研修医のための精神科ハンドブック 第2版
精神医学の知識を携え、臨床に踏み出そう!
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臨床研修で精神科研修を受ける研修医向けに、精神科診療に関する基礎知識をわかりやすく解説するハンドブック。精神科研修を受ける心構えから医療面接での作法、精神科で出会う症候・疾患、そして社会的課題まで、症例を読みながら幅広く学べる入門書。日本精神神経学会編集。
編集 | 日本精神神経学会 卒前医学教育・卒後臨床研修委員会 |
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発行 | 2025年06月判型:B5頁:168 |
ISBN | 978-4-260-06157-5 |
定価 | 3,850円 (本体3,500円+税) |
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はじめに
本書は日本精神神経学会が総力を挙げて編纂した『研修医のための精神科ハンドブック』の第2版になります.出版の目的は初版と同様,臨床研修において精神科を経験する研修医の学修支援です.医師臨床研修制度の中で精神科は必修科目であり,全ての研修医が医師として最低限必要な精神医学の素養を身につけることが求められています.いずれの診療科を専攻しても,日常臨床において精神医学から学んだ「医師としての基本的価値観や資質・素養の重要性」はますます高まっているといってよいでしょう.
本書は精神科研修中に遭遇するさまざまな場面での実務,症候,疾病・病態を網羅し,さらには社会の中の精神医学という他科では話題になることが比較的少ない(しかし極めて重要な)テーマについても1つの章を充てています.基本的重要事項を重んじ,できるだけ平易な表記を心がけており,読み物としても興味深い内容になっています.
精神科での研修期間に数頁ずつ読む想定で,コンパクトに構成されています.関心と熱意に溢れた研修医ならば,最低4週間の精神科研修の期間内に本書を毎日読み込み,通読していってくれることでしょう.
臨床研修医がさまざまな診療科を回っていると,日常業務に忙殺されるなかでも精神医学と関連する臨床疑問が生まれてくるはずです.その時,本書の関連するページを紐解き,新たに得た精神医学の知識を携えて患者さんに接してもらえれば,本書の執筆者たちにとっては大きな喜びです.
また本書は,多くの精神科専攻医(後期臨床研修医)にとってはすでに馴染みのある教科書でしょう.しかし,まだ手にしていない専攻医がいましたら,必読の書である本書を開くことをお勧めします.
初版が刊行された2020年6月から5年の歳月を経て,日本精神神経学会の会員数は現在,約2,000人増えて2万人に上ります.さらに精神科専門医の数も約1,000人増えて1万2,000人を超えています.精神医学の知識には,5年どころか100年以上も変わらず連綿と受け継がれる精神病理学ないし精神症候学といった不動の基盤がある一方,この5年間で新たな進歩・変化を遂げた診断技法や治療方略には目を見張るものがあります.第2版では,特に後者の部分についてかなりの追記がなされています.本書の性質上,できるだけエッセンシャルな記述・改訂にとどめていますが,それでも初版から比べると大幅な情報量の増大となっています.これらの内容は研修医や精神科専攻医にとどまらず,指導医の先生方,さらにはシニアの先生方にも知識をアップデートする貴重な機会となるでしょう.
よい医師とは? よい精神科医とは? という課題に常に向き合い,1つひとつの臨床疑問を解決していくために,本書が優れた道しるべとなることを心から願っています.
2025年5月
日本精神神経学会 理事長 三村 將
目次
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1章 精神科での臨床研修を始める
精神科研修を通じて学ぶ医学と医療の基本
精神科研修を通じて学ぶ国民病としての精神疾患
精神科研修を通じて考える倫理的ことがら
2章 精神科での臨床研修の実務
精神科における医療面接:初歩の“お作法”から
精神科における臨床推論:ケースフォーミュレーションと診断基準の適応
精神科医療の多様な場
外来診療
コンサルテーション・リエゾン精神医療
入院:急性期,隔離・拘束などを含む実践的なポイント
入院(法的枠組み)
治療のさまざま
薬物療法の進め方:アドヒアランス,代表的副作用,血中濃度モニタリング
精神療法の進め方:簡易精神療法,心理職との連携など
精神科における検査:心理検査の役割
多職種連携でのチーム医療の実際
児童・思春期領域の診療の実際:初期診療で特に配慮すべき事項
3章 研修医が経験すべき症候
体重減少・るい痩(食行動の異常)
もの忘れ
せん妄:精神科で診る意識障害
幻覚・妄想
精神科で診るけいれん発作
興奮
抑うつ
成長・発達の障害:精神科的側面,神経発達症に伴う諸症状
妊娠・出産(周産期メンタルヘルス)
不眠症状
不安と強迫
身体症状(頭痛,吐き気など)
4章 研修医が経験すべき疾病・病態
認知症:BPSDを中心に
うつ病と双極症
統合失調症
心的外傷後ストレス症:トラウマと精神医学
身体症状症とその周辺
物質使用症(アルコール)
物質使用症(医薬品・違法薬物)
ギャンブル行動症
パーソナリティ症
5章 社会の中の精神医学
地域でのケア:社会復帰支援に向けたリソースを知る
緩和ケアにおける精神科医の役割(サイコオンコロジー)
虐待
産業精神保健
アンチスティグマ,権利擁護,患者市民参画
ジェンダーと精神医学
ひきこもり
心理的苦痛の緊急性:自殺念慮,自殺行動,非自殺性自傷
司法精神医学
災害精神医療
利益相反
索引