人間関係論 第4版
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- 看護師として質の高いケアを提供するためには、対象者との援助的関係・信頼関係を形成することが重要です。対象者を深く理解し、人間関係を構築していく際のたすけとなるよう、看護学・心理学・コミュニケーション学など学際的なアプローチによる知見を盛り込みました。
- 保健医療スタッフとの良好な人間関係を構築していくことは、コミュニケーションエラーによる医療事故などを防ぎ、ケアの質を向上させていくうえでも重要です。チーム医療・多職種連携における看護師の役割について詳しく取り上げています。
- 看護実践場面をふり返る際に有用となるリフレクションやプロセスレコード、さまざまな看護実践場面でいかせるアサーションやカウンセリング、コーチングなどについても詳しく取り上げています。
- さまざまな状況にある対象者と看護師とのかかわりが伝わるよう、随所に事例をイラストつきで掲載しています。事例をもとにロールプレイやディスカッションができる構成になっています。
- 対象者・看護師間、医師・看護師間、看護師どうしのコミュニケーションに関する動画を新たに収載しています。
- 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
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序文
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はしがき
看護職にとって,人間関係を築くことは,その職務の前提でもあり,中心にもなっている。「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン」(以下,ガイドライン)では,看護師教育の基本的考え方として,「対象を中心とした看護を提供するために,看護師としての人間関係を形成するコミュニケーション能力を養う」ことを掲げている。「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」において,基礎分野は「科学的思考の基盤」と「人間と生活・社会の理解」の2つに分けられ,ガイドラインではその具体的な留意点として「家族論,人間関係論,カウンセリング理論と技法等を含むものとする」こととしている。
多様化する社会のなかで,ケアの対象である患者のもつ価値観や期待を理解し,尊重することはますます重要となっている。同時に,ケアの実践においては,患者との関係はもちろん,ほかの保健医療専門職,家族,地域社会と密接に連携していくことが不可欠である。いずれの場面においても,相手の思い,考え,期待などを理解するとともに,専門職として必要な情報提供や説明を行い,協働でケアを提供していくための合意と人間関係を築いていくための態度や能力が求められる。
第4版の構成とねらい
本書の第1版は1997年に刊行され,版を重ねてきた。第4版は,上述のような看護教育における必要性にこたえるため,大きく3部から構成されている。
第1部では,人間関係を理解するための基礎となる心理学(おもに社会心理学)の概念や理論を中心に学ぶ。まず,第1章では,人間関係を構成する自己と他者について,私たちが自分自身についての理解や意識をどのようにもち,他者をどのようにとらえているのかを知る。これは,第2章で扱う,他者との関係の形成や,それを維持または崩壊させようとする気持ち,第3章で扱う,他者に対する態度や行動にかかわってくる。これらはおもに,1対1の人間関係や特定の他者に対する態度や行動が中心になるが,第4章では,私たちがより大きな単位の人間関係,すなわち集団のなかにおかれたとき,どのような影響を受け,どのように行動するのかを考える。
これらをふまえ,第2部では,とくに他者を理解し,人間関係をつくるために役にたつ理論や技法に焦点をあてて学ぶ。人間関係を形成するための,最も基本的な手段の1つがコミュニケーションである。人間と人間,あるいは人間と社会との間の相互関係という複雑な現象を理解するうえで,コミュニケーションについて理解しておくことは不可欠である。第5章では,コミュニケーションがどのような特徴をもち,どのような機能を果たすのかを理解したうえで,1対1の対面でのコミュニケーションから,集団や組織,マスメディアやインターネットを通じたコミュニケーションまで,さまざまなかたちのコミュニケーションについて考える。年々利用が広がっているソーシャルメディアや生成AIなどの新たなコミュニケーションの形態は,人間関係も変化させていく可能性がある。第6章からは,代表的な対人関係の理論と技法を取り上げて紹介し,看護の領域においてどのように応用可能であるかを考えていく。第6章ではカウンセリングと心理療法,第7章ではコーチング,第8章ではアサーティブ-コミュニケーションを扱う。ここでは,看護における応用についてイメージしやすいよう,できるだけ具体的な例を示しながら解説している。今改訂では,理解をより深めていただくために,関連する動画を新たに収載した。
最後に,第3部では,第1部で概観した人間関係を,看護の文脈でとらえ直す。保健医療とくに看護において,どのような人間関係が重要であり,どのような意味をもつのか,組織,地域社会といった背景を含めて考える。第9章では職場(医療スタッフ間),第10・11章では患者や家族,第12章では地域における人間関係に関する特徴や課題について理解を深めるとともに,看護師としてどのような関係をどうやって築いていくのかを考える。
本書を通して,看護師を志す方が,人間関係についての理解を深め,よりよい関係をつくっていくためのさまざまな視点やスキルを得て,よりゆたかなケアの実践にいかしてくださることを期待したい。
2025年11月
著者ら
目次
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第1部 人間関係基礎論
第1章 人間関係のなかの自己と他者 (石川ひろの)
A 人間関係論とは
1 関係的存在としての人間
2 人間関係論のはじまり
3 人間関係の発達
4 看護における人間関係
B 自己認知
1 自己概念
2 関係的自己
3 自己評価
4 自己呈示
C 対人認知
1 印象形成
2 対人認知の個人差とバイアス
3 対人認知の他者への影響
第2章 対人関係と役割 (奥原剛)
A 対人関係の成立
1 類似性
2 相補性
3 近接性
4 身体的魅力
5 人格的特徴
6 生理的喚起
B 対人関係の維持と崩壊
1 社会的交換
2 個人の利益と全体の利益
C 対人葛藤と対処
1 対人葛藤の分類
2 葛藤を生む認知バイアス
3 不合理な思考
4 葛藤の対処方法
D 社会的役割
1 社会規範
2 社会的役割
3 役割葛藤
4 社会的役割とバーンアウト
第3章 態度と対人行動 (奥原剛)
A 態度と態度変化
1 態度のアクセシビリティ
2 認知的不協和
3 サンクコストの誤り
B 説得的コミュニケーション
1 自動的な反応
2 合理的な判断
3 説得される側の心理
C 攻撃
1 攻撃の要因
2 攻撃の抑制
D 援助
1 傍観者効果
2 援助行動の心理的基盤
3 援助要請
4 援助成果
第4章 集団と個人 (石川ひろの)
A 集団の特性
1 集団凝集性
2 集団規範
3 地位と役割
4 コミュニケーションネットワーク
B 集団での課題遂行
1 社会的促進と社会的抑制
2 社会的手抜きと社会的補償
C 集団での問題解決と意思決定
1 同調
2 少数者の影響
3 集団による意思決定
4 集団思考
5 心理的安全性
D リーダーシップ
1 PM理論
2 状況に応じたリーダーシップ
3 フォロワーシップ
4 看護職とリーダーシップ
第2部 人間関係をつくる理論と技法
第5章 コミュニケーション (石川ひろの)
A コミュニケーションとは
1 コミュニケーションの定義
2 コミュニケーションの目標
B 対人コミュニケーション
1 コミュニケーションの機能
2 コミュニケーションのチャネル
3 口頭と書面によるコミュニケーション
4 コミュニケーションのコンテクストと文化差
5 コミュニケーションの障害
C マスコミュニケーション
1 映像メディアと活字メディア
2 マスメディアの影響力
D ICTの発達とコミュニケーション
1 インターネット
2 ソーシャルメディア
3 生成AI
4 メディアリテラシーと今後の課題
第6章 カウンセリングと心理療法 (岡田佳詠)
A カウンセリング・心理療法の理論とスキル
1 支持的精神療法
2 来談者(クライエント)中心療法
3 精神力動的精神療法
4 行動療法
5 認知療法
6 認知行動療法
B 看護への応用
第7章 コーチング (太田加世)
A コーチングの理論とスキル
1 コーチングの定義
2 コーチングの歴史
3 コーチングの効果と限界
4 コーチングの原理
5 コーチングのスキル
B 看護への応用
第8章 アサーティブ-コミュニケーション (片桐由紀子)
A アサーションの理論とスキル
1 アサーティブ-コミュニケーションとは
2 アサーションの歴史と人権
3 自己表現のタイプ
4 アサーティブな問題解決法
B 看護への応用
1 現代の医療の特徴と看護の役割
2 患者・看護師間のコミュニケーション
3 医師・看護師間のコミュニケーション
4 看護師どうしのコミュニケーション
第3部 保健医療における人間関係
第9章 保健医療チームの人間関係 (石川ひろの)
A 医療におけるチームと看護師の役割
1 チームとは
2 チーム医療とは
3 医療チームにおける人間関係
4 チームにおける看護師の役割
B チームワークとチームエラー
1 チームワークとは
2 チームワークを促進・阻害する要因
3 チームエラーと医療事故の防止
C チームにおけるコミュニケーションエラーとその予防
1 コミュニケーションエラーとは
2 コミュニケーションによる医療安全
D 多職種連携に向けて
1 多職種連携とは
2 多職種連携教育
第10章 患者を支える人間関係 (塚本尚子・片桐由紀子)
A 患者・医療者関係
1 患者となった人の体験
2 患者・看護師の関係性を通じてまもるべきもの
3 日本人の病に向かう姿勢
4 認知枠組みが他者理解に及ぼす影響
5 看護理論にみる患者・看護師関係
B 患者・看護師間の相互作用の評価
1 リフレクション
2 プロセスレコード
C さまざまな看護場面における人間関係
1 クリティカルな状況の患者を支える人間関係
2 慢性疾患をかかえて生きる患者を支える人間関係
3 死に向かう患者を支える人間関係
4 人間関係構築がむずかしい患者との関係構築
第11章 家族を含めた人間関係 (塚本尚子・渡邉彩)
A 家族関係論
1 家族という存在
2 現代社会の家族の特徴
3 家族の定義
4 家族の機能
5 家族を理解するための理論
B 家族看護の展開
1 家族の問題への看護アプローチ
2 家族をエンパワーメントするための看護モデル
C さまざまな状況・患者と家族の看護
1 終末期患者と家族,遺族
2 在宅療養中の患者と家族
3 保護を必要とする患者と家族(子ども・高齢者)
第12章 地域をつくる人間関係 (宮本有紀)
A 個人を取り巻く人間関係
1 ソーシャルサポートの定義
2 ソーシャルサポートの分類
3 ソーシャルサポートの効果
B ピアサポートを通した人間関係
1 ピアサポート
2 セルフヘルプグループ
3 患者会
4 エンパワメント
5 リカバリー
C 人間関係の集合としての地域の力
1 ソーシャルキャピタル
2 ソーシャルキャピタルを高める取り組み
D 人間関係の力が最大になる社会
1 ノーマライゼーション
2 ソーシャルインクルージョンと共生社会
3 バリアフリーと障害者差別解消法
動画一覧
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