産婦人科外来処方マニュアル 第6版
女性診療の処方のポイントがわかりやすく 使いやすく 学びやすく この一冊に!
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産婦人科外来で日常的にであう疾患の処方ポケットブック。「薬の選択が悩ましい」「症状に最適な薬を使いたい」「軽快しないときの次の一手は」……徹底的な現場主義から項目を精選し、処方例、処方解説、薬剤解説をコンパクトにまとめている。今改訂では「妊娠中のワクチン」「経口中絶薬」「再発子宮体癌の外来薬物療法」を新設。姉妹書『産婦人科ベッドサイドマニュアル』とともに、女性診療に携わるすべての臨床家の必携本。
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序文
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第6版 序
産婦人科外来処方マニュアルの「第6版」を上梓することになりました.2019年に第5版を作成してから6年が経過していますが,時代が平成から令和に変わっても,本書は姉妹書の『産婦人科ベッドサイドマニュアル』とともに産婦人科領域の診療に広く使われていると聞き,とてもうれしく光栄に思っています.
さて,この6年間に世界は大きな問題と変化を経験しました.3年にわたり世界を混乱させたコロナ禍,ロシアによるウクライナ侵略戦争,イスラエルとガザの紛争など,世界情勢が混沌とした時代を今我々は過ごしています.
他方,我々の医学・医療の世界でも大きな変化が起こりつつあります.それはあらゆる場面にDXが進んでいることです.保険証に替わるマイナンバーカード,電子カルテ情報の標準化など,政府主導のDXの導入は急です.また,想像を超えた速さでAIが導入され,画像診断などにも応用され始めました.我々の世界でも歴史的なターニングポイントになるかもしれません.
そのなかで,第6版は書物として発行を続けることにしました.今回の編集方針も「産婦人科医師が使う薬剤の最新知識を平易に概説し,推薦処方を明確に示すことにより,臨床現場で使いやすいマニュアル」を原則に,編集方法は従来通り,すべての項目の内容を精査し,疑問点を議論し,文章を練るという手法を維持しました.時代は変化しても必要とされる情報のクオリティーが大事だと思うからです.今回の改訂では新しく3項目を追加し,必要に応じて同項目でも内容を一新し,薬剤も最近のものに入れ替えています.また,従来掲載している性ホルモン製剤,漢方製剤,オーソライズドジェネリック医薬品,ステロイドホルモン外用剤などの一覧表も残しています.
今回の改訂作業における大きな変化は,討議の場をオンラインで行ったことかもしれません.毎週の討議の時間になると,大学の医局や病棟,当直先,出張先のホテルからも参加してもらい,侃々諤々の原稿検討を行いました.これもコロナ禍の副産物ですが,とても有用で編集作業の能率が上がりました.
本書は,産婦人科の日常診療で遭遇する疾患の処方例のマニュアルですが,現場の意見を大胆に取り入れてありますので,研修医や専攻医には新しい知識の吸収のために,ベテラン医師には忘れてしまいがちな知識の確認のために,また他科の医師にとっても参考になる内容を含んでおり,広く活用していただけるものと思います.
最後になりましたが,今回の改訂において取りまとめを担当してくれた産科婦人科教室の木内理世特任准教授の多大な貢献と医学書院のスタッフのご尽力によるところが大きく,厚く感謝を申し上げます.
令和7(2025)年4月
苛原 稔
目次
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A 周産期
1 つわり・妊娠悪阻
2 切迫流産
3 切迫早産
4 妊娠高血圧症候群
5 貧血(妊娠中)
6 かぜ症候群(妊娠中)
7 インフルエンザ(妊娠中)
8 気管支喘息(妊娠中)
9 アレルギー性鼻炎(妊娠中)
10 頭痛(妊娠中)
11 腰痛(妊娠中)
12 胃炎(妊娠中)
13 便秘(妊娠中)
14 下痢(妊娠中)
15 痔核(妊娠中)
16 皮膚のかゆみ(妊娠中)
17 子宮復古不全
18 産褥乳汁分泌の調整
19 産褥乳腺炎・乳頭亀裂
20 妊婦および授乳婦におけるビタミン摂取基準
21 妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂食量の目安
22 授乳中の薬剤投与
23 乳児の皮膚疾患
24 妊産婦のワクチン
B 内分泌
25 無月経
26 頻発月経,希発月経,無排卵周期症
27 機能性子宮出血
28 月経周期移動
29 経口避妊薬
30 緊急避妊法
31 経口中絶薬
32 過多月経
33 機能性月経困難症
34 月経前症候群
35 子宮内膜症
36 多毛症
37 更年期障害(ホルモン補充療法)
38 更年期障害(その他の治療)
39 骨粗鬆症
40 脂質異常症
41 萎縮性腟炎
C 不妊
42 無排卵症
43 黄体機能不全
44 高プロラクチン血症
45 多囊胞性卵巣症候群の排卵誘発
46 男性不妊
D 感染症
47 カンジダ腟炎・外陰炎
48 トリコモナス
49 クラミジア
50 尖圭コンジローマ
51 性器ヘルペス
52 梅毒
53 淋菌感染症(淋病)
54 付属器炎
55 膀胱炎
56 細菌性腟症
57 ケジラミ症
E 腫瘍
58 子宮筋腫
59 HPVワクチン
60 子宮内膜増殖症・子宮体癌の外来薬物療法
61 進行・再発子宮体癌の外来薬物療法
62 進行卵巣癌およびプラチナ感受性再発卵巣癌の維持療法
63 再発子宮肉腫の外来薬物療法
64 癌化学療法時の制吐薬
65 術後排尿障害
66 癌化学療法に伴う神経障害
67 癌性疼痛
F その他
68 尿失禁・過活動膀胱
69 便秘症
70 接触皮膚炎
71 外陰瘙痒症
72 術創の肥厚性瘢痕の予防と治療
73 不眠症
付録
74 性ホルモン薬の一覧表
75 主な副腎皮質ホルモン外用薬の一覧表
76 産婦人科で使用する主な抗菌薬の一覧表
77 オーソライズドジェネリックの一覧表
78 産婦人科で使用する主な漢方薬の一覧表
79 産婦人科外来診療で使用する主な薬剤の警告集
薬剤索引
事項索引
書評
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現場で役立つコンパクトな処方マニュアル
書評者:万代 昌紀(京大大学院教授・婦人科学・産科学)
『産婦人科外来処方マニュアル 第6版』が出版されました。本書は,徳島大の青野敏博名誉教授,苛原稔名誉教授,岩佐武教授の編集,同大産婦人科の先生方が編纂された,外来診療に即した処方マニュアルです。
帯に「わかりやすく 使いやすく 学びやすく この一冊に!」とありますが,外来で遭遇する疾患を,「周産期」「内分泌」「不妊」「感染症」「腫瘍」「その他」の6群に分類し,それぞれの疾患について,病態の解説,処方例,処方の解説,薬剤の解説の順に,非常にコンパクトにまとめられています。さらに,それぞれの薬剤の項には,種類・適応・副作用・禁忌・注意がひとことで説明されており,価格まで含めて記載されているため,同一領域の薬剤を比較して選択することができます。このように必要最小限,かつ十分な情報が重要なものから順に厳選して記述する本書の形式は,現場での実使用を前提に,日常診療で使い込まれることを想定して作られていることがよくわかります。
昨今は,電子カルテが標準になり,薬剤情報にも電子的にアクセスできるようになりました。昔の分厚い「くすり本」をひもとくことは少なくなったと言えます。一方で,日常診療では,外来でも病棟でも,さっと必要な情報を得たい場面がたくさんあり,そのたびに端末を開いて検索するのは思ったより,面倒なものです。ポケットにこのマニュアルが一冊あれば,それで済む,という場面が日常診療では圧倒的に多いと思います。『産婦人科外来処方マニュアル 第6版』は,人気シリーズとしてこれからも,若手・ベテランにかかわらず,現場の日々の診療を支えるツールとして活躍することでしょう。
誰もが迅速かつ安心して処方判断を行える実用書
書評者:廣田 泰(東大大学院教授・産婦人科学)
本書は,産婦人科外来における診療の現場で活用する実用書として,産婦人科診療に携わる全ての医療従事者にとって心強い味方となる一冊です。中でも,徳島大産科婦人科学教室が長年にわたって蓄積してきた豊富な臨床経験に基づく信頼性,そして新薬の登場など時代の変化に即応した度重なる改訂が行われてきた点は,特筆に値します。伝統に裏打ちされた確かな知見と,多くの診療経験から導かれた具体的かつ丁寧な指針により,誰もが迅速かつ安心して処方判断を行えることが,本書の最大の魅力といえるでしょう。
本書では,産婦人科外来で頻繁に遭遇する疾患や症状を,周産期,内分泌,不妊,感染症,腫瘍,その他の領域に分類し,多様な臨床場面を網羅的に取り上げています。各項目には「この場合にはこの薬」と明快に処方方針が示されており,忙しい外来で判断に迷う場面でも,すぐに適切な選択肢を絞り込むことが可能です。さらに,処方例にはエビデンスに基づいた根拠や注意点,副作用,他剤との比較,選択のポイントなども豊富に記載されており,患者ごとの多様な背景に柔軟に対応するための実践的知識が詰まっています。
加えて,「妊産婦のワクチン」「経口中絶薬」「外来で行うがん薬物療法」といった近年の医療動向を反映した最新トピックも収載されており,現場で生じる新たな疑問にも即応できる内容となっています。巻末にはホルモン製剤,漢方薬,抗菌薬などの使い分けや特徴を一覧できる表が多数掲載されており,薬剤の比較検討や説明時にも役立ちます。
また,本書のもう1つの大きな特長は,その携帯性にあります。診療衣のポケットに無理なく収まるコンパクトなサイズで,診察室や外来での持ち運びにも便利です。診療の合間にすっと取り出し,必要な情報をその場で素早く確認できる――まさに毎日の診療を支える「お守り」のような存在といえるでしょう。実臨床の現場で培われた「役立つ知恵」が随所に丁寧にまとめられており,診療全体を通じて実践的にサポートする工夫も凝らされています。若手医師からベテランまで,全ての医療者にとって診療力の向上につながる必携の一冊です。
診療現場に寄り添う高い実用性と優れた携帯性を兼ね備えた本書は,産婦人科診療に従事する全ての医療者に自信を持ってお薦めできるマニュアルです。日々の診療における疑問や迷いをその場で解消し,より確かな医療を提供するための心強いパートナーとして,ぜひ手元に置いてご活用ください。