心理学 第6版
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- 第6版より全面カラー化し、イラストや図表を豊富に掲載した、楽しく学べるテキストとなっています。
- 心理学は、人間を理解するための学問です。心理学を学ぶことで、患者を理解すること、自分を理解すること、仲間を理解することを通じ、看護の実践につながる内容となっています。
- 心理学の基礎的な内容を網羅しつつ、「動機づけ」「発達」など、看護教育ととくにつながりの深い内容について、ていねいな解説を心がけました。
- 日常生活や医療の場面で経験するような具体的な例を取入れながら、学生の皆さんが興味をもって心理学の基礎を学べるよう工夫しています。
- 第11章「医療・看護と心理」は、看護を対人援助職として見つめ、患者の心理や看護職自身の心理について学べる内容となっています。
- 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 系統看護学講座-基礎分野 |
---|---|
著 | 山村 豊 / 高橋 一公 |
発行 | 2017年01月判型:B5頁:272 |
ISBN | 978-4-260-02768-7 |
定価 | 2,530円 (本体2,300円+税) |
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はしがき
「心理学の過去は長いが,歴史は短い」。これは,1908年にドイツの心理学者エビングハウスが述べた言葉である。私たちが知る今日の心理学は,ドイツのライプチヒ大学に世界初の心理学実験室が創設された1879年に始まるといわれる。しかし,プラトンやアリストテレスなどの古代ギリシャの哲学者や,老子や孔子などの古代中国の賢人たちが残した言葉がしめすように,人類は「こころ」について,有史以来,飽くなき探究を重ねてきた。エビングハウスの言葉は,このような「こころ」の探究の歴史を適切に捉えているとともに,「こころ」という身近で不思議な存在が,古今東西を問わず人類の誰もが問わずにはいられない好奇心の対象であったことを物語っている。
そして,21世紀。前世紀の100年の中で,我が国をはじめとする先進国の産業構造は,農水産業や工業から,情報通信や金融,流通,小売,飲食,医療,福祉,教育などのサービス産業へ転換した。すなわち,従来の「モノ」を対象とするものではなく,「ヒト」を対象とする産業が中心となったのである。また,経済成長とともに,全体的には物質的・経済的豊かさは満たされたものの,その豊かさの中で空虚さや不安に苛〈さいな〉まれる人々,さらなる社会的・心理的豊かさを求める人々,経済的豊かさからこぼれ落ちた人々が確実に増えており,そのような人々への援助・支援を担う対人援助職の需要が急速に高まっている。まさに,21世紀は「こころの豊かさ」を求める時代であるといえよう。
この「こころの豊かさ」を求める時代において,「こころ」を研究する心理学は,単に知的好奇心の対象であることを超えて,現代社会に適応し,生活を営む上で必要となる教養に位置づけられるだろう。特に「ヒト」と関わらなければならないサービス業や対人援助職においては必須の専門的知識であるといえる。21世紀を生きる人には,このような社会的・歴史的背景を踏まえつつ,心理学という「こころ」を探究する学問を学んでいただきたい。とはいえ,学問の基本は,日常生活から沸き立つ知的好奇心であることはいうまでもない。心理学を学ぶにあたって,「私は,どうしてこのような気持ちになるのか」,「あの人は,私をどのように思っているのだろう」,「人間は,なぜ,こんなことをしてしまうのか」など,読者の皆さんが日常的に問わずにはいられない関心事を大切にしていただきたい。このような身近な関心事や疑問が,本書で書かれている学術的知見を教養へと高め,さらには現場実践と融合して専門的知識へと洗練していくと著者は強く信じているからである。
1968年,我が国の心理学界を長きにわたりリードしてきた筑波大学名誉教授の故辰野千寿先生(1920-2016)は,医学書院より『系統看護学講座 基礎分野 心理学』を刊行された。以来,版を重ね,約50年もの長きにわたり看護学生の心理学的教養・専門的知識を導かれた。多くの看護学生が,同書に触れたことと思う。本書は,この辰野先生の著書の新版にあたるものである。辰野先生の著書は,きわめて精緻かつ体系的で,完成度の高い教科書であった。本書は,辰野先生のひそみに倣〈なら〉い,その体系と精緻さを保持しつつ,最新の心理学の知見を取り入れ,さらに看護学生だけではなく,福祉や教育などの対人援助職を志す学生にも有用になるよう構成した。
本書の構成は11章からなる。山村が執筆を担当した第1章から第10章までは,いわゆる心理学概論に相当し,心理学一般の基本的知見が網羅されている。高橋が執筆を担当した第11章は,医療・看護職が直面する心の問題に焦点をあてた内容になっている。第11章については,医療・看護職を志す学生にとっては必読であるが,同じ対人援助職である福祉・教育職をめざす学生にも理解してもらいたい内容であるため,ぜひ読んでいただきたい。
看護職や医療従事者をめざす学生はもちろんのこと,福祉や教育など対人援助職やサービス業を志す学生,さらには心理学に知的好奇心を持つ方々が人間の「こころ」を理解する上で本書を役立てていただければ幸いである。
2016年11月
著者代表 山村 豊
「心理学の過去は長いが,歴史は短い」。これは,1908年にドイツの心理学者エビングハウスが述べた言葉である。私たちが知る今日の心理学は,ドイツのライプチヒ大学に世界初の心理学実験室が創設された1879年に始まるといわれる。しかし,プラトンやアリストテレスなどの古代ギリシャの哲学者や,老子や孔子などの古代中国の賢人たちが残した言葉がしめすように,人類は「こころ」について,有史以来,飽くなき探究を重ねてきた。エビングハウスの言葉は,このような「こころ」の探究の歴史を適切に捉えているとともに,「こころ」という身近で不思議な存在が,古今東西を問わず人類の誰もが問わずにはいられない好奇心の対象であったことを物語っている。
そして,21世紀。前世紀の100年の中で,我が国をはじめとする先進国の産業構造は,農水産業や工業から,情報通信や金融,流通,小売,飲食,医療,福祉,教育などのサービス産業へ転換した。すなわち,従来の「モノ」を対象とするものではなく,「ヒト」を対象とする産業が中心となったのである。また,経済成長とともに,全体的には物質的・経済的豊かさは満たされたものの,その豊かさの中で空虚さや不安に苛〈さいな〉まれる人々,さらなる社会的・心理的豊かさを求める人々,経済的豊かさからこぼれ落ちた人々が確実に増えており,そのような人々への援助・支援を担う対人援助職の需要が急速に高まっている。まさに,21世紀は「こころの豊かさ」を求める時代であるといえよう。
この「こころの豊かさ」を求める時代において,「こころ」を研究する心理学は,単に知的好奇心の対象であることを超えて,現代社会に適応し,生活を営む上で必要となる教養に位置づけられるだろう。特に「ヒト」と関わらなければならないサービス業や対人援助職においては必須の専門的知識であるといえる。21世紀を生きる人には,このような社会的・歴史的背景を踏まえつつ,心理学という「こころ」を探究する学問を学んでいただきたい。とはいえ,学問の基本は,日常生活から沸き立つ知的好奇心であることはいうまでもない。心理学を学ぶにあたって,「私は,どうしてこのような気持ちになるのか」,「あの人は,私をどのように思っているのだろう」,「人間は,なぜ,こんなことをしてしまうのか」など,読者の皆さんが日常的に問わずにはいられない関心事を大切にしていただきたい。このような身近な関心事や疑問が,本書で書かれている学術的知見を教養へと高め,さらには現場実践と融合して専門的知識へと洗練していくと著者は強く信じているからである。
1968年,我が国の心理学界を長きにわたりリードしてきた筑波大学名誉教授の故辰野千寿先生(1920-2016)は,医学書院より『系統看護学講座 基礎分野 心理学』を刊行された。以来,版を重ね,約50年もの長きにわたり看護学生の心理学的教養・専門的知識を導かれた。多くの看護学生が,同書に触れたことと思う。本書は,この辰野先生の著書の新版にあたるものである。辰野先生の著書は,きわめて精緻かつ体系的で,完成度の高い教科書であった。本書は,辰野先生のひそみに倣〈なら〉い,その体系と精緻さを保持しつつ,最新の心理学の知見を取り入れ,さらに看護学生だけではなく,福祉や教育などの対人援助職を志す学生にも有用になるよう構成した。
本書の構成は11章からなる。山村が執筆を担当した第1章から第10章までは,いわゆる心理学概論に相当し,心理学一般の基本的知見が網羅されている。高橋が執筆を担当した第11章は,医療・看護職が直面する心の問題に焦点をあてた内容になっている。第11章については,医療・看護職を志す学生にとっては必読であるが,同じ対人援助職である福祉・教育職をめざす学生にも理解してもらいたい内容であるため,ぜひ読んでいただきたい。
看護職や医療従事者をめざす学生はもちろんのこと,福祉や教育など対人援助職やサービス業を志す学生,さらには心理学に知的好奇心を持つ方々が人間の「こころ」を理解する上で本書を役立てていただければ幸いである。
2016年11月
著者代表 山村 豊
目次
開く
第1章 心理学とは (山村豊)
A 心理学とはどのような学問か
1 心とはなにか
2 心理学の分野
B 対人援助と心理学
1 対人援助と対人援助職
2 対人援助職における心理学の意義
C 心理学の歴史
1 心理学のはじまり
2 現代の心理学
D 心理学の研究方法
第2章 感覚と知覚 (山村豊)
A 外界を理解する心のはたらき
1 感覚・知覚とは
2 2つの情報処理プロセス
B 感覚のしくみとはたらき
1 感覚の種類と成立条件
2 感覚の生理と心理
3 感覚の諸現象
C 知覚のしくみとはたらき
1 知覚の種類と性質
2 形の知覚
3 奥行き知覚
4 パターン認識
第3章 記憶 (山村豊)
A 記憶のメカニズム
1 記銘・保持・想起
2 記憶のプロセス
B 感覚・短期記憶と作業記憶
1 感覚記憶
2 短期記憶
3 作業記憶
C 長期記憶と忘却
1 長期記憶の分類
2 長期記憶の構造
3 忘却と検索
第4章 思考・言語・知能 (山村豊)
A 思考
1 思考とは
2 問題解決
3 推論
B 言語とコミュニケーション
1 言語とは
2 言語の障害と検査
C 知能
1 知能とは
2 知能検査と知的障害
第5章 学習 (山村豊)
A 学習とは
B 古典的条件づけ
1 古典的条件づけの基本原理
2 情動条件づけと古典的条件づけの制約
C オペラント条件づけと学習の理論
1 オペラント条件づけ
2 学習の理論
D 社会的学習と効果的な学習方法
1 社会的学習
2 学習の効果的な方法と転移
第6章 感情と動機づけ (山村豊)
A 感情の諸相
1 感情とは
2 感情の生理的要素
3 感情の行動的要素
4 感情の主観的要素
B 感情のメカニズム
1 感情の末梢起源説と中枢起源説
2 感情の2要因説
C 動機づけ
1 動機づけの諸側面
2 葛藤と欲求不満
D 動機づけの理論
1 過剰正当化効果
2 原因帰属理論と自己効力感
3 学習性無力感
第7章 性格とパーソナリティ (山村豊)
A 性格とは
1 性格の定義
2 性格の形成要因
B 性格の理論
1 類型論
2 特性論
3 構造論
4 状況論と相互作用論
C 性格の測定
1 性格を把握する方法
2 性格のおもな検査法
第8章 社会と集団 (山村豊)
A 社会的認知
1 対人知覚
2 原因帰属の知覚
B 態度と説得的コミュニケーション
1 態度とは
2 態度の形成と変容
3 説得的コミュニケーション
C 対人関係と対人魅力
1 対人関係の構造と発展
2 対人魅力
D 集団とリーダーシップ
1 集団のしくみとはたらき
2 リーダーシップ
第9章 発達 (山村豊)
A 発達とは
1 発達の定義
2 発達の段階と課題
3 発達の要因
B 乳幼児の発達
1 運動と知覚
2 知的機能の発達
3 自己と社会性
C 児童・青年の発達
1 知的機能の発達
2 自己と社会性
D 成人・高齢者の発達
1 成人期のはじまりと中年の危機
2 高齢期の発達
第10章 心理臨床 (山村豊)
A 心理臨床と臨床心理学
B 心の適応と不適応
1 ストレスと適応
2 心の問題と心理学の役割
3 さまざまな心の問題
C 心理療法
1 心理療法とカウンセリング
2 精神分析療法
3 行動療法
4 来談者中心療法
5 認知行動療法
第11章 医療・看護と心理 (高橋一公)
A 医療職と対人援助
1 対人援助と対人援助職
2 対人援助の機能
B 患者の心理
1 患者の心理特性
2 死の受容
C 医療・看護職の心理
1 医療・看護職の心理特性
2 職務に対する満足度
D 医療・看護職の心のケア
1 ストレスマネジメント
2 看護職とバーンアウト(燃えつき症候群)
事項索引
人名索引
A 心理学とはどのような学問か
1 心とはなにか
2 心理学の分野
B 対人援助と心理学
1 対人援助と対人援助職
2 対人援助職における心理学の意義
C 心理学の歴史
1 心理学のはじまり
2 現代の心理学
D 心理学の研究方法
第2章 感覚と知覚 (山村豊)
A 外界を理解する心のはたらき
1 感覚・知覚とは
2 2つの情報処理プロセス
B 感覚のしくみとはたらき
1 感覚の種類と成立条件
2 感覚の生理と心理
3 感覚の諸現象
C 知覚のしくみとはたらき
1 知覚の種類と性質
2 形の知覚
3 奥行き知覚
4 パターン認識
第3章 記憶 (山村豊)
A 記憶のメカニズム
1 記銘・保持・想起
2 記憶のプロセス
B 感覚・短期記憶と作業記憶
1 感覚記憶
2 短期記憶
3 作業記憶
C 長期記憶と忘却
1 長期記憶の分類
2 長期記憶の構造
3 忘却と検索
第4章 思考・言語・知能 (山村豊)
A 思考
1 思考とは
2 問題解決
3 推論
B 言語とコミュニケーション
1 言語とは
2 言語の障害と検査
C 知能
1 知能とは
2 知能検査と知的障害
第5章 学習 (山村豊)
A 学習とは
B 古典的条件づけ
1 古典的条件づけの基本原理
2 情動条件づけと古典的条件づけの制約
C オペラント条件づけと学習の理論
1 オペラント条件づけ
2 学習の理論
D 社会的学習と効果的な学習方法
1 社会的学習
2 学習の効果的な方法と転移
第6章 感情と動機づけ (山村豊)
A 感情の諸相
1 感情とは
2 感情の生理的要素
3 感情の行動的要素
4 感情の主観的要素
B 感情のメカニズム
1 感情の末梢起源説と中枢起源説
2 感情の2要因説
C 動機づけ
1 動機づけの諸側面
2 葛藤と欲求不満
D 動機づけの理論
1 過剰正当化効果
2 原因帰属理論と自己効力感
3 学習性無力感
第7章 性格とパーソナリティ (山村豊)
A 性格とは
1 性格の定義
2 性格の形成要因
B 性格の理論
1 類型論
2 特性論
3 構造論
4 状況論と相互作用論
C 性格の測定
1 性格を把握する方法
2 性格のおもな検査法
第8章 社会と集団 (山村豊)
A 社会的認知
1 対人知覚
2 原因帰属の知覚
B 態度と説得的コミュニケーション
1 態度とは
2 態度の形成と変容
3 説得的コミュニケーション
C 対人関係と対人魅力
1 対人関係の構造と発展
2 対人魅力
D 集団とリーダーシップ
1 集団のしくみとはたらき
2 リーダーシップ
第9章 発達 (山村豊)
A 発達とは
1 発達の定義
2 発達の段階と課題
3 発達の要因
B 乳幼児の発達
1 運動と知覚
2 知的機能の発達
3 自己と社会性
C 児童・青年の発達
1 知的機能の発達
2 自己と社会性
D 成人・高齢者の発達
1 成人期のはじまりと中年の危機
2 高齢期の発達
第10章 心理臨床 (山村豊)
A 心理臨床と臨床心理学
B 心の適応と不適応
1 ストレスと適応
2 心の問題と心理学の役割
3 さまざまな心の問題
C 心理療法
1 心理療法とカウンセリング
2 精神分析療法
3 行動療法
4 来談者中心療法
5 認知行動療法
第11章 医療・看護と心理 (高橋一公)
A 医療職と対人援助
1 対人援助と対人援助職
2 対人援助の機能
B 患者の心理
1 患者の心理特性
2 死の受容
C 医療・看護職の心理
1 医療・看護職の心理特性
2 職務に対する満足度
D 医療・看護職の心のケア
1 ストレスマネジメント
2 看護職とバーンアウト(燃えつき症候群)
事項索引
人名索引
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-
更新情報はありません。
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