社会学 第7版

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  • 第7版は新たな執筆陣が加わり、オールカラーとなって約10年ぶりの改訂を行いました。
  • 第1部では社会学の基礎的な内容を学び、第2部と第3部では保健医療社会学を中心とした内容を学ぶ構成となっています。
  • 第1部で学ぶ社会学の基礎的な概念の説明では、日常的なできごとや身近な経験と関連づけて学習ができるよう、わかりやすく解説しています。
  • 第2部以降も、イラストやコラムを適宜入れ、初学者でも理解しやすい紙面構成となっています。
  • これから看護をはじめとした医療を学ぶ学生が、医学的な視点だけではなく社会学的な視点をもち、さまざまな視点から対象(患者)を見ることができるような内容となっています。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-基礎分野
執筆 井口 高志 / 石川 ひろの / 佐々木 洋子 / 戸ヶ里 泰典
発行 2024年01月判型:B5頁:276
ISBN 978-4-260-05302-0
定価 2,310円 (本体2,100円+税)

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はしがき

 私たちの生きている社会のありかたは,私たち個人の健康や病気と密接につながっている。それは,社会をかたちづくる文化や宗教,経済,政治,教育などのさまざまな要因が,人々の健康観や病気観,健康や病気に関する行動や相互作用,保健医療制度や専門職の役割などを規定し,影響を与えているからである。
 社会とは,人々の集まり,人と人との関係や結合からなるものである。人々の間には,家族や友人のような小さな関係もあるし,会社や国家のようなよりフォーマルで大きなつながりもある。社会学は,このような社会とその社会のなかでおこるさまざまな事象について,「自分たちの生きている社会とはどういうものか」を問い,認識しようとする学問である。その学問的な営みを通じて,社会に関する知識や概念,社会学的な視点や理論,社会調査や社会学的な研究のための方法論を蓄積してきた。社会学を学ぶということは,この学問領域において積み重ねられてきたこれらの蓄積を身につけるということである。
 看護が単に病気や障害を扱うのではなく,それも含めて社会のなかで生きる人々を対象としていると考えたとき,社会学を学ぶことの意義は大きい。看護の実践においては,患者や家族,同僚や他職種との関係を築き,多様な文化や価値観を尊重し,病気や不健康の背景にあるさまざまな社会的な要因に対処していくことが求められる。社会学は,これらの複雑な課題に対して,より深い洞察力や批判的思考力をもって向かい合うために役だつと考えられる。また,看護職が専門職としての自分自身やその役割についてふり返り,自己成長や職業倫理を促進するのにも有用である。看護とは,社会のなかで行われる営みであり,看護という営み自体が社会の一部をなしている。看護や看護職が社会とどのようにかかわり,社会のなかでどのように位置づけられるのかについての意識と理解にもつながるだろう。
 本書では,保健医療を社会学的に見ていくうえで重要となる,社会学の基礎的な概念や理論,健康や病気と社会とのかかわり,保健医療におけるアクターとその相互作用,それを取り巻く社会環境や制度などについて学ぶ。本書を通じて社会に対して関心をもち,看護における課題に取り組むうえでの新たな視点や知識,方法の手がかりを得ていただきたいと願っている。

改訂の趣旨
 社会学は,保健師助産師看護師学校養成所指定規則の基礎分野「人間と生活・社会の理解」に対応する科目と位置づけられる。本書の初版は1968年に刊行され,以来5度にわたる改訂を重ねてきた。
 本書は,社会学一般の基礎的な理論・方法とともに,社会学と保健医療・看護との接点領域で開かれてきた「健康・病気と保健医療の社会学」(医療社会学,保健医療社会学,健康社会学などとよばれてきたものを含む)の理論・方法を学ぶという方針のもとに執筆されてきた。これは第7版においてもかわらず継承されている。一方,第6版が出版された当時からは,私たちの社会も大きく変化してきた。とりわけ,新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは,これまでの社会における常識や慣習を根幹から揺るがし,人々の結びつきのあり方,生活様式,働き方,健康や医療に関する価値観,保健医療制度や専門職に対する見方や期待にも影響を与えた。
 第7版となる本書では,このような社会における変化をふまえ,第6版の枠組みをもとに,「第1部 社会学の基礎」「第2部 健康・病気と社会」「第3部 保健医療における行為・関係・組織・制度」の3部構成とした。第6版において「第4部 保健医療の現代的課題」として独立していた章は,第3部までの章において,現代の社会と保健医療における新たな問題や動向,人々の関心,健康・病気と保健医療の社会学における最新の研究成果などをふまえて内容を構成し,章を再編することで統合している。
 「第1部 社会学の基礎」は,社会学の総論にあたる。ここでは,社会学一般の理論や概念,社会学的視点とモデル,保健医療と関連する社会学の諸領域,社会調査の基本と技法について学ぶ。
 「第2部 健康・病気と社会」では,健康・病気が社会とどのようにかかわっているかを学ぶ。健康・病気の見方,ストレスの社会学的モデル,健康と病気の社会格差,仕事と健康の関係について取り上げる。
 「第3部 保健医療における行為・関係・組織・制度」では,保健医療におけるさまざまなアクターの行動と相互作用,専門職としての看護職論,これらを取り巻く社会環境としての家族,地域社会,保健医療制度について学ぶ。また,看護の中核をなすケアについて,社会学の視点から取り上げ,現在の課題とその解決に向けた糸口を示した。
 社会は日々変化し,本書に書かれた事象やデータ自体は,読者が看護の現場に出るときにはすでに過去のものとなるかもしれない。しかし,本書を通して学んだ社会学的な視点や方法論,それに基づく健康・病気や保健医療看護についての理解は,将来,看護の実践において新たな問題に出会ったときに,それを理解し,解決していくための力となるだろう。本書が,これを学んだ皆さんを通して,ゆたかな看護の実践,社会全体の健康の向上に少しでもつながれば幸いである。

 2023年12月
 著者ら

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 序章 健康・病気・医療をみるツールとしての社会学 (井口高志)
  A 社会と社会学
  B 社会学の歴史から学ぶこと
  C 保健医療社会学の誕生と考え方
  D 本書で学ぶこと

第1部 社会学の基礎
 第1章 社会学の基礎概念 (井口高志)
  A 社会学における行為
  B 社会学における二者関係からの広がり
  C 社会学における個人の集まり
  D 社会学における社会の構造のとらえ方
  E 社会変動と現代社会

 第2章 社会学的視点からのモノの見方 (井口高志)
  A 合意とコンフリクト──医療者と患者はわかり合えるのか
  B システムと主体性──病院の決まりに人は従うだけなのか
  C 本質と構築──「○○者」や「○○問題」は自然に存在するのか
  D 意図せざる結果と機能主義──よかれと思ってやったことはどのような結果を生み出すのか
  E 社会学的視点の応用

 第3章 社会学の諸領域と保健医療 (井口高志)
  A 現代の社会学
  B 保健医療を取り巻くさまざまな社会
  C 家族社会学
  D 地域社会学
  E 福祉社会学
  F 保健医療社会学の特徴

 第4章 社会調査の理論と技法 (石川ひろの)
  A 社会調査
  B 量的調査と質的調査
  C 量的調査の企画と実施
  D 質的調査の方法
  E 社会調査の倫理

第2部 健康・病気と社会
 第5章 健康・病気の見方・とらえ方 (戸ヶ里泰典)
  A 健康とはなにか
  B さまざまな健康観
  C 現代社会と病気・健康

 第6章 現代社会とストレス (戸ヶ里泰典)
  A ストレスの理論
  B ストレッサーのとらえ方
  C ストレス対処と資源

 第7章 健康・病気の社会格差 (石川ひろの)
  A 社会格差と平等
  B 健康・病気の社会格差の諸相
  C 社会格差による健康格差発生のメカニズム
  D 健康格差是正の取り組みと可能性

 第8章 働き方・働かせ方と健康・病気 (石川ひろの)
  A 働き方と働かせ方
  B 働き方・働かせ方による健康への影響
  C 健康に影響を与える職場の要因
  D 仕事と生活の調和

第3部 保健医療における行為・関係・組織・制度
 第9章 健康行動・病気行動と病経験 (石川ひろの)
  A 健康行動と病気行動
  B 病経験
  C 病の語り
  D ヘルスリテラシー

 第10章 患者-医療者関係とコミュニケーション (石川ひろの)
  A コミュニケーション
  B 患者-医療者関係のモデルとコミュニケーション
  C わが国の患者-医療者関係とコミュニケーションの特徴
  D 患者アドボカシー
  E 患者と医療者の協働

 第11章 保健医療福祉専門職とアクター (佐々木洋子)
  A 保健医療福祉関連職のなりたち
  B 保健医療福祉関連職をみる視点としての専門職論
  C 看護職論の現在
  D 対人的サービス提供者としての保健医療福祉関連職とアクター

 第12章 性・ジェンダー・家族と保健医療 (石川ひろの)
  A 性別と性差
  B ジェンダーとケア役割
  C ジェンダーと健康
  D 結婚と家族
  E 保健医療からみた結婚と家族
  F 男女共同参画社会の形成に向けた取り組み

 第13章 地域社会と保健医療 (石川ひろの)
  A 地域とコミュニティ
  B ソーシャルサポートと社会関係資本
  C 地域におけるヘルスプロモーション
  D 地域の保健力
  E ノーマライゼーションと地域

 第14章 保健医療福祉システムと現代的変化 (佐々木洋子)
  A 福祉国家と社会保障制度
  B 医療システムの制度と現代的変化
  C わが国の保健医療福祉システムの変容
  D わが国の保健医療福祉システムの課題

 第15章 ケアの社会学 (井口高志)
  A ケアの社会学と対象領域
  B ケアの社会学の主要テーマ
  C ケアをめぐる現代的課題

索引

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