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学生のための医療概論[Web付録付] 第5版

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看護学生を主とした医療系学生対象に、先端科学技術だけではなく考え方や倫理の重要性を説き、患者中心のチーム医療をめざしてほしいという理念で編集されてきたロングセラー。今版もデータのアップデートはもちろん、新しいトピックもできるだけ反映している。また新たに、各項の筆者による学んでほしいポイントを述べた映像をWeb付録とし、事前課題としての活用や実際の授業で取り上げられなかった内容の補いに使用できるようにしている。

編集 小橋 元 / 近藤 克則
発行 2026年02月判型:B5頁:348
ISBN 978-4-260-06274-9
定価 3,520円 (本体3,200円+税)

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第5版 はじめに

 本書の初版が刊行された1999年から四半世紀が過ぎました.初版から担当してきた編者からその志と基本編集方針を受け継ぎ,新しい執筆陣を加えて改訂した第5版をお届けします.
 医学の進歩はめざましく,新しい知見が得られ,新しい技術が次々と開発されています.以前は発見できなかった病気が早期発見できるようになり,なかなか治らなかった病気やケガもずいぶん治るようになりました.しかし医療は医学知識や技術だけで成り立っているわけではありません.その進んだ知見や技術をもってしても,いまだに完治の見込めない病気やケガを抱える患者は数多く存在します.また,少子高齢化が進み,40歳以上の要介護者は720万人を超え,2040年には約170万人の「看取り」が必要になると見込まれています.
 完治の見込めない疾患や終末期の医療・ケアにおいては,「正解は1つ」ではありません.医療職だけではなく,福祉・介護などの他職種との連携はもちろん,患者本人とその家族の参加による意思決定が不可欠です.また,時にはそれを支える地域住民や行政からの支援も必要になります.患者はそもそも社会のなかで生きているのであり,医療がかかわるのはその一部の側面にすぎません.患者を支える医療は,社会によって支えられ,成り立っているのだということを,今後ますます強く認識していくべきでしょう.
 一方,医療は,その国や地域社会の文化,考え方,宗教,制度,経済,政治などの影響を大きく受け,時代や社会とともに変化します.たとえば,かつてはがん患者には病名の告知をしないことが一般的でしたが,今はがんの告知は当たり前になされています.なぜでしょうか.早期発見や治療の進歩はもちろんありますが,もっとも大きいのは,医療の考え方や思想の変化です.医療職の「患者に対して良かれとの『親心』」(パターナリズム)に基づく医療から,患者中心の医療,患者の自己決定を尊重する医療へと変化したからでしょう.また,患者の生活や心にも寄り添う医療へと変化したことで,予後の良くないがん患者へのケアも進歩しました.このように,医療技術の進歩に加えて,社会の変化,そして医療や患者,健康への見方の変化によって,医療職に期待される態度や振る舞いは大きく変わってくるのです.
 1999年の初版の編集会議では,「医療職を目指す学生の皆さんはもちろん,一般の人たちも視野に入れ」「寝転がって読めるような平易な文章で」「現代医療の構造と特徴がはっきり理解できる本を」「データブックではなく思想書を目指そう」という基本方針が打ち立てられました.そして,本書全般にわたる医療の方向性に関する基本的な考え方としては,「患者中心の医療を目指して」が掲げられました.そして,これらの方針が読者の皆さんに支持されて版を重ねてきました.
 2020年に第4版の改訂を行った前後からは,さらに以下のような社会変化と新しい医療の課題が生まれています.①疾病構造の変化〔「低栄養・不衛生・感染症」から「生活習慣病(NCDs)」を経て「加齢性疾患」へ〕,②健康のとらえ方の変化(生物医学モデルから生物・心理・社会モデルへ,社会的孤立や健康格差の問題と社会的処方),③医療ニーズの変化(救命・延命重視から告知後の自己選択に基づくQOLや終末期ケア重視へ),④専門分化や高度専門病院完結型医療の限界と,地域包括ケアや地域共生社会,総合診療医やチーム医療への期待の高まり,⑤医療職の働き方改革や医師・医療の地域偏在対策,⑥ビッグデータと人工知能(AI)によるリアルワールドデータ研究の推進とデジタル治療アプリの保険収載,⑦一方向の途上国支援から双方向の人の流れや多様な文化を含むグローバルヘルスの時代へ,⑧持続可能な開発目標(SDGs)の基盤であるユニバーサルヘルスカバレッジ(すべての人が経済的な困難なく適切な保健医療サービスを享受できること)への関心の高まり,⑨コロナ禍の経験からワンヘルス(人獣共通感染症に対して分野横断的連携で取り組む考え方)の登場,⑩プラネタリーヘルス(環境が健康に与える影響を地域レベルから地球レベルまで包括的にとらえて,学際的に環境問題に取り組む考え方)の普及,⑪多発する災害時の医療支援のあり方を巡る論議,体制・制度整備の必要性.これらの動きのなかで,医療職のあり方にも変化が求められることでしょう.
 そのため,今回の第5版では,「新しい医療技術の登場や時代・社会の変化によって浮上してきた,あるいは今後10~20年間に起きそうな変化と課題を示す」「課題ごとに,どのような考え方があるのかを示す」「正解が1つではなく,多様な考え方や価値判断が必要な場合があることを示す」「理解を深めるために論議・考察してほしい論点を示す」ことを念頭に置きました.また,新たな試みとして,各執筆者による映像付録(各項の狙いや扱う内容の説明動画)も作成しました.ぜひ事前学習の参考にしていただければと思います.
 どんなに時代が変わろうとも,医療職には,「患者中心・人間中心の医療」の基盤となる「知識や技術を超えた人間力」と「患者・人を思いやる心」がもっとも重要であることには変わりありません.本書で学ぶことで,医療,医療職はどうあるべきかを考え続け,さまざまな場面で正解を求めるのではなく,いろいろな職種,いろいろな立場の人たちと意見交換ができて,たくさんある答えのなかからより良い答えを見つけられる医療職が育つことを,心から願っています.
 最後に,お忙しいなかご協力をいただいた執筆者の皆様と,旧版から引き続きその企画から編集作業に至るまで親身にお世話をいただいた医学書院の大野学さんに心からの感謝を申し上げます.

 2026年1月
 小橋 元
 近藤 克則

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付録 Web動画について

第1章 医療は誰のものか
 1 医療の基本「人道主義」と「人権」
 2 患者の権利を尊重する
 3 医療現場と臨床研究の倫理
 4 カウンセリングによる自己決定支援
 5 「痛みを緩和する」ということ
 6 働く人としての医療職──医療職の人権
 7 情報共有とチーム医療
 8 人の心に寄り添うプロフェッショナリズム

第2章 健康とは何だろうか
 1 1つではない健康観や医療観
 2 健康の影響要因とヘルスプロモーション
 3 ウェルビーイングのとらえ方と支援──国際生活機能分類(ICF)とリハビリテーション
 4 こころの病とウェルビーイング(well-being)
 5 ウェルビーイングを高める支援
 6 保健医療が追求する価値と医療職の役割

第3章 医療がたどってきた道と未来への展望
 1 近代医学の誕生と感染症対策
 2 非感染性疾患の増加──生活習慣病(NCDs)の予防に求められるもの
 3 ゲノム医学の登場からゲノム編集へ
 4 臓器移植と再生医療の課題
 5 医療におけるAI,デジタルテクノロジーの活用と課題
 6 健康影響をもたらす環境問題と医療職のあり方
 7 薬害にみる利害関係と医療職のあり方
 8 心に寄り添い,1人ひとりがつながる医療・社会のあり方
 9 根拠に基づく医療と全人的統合医療
 10 健康を次世代へつなぐ──本当に守らねばならないものは何か?

第4章 医療システムを理解しよう
 1 医療とマネジメント
 2 医療の機能分化と地域医療連携
 3 地域包括ケアと多職種連携
 4 医療保険制度・介護保険制度
 5 医療経済と資源の適正な配分
 6 グローバル化に伴う健康課題と医療職の役割
 7 防災・減災・地域の力と災害医療
 8 医療安全と医療職に求められる態度

索引

コラム目次
 ヒポクラテスの誓いと現代医療
 同和問題
 ハンセン病
 優生思想とその背景
 想像力の大切さ
 『世界医師会ヘルシンキ宣言』(2024年10月改訂)について
 COVID-19パンデミックにかかわる倫理問題
 がんについての基礎知識
 独立した専門職としての役割の自覚と責任を!
 その時代の「常識」の影響を受ける医療職の意識
 日本の疫学の父──高木兼寛
 心に寄り添うために──ロールプレイや動画の活用のすすめ
 視点が変わったさまざまな経験や実験
 ワンヘルス(One Health)──ヒト,動物,環境の健康
 プラネタリーヘルス(Planetary Health)
 ポジティヴヘルス
 健康の決定要因(determinants of health)
 WHO国際分類ファミリー(FIC)
 精神病床への入院形態
 オープンダイアローグ
 社会的孤立と社会的処方
 老化と喪失体験,その受け止め方
 西洋医学の起源
 日本への西洋医学の導入
 検疫の歴史
 病院の衛生管理と看護学の確立
 2000年の札幌市でのホームレスの健康問題と生活習慣の実態
 健康を守る「ヘルスリテラシー」
 孤立を防ぎ社会とつながる「社会的処方」
 iPS細胞とその応用
 ACP(Advance Care Planning)
 Society5.0時代に求められる考え方──①人間中心主義
 Society5.0時代に求められる考え方──②社会実装
 医療や教育へのXRの活用,未来の可能性
 水俣病からの学び
 人が必要としていることは
 思春期の若者との「対話」を通じて
 患者を対象とした「臨床疫学研究」
 生殖技術はここまできた──子宮移植と人工卵子・精子
 性的少数者──LGBTQ+
 セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ
 クリニカルパスとチーム医療
 地域医療連携推進法人
 看護小規模多機能型居宅介護
 供給誘発需要
 さまざまな要素を加味して考える医療の価値
 史上もっとも高価な医薬品
 日本国内在住外国人の保健医療
 海外の高所得国で医療従事者として働く
 COVID-19と災害
 避難所
 レジリエンス・エンジニアリング
 「ヒトやモノの誤認」や「伝達ミス」を防ぐ方法
 ヒューマンエラーと医療事故
 新しい技術を用いた教育システム

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