総合診療 Vol.35 No.1
2025年 01月号
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Editorial
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ワクチン接種は患者の生活の質を高める重要なツール
宮上泰樹(順天堂大学医学部総合診療科学講座)
正直、私は幼少期ワクチンが嫌でたまりませんでした。インフルエンザのワクチンを打ちに病院に行ったのにワクチンを打つ理由を医師に聞いたり、打つ前に少し(多分少し)駄々をこねたり。その数年後、インフルエンザにかかり、関節痛や筋肉痛がひどくトイレに行くのも一苦労、という経験をしました。これらの経験を反芻すると、患者には「なぜ無症状の時に苦痛を受けに病院に行かなければならないのか」という思いがあり、罹患後を事前に想定することの難しさを感じます。
私が、ワクチンの大切さを感じるまでにはいくつかのストーリーがありました。① 医学生時代、日本脳炎にかかり重症化して麻痺などが残った小児の患者を診た時、② 医師7年目、侵襲性の肺炎球菌感染症で入院した患者を全力で加療したものの助からなかった時、最後に、③ 実母が何度も帯状疱疹にかかり、顔面にまで波及したにもかかわらず抗ウイルス薬のみの対応を続けていたところ、同僚に「ワクチン打ってあげないの」と言われてハッとした時です。これらの辛い経験を経て、患者にワクチン接種を勧める意義を感じるようになりました。
一方で、「痛い思いをするだけ」「副反応が怖い」と思っている人にワクチンを打つのは非常にハードルの高い行為です。しかし、医師、特に総合診療医であるわれわれは、ワクチンを打たなかったことのデメリットをたくさん見てきていると思います。本特集では、どの患者にどのワクチンを打つべきか、ワクチン接種に否定的な患者にどう話すか、気を付けるべき副反応など、総合診療医の視点でまとめました。明日からの日常診療に使えるコンテンツばかりですので、ぜひご活用ください。
内藤俊夫(順天堂大学医学部総合診療科学講座)
順天堂大学医学部総合診療科学講座は、設立以来ワクチン診療を重視しています。例えば、医局員の質の評価指標の1つに「受け持ちの65歳以上の患者への肺炎球菌ワクチン接種率」を導入しています。総合診療とワクチンは患者啓発や予防医療の観点で極めて密接に関連しています。そして、総合診療医は「病気を治す」だけでなく、患者・家族がいかにして幸福になれるかを重要視する必要があります。ワクチン接種は単なる予防手段にとどまらず、患者の生活の質を高める重要なツールです。
大学病院の役割としては、最新の研究に取り組み、多くの患者のアウトカムを向上させる責務があります。われわれは職員・学生へのヒトパピローマウイルスワクチン集団接種や新規ワクチンの治験・臨床研究など、幅広いアプローチを行ってきました。今後の医療に求められるものを鑑みると、「予防医療」のさらなる発展が不可欠であると痛感しています。個々の患者に対するオーダーメイド医療の提供や、AI技術を活用して行動変容を促す予防的アプローチなど、予防医療の未来は無限の可能性を秘めています。
昨今の感染症の世界的な流行は、ワクチンの重要性を再認識させる契機となりました。総合診療医は、ワクチン接種の知識と技術を標準装備した医療者として、これらの新たな課題に対応するため、予防接種の最新情報を常にアップデートし、最善の選択肢を提供することが求められます。
本特集では、われわれのこれまでの活動や経験を基に、ワクチンの適切な利用方法を紹介するとともに、臨床現場で直面する課題や、ワクチン接種の具体的な実践方法、今後の展望についても触れています。皆様とともに、予防医療の未来を切り拓いていけることを心より願っております。
収録内容
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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。
特集 ワクチンのよくある質問に答えます
企画:宮上泰樹|内藤俊夫
■鼎談
総合診療と予防-過去、現在、近未来を見据えて
内藤俊夫|齋田瑞恵|宮上泰樹(司会)
■総論
①ワクチンの歴史
後藤研人|鈴木麻衣
②ワクチンの重要性
後藤研人|鈴木麻衣
③ワクチンの作り方
愛甲 航|内田卓郎
④時代別・妊娠中ワクチン接種早見表
愛甲 航|内田卓郎
■よく使用される成人のワクチン
①帯状疱疹
帯状疱疹ワクチンは、ビケンとシングリックスのどちらを打てばよいでしょうか?/帯状疱疹になってしまったのですが、ワクチンはいつ打てばいいですか?
仁科 翼|近藤慶太
②肺炎球菌
肺炎球菌ワクチンにはいくつか種類がありますが、どれを何回打てばいいですか?
仁科 翼|近藤慶太
③季節性インフルエンザ
毎年インフルエンザワクチンを打っていますが、必要なのでしょうか?/インフルエンザワクチンはいつ打てばいいのでしょうか?/インフルエンザにかかったら、もうワクチンは打たなくていいですよね?
川端りつ子|渡邊 祐|上原由紀
④RSウイルス
大人でもRSウイルスワクチンを打つ必要はありますか?
浮島 翔|金澤晶雄
⑤新型コロナウイルス
今、〇回目のワクチンを打っていますが、何回まで打つべきですか?/ワクチンの安全性・副反応についてはどうなっているのでしょうか?
浮島 翔|金澤晶雄
■状況に応じて必要となるワクチン
①海外渡航時のワクチン接種
初めて〇〇にボランティアで行くのですが、ワクチンは必要ですか?/経由地であってもワクチンは必要ですか?
伊藤有沙|森 博威
②破傷風
コンクリートの上で転んだので破傷風の予防ワクチンを打ちたいのですが、何回受けたらよいのですか?/破傷風のワクチンを打ったことがないようなのですが、打ったほうがいいですか?/海外に医学研修に行くので破傷風(Tdap)ワクチンを打ってください!
伊藤有沙|森 博威
③ヒトパピローマウイルス(HPV)
男性もHPVワクチンを接種すべきでしょうか?/HPVワクチンは、何歳の時に打てばよいでしょうか?
峯 優一郎|齋田瑞恵
④A型肝炎ウイルス(HAV)・B型肝炎ウイルス(HBV)
HAVワクチンはどのような人が打つべきですか?/HBVワクチンはどのような人が打つべきですか?
峯 優一郎|齋田瑞恵
⑤麻疹・風疹
子どもの頃に麻疹・風疹の予防接種を受けた気がするのですが、念のため予防接種を受けたほうがいいですか?/妊娠を考えていますが、麻疹・風疹のワクチンを接種したほうがいいでしょうか?
坂入みずき|仲西雄大|上原由紀
⑥今後登場が期待されるワクチン
HIVワクチンのうわさがあるのですが、どうですか?/認知症ワクチンのうわさがあるのですが、どうですか?/ほかにも開発が進んでいるワクチンはありますか?
坂入みずき|仲西雄大|上原由紀
■ワクチン接種に関する周辺情報
①免疫不全とワクチン
抗がん剤治療中なのですが、打てるワクチンはありますか?
加茂瑠果|池田麻穂子
②ワクチンの副反応
HPVワクチンには失神や麻痺などの副反応があると聞いて、怖いのですが…/心筋炎って新型コロナワクチンの副反応ですか?
白井結香|福井由希子
③ワクチンの同時接種
新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンって、同時に打てますか?/帯状疱疹ワクチンと肺炎球菌ワクチンって、同時に打てますか?
加茂瑠果|池田麻穂子
④ワクチン反対派とどうコミュニケーションをとるか
○○のエビデンスでワクチンは打たないほうがいいと言われていますが…。/テレビでワクチンは危ないと聞いており、不安です。
清瀬祐次|湯浅 駿
⑤ワクチン接種率を上げるには
ワクチンの接種率を上げるにはどうしたらよいでしょう?
清瀬祐次|湯浅 駿
●Editorial
ワクチン接種は患者の生活の質を高める重要なツール
宮上泰樹|内藤俊夫
●新連載 日常診療で出会う“おとなの発達障害”|明日から使える身体症状に対する問診と診断アプローチ|1
診療現場で起こるコミュニケーション障害──おとなの発達障害と身体科受診
廣田智也
●新連載 構造式で語る医学|薬物の交差反応や意外な副作用を学ぼう!|1
なぜ薬の構造式を学ぶのか?
上田剛士
●What's your diagnosis?|265
代打成功!
酒見英太
●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|96
コロナ禍を経て、振り返る。意識障害で搬送された60代男性
与那嶺克|永田恵蔵|佐藤直行、他(監修)
●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|22
実践基本編②:脳梗塞と脳出血
森田沙斗武
●臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン|21
ハロー! ワークショップ!! さて、どうやったらいいの?
佐田竜一|木村武司|長野広之
●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|57
無理して頑張ることなく、やりがいのある仕事をする
岡田正人
●臨床医のためのライフハック|限りある時間を有効に使う仕事術|22
医師リクルート──診療科への医師リクルートで成果を出すには?
中島 啓
●投稿 GM Report
ロチェスター大学家庭医療科における心理社会的医学研修
竹内優貴