臨床婦人科産科 Vol.79 No.4
2025年 04月号(増刊号)

ISSN 0386-9865
定価 9,460円 (本体8,600円+税)

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巻頭言 産婦人科領域の最新動向と重要疾患

 産婦人科領域では,3年ごとに『産婦人科診療ガイドライン──産科編・婦人科編』の改訂を実施しており,主たる産婦人科疾患についての診断・治療の典拠となっている.最新のガイドラインは2023年版となるが,この2023年版が発刊された後に婦人科腫瘍領域,生殖医学・女性医学領域,周産期領域のそれぞれについて,診断基準に大きな変更が報告され,1~2年以内に診断基準の変更が予測されている疾患も少なくない.

婦人科腫瘍領域
 まず婦人科腫瘍領域では,子宮頸がんは国際産婦人科連合(FIGO)の進行期分類の変更に伴い2020年からわが国でも改定され,2022年発行の『子宮頸癌治療ガイドライン2022年版』さらには『産婦人科内視鏡手術ガイドライン2024年版』では,IIA期までで腫瘍径,周囲組織浸潤も考慮したうえで進行期IIA期までであれば腹腔鏡下広汎子宮全摘術も考慮されるようになった.また,低リスク子宮頸がんに対して,筋膜外単純子宮全摘術が広汎子宮全摘術に対して非劣性であることが示され,縮小手術の可能性が広がるものと思われる.
 子宮体がんの進行期分類についても,2023年のFIGO分類改定を受けてわが国でも検討が始まっている.FIGO分類では病理学的に組織型,組織学的悪性度,脈管侵襲の有無に加えて分子遺伝学的所見まで加味した分類が提唱されているが,分子遺伝学的な検査を日常診療として実施することが困難であることから,国内はもちろん国際的にもまだ十分なコンセンサスを得ていない状態と思われる.
 このほか,卵巣がんについては,『遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン第3版』が2024年に発刊されており,診療に際しては留意する必要がある.また,絨毛性疾患の取扱い規約についても2025年中には新たな規約が発行されるものと期待されている.

周産期領域
 次に周産期領域においては,これまで30年以上利用してきた産科DIC診断基準(スコア)」を2024年6月に改訂し,「2024年改訂版産科DIC診断基準」を発表している.この診断基準の中では,分娩後異常出血について凝固性の有無を判断する,すなわち出血の中に凝血塊が含まれているか否か,に重点を置き,単に分娩後出血多量でも凝血塊を認め低フィブリノゲン血症に至っていない場合には産科DICの可能性は低いと診断される,という定義が明確となっている.このほか,胎児推定体重の新たな標準曲線,胎児発育不全の新たな診断基準と用語の定義の改定,さらには分娩進行度の評価と分娩第二期の診断基準に関する新たな診断基準が日本産科婦人科学会周産期委員会から2025年中に発表されると思われる.

生殖医学・女性医学領域
 さらに生殖医学・女性医学領域においては,多囊胞性卵巣症候群(PCOS)の新たな診断基準が2024年に発出され,抗Müller管ホルモン(AMH)高値など新たな検査項目の詳細が定義されているが,AMH高値だけでPCOSを診断することはできず,またAMHの測定は診断には必須ではないことも留意する必要がある.

 今後2026年に新たな産婦人科診療ガイドラインが発行されるまでに,これらの新たな診断基準を踏まえながら日常臨床を行う必要があり,ぜひ日本産科婦人科学会のウェブサイトを定期的に参照して変更点をご確認いただきたい.

 埼玉医科大学病院産婦人科
 亀井良政

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これだけは押さえたい 最重要疾患の病態・診断・治療法

巻頭言 産婦人科領域の最新動向と重要疾患
亀井 良政

【産科編】
■胎児・母体管理
胎児発育不全
長﨑 澄人

多胎妊娠
清田 敦子,他

羊水過多(症)・羊水過少
小松 篤史

妊娠高血圧症候群
松井 遥香,他

HELLP症候群
大場 智洋

糖代謝異常合併妊娠
牧 尉太

前置胎盤
長谷川 潤一,他

常位胎盤早期剥離
二井 理文

■周産期感染症
絨毛膜羊膜炎・子宮内感染
米田 哲

A群溶血性レンサ球菌感染症
仲村 将光

B群溶血性レンサ球菌感染症
宮越 敬

サイトメガロウイルス感染症
出口 雅士,他

■早産管理
子宮頸管無力症
桑原 慶充

切迫早産・早産
高橋 華子,他

前期破水
永松 健

■分娩期異常
微弱陣痛
進藤 亮輔,他

産科危機的出血
松永 茂剛

Retained products of conception (RPOC)
高橋 宏典

羊水塞栓症
小田 智昭

【婦人科編】
■思春期・女性ヘルスケア
体重減少性無月経/神経性やせ症
金谷 真由子

月経前症候群
大須賀 拓真,他

機能性月経困難症
河野 康志

避妊/緊急避妊
永石 匡司

妊娠・授乳期の乳腺疾患
関根 憲

■性分化疾患・先天性疾患
Turner症候群
榊原 秀也

アンドロゲン不応症
古井 辰郎,他

先天性子宮形態異常/OHVIRA症候群/Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser(MRKH)症候群
鎌田 泰彦

■不妊・生殖
高プロラクチン血症
折出 亜希

多囊胞性卵巣症候群
原 鐵晃

早発卵巣不全(早発閉経)
大須賀 智子

不妊症:一般不妊治療
柿沼 敏行

不妊症:生殖補助医療
伊藤 歩,他

■更年期・老年期
更年期障害
佐々木 浩

脂質異常症
牧田 和也

骨粗鬆症
茶木 修

骨盤臓器脱
白石 達典,他

■感染症
梅毒
川名 敬

淋菌感染症
笹 秀典

クラミジア感染症
宮﨑 博章

性器ヘルペス
土屋 裕子

■子宮の腫瘍・類腫瘍
子宮筋腫
石川 博士

子宮腺筋症
山口 建,他

子宮内膜症
山内 彩子,他

子宮頸がんとその前がん病変
小宮山 慎一,他

子宮体がんとその前がん病変
太田 剛

■卵巣腫瘍
良性腫瘍
春間 朋子

悪性上皮性腫瘍・卵管がん・腹膜がん
徳永 英樹

悪性胚細胞性腫瘍
大原 樹

悪性性索間質性腫瘍
植田 多恵子

■その他の婦人科腫瘍
絨毛性疾患
新美 薫

遺伝性腫瘍
石川 光也

婦人科がんサバイバーのヘルスケア
横山 良仁

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