基礎教養コレクション
生物学

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個体レベルから分子レベルまで、ストーリー性をもたせた記述と、カラーの美しい図版により、生物学への興味を引き出します。生物学の発展や高等学校での教育内容をふまえ、細胞レベルや神経系の記述、染色体・遺伝子・DNAの説明の流れを充実させています。また、古典的な遺伝学や物理・化学の基礎知識をまとめた巻末資料や、随所に設けた側注により、専門用語でつまずかないように工夫されています。

*本書は「シリーズ講座」の1冊として刊行されたものを、装丁を改め「基礎セレクション」としたものです
増田 隆一 / 北田 一博 / 小川 宏人 / 木村 敦
発行 2026年01月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-06299-2
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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はしがき

 科学の諸分野のなかで,生物学ほど研究の進展が速い分野はない。それは,生物学が包含する専門的な学問領域が,分子生物学から環境生物学にいたる広大なものであり,かつ研究・解析のレベルも分子から細胞・個体を経て地球にいたる多くの階層により構成されるからである。それぞれの専門分野,および解析レベルでの研究が日進月歩で進み,新たな発見が次々に報告されている。
 もとより一般教育のための教科書がこれらにふりまわされる必要はない。むしろ教科書としては,生物学の基幹をなす古典的概念や考え方が新しい知見に対しても有効であることを検証し,これらを学ぶ者に伝えていかねばならない。もしも旧来の概念・考え方が否定され,それにかわるものが提唱されたときは,その根拠と展望を示す必要がある。これまで不明であったことが明らかにされたのであれば,その研究手法的な背景も含めて伝えていかねばならない。
 最近では,学問分野が極度に細分化されたため,新たな知見を見すえながら生物学を1つの科目として教科書にまとめるには大きな困難が伴うが,まさにそれゆえにこそ,一般教育のための生物学教科書の使命には大切なものがあるといえる。
 今日,医療の現場と基礎的な生物学の知識・概念は,かつてないほどに近づいている。がんやエイズといった病気を理解するためにはもちろんのこと,再生医療や生殖医療といった先端的な医療を正しく理解してこれに携わるためには,生物学の知識を単に断片的に集めればよいということではなく,体系的に学ぶという高度な生物学的な訓練が必要となるであろう。
 本書は看護学教育の基礎課程を対象とする教科書として,1969年発行の初版以来,生物学の進展を取り入れながら版を重ねてきた。第11版となる今回の改訂では,細胞の構造と機能およびエネルギーと酵素を取り扱ってきた従来の第1章と第2章を統合し,記述内容をそれ以降の章の理解に資するものとなるように,流れとともに整理した。また,現在の高等学校における生物学教育の状況をふまえ,メンデルの遺伝の法則を本文から巻末資料へと移動し,かわりに生命現象と遺伝物質たるDNAとの関係に,より紙幅を割くこととした。また,新たに多数のカラー写真を添えることで,読者の直感的な理解を促すように工夫した。
 生物が示す形態や機能は,進化の過程でそれぞれの種の生息環境に適応して多様化してきた。ヒトの生命機能も例外ではない。進化は学問としての生物学の中心命題であり,生物学を生理学,生化学などといったその関連領域と区別する最大の特徴である。本書では,これまでの版での比較生物学的な方針を継承し,本書で学ぶ学生の皆さんが,ヒトを含む生命現象について,広く生物学的視野のなかでその理解を深められるように配慮した。著者の意図がどこまで実現できているかは,本書で学び,また,本書で教えられる諸賢の判断にゆだねられる。ご批判,ご提言を頂くことを心から期待する所以である。

 2025年11月
 著者一同

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序章 生物学を学ぶにあたって (増田隆一)
 A 生命と生物学
  1 生命の特徴
  2 生物学と生命科学
 B 医療の基礎科学としての生物学

第1章 生命体のつくりとはたらき (増田隆一)
 A 生命現象のとらえ方
 B 細胞の構造と細胞間の関係
  1 真核細胞と原核細胞
  2 細菌とウイルス
  3 真核細胞の構造
 C 細胞の化学成分
  1 水
  2 タンパク質
  3 核酸
  4 脂質
  5 炭水化物
  6 無機塩類
 D 細胞内外の輸送
  1 細胞膜の透過性
  2 受動輸送
  3 能動輸送
  4 エンドサイトーシスとエクソサイトーシス
  5 オートファジー
  6 細胞内輸送
 E 酵素とそのはたらき
 F 生体内の化学反応
  1 代謝
  2 エネルギーの変換とATP
 G ATPの生合成
  1 光合成
  2 解糖系──基質レベルのリン酸化
  3 好気的過程──酸化的リン酸化

第2章 細胞の増殖とからだのなりたち (北田一博)
 A 細胞分裂
  1 原核生物の細胞分裂
  2 真核生物の染色体とDNA
  3 体細胞分裂
  4 細胞分裂の周期
  5 減数分裂
 B 染色体と遺伝
  1 染色体による性の決定と遺伝
  2 連鎖と乗換え
 C 細胞の分化と個体のなりたち
  1 単細胞生物から多細胞生物へ
  2 組織と器官
 D 細胞の老化

第3章 遺伝情報とその伝達・発現のしくみ (北田一博)
 A 遺伝情報の担い手──DNA
  1 核酸の構造
  2 DNAの二重らせん構造
 B DNAの複製
  1 DNAの複製のしくみの解明
  2 DNA複製の分子機構
 C 遺伝情報の伝達──RNA
  1 遺伝情報の伝達の流れとRNAの役割
  2 RNAの合成(転写)
 D タンパク質の合成──翻訳
  1 タンパク質の構成単位と構造
  2 tRNA
  3 リボソーム
  4 遺伝暗号
  5 タンパク質合成の過程
  6 遺伝子発現の調節機構
 E 遺伝子組換え技術とゲノムの構造解析法
  1 DNAのクローニングとゲル電気泳動法
  2 DNAの塩基配列の解析法と遺伝子多型
 F 変異
  1 染色体変異
  2 遺伝子変異
 G ヒトの遺伝
  1 ヒトの遺伝学
  2 先天性異常
 H 遺伝子組換えの応用

第4章 生殖と発生 (木村敦)
 A 無性生殖と有性生殖
  1 無性生殖
  2 有性生殖
 B 動物の受精と発生
  1 配偶子の形成
  2 受精
  3 卵割から胞胚への発生
  4 原腸胚と胚葉の形成
  5 胚葉と器官の形成
  6 動物の発生分化
 C 哺乳類の発生
  1 性ホルモン
  2 性周期
  3 精子の形成
  4 胚発生
  5 人工受精(人工授精)

第5章 個体の調節 (木村敦)
 A ホメオスタシス
  1 負のフィードバックの例──体温調節
  2 産熱と放熱の生理機構
 B 各器官系のはたらき
  1 呼吸系──酸素の取り込みと二酸化炭素の排出
  2 消化系──栄養物質と水の吸収
  3 循環系──体液とその循環
  4 免疫系──異物特異的反応と排除のしくみ
  5 排出系──代謝老廃物の排出と浸透圧調節
 C 自律神経系
  1 自律神経系のはたらき
  2 自律神経系の配置
 D 内分泌系
  1 内分泌腺
  2 ホルモンの作用
  3 内分泌系とホルモン
  4 脊椎動物のその他のホルモン
  5 昆虫の変態とホルモン
  6 無脊椎動物の神経ペプチド

第6章 刺激の受容と行動 (小川宏人)
 A 神経系の情報処理の特徴──電気信号
  1 興奮性細胞
  2 膜電位
  3 活動電位
  4 生物電気現象の記録
 B 神経系の情報伝達
  1 神経系の構成
  2 ニューロン(神経細胞)
  3 活動電位の伝導
  4 興奮の伝達
 C 神経系の進化と多様性
  1 神経節神経系
  2 管状神経系
 D 環境の情報とその受容
  1 受容器電位と感覚情報の伝達
  2 刺激の種類と受容器
 E 効果器のはたらき
  1 細胞の運動とそのしくみ
  2 生物発光
 F 行動
  1 走性
  2 本能行動
  3 個体間の情報の伝達
  4 学習
  5 記憶

第7章 生命の進化と多様性 (増田隆一)
 A 化学進化と生命の起源
  1 原始地球での低分子有機物の合成
  2 原始地球での高分子有機物の合成
  3 コアセルベートの形成と自己増殖能の出現
 B 生物の多様化と絶滅の歴史
  1 地質年代と生物の化石
  2 先カンブリア代
  3 古生代
  4 中生代
  5 新生代
 C 生物の分類と系統
  1 分類と命名
  2 生物の3ドメインと6界説
  3 植物界の系統関係
  4 動物界の系統関係
 D ヒトの起源と進化
  1 霊長類の進化
  2 ヒトの起源
  3 ヒトの身体的変化
  4 最近の人類進化学の進展
  5 日本人の起源
  6 現代人の進化的変化
 E 進化のしくみ
  1 ダーウィン以前の進化論
  2 ダーウィンの進化論とその後の論争
  3 集団遺伝学に基づく進化の総合説
  4 分子進化
  5 現代の進化学
  6 種が進化する要因

第8章 生物と環境のかかわり (増田隆一)
 A 生物の集団
  1 生物の分布
  2 個体群とその成長
  3 個体群密度の変動
  4 個体間の関係
 B 動物の社会
  1 なわばり
  2 社会的階級
  3 昆虫の社会
 C 生態系の経済
  1 生産者・消費者・分解者
  2 生態ピラミッドと食物連鎖
  3 生態系の生産力
  4 生態系のエネルギーの流れ
 D 生態系の物質循環
  1 炭素の循環
  2 窒素の循環
  3 塩類の循環

第9章 地球環境とヒトとの共存 (増田隆一)
 A 人間の活動による環境への影響
  1 人口の増加と食糧問題
  2 エネルギーの消費
  3 消える森林と進行する砂漠化
  4 大気汚染と酸性雨
  5 地球温暖化
  6 環境汚染物質と生物濃縮
 B 生物多様性の保全
  1 絶滅の危機にある動植物
  2 遺伝的多様性の維持
  3 外来種と環境問題

巻末資料① 遺伝の法則の基礎知識 (増田隆一)
巻末資料② 生命科学を学ぶための物理・化学の基礎知識 (増田隆一)
索引

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