新生児学入門 第6版
新生児医療に携わるすべての方へ
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新生児医療に携わる際の基礎知識や考え方をまとめた好評のサブテキストの改訂版。原著者の遺した新生児に対する「あたたかい心」を大切にしながら、旧版の体制を踏襲し、データやガイドライン、治療・診断の情報の更新・追加を行った。助産学生、看護学生はもとより、助産師、看護師、専門医からも初版より絶大な支持を受けてきた本書。新生児と家族の幸せのために、日々励む医療者へ届けたい内容である。
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序文
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第6版 序
仁志田博司先生の突然の訃報に接したのは,2022年11月25日の第66回日本新生児成育医学会学術集会でいつもと変わりのない先生とお話しした直後の11月29日のことだった。『新生児学入門 第5版』の発刊が2018年だったので,もうすぐ5年になることから,その学会の期間中に第6版について話し合いが持たれる予定だった。しかし,時間の都合が合わないことから話し合いは延期となったばかりだった。先生は旅行先の九州で温泉に入られていた時に急逝されたとのことで,しばらく私たちは事態を理解できずに呆然とするばかりで,またすぐにでも先生にお会いできるような感覚であった。
さて,この度,先生がこの世にいらっしゃらない状況で初めて『新生児学入門』を第6版として上梓することになった。この第6版の序文の欄に,過去の第5版までの仁志田先生の序文が全て記されているが,第5版には「新生児(あなた)への 夢に生きたる 我が人生(いのち) 旅路の果てに 編みし新生児学入門(もの)あり」との仁志田先生の短歌が記されている。まるで先生が未来を見通していたかのような感じの歌である。また,第4版の序文には,若くして亡くなったリハビリテーション医をめざしていた学生の遺品に本書があったということが記載されている。この『新生児学入門』が今後,仁志田先生がいらっしゃらなくても,世代を超えて編纂され版を重ねて行くことを願っている。
編者の髙橋と豊島は第4版から執筆者に加えていただいたが,第5版で編集協力を担当した経緯からこの第6版で編者を任せていただくこととなった。私たちはいずれも東京女子医科大学で仁志田先生から新生児学や新生児科医としての生き方を学んだ立場にある。本書の初版は1988年の発刊で,髙橋は1987年に東京女子医科大学母子総合医療センターに着任したことから,まさにその場で初版に触れた。新生児学入門は内容がわかりやすいだけでなく背景にある基本的な病態が丁寧に解説されていて他の書にはない魅力に溢れた入門書だった。そこには仁志田先生が東京女子医科大学病院NICUでの朝のラウンドと夕方のサインアウトで語られた内容も多く記載されている。その後の第2版から第4版まで,新生児学や新生児医療の発展に伴いページ数が増し内容も深くなっていった。
2022年11月の仁志田先生の突然のご逝去から,遺志を継ぐ形で2023年1月18日に私たちは医学書院の会議室に出向き,第6版の方向性と執筆依頼について話し合った。そして2023年4月14日に第126回日本小児科学会学術集会の開催に合わせて,第5版で執筆を務めた先生方と編集会議を行った。そこで仁志田先生のめざした「scientific basis of neonatal practice」の趣旨を第6版でも継続し,第5版の執筆者がそのまま担当した章の改訂を分担することになった。仁志田先生の執筆されていた項目については主に髙橋と豊島で分担し,新たに加わった中野玲二先生にも手伝ってもらうことになった。
この仁志田先生の思いと知識が詰まった本書の編集は,先生がすでにいらっしゃらないことから困難な作業となり,時間をかけて検討を重ねていった。仁志田先生が生前,本書について語られていた「NICUは大変な医療現場なだけではない。新生児医療ほど興味深い領域はないということを,これからNICUで働く医師・看護師たちに伝えたい。ビタミン剤のように心励ませる本を作りたかった」という願いを思い出しながら編集した。
結局,当初案から少し遅れはしたものの第5版から6年の歳月でこの第6版を,ある意味で仁志田先生の形見のような贈り物として世に出すことができ,私たちもその役目も果たせたかと安堵している。ご協力いただいた全ての執筆者の先生方にも感謝したい。ぜひ読者の皆さまには,仁志田先生の語り口を思い出しながら,遺言とも言えるこの第6版を味わっていただきたいと思う。
最後に,作業が遅れがちな編者の状況をよく理解して励まし続けてくださった竹内亜祐子さん,丁寧に校正いただいた平田里枝子さんなど医学書院の方々に心から感謝する。今回は先生が亡くなられてすぐの編集だったこともあり,本の体裁やタイトルなど内容については大きな変更はしていない。しかし,「仁志田の」書籍であることが分かるように,いずれタイトルなどを変更することも検討中であることを最後に申し添えておきたい。
2024年9月
髙橋 尚人,豊島 勝昭
目次
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第1章 新生児学総論
A わが国の新生児学の過去・現在・未来
B 新生児医療に関する用語
C 新生児の医学的特徴
D 新生児の薬物動態の特徴
E 新生児医療の特徴
F 新生児医療の原則とルチーン
G 新生児医療に必要な産科学的知識
第2章 発育・発達とその評価
A 胎児・新生児の発育
B 胎児・新生児の発達
C 在胎期間推測と児の成熟度評価法
D 在胎期間別出生時体格基準曲線とその利用法
E フォローアップ
第3章 新生児診断学
A 新生児の診察法
B 新生児に特徴的な所見
C 主要な異常所見とその診断学的アプローチ
D 母体・胎児情報の読み方
第4章 新生児の養護と管理
A 分娩室からの管理
B 正常新生児の養護
C ハイリスク新生児の管理
D NICU入院児の管理
E 新生児モニタリング
第5章 母子関係と家族の支援
A 母子相互作用の科学的背景
B 母子関係確立のステップ
C 母子関係確立のための臨床
D 母子関係の破綻に基づく臨床的問題
E 出生前小児保健指導
F 両親への保健指導
G 病児の家族への援助
H 児を失った家族への援助
第6章 新生児医療とあたたかい心
A 子育てと環境
B あたたかい心を育む医療
C 新生児発達促進ケア(ディベロプメンタルケア)
第7章 新生児医療における生命倫理
A 新生児医療における倫理問題の特徴
B 倫理的観点からの医療方針決定
C 成育限界をめぐる倫理
D 医の倫理の基本的な考え方
第8章 医療事故と医原性疾患
A 新生児における医原性疾患
B 医療事故の原因と背景
C 医療事故の原因による分類と予防
D 医療事故が起こったときの対応
E 医療事故と訴訟
第9章 体温調節と保温
A 新生児の体温調節
B 保温とその目的
C 保温の臨床
D 体温の異常
第10章 新生児蘇生
A 出生直後の適応生理
B 出生直後の蘇生法
第11章 呼吸器系の基礎と臨床
A 新生児の呼吸生理と特徴
B 肺サーファクタントと呼吸窮迫症候群(RDS)
C 肺水の動態と一過性多呼吸症
D 子宮内環境が影響する新生児呼吸障害
E 新生児の慢性肺疾患
F 新生児の気道病変
G 新生児呼吸障害の一般的管理
H 補助呼吸法の進歩
第12章 循環器系の基礎と臨床
A 循環生理の基礎知識
B 循環器系の発達生理
C 循環器系の適応生理
D 新生児における先天性心疾患の診断と治療
第13章 水・電解質バランスの基礎と臨床
A 新生児の水・電解質バランスの特徴
B 新生児の腎機能の特徴
C 水・電解質管理の実際
第14章 内分泌・代謝系の基礎と臨床
A 副腎皮質ホルモン
B 甲状腺ホルモン
C 血糖調節機構とその異常
D 糖尿病母体児
E 先天性代謝異常症
F FGR児の有する内分泌学的問題点
第15章 栄養・消化器系の基礎と臨床
A 新生児の栄養に関する特徴と問題点
B 栄養と発育・発達
C 新生児に必要な栄養量
D 正常新生児における栄養法
E 低出生体重児における栄養法
F 母乳栄養法
G 授乳と薬剤
H 新生児から小児にみられる主な消化器関連疾患
第16章 黄疸の病態と臨床
A 黄疸の基礎
B 黄疸の病態
C 黄疸の臨床
第17章 血液系の基礎と臨床
A 新生児の血液系の特徴
B 血液系の発達生理
C 多血症
D 貧血
E 新生児メレナとビタミンK
F 血小板減少症
G 好中球減少症
H 新生児の出血性疾患
I 新生児における輸血
J 血液に関与するサイトカイン療法
第18章 免疫系と感染の基礎と臨床
A 新生児の免疫の特徴
B 新生児感染症の特徴
C 感染経路とその特徴
D 新生児の敗血症・髄膜炎の病態
E サイトカインの役割とそれがもたらす疾患
F その他の新生児に特有な感染症
第19章 中枢神経系の基礎と臨床
A 新生児の神経学的後障害
B 低酸素性虚血性脳症(HIE)
C 頭蓋内出血
D 脳室周囲白質軟化症(PVL)
E 脳梗塞
F 新生児発作
第20章 先天異常と遺伝
A 先天異常の基礎知識
B 代表的な先天異常症候群
C 遺伝医療と遺伝カウンセリング
D エピジェネティクス
第21章 主要疾患の病態と管理
A 未熟児網膜症(ROP)
B 超低出生体重児(ELBW児)
C 乳幼児突然死症候群(SIDS)
第22章 災害と新生児医療
A 災害時新生児医療体制の変遷
B NICUでの災害対策
C 施設避難
索引
和文索引
欧文索引
人名索引
原著者・編者略歴