明日からの診療にきっと役立つ! 医学のトリビア
エビデンスに基づく患者さんからのシンプルな質問への答え方
そのトリビアは、単なる迷信ではなく、医学的根拠があるのです!
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雑誌「総合診療」の好評連載を単行本化。日常診療におけるシンプルかつ素朴な疑問には実は医学的な価値の高いものが少なくありません。いわば医学トリビアについて、科学的根拠をもとに解説することで、理解や知識を深め、好奇心を満たして頂きたい。またそのトリビアを披露することで、患者さんとのコミュニケーションや生活指導にもぜひ役立てて頂きたい。看護師、栄養士、薬剤師などメディカルスタッフの方々にもおすすめ。
著 | 上田 剛士 |
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発行 | 2025年04月判型:A5頁:304 |
ISBN | 978-4-260-05774-5 |
定価 | 3,080円 (本体2,800円+税) |
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- 目次
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序文
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序
医学は日々進化し続ける科学ですが、その一方で日常生活の中にはまだまだ解明されていない疑問が数多く存在します。物理学者であるニコラス・クルティは以下のような言葉を残しています。
I think it is a sad reflection on our civilization that while we can and do measure the temperature in the atmosphere of Venus, we do not know what goes on inside our soufflés.
「金星の大気温度を測れるというのに、スフレの中で何が起きているかを知らないというのは、われわれの文明の貧しさを表していると思いますね。」
医学の世界もまた同じです。医師は患者さんからのシンプルな医学的な質問には、意外に答えられないことがあります。そしてそこには医学的価値が高いものが数多くあるのです。
筆者は指導医として毎週1回、研修医にちょっとした医学トリビアを教えるということを慣習にしていました。トリビアと言ってもすべて論文に基づいた内容で、診療に役立つものを厳選していました。その後、その内容をスケールアップさせたものとして、「医学と日常の狭間で~患者さんからの素朴な質問にどう答える?~」というタイトルで医学書院の雑誌「総合診療」に2020年4月から2024年3月までの4年間、連載しました。本書には過去に連載された内容に新たに5つの医学トリビア追加し、毎週1テーマで計算すると1年分のトリビアを詰め込みました。指導医の先生方には毎週の話のネタとして参考にしていただくのも一興かと思います。
連載に際して、医師以外からも反響が大きかったことは驚きでした。看護師やコメディカルの方々から連載を楽しみにしているという声が聞かれ、目の前の疑問を解決することこそが、医学や科学の本質的な目的であり、万人から望まれているものであると思いました。
この連載を続けるにあたり、多大なご助言とご協力をいただいた酒見英太先生にこの場を借りて感謝を申し上げます。先生のお力がなければ4年にわたる連載を続けることはできなかったでしょう。
日常診療での素朴な疑問を大事にし、医学的根拠を明確にした本書が、医学的な知識や理解を深め、患者さんとのコミュニケーションを円滑にし、生活指導に役立つことを願います。また、単行本となることで、より広い読者の方々の好奇心を満たすことができたならば、執筆者としては望外の喜びです。
2025年3月吉日
上田剛士
目次
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第1章 医学的な都市伝説を暴け
1 雨に打たれると風邪をひく?
2 福耳はホントだった?
3 医師が用いる血液型占いとは
4 医師が本気で血液型を当てにいくとき
5 “男指”とは?
6 「つわりで匂いに敏感になる」は正しくない
7 つわりが強ければ女の子!?
8 酒飲みに麻酔は効きますか?
9 天気が悪いと古傷が疼きます
10 モーツァルトの曲は胎教に良い!?
11 寝る子は育つ
第2章 身体の健康に関するトリビア
12 笑い過ぎて死にそう
13 おならがよく出て困ります
14 若白髪はなぜ起こるの?
15 暗い所でスマホを使うと失明する?
16 飲酒すると翌朝むくみます
17 日光浴は「どのくらい」必要ですか?
18 鼻をかむことの弊害
19 意外に知らない「くしゃみ」の秘密
20 眼をこすると眼が悪くなる?
21 トイレのウォシュレット®は安全か?
22 医学的に「不衛生」が好ましい場合とは?
23 お酒が毒になる量は?
第3章 日常生活や行動に関するトリビア
24 指を鳴らすと指が太くなる?
25 2日後に筋肉痛が来るのは歳のせいか?
26 欠伸は伝播する?
27 “3秒ルール”は本当ですか?
28 夫婦が似るならペットも似る
29 爪の成長速度から学ぶこと
30 眉毛や睫毛が伸びる
31 右利きの人が多いのはなぜですか?
32 お風呂で指に皺ができるのはなぜですか?
33 歩きスマホは頭痛のタネ
34 乗り物酔いを克服する
35 医学的な赤ちゃんのあやしかた
第4章 食事や薬に関するトリビア
36 食後に走るとなぜお腹は痛くなる?
37 お餅をのどに詰まらせた
38 チョコレートの食べ過ぎで鼻血は出るのか?
39 カリウム制限食! 野菜をゆでこぼすだけではダメ?!
40 食べると眠くなります
41 発酵食品は身体に良いですか?
42 お腹が空くとお腹が鳴るのはなぜか?
43 お腹が空いてお腹が痛い
44 タマゴは1日1個までしかダメですか?
45 果物ジュースや野菜ジュースは身体に良いですか?
46 味覚性発汗とは?
47 牛乳で薬を飲んだら骨が強くなりません
48 この薬、空腹時に飲んではダメですか?
49 気になるプラセボの効果
第5章 その他のトリビア
50 眼に良いブルー、眼に悪いブルー
51 サウナは身体に良いのですか?
52 痛みを最も感じやすいのは身体のどこか?
53 読者からの「患者さんから聞かれて回答の難しい“素朴な疑問”」に答えます!
索引
書評
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「上田式EBM」による医学トリビア
書評者:徳田 安春(群星沖縄臨床研修センター長)
辞書を引くとトリビア(trivia)とは,「雑学的な知識や豆知識」という。語源はラテン語の「三叉路」らしい。古代ローマの三叉路が多かったことから「ありふれた場所」から転じて「些細なこと」を表すようになったとのこと。
思い出すと,2002年のテレビ番組『トリビアの泉』では雑学的な知識を楽しく紹介していた。トリビアは「知っていると面白い雑学や豆知識のこと」の認識が広まった。
しかし,本書は,医学に関係する面白い雑学や豆知識をサクッと入手できるだけではない。評者も,患者さんから一度は聞かれたことがある質問で,自分が答えることができなかった知識を知ることができた。
質問に正確かつ丁寧に答えることができる医師に対して患者さんの信頼は厚くなる。厚い信頼はアドヒアランスの向上につながり,アウトカムを改善する。口コミは広がり,患者さんは増えていく。患者から選ばれる医師の幸福度も増すというわけだ。
本書で取り上げる質問への回答知識はシンプルだが,元データの研究論文についてのエビデンスベースを批判的に吟味した上でのものだ。内科診断リファレンスでおなじみの「上田式EBM」による医学トリビアである。最も信頼できるリソースだ。さすがのAIでも勝てないだろう。この点に関心のある読者は,実際にAIでも検索して比較してみるとよい。
医師だけでなく,患者さんと接することのある医療関係者にも広くお薦めしたい。患者さんとのコミュニケーションが円滑になり,患者満足度が高くなるだろう。トリビアを医療現場での話題にすることで,患者さんの受診経験を豊かにすることができる。
医学トリビアは,患者さんとの信頼関係を構築するだけでなく,医療従事者の知識欲を満たし,日常業務へのモチベーションを高める効果も期待できる。さらに,医療現場でのトリビアを活用した会話は,患者さんに安心感を与える重要な役割を果たす。例えば,複雑な診断や治療プロセスをわかりやすく解説する際,トリビアを挟むことで患者さんに親しみやすさを感じてもらい,心理的なハードルを下げることができる。
また,トリビアが広がることで医療従事者間の学術的な交流が促進され,さらなる知識の共有や革新的なケア方法の発展にもつながるだろう。トリビアは医学の実践だけでなく,職場環境や患者体験にポジティブな影響をもたらす素晴らしい要素である。今後は,医療者と患者さん自身とのケア連携がより深まり,医療の質も向上するエビデンスがトリビアとしても出てくることを期待したい。