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リハビリテーション管理学 第2版

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指定規則に加わってから数年が経過した『管理学』。教育現場で必要とされている内容や、国家試験の出題内容をふまえて内容を精選。「災害時の役割・活動」および「感染対策」といった、これから必須となる内容を新たに盛り込んだ。すべてのリハ職種の共通理解を深める一冊。

シリーズ 標準理学療法学・作業療法学・言語聴覚障害学 別巻
編集 斉藤 秀之 / 能登 真一
発行 2025年10月判型:B5頁:260
ISBN 978-4-260-06178-0
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

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第2版 序

 本書の初版が発刊されてから5年が経過し,このたび第2版を刊行する運びとなった.この間,わが国では少子化と高齢化が一層進み,人口減少も加速した.経済面でもグローバル化とインフレーションの進行により,社会経済情勢が大きく変化している.
 このような状況のなか,本書には初版の刊行以降,臨床現場や教育現場から多くの反響とともに,時代の変化に即した新たな要請も寄せられてきた.そこで第2版では,初版で示した基礎的な枠組みを踏襲しつつ,最新の医療政策,診療報酬改定など内容の充実に加え,災害時の役割・活動,感染対策という項も加筆して,より一層実践に役立つ構成へと改訂した.
 リハビリテーションの管理学という科目の習得は,2018年の「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」改正によって定められた.2024年には「言語聴覚士学校養成所指定規則」の改正により「言語聴覚療法管理学」として,言語聴覚士の養成教育においても必修化された.これにより,多くの職場でともに働く3療法士が,そろって「管理学」を学ぶ環境が整った.
 「管理学」という科目は,人をどのように管理するかという単なる管理論や,組織をどのようにまとめるかという単なる組織論にはとどまらない.われわれ療法士が対象者一人ひとりの生活を支える医療専門職として,医療や介護などの制度や関連する各種法律などを正しく理解したうえで,それぞれの人的,物的,経済的,知的および技術的なさまざまな資源を有効に活用し,リハビリテーションチームとして最大限の力を発揮するにはどうするべきか,その過程で安全と質をどのように担保していくのかを学ぶものである.そのため,本科目においては理学療法士,作業療法士,言語聴覚士といった名称の区別は重要ではなく,あくまでチームとしてのアプローチ能力を底上げすることこそが優先されるべきである.本書があえて「リハビリテーション管理学」としているのも,そのような思いを込めてのことである.
 さて,世の中に目を移すと,AI(Artificial Intelligence:人工知能)があらゆる業界を席巻しているように見える.膨大な機械学習をもとにしたアルゴリズムとデータを活用するシステムはさまざまな業種で業務の効率を上げるとともに,人間に匹敵する精度でその判断能力を発揮し始めている.医療現場でもAIを活用した診療支援などが導入され,パラダイムシフトが起こりつつある.かつて,イギリス・オックスフォード大学の学者たちが「The future of employment:How susceptible are jobs to computerisation?(雇用の未来:仕事はコンピュータ化の影響をどれくらい受けるのか?)」」という論文を発表した.この論文では,サービス業,販売業,建築業における雇用の大部分がコンピュータ化される可能性が高いとされた一方で,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士は医師や教師,デザイナー,他の医療従事者などと並んでコンピュータ化されにくい職種として推定された.AIが開発され,コンピュータ化にはますます拍車がかかると思うが,われわれには新たに開発されるICT(情報通信技術)を積極的に活用しつつ,あらゆる対象者に対していかに人間らしいかかわりを提供し続けられるかが問われている.
 本書を手にしている学生の方々の多くは3年生か4年生だと思う.総合臨床実習や国家試験が目前に迫るこの時期は,いよいよリハビリテーションのプロフェッショナルとして,対象者に向き合うという現実を実感し始めるころである.その実感は,対象者のために尽力したいという喜びや期待のほうがより大きい一方で,それに見合う責任や不安も感じ始めているのではないだろうか.その責任や不安を少しでも和らげる方法は,われわれの職業を支えている制度への理解を深め,職業倫理を踏まえつつ業務を高いレベルで遂行しうる意識と能力を養うことである.本書がそのようなみなさんの努力を支える手引きになれば幸いである.
 最後になったが,本書の刊行にあたり,ご協力をいただいた執筆者の先生方,そして編集に尽力くださった医学書院の方々に心より感謝を申し上げたい.

 2025年9月
 斉藤秀之,能登真一

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序章 リハビリテーション管理学とは
  ① 管理学必修化の経緯
  ② そもそも管理学とは何か
  ③ 現代の社会環境と職場環境
  ④ あえて「リハビリテーション管理学」とした理由
  ⑤ 本書の構成

第1章 社会保障制度
 1 社会保障制度とは
  ① 社会保障制度のなりたち
  ② 社会保険制度
  ③ 社会保障の財政
 2 医療保険
  ① 医療保険のしくみ
  ② 医療提供体制
  ③ 診療報酬
  ④ 医療費の財政
 3 介護保険
  ① 介護保険制度
  ② 介護保険のしくみ
  ③ 介護保険給付サービスの種類
  ④ 介護報酬
 4 障害者・障害児サービスと就労支援
  ① 障害者手帳
  ② 障害者総合支援法
  ③ 各種サービスと療法士のかかわり
  ④ 就労支援に関する施設と内容
 5 予防・保健
  ① 行政におけるリハビリテーション
  ② 行政リハビリテーション専門職の役割
  ③ 介護予防,保健指導,地域ケア会議

第2章 職業倫理
 1 専門職に求められる職業倫理
  ① 職業倫理とは
  ② リスボン宣言
  ③ インフォームド・コンセント
  ④ 守秘義務
  ⑤ 研究倫理について
 2 身分法と倫理綱領
  ① 法律とは
  ② 医療に関する法律
  ③ 医療,医行為とは何か
  ④ 医療スタッフの法体系
  ⑤ 理学療法士及び作業療法士法(療法士法)
  ⑥ 言語聴覚士法
  ⑦ 倫理とは何か

第3章 業務管理
 1 病院・施設の組織
  ① 組織体制
  ② リハビリテーション部門の役割
 2 療法士の業務
  ① 診療業務
  ② 診療記録
 3 コンプライアンス
  ① コンプライアンスとは
  ② 病院や施設に求められるコンプライアンス
 4 労務管理
  ① 勤務体制と労働時間管理
  ② 人権の保障とハラスメント
 5 組織マネジメント
  ① リーダーシップ
  ② 人材管理
  ③ 組織マネジメントの留意点

第4章 多職種連携と地域連携
 1 多職種連携
  ① 療法士が連携すべき他職種の紹介
  ② 多職種連携のありかた
  ③ 多職種連携に必要なコミュニケーションスキル
  ④ 多職種連携と多職種協働
  ⑤ 医療現場における療法士の役割
 2 地域連携
  ① 地域包括ケアシステム
  ② 地域・介護現場における療法士の役割
  ③ 地域により異なる連携を行った事例
  ④ 災害時の役割・活動

第5章 医療の質とリスクマネジメント
 1 医療の質的保証
  ① 医療の質と患者満足度
  ② 臨床指標(CI)と質的指標(QI)
  ③ リハビリテーションにおける質的保証
 2 リスクマネジメント
  ① 医療の安全性
  ② ヒューマンエラー
  ③ インシデントレポート
 3 感染対策
  ① リハビリテーション現場における感染対策の重要性
  ② 感染対策の基本概念とスタンダードプリコーション
  ③ 具体的な感染対策
  ④ リハビリテーション施設での感染対策

第6章 養成教育と卒後教育
 1 教育の役割
  ① 現代社会の構造と教育の役割
  ② 教育の本質
  ③ 教授方法と教育評価
 2 養成教育制度
  ① 理学療法士,作業療法士
  ② 言語聴覚士
 3 卒後教育
  ① キャリアデザインについて
  ② 卒後教育とは何か
  ③ 卒後教育の実施者は誰か
  ④ 職能団体とその役割
   1.公益社団法人 日本理学療法士協会(PT協会)
   2.一般社団法人 日本作業療法士協会(OT協会)
   3.一般社団法人 日本言語聴覚士協会(ST協会)
  ⑤ 職能団体が実施する卒後教育(生涯教育制度)
   1.公益社団法人 日本理学療法士協会(PT協会)
   2.一般社団法人 日本作業療法士協会(OT協会)
   3.一般社団法人 日本言語聴覚士協会(ST協会)
  ⑥ 関連学会と学術活動

Check sheet

索引

Advanced Study
 ・ 人口減少社会
 ・ 中央社会保険医療協議会(中医協)
 ・ 運動量増加機器(ロボット)リハビリテーション加算
 ・ 家族による虐待
 ・ 成年後見制度
 ・ 基本報酬(2024年4月~)
 ・ 法定雇用率
 ・ 一般介護予防事業
 ・ 地域ケア会議における助言者として留意すべきこと
 ・ 医事法を学ぶ
 ・ 医学用語と法律用語の違い
 ・ 組織形態
 ・ 組織行動論
 ・ 「連携」という言葉
 ・ 電子カルテ
 ・ インフォームド・コンセントと説明責任の違い
 ・ 個人情報とプライバシーの違い
 ・ 診療の質指標(QI)
 ・ 監督もしくは管理の地位にある者とは
 ・ 女性労働者が保健指導や健康診査を受けるために事業主が講じるべき措置
 ・ 医師らの指導事項を守るために必要な具体的な措置
 ・ ストレスチェックとは
 ・ 「業務上必要な言動」はハラスメントに該当しない
 ・ 「不利益取扱い」とは
 ・ リーダーシップとマネジメント
 ・ バイアス(偏り)
 ・ 特定行為
 ・ 連携の研究
 ・ ソーシャルキャピタル
 ・ 令和6年能登半島地震における多職種・地域住民との連携
 ・ リンゲルマン効果
 ・ 世界の主要な教育学者
 ・ 臨床実習指導者講習会

Topics
 ・ 公的保険と私的(民間)保険
 ・ P4Pとリハビリテーション
 ・ 介護が必要な期間
 ・ 科学的介護情報システム「LIFE」
 ・ 法律の改正
 ・ まず,行政職員としての能力を身につけよう!
 ・ TQM活動
 ・ 社会保険適用範囲の拡大
 ・ 育児休業・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法の改正
 ・ 労働施策総合推進法とは
 ・ 理想的なフォロワー
 ・ 組織に対する情緒的コミットメントを高める
 ・ リハビリテーション栄養
 ・ 下肢装具連携
 ・ 歯科衛生士の介入
 ・ 日本版CCRC──移住による地域包括ケアの新しいかたち
 ・ 地域共生社会
 ・ 感染対策としてのマスクの効果
 ・ リハビリテーションロボットと機能的電気刺激治療
 ・ 主権者教育の意義と展望

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