コロナのない保健所の日記

もっと見る

橘 真歩。公衆衛生医師、東京都特別区保健所勤務。イギリス留学で熱帯医学修士を取得。医師として生きる道に悩みつつ「自分にしかできない」と思える仕事にやりがいを感じ始めたその先に……。「私が健康推進課に異動!?」
コロナ禍以前の、とある東京都特別区保健所を舞台にした“オートフィクション+保健所の仕事解説+著者による解題”。


*本書は『公衆衛生』連載「コロナのない保健所の日記」(2023年4月号から2024年7月号)をまとめ、書き下ろしを加えたものです

シリーズ 公衆衛生ブックス
著 関 なおみ
発行 2026年11月判型:A5頁:464
ISBN 978-4-260-06723-2
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次

開く

はじめに この本のトリセツ


事実、小説家には、三、四百ページの書物を読むに要するわずかばかりの勤勉な努力を惜しまぬことを、読者に要求する権利がある。作者が作り出した作中人物の生活、喜びや悲しみ、その経験する不幸、危険、また出来事に関心が持てるだけの想像力を持ち合わせることを、読者に要求する権利がある。読者のほうで自分自身をある程度差し出すことができないというのであれば、小説を読んでも、その作品が与えてくれる最善のものを得ることはできるわけがない。そしてもし自分自身を差し出すことができないというなら、小説などぜんぜん読もうとしないがよろしい。作り物の話を読まなければならぬ義務など、どこにもないのである。
  W・S・モーム(西川正身訳)、「1 小説とは何か」、『世界の十大小説』(上)所収 岩波文庫、四六-四七頁


 この本は、三つの要素から構成されています。

 一つ目は「橘 真歩(たちばな まほ)」という四〇代の女性医師を主人公としたフィクションです。時代は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生・大流行する以前、つまり二〇一五年三月から二〇一九年十二月までの、東京都のとある特別区の保健所を舞台としています。真歩は医師が医療機関ではなく行政機関で働くということについて、医師としての専門性をどう生かしたらいいのか分からず、いつも悩んでいます。また、初めてたくさんの部下がいる課長という立場になり、人事管理や議会対応、事業実施に当たっての決断などを迫られながら、管理職として成長していく物語にもなっています。舞台となっている保健所がどんなところで、区民の健康を守るため、どんなことをしているのかについても詳しく書かれているので、いわゆる「お仕事小説」としても、楽しんでいただくことができるでしょう。

 二つ目は、公衆衛生学の教科書としてです。医学や看護の学部には、「公衆衛生学(Public Health)」という学科がありますが、この本の中では、「保健衛生行政」の部分を中心に、母子保健や健康づくり、精神保健、生活衛生といった主要な分野を取り上げています。
それぞれの分野はストーリーとも連動していることから、その解説も含めて、真歩とその上司である栗林保健所長の対話による講義形式にしました。初めて公衆衛生学を学ぶ際の入門書としても良いですし、公衆衛生医師となって、仕事を始めるに当たり、復習がてら勉強し直すのにも活用できます。

 三つ目は、ガイドブックとしてです。各回タイトルについて、どのような趣向でつけたのか説明した解題と、本書に出てくるテーマやエピソードに関連する映画やドラマ、小説等をリストアップし、個人的見解に基づく解説を付けています。読者にとっては蛇足かもしれませんが、筆者がどのような心境でそれぞれのエピソードを書いたのか、思いを共有いただければ幸いです。これらの取り上げた作品等を、タイトルから調べることもできるよう、キーワード索引も付けました。この部分はほぼ筆者の個人的な趣味と妄想によって成り立っていますが、各作品の具体的なストーリーや映像を通じ、公衆衛生の各分野の理解を深めることができます。本書に出てくる映画を勉強会や講演会に利用していただくのも良いでしょうし、自分が急に暇になって、何をしたら有意義に過ごせるのか分からない、ネット配信サービスや映画館の特集上映、リバイバル上映で何を観たらよいか分からない、といった時に、参考にしていただくのも良いでしょう。私自身は、他人の独断と偏見に満ちた書評を読むのが結構好きです。

 それではこれまでに挙げた要素の一つでも楽しめると思った方、まずは本書をお手に取っていただければ幸いです。

開く

はじめに──この本のトリセツ

プロローグ 保健所に行こう?!

第一回 どこから行っても遠い保健所
    【解説】 公衆衛生行政の仕組みを知ろう!

第二回 健康推進課長が結核でした
    【解説】 結核対策は保健所業務の基本です!

第三回 みんなちがって みんないい?
    【解説】 産業保健、公務員の研修

第四回 朝食にドーナツを食べてはいけません
    【解説】 本当は楽しい健康づくり事業(栄養保健)

第五回 胃がん内視鏡検診始めます
    【解説】 いろいろ深いがん対策

第六回 トーゴを待ちながら
    【解説】 実習生の受け入れ、保健所の歴史とグローバルヘルス

第七回 精神保健の世界へようこそ!
    【解説】 依存症対策を中心とした精神保健活動

第八回 答えが一つじゃない国のアリス
    【解説】 母子保健・予防接種・議会対応

第九回 ペットをめぐる冒険
    【解説】 動物への対応・衛生害虫対策

第十回 この組織、どうする?
    【解説】 組織マネジメント・人事管理・人材育成

第十一回 児童相談所は誰のもの?
    【解説】 児童相談所と保健所

第十二回 愛しすぎる女
    【解説】 子育て支援事業・生活福祉事業との関わり

第十三回 彼女の苦手なものは……
    【解説】 公衆衛生医師のキャリアパス

第十四回 映画館の隣にある保健所
    【解説】 公衆衛生活動とまちづくり事業

第十五回 Leave no one behind 誰一人取り残さないために
    【解説】 精神保健対策(自殺予防対策)

第十六回 サイレント・ナイト あるいは、来るべき世界
    【解説】 感染症対策・健康危機管理・感染症法に基づく分類

エピローグ コロナのある保健所の日記

おわりに

著者自身による解題 または本書に登場・関連するモノ、映画、小説、詩

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。