会的要請に対応するべく,本ガイドラインは適宜見直し・更新を行っていく予定である.
 本ガイドラインが,患者,家族,医師,医療従事者にとって,より良い診療の実現と回復支援の一助となることを,心より願っている.

 2026年4月1日

 うつ病診療ガイドライン作成ワーキンググループ代表・責任者
 加藤 正樹

 日本うつ病学会理事長
 うつ病診療ガイドライン作成ワーキンググループ統括
 渡邊衡一郎

 ガイドライン検討委員会委員長
 うつ病診療ガイドライン作成ワーキンググループ統括
 馬場  元

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第1章 治療計画の策定
 [BQ1-1] うつ病はどのような疾患か
 [BQ1-2] うつ病の診断の進め方はどのようなものか
 [BQ1-3] うつ病の症状・経過の多様性はどのように診断に反映されるのか
 [BQ1-4] うつ病治療の基本的な進め方はどのようなものか
 [BQ1-5] ライフステージごとにどのような配慮が必要か(児童・思春期,成人,周産期,老年期)
 [BQ1-6] うつ病に併存する身体疾患にはどのような配慮が必要か
 [BQ1-7] うつ病の治療において,どのような場合に入院を検討すべきか
 [BQ1-8] 治療中の自殺関連行動に,どのように対処することが望ましいか
 [BQ1-9] うつ病の治療において,どのような生活習慣が望ましいか

第2章 軽度うつ病
 [BQ2-1] 軽度うつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ2-2] 軽度うつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [CQ2-3] 軽度うつ病に抗うつ薬は有用か
 [CQ2-4] 軽度うつ病に精神療法は有用か

第3章 中等度/重度うつ病
 [BQ3-1] 中等度/重度うつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ3-2] 中等度/重度うつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [CQ3-3] 中等度/重度うつ病に新規抗うつ薬は有用か
 [CQ3-4] 中等度/重度うつ病に精神療法は有用か
 [CQ3-5] うつ病の急性期療法として電気けいれん療法(ECT)は有用か
 [CQ3-6] 中等度/重度うつ病に治療初期からの2剤の抗うつ薬併用療法は有用か
 [CQ3-7] 中等度/重度うつ病に抗うつ薬とベンゾジアゼピン系抗不安薬および睡眠薬の併用療法は有用か

第4章 児童・思春期うつ病
 [BQ4-1] 児童・思春期うつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ4-2] 児童・思春期うつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [CQ4-3] 児童・思春期うつ病に精神療法は有用か
 [CQ4-4] 児童・思春期うつ病に抗うつ薬は有用か
 [CQ4-5] 児童・思春期うつ病に対してその他の有用な治療はなにか

第5章 周産期うつ病
 [BQ5-1] 周産期うつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ5-2] 周産期うつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [CQ5-3] 妊娠中のうつ病に抗うつ薬は有用か
 [CQ5-4] 周産期の抑うつ状態に精神療法は有用か
 [CQ5-5] 産後うつ病に抗うつ薬は有用か

第6章 老年期うつ病
 [BQ6-1] 老年期うつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ6-2] 老年期うつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [CQ6-3] 老年期うつ病に精神療法は有用か
 [CQ6-4] 老年期うつ病に抗うつ薬は有用か
 [CQ6-5] 老年期DTD(難治性抑うつ)に対する薬物療法はなにか
 [CQ6-6] 老年期うつ病にニューロモデュレーション(ECT, rTMS療法)は有用か
 [CQ6-7] 老年期うつ病に対してその他の有用な治療はなにか

第7章 特定用語
 [BQ7-1-1] 不安性の苦痛を伴ううつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ7-1-2] 不安性の苦痛を伴ううつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [BQ7-2-1] 混合性の特徴を伴ううつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ7-2-2] 混合性の特徴を伴ううつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [BQ7-3-1] メランコリアの特徴を伴ううつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ7-3-2] メランコリアの特徴を伴ううつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [BQ7-4-1] 非定型の特徴を伴ううつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ7-4-2] 非定型の特徴を伴ううつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [BQ7-5-1] 精神症性の特徴を伴ううつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ7-5-2] 精神症性の特徴を伴ううつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [CQ7-5-3] 精神症性の特徴を伴ううつ病において,抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法はそれぞれの単剤より有用か
 [CQ7-5-4] 精神症性の特徴を伴ううつ病において,抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法で改善した患者の維持期治療として併用療法はそれぞれの単剤より有用か
 [BQ7-6-1] カタトニアを伴ううつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ7-6-2] カタトニアを伴ううつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [BQ7-7-1] 季節性のパターンを伴ううつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ7-7-2] 季節性のパターンを伴ううつ病に対する治療法はなにか(治療総論)

第8章 不眠症状を伴ううつ病
 [BQ8-1] 不眠症状を伴ううつ病の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ8-2] 不眠症状を伴ううつ病に対する治療法はなにか(治療総論)
 [CQ8-3] 不眠症状を伴ううつ病に抗うつ薬と睡眠薬の併用療法は抗うつ薬の単剤と比べて有用か
 [CQ8-4] 不眠症状を伴ううつ病に鎮静作用を有する向精神薬(抗うつ薬,抗精神病薬など)は有用か
 [CQ8-5] 不眠症状を伴ううつ病に不眠に対する認知行動療法(CBT for insomnia:CBT-I)は有用か

第9章 後続治療
 [BQ9-1] 初期治療で十分な効果が得られなかったうつ病に後続治療(next-step treatment)を開始する際,考慮すべきことはなにか
 [CQ9-2] 初期治療で十分な効果が得られなかったうつ病患者の後続治療の方法はなにか(治療総論)
 [CQ9-3] 初期治療で十分な効果が得られなかったうつ病の後続治療として現在使用している抗うつ薬を増量することは有用か
 [CQ9-4] 初期治療で十分な効果が得られなかったうつ病の後続治療として別の抗うつ薬へ切り替えることは有用か
 [CQ9-5] 初期治療で十分な効果が得られなかったうつ病の後続治療として別の抗うつ薬による補助療法は有用か
 [CQ9-6] 初期治療で十分な効果が得られなかったうつ病の後続治療として抗精神病薬による補助療法は有用か
 [CQ9-7] 初期治療で十分な効果が得られなかったうつ病の後続治療として別の抗うつ薬や抗精神病薬以外の薬剤による補助療法は有用か
 [CQ9-8] 初期治療で十分な効果が得られなかったうつ病の後続治療として精神療法による付加的治療を行うことは有用か

第10章 さらなる段階の治療
 [BQ10-1] 後続治療で十分な効果が得られなかったうつ病患者の治療開始に際して考慮すべきことはなにか
 [CQ10-2] 後続治療で十分な効果が得られず,さらなる段階の治療を要する際の治療法はなにか(治療総論)
 [CQ10-3] 2剤以上の抗うつ薬治療に効果が不十分なうつ病に抗精神病薬による補助療法は有用か
 [CQ10-4] 2剤以上の抗うつ薬治療に効果が不十分なうつ病に気分安定薬による補助療法は有用か
 [CQ10-5] 2剤以上の抗うつ薬治療に効果が不十分なうつ病に精神療法による付加的治療は有用か
 [CQ10-6] 2剤以上の抗うつ薬治療で効果が不十分なうつ病に電気けいれん療法(ECT)による付加的治療は有用か
 [CQ10-7] DTD(難治性抑うつ)に反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法による付加的治療は有用か

第11章 維持期治療
 [BQ11-1] うつ病の維持期治療において考慮すべきことはなにか
 [CQ11-2] 寛解後の維持期の治療法はなにか(治療総論)
 [CQ11-3] 抗うつ薬で寛解したうつ病患者に抗うつ薬の継続は有用か
 [CQ11-4] 補助療法で寛解したうつ病患者において追加薬の継続は有用か
 [CQ11-5] 薬物療法で寛解したうつ病患者に精神療法を行うことは有効か
 [CQ11-6] 電気けいれん療法(ECT)によって反応または寛解したうつ病の維持期治療においてECTは有用か
 [CQ11-7] 急性期反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法で反応または寛解したうつ病の維持期治療において,rTMS療法は有用か

トピックス
 [トピックス1] 診断基準を満たさない閾値下の抑うつエピソード
 [トピックス2] うつ病に対する精神療法
 [トピックス3] うつ病治療における漢方薬
 [トピックス4] 時間生物学的治療
 [トピックス5] 労働者のうつ病
 [トピックス6] 抗うつ薬の薬物相互作用
 [トピックス7] 今後期待される治療

付録

利益相反情報
索引

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