患者指導に困ったら読む本
まず、医療者(わたしたち)が変わる動機づけ面接
患者指導に困ったら、まず、医療者が変わろう。動機づけ面接が助けてくれる
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どれだけ言っても、患者の行動が変わらない──その悩みは多くの医療者が抱えています。本書は、「患者を変えようとする」のではなく「医療者の関わり方を変える」という視点から、患者の行動変容を支えるコミュニケーション法「動機づけ面接」を紹介します。臨床での具体例をもとに、患者との関係を見直し、信頼を構築し、よりよい支援の方法を見つけるための実践的な一冊です。キーワードは、答えは患者のなかにある!
| 著 | 藤澤 雄太 |
|---|---|
| 発行 | 2026年04月判型:B5頁:168 |
| ISBN | 978-4-260-06526-9 |
| 定価 | 2,530円 (本体2,300円+税) |
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序文
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序
患者指導では,医療者がどれだけ丁寧に説明し,根拠も示し,励ましても患者が動かないことがあります.
その瞬間に湧く焦りは,いつのまにか「もっと強く言わなければ」「納得させなければ」という“説得の圧”や「この患者は変わる気がない」という“あきらめ”になってしまいがちです.そして,患者は黙り込んだり,反発したりして,会話が遠のいてしまう.そんな経験はないでしょうか.
ここで一度,前提を置き直します.
私たちは,患者を変えることはできません.
どれほど正しい説明でも,どれほど熱い励ましでも,「変わる」と決める決断のボタンを押すのは患者自身です.
では医療者は無力なのかというと,そうではありません.私たちにできるのは,説得の圧を強めることではなく,“関わり方”を変えることです.患者が葛藤,不安,恐れを抱え,「できるなら今のままでいたい」と揺れているとき,必要なのは説得ではなく,決断を支援するための伴走です.「なぜ変わるのか」「どうやって変わるのか」を一緒に整理できると,患者は自分の力で決断のボタンを押しやすくなります.
動機づけ面接は,その伴走のための実践的な方法です.患者の中にある「大切にしたいこと」や「願い」を丁寧に確かめ,持っている力が自然に動き出すように対話を組み立てていきます.
本書は,患者を“動かすテクニック集”ではありません.
医療者が,つい説得したくなる自分に気づき,関わり方を変えるための本です.
この本で目指すのは,たとえば次のような変化です.
・ 患者の気持ち・考えを,短時間でも引き出せる
・ 患者の強み(できていること)を見つけて言葉にできる
・ 怒りや反発が出た場面でも,関係を壊さずに持ち直せる
・ 「変わりたい気持ち」を一緒に育て,次の一歩につなげられる
・ 医療者自身が疲弊しにくい面談の進め方が身につく
患者が変わらないときに,変えるべきは患者ではなく,私たちの“対話の仕方”.そして最初に変われるのは,私たちです.「患者を変えようとしない」──それは,患者の力を信じて関わるという選択です.
患者を変えることはできない.
でも,医療者である私たちの関わり方は変えることができる.
そして,関わり方を変えることで,患者が自分自身の力で変わり始める.
本書が,あなたの指導や面談を“次の一歩につながる対話”に変え,伴走の道すじになることを願っています.
2026年3月
藤澤雄太
目次
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序章 医療者が変わる動機づけ面接
患者を変えることはできない
医療者が変わる動機づけ面接
・ 動機づけ面接の歴史
・ 「患者を管理する医療者」から「ともに歩む支援者」へ
・ 指導という言葉
・ 動機づけ面接を「知る」から「使う」へ
1章 患者の行動変容を引き出す動機づけ面接
患者指導に困ったときが,患者を理解する絶好のタイミング
・ なぜ患者は行動変容が必要だと思っても行動を変えないのか
・ なぜ患者は指導した内容を覚えてくれないのか
・ なぜ患者は患者指導をすると無視したり怒ったりするのか
動機づけ面接の特徴
・ 指導しない患者指導
・ 動機づけ面接の4つのスピリット
2章 チェンジ・トークと動機づけ面接の4つのタスク
患者は自分の言葉に動機づけられて動き出す──チェンジ・トーク
・ 2つのチェンジ・トーク
・ 変わらずに今のままでいたい気持ち──維持トーク
患者の変化と成長を引き出す対話の流れ──医療者が実践する4つのタスク
・ 医療者のあり方を問い直す
動機づけ面接は「テクニック」ではなく「スタイル」
・ さまざまなコミュニケーションスタイル
時間がないからこそ活きる,短い対話の動機づけ面接
患者指導のいらだちがなくなった──医療者自身の視点と関わり方の変化
3章 センスではなく「スキル」でとらえるコミュニケーション
動機づけ面接の4つのスキル
・ 会話のセンスや心構えがなくても大丈夫
1.オープン・クエスチョン(Open Questions)
・ オープン・クエスチョンが持つスピリット
・ 質問に潜む盲点
2.是認(Affirming)
・ 2種類の是認
・ 是認が持つスピリット
・ ポジティブな要素を見出せないとき
3.聞き返し(Reflecting)
・ 2種類の聞き返し
・ 会話の中で生まれる2つのズレ
・ イントネーションを変えるだけで患者の反応が変わる──聞き返しのコツ
・ 聞き返しがつくり出す安心感
・ 聞き返しが持つスピリット
・ 質問か聞き返しか
4.要約(Summarizing)
・ 要約が持つスピリット
患者の成長に関わる
・ 病気の経験が患者の成長のきっかけとなる
・ 患者の成長を支援する
・ 患者の成長を支える医療者の心構え
2人の専門家
・ 患者と医療者がともに取り組む<協働>の姿勢
・ 権威を手放す
・ 患者は「患者自身の専門家」
4章 支援者として認められること──①「関わる」タスク
動機づけ面接のスタート地点──「関わる」タスク
指導を拒絶する患者との関わり
・ 医療者Aと宮崎さんの会話
・ 医療者Bと宮崎さんの会話
・ 医療者Aの会話の解説
・ 医療者Bの会話の解説
・ コミュニケーション・エラーを招く落とし穴──「偏見」
・ 患者の行動変容の可能性を信じる
正したい反射と心理的リアクタンス
・ 患者の言動を正したくなってしまう理由
・ 指導が逆効果である理由
患者との関係づくりを阻む12の障害物
・ 「ほめること(賞賛)」はなぜコミュニケーションを妨げるのか
・ すれ違いを引き起こす「同情と激励」
・ 医療者が知りたいことだけを「質問」すると逆効果になる
・ 「解決策の提案,アドバイス」はやり方を間違えると患者の力を奪う
5章 答えは患者が持っている──②「焦点化する」タスク
焦点化するためのポイント
・ ①ゴールが決まっていない場合
・ ②ゴールは決まっているが,道すじが複数あり,絞れていない場合
・ ③ゴールも道すじも決まっている場合
「何のために」「誰のために」「どのように」質問をするのか
・ 医療者が患者の問題を解決するための質問
・ 患者自身が問題解決をしていくための質問
・ 患者のために行う質問
オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョン
・ オープン・クエスチョンの秘められた力──問いかけで拓く患者の未来
・ クローズド・クエスチョンの可能性と落とし穴
医療者と患者がパートナーになるために──上下関係を超えて協働をつくる問いかけ方
・ 負担なく会話が進む「質問と聞き返しのコンビネーション」
・ 事例(内服管理について)
6章 患者の中にある変化の芽を育てる──③「引き出す」タスク
行動変容を支持する患者自身の言葉──チェンジ・トークと維持トーク
・ 変わりたいけど,今のままでもいたい
チェンジ・トークと維持トークへの応答
チェンジ・トークを育てるコミュニケーションの意義
・ チェンジ・トークに反応する技術
チェンジ・トークを引き出して応答する
・ 脅しに頼らない会話
・ 脅しによるチェンジ・トークは誰のため?
・ 患者は「自分の言葉」を通して「自分の思い」を知る
チェンジ・トークに耳(EARS)を傾ける
・ 会話を強化して,普段話さない話を引き出す
・ チェンジ・トークを強化する会話
・ 聞き返しの語順で印象が変わる
対話のいきづまり──不協和と維持トーク
・ 患者は抵抗しているのではなく,悩み,もがいている
・ 患者が心を閉ざす「不協和」
・ 「変わること」をためらう言葉──維持トーク
不協和と維持トークにどのように応答すればいいのか
・ 不協和を和らげる
・ 患者の強みに光を当てる
・ 維持トークを和らげて,チェンジ・トークを引き出す
・ 維持トークをしなやかに受け止める
・ 維持トークとチェンジ・トークの両面を合わせた聞き返しを使う
・ 維持トークが再び現れるとき
・ 維持トークを聞ききってみる
・ 振り子アプローチ
患者の強みが輝く是認のスキル
・ 言葉の奥にある力をみつける「ポジティブな関心」
7章 小さな一歩をともに歩む──④「計画する」タスク
積み上げてきたタスクの階段にひびが入る原因
・ 原因1:非現実的な目標を設定してしまう
・ 原因2:行動直前で維持トークが増えてしまう
・ 原因3:医療者主導で患者の自律性が損なわれてしまう
計画を立てるタイミングを見極める
・ 準備ができていない患者の特徴
・ 準備ができた患者の特徴
安全に実践できる計画づくりのアイデア
・ 自己効力感を高める4つの手段
・ 代理的体験の例
8章 患者の選択を尊重し信頼関係を築くアドバイス
患者の心を動かすアドバイス
・ 情報社会で,患者とどう向き合う?──否定せずに伝える医療者の役割
・ 人は自分で選んだときに動き出す
・ 情報を届ける前に大切なこと──患者が耳を傾ける関わり方
・ 網羅主義をアップデートする
・ 用法・用量に気をつけて行うアドバイスの方法
患者と知識を分かち合うアドバイスの方法──AOAアプローチ
・ “患者に伝える”ではなく“患者とともに考える”
体重が急激に増えた患者へのアドバイス
・ 一般的なアドバイスのしかた
・ AOAアプローチのしかた
医療者は指導者ではなく,患者とともに歩むパートナー
終章 読み終えた皆さんへ
・ 明日からの一歩──「正したい反射」を抑える
・ まず,医療者(わたしたち)が変わる──タイトルに込めたこと
・ 伴走者として関わる
・ 本書の出発点
索引




