よくわかる神経診察

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学生や若手医師が苦手とする神経学的身体診察を、豊富な図解と実践的なコツでわかりやすく習得できるよう工夫された入門書。各章は「何をするか」「何がわかるか」「何を意味するか」で構成され、診察の流れとその意味を理解できるようになっている。

大田 哲生 / 齊藤 直人 / 澤田 潤
原著 Geraint Fuller
発行 2025年10月判型:A5頁:284
ISBN 978-4-260-06275-6
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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序/謝辞/訳者序

 多くの医学生や若手医師は,神経学的検査は非常に複雑で難しい(そして時には恐ろしい!)と考えている.
 これは,何をするかを覚えるのが難しく,何をみればよいのか自信がなく,見いだした所見をどのように記載すればよいかわからず,それが何を意味するかわからないからである.
 本書の目的は,医学生や若手の医師が簡単に神経診察を行えるようにシンプルな枠組みを提供することである.よくある問題や間違いを指摘しながら,何をするか,何をみるべきかを説明し,見いだした所見が何を意味するかを説明する.
 しかし,本を読むことでは運転が学べないのと同じで,この本は従来のベッドサイドでの教育や臨床経験に代わるものではない.本書が患者を診るみなさんに自信を与えることを願っている.『Neurological Examination Made Easy』の目的は,読者の診察技術についてアドバイスを提供し,臨床所見を確実に強固にし,所見の分析や解剖学的診断,症状からの診断を助けることである.神経学的所見の範囲とその解釈を単純化しようとする場合,必然的に,ありうるすべての状況を予測できるわけではない.この本は,最も一般的な状況を収載するように意図されており,よくある陥りやすい誤りを警告している.しかし,それにもかかわらず,誤った結論に達する場合もあるだろう.
 神経学は依然として非常に臨床的な専門分野であり,病歴の聴取と神経診察 neurological examination という中核的な臨床スキルが診断を下す際の中心であり続けている.実際,多くの神経診断は完全に臨床評価のみに依存している.これらのスキルを身につけるには時間がかかるが,医師として非常にやりがいがあり,患者にとっても非常に有益である.
 『Neurological Examination Made Easy』は,神経診察に必要なスキルを学習するための優れた基礎と,その解釈に必要な思考過程を提供する入門書である.


謝辞

 神経学へ導いてくださった Roberto Guiloff博士をはじめとする,すべての先生方に感謝申し上げます.本書の改訂版の作成にあたり,旧版の準備中に実験材料としてご協力いただいた Charing Cross and Westminster Medical Schoolの多くの医学生,そして本書について親切なコメントをくださった同僚に感謝申し上げます.また,Charing Cross and Westminster Medical Schoolなどの学生,研修医,同僚,そして特に本書の他言語への翻訳に携わってくださった神経科医師の皆様からの本書旧版への建設的なコメントに深く感謝申し上げます.
 臨床の神経科医師になるための勉強や本書の執筆にあたり,ここで列挙できなかった多くの教科書や科学論文に深く感謝申し上げます.

 本書を Cherithに捧げます.


訳者序

 本書は,Geraint Fuller先生による“Neurological Examination Made Easy, 6th edition”の翻訳です.
 僕が初めて原書を読んだとき,正直なところ内容がすっと頭に入ってきませんでした.それがきっかけとなり,少しずつ翻訳し,このたび出版に至りました.
 著者である Geraint Fuller先生は,英国の Gloucester Royal Hospital(グロスターシャー王立病院)で神経内科医として勤務されています.
 英国における神経学の研修を監督する神経学専門諮問委員会の委員長を務め,2013年から2015年まで英国神経科医協会の会長を務められました.
 神経学全般と神経学教育に関心を持ち,医学生や若手医師に向けた啓発的な書籍を多数執筆されています.

 本書には診察のコツが含まれており,ビギナーに限らず,すでに神経診察を極めたベテランにもおすすめしたい一冊です.
 リハビリテーションをはじめとした医療職や学生,内科レジデントの皆さんは,ぜひ一度本書に目を通していただき,友人や模擬患者を相手に身につくまで繰り返し神経診察を実践してみてください.
 神経内科や整形外科などの専門医を目指すみなさんは,本書と原書を手元に置き,読み比べてください.そして日常診療で本書の内容を実践してください.

 本書には29章があり,学生や訓練中の医師の臨床試験対策も和訳しました.
各章は原則四段構えになっており,第一段が「背景」,第二段が「何をするか」,第三段が「何がわかるか」,そして第四段が「何を意味するか」です.
 一度読み始めれば最後まで一気に読み進めることができると思います.夏休みに図書館でまとめて読むことも可能ですし,海外旅行に携行し移動や待ち時間などに本書に目を通すことも可能と思います.
 翻訳にあたっては,以下の点に特に配慮しました.
 第一に神経診察の要点がすっと頭に入ってくるように,わかりやすい和文を心掛けました.
 第二に本書の和文から原書の英文を再現できるような,対訳を意識した翻訳に努めました.
 「肢分節ダンス」などユーモアも表現できたと思います.
 本書は神経診察の理解と医学英語の習得の両立といういわば“二刀流”をも目指しております.ぜひ本書を足がかりに原書にも触れてみてください.

 翻訳作業にあたり,共訳者の先生方には多大なるご協力をいただきました.大田哲生先生には訳文全体にわたり丁寧なご検討と多くのご助言を賜り,本書をより読みやすいものにすることができました.
 また,澤田潤先生には神経内科専門医として,用語の正確性をはじめ専門的な観点から貴重なご意見を頂戴しました.お二人に心より感謝申し上げます.
 最後に上梓にあたり,医学書籍編集部の川上真理,制作部の玉森政次両氏をはじめ,医学書院からの心強いご支援に深く感謝申し上げます.

 令和7年8月
 訳者を代表して 齊藤直人

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謝辞
訳者序
本書の使い方

1章 病歴と診察
2章 発話
3章 精神状態と高次脳機能
4章 歩行
5章 脳神経:総論
6章 脳神経I:嗅神経
7章 脳神経:眼1──瞳孔,視力,視野
8章 脳神経:眼2──眼底
9章 脳神経III,IV,VI:眼球運動
10章 脳神経:眼振
11章 脳神経V,VII:顔
12章 脳神経VIII:聴覚神経
13章 脳神経IX,X,XII:口
14章 脳神経XI:副神経
15章 運動系:序章
16章 運動系:筋トーヌス
17章 運動系:腕
18章 運動系:脚
19章 運動系:反射
20章 運動系:何がわかるか,何を意味するか──所見と解釈
21章 感覚系:総論
22章 感覚系:何がわかるか,何を意味するか
23章 協調運動
24章 異常運動
25章 特別な徴候とその他の検査
26章 自律神経系
27章 意識障害と錯乱
28章 標準的な神経診察の要約
29章 臨床試験に合格する

さらに学ぶための教科書と参考書
索引

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