JRC蘇生ガイドライン2025
救急蘇生の現場に、ゆるぎない基準を。蘇生現場で命を守る、スタンダードを示す指針。
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日本蘇生協議会による救急蘇生ガイドラインが、5年ぶりに改訂された。編集委員会と作業部会による徹底した議論を経て編まれた本書は、蘇生の現場で命を守るためのスタンダードを示す指針である。GRADEによる評価を採用した国際基準のガイドラインとして、最新のエビデンスを体系化。「緊急心血管治療」「わが国の疫学とシステムの現状」「救命処置に関する倫理と法」を新設した。
| 監修 | 一般社団法人 日本蘇生協議会 |
|---|---|
| 発行 | 2026年07月判型:A4頁:640 |
| ISBN | 978-4-260-06278-7 |
| 定価 | 8,250円 (本体7,500円+税) |
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序言
5年に1回のJRC蘇生ガイドラインの改訂について,刊行に至るまでご尽力いただいた関係者の皆さまに深謝したい.日本蘇生協議会(Japan Resuscitation Council:JRC)は,JRC蘇生ガイドライン2025オンライン版(パブリックコメント用)を2025年10月22日(日本時間23日)に,国際蘇生連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation:ILCOR)の心肺蘇生に関わる科学的根拠の国際コンセンサスと治療推奨(International Consensus on Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science With Treatment Recommendations:CoSTR)2025と同時に公開した.外部委員の方々からのコメントや11月30日を締切として募集したパブリックコメントを反映した編集作業を行い,ここに最終版である書籍版が完成した.
蘇生ガイドラインはILCORによる国際的に標準化されたエビデンスのCoSTRに基づき,世界の各地域や国がそれぞれの実情に合わせて作成するものである.ILCORは2005年に初めてCoSTRを発表し,その後5年ごとにCoSTRを改訂してきたが,ILCORに参画する各地域や国の蘇生協議会はそれに合わせて5年ごとにそれぞれの蘇生ガイドラインを作成してきた.
2017年からILCORは迅速な対応をするため,重要なトピックごとにエビデンスの網羅的検索(SysRev)とエビデンス評価を行って,その都度論文化し,タスクフォースによりCoSTR作成を行うことになった.毎年,ILCORはその年に検討したトピックについてCoSTRのサマリーを発表し,重要なトピックについては5年を待つのではなく迅速に推奨と提案がなされることになった.このILCORによる方針の変更を受けて,その都度ガイドラインを改訂(アップデート)する方法と,これまでどおり5年ごとに改訂する方法のいずれを選択するのかは各地域や国の蘇生協議会の判断に委ねられることになった.また2015年から採用された国際的なガイドライン作成方法である Grading of Recommendations Assessment,Development and Evaluationシステム(以下,GRADE)は継続して使用され,本ガイドラインも2015年,2020年と同様にGRADEを使用した.
欧米に比べて遅れていたわが国の心肺蘇生への取り組みについて,特に最近20年間の進歩はめざましく,その遅れを取り戻し,普及や研究において海外をリードする領域もみられるようになった.その要因には,JRCの設立,わが国を中心としたアジア蘇生協議会(Resuscitation Council of Asia:RCA)の設立とILCORへの加盟,CoSTR作成への関与,市民への自動体外式除細動器(AED)使用の解禁と普及,さらには地域ウツタイン登録から総務省消防庁による全国登録による院外心停止大規模データベースの構築と,その解析による多くの研究者からの院外心停止に関するエビデンスの国際発信などが挙げられる.またそれを支える科学研究費による支援,そして胸骨圧迫のみのCPR,体外循環式心肺蘇生や体温管理療法など,わが国が得意とする分野における研究成果の発信などが挙げられる.これらの活動をもとに,わが国においてもこれまで2010年,2015年,2020年とILCORのもとで国際連携による世界標準のJRC蘇生ガイドラインを作成してきた.
JRCはRCAの方針に沿って,2017年以降も5年ごとに蘇生ガイドラインを改訂する方法を選択した.その間は,毎年のCoSTRのサマリーを翻訳し,内容についてJRCの解釈を加え,次回の改訂におけるガイドライン変更の必要性をホームページで公開することとした.その理由として,ガイドラインの作成とその実践にかなりの時間,努力およびリソースが必要であること,また,ガイドラインの頻繁な変更によって生じる可能性のある混乱を考慮した.最終的にはこれまでどおりJRC蘇生ガイドラインの発刊は5年ごとに行うことにし,前回の2020年に続いて,今回のJRC蘇生ガイドライン2025の作成に至った.
ILCORでは独立したタスクフォースを設けていないが,JRCは独自の作業部会でGRADEシステムを用いてエビデンスの評価を行い,妊産婦の蘇生,緊急心血管治療,脳神経蘇生についてのガイドラインも作成した.緊急心血管治療は2020年までの急性冠症候群に心原性ショックと不整脈への対応を加えたものである.
本ガイドラインを,わが国での救命率のさらなる向上のために,蘇生科学の進展,市民と医療従事者への救急蘇生の標準化と普及啓発に役立てていただくことを切望する.多忙のなか,日夜問わずガイドライン作成にご尽力いただいた,編集委員,共同座長,顧問をはじめとした作業部会員の先生方,外部評価をいただいた学会からの専門委員,市民代表委員,法律家,利益相反委員,ご指導いただいたGRADE専門家とライブラリアンの先生方,また Minds Tokyo GRADE Centerの先生方のご指導に感謝申し上げる.この間,作成支援をいただいた医学書院の皆さまに,また常に作業を支えていただいたJRC事務局の皆さまに深謝する.
2026年6月
一般社団法人日本蘇生協議会代表理事
JRC蘇生ガイドライン2025編集委員会委員長
坂本 哲也
目次
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序文
1 JRC蘇生ガイドライン2025の作成経過
2 JRC蘇生ガイドライン2025の特徴
3 今後の課題
4 利益相反(COI)管理委員会の設置とCOI管理について
JRC蘇生ガイドライン2025作成の方法論
略語一覧
第1章 一次救命処置(BLS)
1 はじめに
2 市民用BLSアルゴリズム
3 医療用BLSアルゴリズム
4 アルゴリズムの科学的背景
5 異物による気道閉塞の解除
6 溺水による心停止
7 2025年未評価のトピック
第2章 成人の二次救命処置(ALS)
1 はじめに
2 心停止アルゴリズム
3 気道と換気,酸素化
4 CPR中の薬物投与
5 心肺蘇生(CPR)
6 CPR中の循環補助
7 心停止の原因診断
8 電気ショック戦略
9 特殊な状況下の心停止
10 ROSC後の集中治療
11 予後評価
12 2025年未評価のトピック
第3章 小児の蘇生(PLS)
1 はじめに
2 心停止の防止
3 徐脈・頻拍への緊急対応アルゴリズム
4 小児の一次救命処置(PBLS)のアルゴリズム
5 小児の二次救命処置(PALS)のアルゴリズム
6 心停止中:気道,呼吸,循環
7 心停止中:電気ショック
8 心停止中:モニタリング
9 心停止中:薬物投与
10 心停止中:特殊な状況
11 心停止中:体外式心肺蘇生
12 循環再開後
13 2025年未評価のトピック
第4章 新生児の蘇生(NCPR)
1 はじめに
2 新生児蘇生の流れ
3 予測と準備
4 臍帯管理
5 初期処置
6 心拍数評価
7 人工呼吸と酸素投与
8 モニタリング
9 循環補助
10 薬物投与
11 ROSC後のケア
12 蘇生中の予後予測
13 家族の立ち会い
14 海外の課題
15 2025年未評価のトピック
第5章 妊産婦の蘇生(Maternal)
1 はじめに
2 妊産婦蘇生アルゴリズム
3 妊産婦蘇生に関するトピック
4 妊産婦の心停止予防に関するトピック
第6章 緊急心血管治療(ECC)
1 JRC蘇生ガイドライン2025 ECC作業部会について
1 JRC蘇生ガイドライン2025 ECC作業部会の作業手順
2 急性冠症候群(ACS)
1 はじめに
2 ACSの初期診療アルゴリズム
3 病院前ACS診療体制への介入
4 ACSへの病院前の処置
5 ACSへの救急外来での初期診療
6 ACSへの治療戦略
7 ACSでの重症度評価
8 2025年未評価のトピック
3 心原性ショック(CS)
1 はじめに
2 心原性ショック(CS)診療アルゴリズム
3 JRC蘇生ガイドライン2025 ECC CSシステマティックレビュー
4 2025年未評価のトピック
4 不整脈(Arrhythmia)
1 はじめに
2 不整脈の診療アルゴリズム
3 アルゴリズムの科学的背景
4 2025年未評価のトピック
第7章 脳神経蘇生(NR)
1 はじめに
2 頭部外傷の初期治療
3 脳卒中の初期治療
4 てんかん重積状態に対する初期治療
5 神経筋疾患の初期治療
6 急性脳症・脳炎の初期治療
7 2025年未評価のトピック
第8章 ファーストエイド(FA)
1 はじめに
2 病気やけがに共通するファーストエイド
3 急な病気に対するファーストエイド
4 急なけがに対するファーストエイド
5 2025年未評価のトピック
第9章 普及・教育のための方策(EIT)
1 はじめに
2 トレーニングおよび対象
3 トレーニングの効果を高める工夫(インストラクショナルデザイン)
4 普及と実践,チーム
第10章 海外での課題
第11章 わが国の疫学とシステムの現状
1 はじめに
2 わが国の心停止の状況
3 わが国における救命に影響するシステムの現状
4 心停止に陥るリスクのある市民の認識と予防
第12章 救命処置に関する倫理と法
1 はじめに
2 用語や考え方の変化
3 わが国の人生の最終段階における医療・ケアの倫理的な課題
4 バイスタンダーの参加に関する議論と法の整備と世論
索引

![救急救命士によるファーストコンタクト[Web動画付] 第3版](https://www.igaku-shoin.co.jp/application/files/6017/4848/1092/113689.jpg)


