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生活機能からみた
老年看護過程+病態・生活機能関連図 第5版
臨床判断につながる観察ポイント

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生活機能の視点から高齢者をとらえ、“もてる力”を引き出す方法とコツを解説。カルテが読める「目でみる疾患、症状、診断・検査値、合併しやすい症状、治療法」、ケアがみえる「情報収集・分析、アセスメントの視点、ケアプラン」、高齢者の全体像がみえる「病態・生活機能関連図と看護の焦点」で構成。今改訂では「多職種連携のポイント」「臨床判断につながる観察ポイント」を豊富に追加。実習記録に悩まないオールインワン!

シリーズ からみた看護過程
編集 山田 律子 / 内ヶ島 伸也
編集協力 秋下 雅弘
発行 2025年12月判型:A5頁:592
ISBN 978-4-260-06172-8
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

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  • 序文
  • 目次

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はじめに

 本書の初版は2008年9月に刊行されました.高齢者の尊厳を第一に据え,看護実践の質の向上を目指す有志たちが協力して執筆にあたりました.以来,多くの読者に支えられながら改訂を重ね,看護基礎教育における老年看護学実習の学びを支える指針として,さらには認知症看護認定看護師や老人看護専門看護師などの教育にも活用されてきました.

 本書の基本的な理念には,当初から変わらず2つの大きな特長があります.
 第一の特長は「目標志向型・・・・・思考」に基づく看護展開です.治療の場における看護学実習では,疾患の回復に向けて「看護問題」を設定し,「問題解決型・・・・・思考」によって看護を組み立てることが一般的です.しかし,老年看護学実習において学生がかかわる高齢者の多くは,慢性疾患や障害を抱えながら暮らしています.その場合は,「看護問題・・」ではなく,高齢者本人が望む暮らしに基づいた「看護の焦点・・」を明確にし,「目標志向型思考」によって生活の質を高める方向性を多職種間で共有することが重要となります.転倒予防を例にとると,転倒リスクを「看護問題」としてとらえれば,行動制限へと結びつきやすく,高齢者の「いきいきとした活動」をかえって妨げることにつながりかねません.一方,「看護の焦点」として,個々の高齢者のもてる力に着眼し,さらに暮らしを充実できるよう高齢者本人をはじめ家族や多職種で目標を共有することで,高齢者が安全に活動性を維持・拡大する方向性を見失うことなく支援を展開できます.
 第二の特長は「生活行動モデル」の活用です.これは筆者らが老年看護の実践経験をもとに開発したモデルであり,高齢者の「生活」に焦点を合わせて看護を構築する枠組みです.第1編では生活行動の構成要素を整理し,読者がモデルを理解し,実践に応用できるように工夫しています.改訂のたびにこのモデルは深化してきました.

 今回の第5版改訂においては,時代の変化と教育現場・臨床現場双方のニーズをふまえ,以下の新しい要素を反映しました.
 第一に,「多職種連携」に関する内容をさらに充実させました.多職種連携能力は,第5次カリキュラム改正(第5次指定規則および指導ガイドラインの改正)ならびに「看護学教育モデル・コア・カリキュラム(令和6年度改訂版)」においても重要な能力の1つとして位置づけられています.高齢者に対するケアは,看護師のみならず,医師や歯科医療者(歯科医師,歯科衛生士),薬剤師,リハビリテーション専門職(理学療法士,作業療法士,言語聴覚士),管理栄養士・栄養士,福祉職(社会福祉士,介護福祉士など),公認心理師・臨床心理士,臨床検査技師など多様な保健医療福祉の専門職をはじめ,家族や友人,ボランティア,多様な職人などとの連携・協働によって支えられます.本書では,看護計画の具体策において,どの職種とどのように連携・協働するのかを明示し,高齢者に最善のケアを提供するための視点を提示しました.
 第二に,「臨床判断」にかかわる要素を強調しました.第5次カリキュラム改正で看護基礎教育においても臨床判断能力の育成が求められています.本書では,観察・情報共有・根拠に基づく判断の過程を重視し,学生が臨床場面で主体的に判断を行えるように構成を工夫しました.
 第三に,「災害」に関連する要素を追加しました.自然災害の頻発や感染症パンデミックを背景に,高齢者の生活や健康は容易に脅かされます.本書では,災害時の高齢者に対する心のケアについてコラムなどで取り上げました.
 第四に,「超高齢者のエンドオブライフ・ケア」に関する新章(第2編第3部)を設けました.老年看護学実習や統合実習などで,100歳を超える超高齢者を受け持つ機会が増えています.老年期においては,誰もが人生の最終段階を迎えます.学生がエンドオブライフにある超高齢者を受け持つ場合を想定し,意思決定支援や苦痛緩和,尊厳を守る食支援など,人生の最終段階に必須のケアを包括的にとらえ,支援できるように取り上げました.
 これらの改訂に加えて,第1編の生活行動の構成要素を再点検し,「覚醒・活動」と「コミュニケーション」を更新しました.また,高齢者の検査基準値や疾患名は最新のガイドラインに基づいて修正し,老年医学・老年歯科学の最前線で活躍されている専門家に執筆をお願いしました.

 老年看護学実習は今や多様な場で展開されます.急性期病院から在宅,介護保険施設,そして災害時の地域支援に至るまで,学ぶべき現場は拡大しています.そうした環境下で,学生が高齢者の価値観に寄り添い,科学的根拠に基づいた看護を多職種と共有できるように,第5版ではさらに多くの老人看護専門看護師や専門家の知を集積しました.
 本書を通じて,読者が老年看護学の本質を理解し,臨床判断能力を培い,多職種と協働しながら高齢者の尊厳ある暮らしを支える実践に結びつけてくださることを心より願っています.また,本書が人生の最終段階や災害といった困難な局面においても,看護を支える拠り所となれば幸いです.
 最後になりましたが,第5版の刊行にあたりご尽力いただいた執筆者の皆様,丁寧な編集・校正をいただきました医学書院の皆様に,深く感謝申し上げます.今後も読者の皆様からいただくご意見を反映させ,さらなる発展につなげていきたいと考えております.引き続き,どうぞよろしくお願い申し上げます.

 2025年11月
 著者を代表して 山田律子

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はじめに
老年看護の展開における考え方
老年看護過程における臨床判断の考え方
複数の疾患をもつ高齢者のとらえ方
薬物治療を受ける高齢者のとらえ方
急性期医療を必要とする高齢者のとらえ方
本書の構成と使い方

第1編 生活行動情報の着眼点
   1 睡眠・休息
   2 覚醒・活動
   3 食事
   4 排泄
   5 身じたく
   6 コミュニケーション

第2編 病態からみた看護過程の展開
 第1部 疾患別看護過程の展開
  脳神経系疾患
   1 認知症
      高次脳機能障害
   2 パーキンソン病
      進行性核上性麻痺
      脊髄小脳変性症
   3 脳卒中(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血)
  運動器系疾患
   4 大腿骨近位部骨折
      骨粗鬆症
      脊椎圧迫骨折
      変形性膝関節症
  呼吸器系疾患
   5 肺炎(誤嚥性肺炎)
   6 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  循環器系疾患
   7 心不全(慢性うっ血性心不全)
      不整脈
      閉塞性動脈硬化症
  代謝疾患
   8 糖尿病
  腎・泌尿器系疾患
   9 前立腺肥大症
      慢性腎臓病(CKD)
  皮膚疾患
   10 老人性皮膚瘙痒症(老人性乾皮症)
      帯状疱疹
   11 褥瘡
      スキン-テア(皮膚裂傷)
      白癬
  視聴覚疾患
   12 難聴
      白内障
      緑内障
  感染症
   13 尿路感染症
  顎口腔系疾患
   14 口腔機能低下症,オーラルフレイル

 第2部 症状・機能障害別看護過程の展開
   15 摂食嚥下障害
      胃食道逆流症(逆流性食道炎)
      胃瘻のケア
   16 低栄養
   17 脱水
   18 浮腫
   19 排尿障害(尿失禁・排尿困難・頻尿・過活動膀胱)
   20 排便障害(便秘・下痢)
   21 睡眠障害
   22 言語障害(失語症・構音障害)
   23 痛み
      しびれ
   24 抑うつ状態
      災害時の高齢者に対する心のケア
   25 せん妄
   26 高血圧・低血圧
   27 フレイル
      サルコペニア,ロコモティブシンドローム
   28 転倒

 第3部 エンドオブライフにある超高齢者の看護過程の展開
   29 超高齢者のエンドオブライフ・ケア

 付録
  付表1 高齢者によく使用される薬と注意すべき副作用
  付表2 高齢者理解のための生活史年表
  付表3 唱歌と童謡

索引

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