標準口腔外科学 第5版
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第5版 序
『標準口腔外科学』は,東北歯科大学(現 奥羽大学)学長であった故村瀬正雄教授の起案によるものです.当時の全国の私立歯科大学・歯学部において教育に携わり,かつ口腔外科の臨床で活躍の先生方により1985年11月に初版が発刊されました.その後,本書は特に歯学生を対象とした口腔外科学の教科書として利用されることを目的に,変化する疾患概念や診断・治療を反映し,順調に版を重ねてきました.このたび初版からの編集の基本原則を踏襲しつつ,現状に合わせて内容を一新し,第5版を発刊することになりました.
初版から約40年の間にわが国は超高齢社会となり,医療の中で歯科が担う目的と領域は,医療と社会や患者との関わり方とともに大きく変化しました.現在,わが国の医療は健康長寿の延伸を目的として展開され,この点は現在の歯学教育にも反映されています.口腔外科でも,顎顔面口腔領域の疾患概念の変化,WHOなどによる疾患分類の変更,さまざまな診療ガイドラインの発刊など,大きな動きを迎えています.また,検査をはじめとした診断学,手術を中心とした治療学も,新たな機器・材料・IT技術により格段に変化しました.これらの変化を受け歯学教育では,2025年には歯科医師法改正に基づく公的共用試験の実施と,2027年には共用試験合格が歯科医師国家試験の受験資格の要件となります.それらに呼応するように2023年に歯学教育モデル・コア・カリキュラムが,2024年には新たな歯科医師国家試験出題基準がとりまとめられました.
第5版ではこの動向に即して,新たな歯学教育モデル・コア・カリキュラムと歯科医師国家試験出題基準に記載されている内容を確実に網羅するように全面的に第4版の構成を見直し,それらに則った章・項目・細目立てと記述内容を綿密に検討し,さらにこれまで本書をご利用いただいた先生方,学生諸君に見直すべき内容をヒアリングしました.それらを反映させ,歯学部・医学部で口腔外科学の教育を担当されている教授を中心に,学修者を育てる立場からご執筆いただきました.特に本改訂では,外傷領域を強化し,全身疾患との関連や臨床推論の考え方についても追記し,巻末に先天異常症候群,検査項目を一覧としています.
本書は日本の歯学教育において,口腔外科学のまさしく「標準」となる内容に仕上げられています.歯学生にとって臨床実習を経て卒業までに必要な口腔外科学の知識を学修しやすいように,多くの図表・写真を用いて,詳細かつ明解に記載されています.すでに臨床の場で活躍中の専門医にも,知識の確認に利用いただけるように配慮しています.本書を利用して口腔外科の十分な知識と素養を身に付けた歯学生が,歯科医師となって臨床の場で活躍してくれることを心から期待しています.
最後に,本書で学ぶ口腔外科疾患における最良の診断・治療・手術を目指すためには,各領域の専門医と常に協力し,適切な指示や対診を仰ぐ,必要に応じて手術支援を要請する,などを心掛ける必要があることを付け加えます.
2024年1月吉日
片倉 朗・中嶋正博・里見貴史
目次
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第1章 口腔外科診断法
A 診断総論
B 主要症候
C 検査法
1 画像検査
2 口腔診療のための一般的検体検査
第2章 口腔外科手術総論
A 感染予防対策
B 無菌法(滅菌法および消毒法)
C 基本的な手術器具の取り扱い
D 基本手術手技
第3章 外科的侵襲の病態生理と患者管理
A 侵襲と生体反応
B 患者の評価および管理
1 口腔の評価
2 術前の患者評価
3 周術期管理・有病者の管理
4 術後管理と合併症への対応
C 栄養管理
D 救急蘇生法
E リスクマネジメントと医療安全
第4章 先天異常および発育異常
総論
A 頭頸部の発生
B 先天異常および発育異常
C 先天異常の成因による分類
D 先天奇形の分類
E 裂奇形の成因
F 裂奇形の発症機序
各論
A 歯の異常
B 口腔顔面軟組織の異常
C 口唇裂・口蓋裂
D 顔面裂
E 顎顔面・口腔領域に徴候をみる症候群
F 顎顔面の変形および発育異常
1 顎変形症の定義と成因
2 顎変形症にみられる障害
3 顎変形症の分類
4 顎変形症の診断と治療
5 顎矯正手術の種類と特徴
6 合併症とその対策
第5章 損傷
総論
A 損傷の種類
B 創傷
各論
A 歯の外傷
B 骨折
1 歯槽部骨折
2 下顎骨骨折
3 上顎骨骨折
4 頰骨骨折
5 その他の骨折
6 骨折の治療・骨接合術
C 口腔・顔面軟組織の損傷
D 合併損傷
E 小児の軟組織・硬組織損傷
第6章 炎症
総論
A 炎症の原因
B 炎症の経過とそのメカニズム
C 炎症の過程と組織変化
D 炎症の分類
1 急性炎症と慢性炎症
2 急性炎症
3 慢性炎症
E 感染症
F アレルギーと自己免疫
G 臨床症状と診断
H 炎症の治療
各論
A 歯性感染症
B 肉芽腫性炎
C 顔面口腔領域に症状がみられる感染症
第7章 囊胞
総論
A 囊胞の概念と定義
B 囊胞の分類
C 一般的症状と診断
各論
A 発育性囊胞
B 炎症性囊胞
C 偽囊胞
D その他
E 顎・口腔領域の非歯原性囊胞
F 軟組織に発生する囊胞
第8章 腫瘍および腫瘍類似疾患
総論
A 腫瘍の概論・定義
B 悪性腫瘍の疫学
C 口腔癌の分類
D 発癌(病因)
E 口腔潜在的悪性疾患の概念
F 病態(症状)
G 診断と治療方針
各論
A 歯原性腫瘍
B 良性腫瘍
C 悪性腫瘍
1 癌腫
2 肉腫
3 口腔粘膜悪性黒色腫
4 口腔への転移性癌,原発不明癌
5 口腔癌の治療
6 薬物療法
7 放射線治療
D 口腔潜在的悪性疾患
E 腫瘍類似疾患
第9章 顎関節疾患
総論
A 顎関節の解剖構造
各論
A 顎関節の先天異常・発育異常
B 顎関節の外傷
C 顎関節の炎症
D 顎関節腫瘍および腫瘍類似疾患
E 顎関節強直症
F 顎関節の自己免疫疾患
G 顎関節の代謝性疾患
H その他の顎関節疾患
I 咀嚼筋の疾患
J 顎関節症
第10章 唾液腺疾患
総論
1 大唾液腺
2 小唾液腺
各論
A 形態および機能異常
B 炎症性疾患
C 異物
D 囊胞
E 唾液腺腫瘍
F 腫瘍類似病変・その他の病変
第11章 口腔粘膜疾患
総論
A 口腔粘膜の構造と機能
B 口腔粘膜疾患の分類
各論
A 発育異常
B 細菌感染症
C ウイルス感染症
D 角化異常症
E アレルギーと関連する口腔粘膜異常
F 自己免疫に関連する口腔粘膜異常
G 色素沈着異常
H 口腔症状を呈する内分泌障害,代謝障害
I 栄養障害
J 薬物,その他の障害による粘膜疾患
K 血液疾患,その他の全身疾患と関連する粘膜異常
第12章 口腔に症状を現す血液疾患および止血機構の障害
総論
A 血液と疾患
B 造血幹細胞と血球分化
C 血液疾患の検査
D 出血性素因と止血機序
E 出血性素因の検査
F 抗血栓薬
G 観血的治療時の留意点
各論
A 赤血球系疾患
B 白血球系疾患
C 造血系腫瘍
D 止血機構の障害
第13章 神経疾患
総論
A 歯・口腔・顎顔面に分布する神経と機能
B 中枢ならびに末梢神経疾患(障害)
C 中枢性ならびに末梢性疾患の診断(神経痛,神経麻痺,神経けいれん)
D 末梢性神経疾患の治療(外科療法,薬物療法,理学療法)
1 外科的療法
2 薬物療法
3 理学療法
E 末梢神経疾患の治療(星状神経節ブロック;SGB)
F 神経障害性疼痛の診断と治療
G その他の神経疾患
各論
A 神経痛
B 神経麻痺
C 神経けいれん
D その他の神経疾患
E 神経障害性疼痛の診断と治療
第14章 口腔・顎顔面疾患の手術とその他の治療
A 口腔・顎顔面疾患の手術
1 抜歯術
2 歯根尖切除術
3 歯の移植術と再植術
4 補綴のための手術
5 形成手術・再建手術
B インプラント概論
1 インプラント治療の概要
2 診療と患者選択
3 術式
4 インプラント関連手術
5 インプラントを用いた再建
6 併発症
C 口腔・顎顔面疾患のその他の治療
1 薬物療法
2 理学療法
3 レーザー療法
4 凍結療法
5 顎顔面補綴
6 口腔健康・機能管理
D 再生医療
第15章 口腔外科の歴史と展望
A 口腔外科の歴史
B 口腔外科医療の概念の変遷と今後の展望
主な先天異常症候群
主な検査項目
和文索引
欧文索引