細胞診を学ぶ人のために 第7版
細胞診初学者の手引きとしても経験者の生涯学習テキストとしても最適の一冊
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細胞検査士を目指す技師、学生はもちろん、細胞診専門医を志す医師、ベテランの技師にとっても、細胞診とは何かということを理解する上で最初の一歩を踏み出すきっかけになる1冊。初学者が習得すべき、病理診断における細胞診の位置づけ、標本作製の実際、細胞の所見に関する分かりやすく丁寧な解説はもちろん、新しい細胞診の報告様式、癌・腫瘍取扱い規約に基づく診断体系にも対応している。
| 編集 | 坂本 穆彦 |
|---|---|
| 発行 | 2026年06月判型:B5頁:400 |
| ISBN | 978-4-260-06297-8 |
| 定価 | 11,000円 (本体10,000円+税) |
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序文
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第7版の序
本書「細胞診を学ぶ人のために」は,1990年の第1版上梓以来,細胞診の入門書として,また生涯教育の手引きとして多くのかたがたにご利用いただいてまいりました.当初は,細胞検査士資格認定試験を目指す際の教本を意図していましたが,その内容は細胞診専門医・細胞診歯科専門医の資格認定試験用にも十分に対応でき,さらに病理専門医・口腔病理専門医に挑戦する先生方にもお使いいただけるようになりました.そのうえ,本書はすでに細胞診の専門資格を持ち,医療現場で日々活動している皆様にとっては,細胞診の新しい動向を知る座右の伴侶としての役割も果たしています.
本書の構成は従来の方針を受け継ぎ,大きく総論・各論にわけてあります.総論では,腫瘍などの病態の把握,検体採取から標本作製・鏡検にいたるプロセス,近年のAIの関与などについてまとめられています.各論では,各領域の代表的な病変の顕微鏡写真による細胞所見の提示がなされています.随所に,最新の細胞診報告様式や癌取扱い規約の組織分類が紹介されています.
第7版では,総論の執筆者の選択基準を変更しました.従来の版では,各章を病理専門医の資格を持つ細胞診専門医に執筆を依頼しておりました.しかし,細胞検査士養成のための教育システムが近年徐々に変化し,4年制大学で細胞診を専門的に学べるコースが増えてきました.このような事情を背景に,第7版ではこれらの教育機関で教鞭をとる細胞検査士のかたがたにも執筆陣に加わっていただきました.明日を担う細胞検査士のニューリーダーにご協力いただくことによって,本書に新しい風を吹き込んでいただけるものと期待しています.
第7版が世に出るにあたって,医学書院編集部・松本哲氏,制作部・大野智志氏には大変お世話になりました.執筆者を代表して謝意を表します.
今までの版と同様に,この第7版も皆様の細胞診の学習,知識の習得にいささかでもお役に立てればと願っています.
2026年6月
坂本 穆彦
■追記
他書ではおそらく例を見ない試みと思われますが,表紙に取り上げた顕微鏡写真には,参考までに疾患名と掲載ページを記載しました.読者の皆様に対して便宜を図ったものです.ただし,写真の選択はあくまでデザイン感覚で行っており,これらが特に優先して学ぶべき重要疾患という意味ではありません.力を入れて学ぶべき疾患はこのほかにも多数ありますことをご留意下さい.
目次
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第1章 細胞診の臨床的意義と歴史・現状
1 医療における細胞診
2 細胞診の歴史・現状と未来
3 細胞診の専門資格
第2章 細胞の形態と機能
1 細胞と細胞小器官の構造
2 タンパク合成のしくみとその調節機構
3 細胞分裂と細胞増殖
4 幹細胞と細胞分化
5 細胞内の微細構造の変化と細胞像の関係
第3章 上皮組織・非上皮組織
1 上皮組織
2 非上皮組織
第4章 病理組織学・総論
1 新陳代謝の障害による病変
2 炎症性病変
3 腫瘍性病変
4 その他の病変
第5章 標本作製の実際とその理論的背景
I 検体採取法
1 検体採取法の種類
2 臓器と検体採取法
II 塗抹・固定法・その他の技術
1 塗抹法
2 集細胞法
3 夾雑物除去の前処置
4 固定法
5 細胞転写法
6 セルブロック法
III 液状化検体細胞診(LBC)
IV 細胞診の染色
1 通常用いられる細胞診
2 必要に応じて用いられる染色法
3 免疫染色
V 術中迅速細胞診
1 術中迅速診断の意義
2 術中迅速細胞診の具体例
3 術中迅速細胞診の実際
第6章 顕微鏡の基礎知識と操作法
1 顕微鏡の種類
2 顕微鏡の基礎知識
3 顕微鏡の操作法
4 顕微鏡写真撮影
第7章 スクリーニングと細胞の見方/細胞像と組織像の対比
I スクリーニングと細胞の見方
1 スクリーニングの目的
2 スクリーニングの精度管理
3 スクリーニングの実際
4 細胞の見方
5 判定・診断と報告
II 細胞像と組織像との対比
第8章 細胞診所見と遺伝子異常
1 癌を促進する代表的なメカニズム
2 細胞増殖にかかわる遺伝子の異常と細胞形態
3 浸潤・転移などにかかわる遺伝子異常と細胞形態
第9章 AI(人工知能)による細胞診断支援システム
1 細胞診標本にAI技術を適用する方法
2 組織診AIの現状
3 細胞診標本のデジタル化
4 細胞診AIの現状
5 細胞診AIの活用
6 細胞診AIの発展
【細胞診断学各論】
第10章 婦人科領域の細胞診
1 婦人科臓器の構造と細胞
2 婦人科領域疾患の分類と組織像
3 婦人科領域の細胞診
写真1~87
第11章 呼吸器領域の細胞診
1 肺の構造と細胞
2 疾患の疫学と細胞診の役割
3 検体採取と処理
4 観察のポイント
5 肺腫瘍の細胞診
写真1~30
第12章 口腔・唾液腺の細胞診
1 口腔・咽頭領域と唾液腺の構造と細胞
2 口腔・咽頭領域と唾液腺疾患の分類
3 検体採取と処理
4 観察のポイント
5 口腔・咽頭領域と唾液腺の細胞診
写真1~10
第13章 消化器領域の細胞診
1 消化器の構造と細胞
2 消化器疾患の分類
3 検体採取と処理
4 観察のポイント
5 消化器の細胞診
写真1~14
第14章 泌尿・生殖器の細胞診
1 泌尿・生殖器の構造と細胞
2 尿路疾患の分類
3 検体の種類
4 観察のポイント
5 尿路の細胞診
6 腎臓の細胞診
7 前立腺の細胞診
8 精巣の細胞診
写真1~14
第15章 乳腺の細胞診
1 乳腺の構造と細胞
2 疾患の疫学と細胞診の役割
3 検体採取と処理
4 観察のポイント
5 乳腺腫瘍の細胞診
写真1~14
第16章 甲状腺の細胞診
1 甲状腺の構造と細胞
2 甲状腺疾患の分類
3 検体採取と処理
4 観察のポイント
5 甲状腺の細胞診
写真1~14
第17章 体腔液・脳脊髄液の細胞診
I 体腔液の細胞診
1 体腔の構造と細胞
2 体腔液貯留を伴う疾患
3 体腔液の検体採取および標本作製
4 体腔液に出現する細胞
II 脳脊髄液の細胞診
1 脳脊髄液の循環と機能
2 脳脊髄液でみられる疾患
3 脳脊髄液の検体採取および標本作製
4 脳脊髄液に出現する細胞
写真1~27
第18章 骨・軟部組織の細胞診
1 骨・軟部組織の疾患と分類
2 骨・軟部腫瘍の細胞診
写真1~27
第19章 造血器・リンパ節の細胞診
1 骨髄の細胞診
2 リンパ節の細胞診
写真1~18
第20章 中枢神経系の細胞診
1 中枢神経系の構造と細胞
2 脳腫瘍の組織分類
3 検体採取と処理
4 脳腫瘍の細胞診
写真1~14
参考文献
カラー写真目次
和文索引
欧文索引
書評
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教科書としても知識を再整理する参考書としても優れた一冊
書評者:大河戸 光章(杏林大教授・臨床検査技術学)
『細胞診を学ぶ人のために』第7版を手にしたとき,まず感じたのは「本書は今もなお進化を続けている」ということであった。私が本書を初めて手にしたのは約30年前,細胞検査士をめざして学んでいた学生時代である。当時から本書は細胞診を学ぶ者にとっての定番書であり,多くの細胞検査士や細胞診専門医の育成に貢献してきた名著である。
長年にわたり版を重ねてきた教科書は,時として内容が固定化し,時代とのずれが生じることも少なくない。しかし本書は第7版に至った現在も,細胞診を取り巻く環境の変化や新たな知見を取り入れながら改訂が続けられている。その姿勢には深い敬意を抱かずにはいられない。30年前に学んだ書籍を改めて読み返してみると,変わらない本質と進化し続ける内容の両方を感じることができた。
今回改めて通読して,特に印象的であったのはNoteやコラムの充実である。細胞診断の背景にある病態や関連知識がわかりやすく整理されており,初学者のみならず,日常診断に携わる者にとっても学ぶことが多い。私自身も,学生時代には十分理解できていなかった内容や,新たな知見に数多く触れることができた。単なる教科書としてだけでなく,知識を再整理するための参考書としても優れた一冊であると感じた。
また,本書は細胞像だけでなく,理解を助けるイラストや模式図が豊富に掲載されている点も大きな特徴である。細胞診教育において最も難しいのは,学生が細胞像を単なる暗記対象として捉えてしまうことである。本書は病変の成り立ちと形態を関連付けながら説明しており,「なぜこの細胞像になるのか」を理解しやすい。教育現場で学生を指導する立場からみても,本書の構成は極めて優れていると感じた。実際に講義や実習においても,本書に掲載された模式図や解説は学生の理解を深める上で大いに役立つものと思われる。
さらに,本書の魅力として欠かせないのが写真の美しさである。掲載されている細胞像はいずれも鮮明で観察ポイントが明確であり,診断の根拠となる所見を理解しやすい。それぞれの写真には丁寧な解説が添えられており,単に「見る」だけでなく,「なぜその診断に至るのか」を学ぶことができる。細胞診を学ぶ学生にとっても,経験を積んだ細胞検査士や細胞診専門医にとっても有益な内容である。
学生時代に本書で細胞診を学び,現在は細胞検査士養成課程において学生を指導する立場となった。そのような視点で改めて本書を読み返してみると,本書が単なる教科書ではなく,細胞診教育そのものを支えてきた存在であることを改めて実感する。HPV検査単独法の導入やAI技術の発展など,細胞診を取り巻く環境は変化している。しかし,その根底にある形態学的理解の重要性は変わらない。本書は,これから細胞診を学ぶ学生はもちろん,教育に携わる者にとっても大いに参考となる一冊であり,今後も長く読み継がれていくことを期待したい。
初学者には最良の入門書。経験者には知識の整理と再確認のための実践書。
書評者:森井 英一(日本臨床細胞学会理事長/阪大大学院教授・病態病理学)
細胞診は組織診と比較して患者さんに対する侵襲性が比較的低い診断法であり,日常診療におけるスクリーニングから確定診断の補助,さらには分子病理学的検査との連携に至るまで,その重要性を増し続けている。その一方,細胞診の習得には細胞形態の理解のみならず,病変の成り立ちや組織学的所見,検体採取法,臨床的意義についての幅広い知識が求められ,なかなか一朝一夕では習得しづらいという実状がある。
私自身は病理専門医になりたての若手だった頃,こと細胞診に関しては組織診と異なり核所見や背景の所見の取り方が難しく敬遠しがちであった。しかし,細胞診専門医試験を受験するということになれば敬遠してばかりでは許されず,何かいい教科書はないかと探していた。その過程で出会ったのがかなり以前の版であったが本書である。
本書の最大の特徴は,私のような細胞診の初学者に対して,細胞診の基本概念をわかりやすく解説している点にある。細胞診総論から各臓器の細胞像に至るまで体系的に構成されており,順を追って知識を積み上げることができる。また,単なる所見の羅列ではなく,「なぜその形態を示すのか」という病理学的背景にも言及されているため,病理組織診から入った私のような立場の人間にとっても,理解を深めながら学習を進めることが可能であった。さらに本書には豊富で質の高いカラー写真が掲載されている。細胞診の学習において実際の標本像に触れることは極めて重要であるが,本書の写真は典型例を中心に選択されており,各疾患の特徴を把握しやすい。加えて,良悪性の鑑別点や診断上の注意点が簡潔に整理されており,日常診断に携わる実務者にとっても有用な内容となっている。もちろん私のような専門医試験受験のために勉強している者にとっても,かゆいところに手が届くような内容となっており,本書(のかなり以前の版)を用いて勉強して,無事に合格することができた。
私が勉強に用いてきた本書は,その後,何度も改訂を繰り返され,このたび第7版が刊行された。第7版では伝統を受け継ぎながら現代の細胞診学に対応した内容へとさらに充実している。私が細胞診の世界に足を踏み入れた時代と比較して,近年の細胞診を取り巻く環境変化は目覚ましいが,その変化も今回の第7版に反映されている。液状化検体細胞診(LBC)の普及や,HPV検査をはじめとする分子診断との連携,さらには新たな腫瘍分類の導入など,細胞診実務に影響を与える最新の知見が適切に盛り込まれている。また執筆陣にも細胞診専門医のみならず,細胞検査士養成コースで教鞭をとる細胞検査士の方々が加わっている。従来版を愛用してきた読者にとっても,改訂の意義を十分に感じられる内容となっている。近年,AI技術やデジタル病理の発展により診断支援技術は大きく進歩しているが,最終的な診断の基盤となるのは,細胞や組織の形態を正しく理解する力である。本書は,その基礎となる形態学的思考を養うための格好の教科書であり,細胞診を学ぶ全ての人に自信を持って推薦できる一冊である。初学者には最良の入門書として,経験者には知識の整理と再確認のための実践書として,今後も長く読み継がれていくであろう。


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