口腔咽頭の臨床 第3版
口腔咽頭領域の定番書、最新の手術手技の内容も盛り込み、充実の改訂!
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好評を博した第2版と同様、簡潔な解説と豊富なカラー写真、イラストをふんだんに盛り込んだ口腔咽頭領域の定番書。第3版ではIgG4関連疾患、口腔アレルギー、咽喉頭逆流症に関する項目を追加するとともに、唾液腺内視鏡、ELPS、TOVS、経口的ロボット支援手術などの最新の手術手技に関する項目を設けるなど、臨床にすぐに役立つことを意識した構成。耳鼻咽喉科医のみならず内科医、歯科医などにも有用な書。
監修 | 日本口腔・咽頭科学会 |
---|---|
発行 | 2015年09月判型:A4頁:220 |
ISBN | 978-4-260-02163-0 |
定価 | 16,500円 (本体15,000円+税) |
更新情報
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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第3版 序
このたび,日本口腔・咽頭科学会より『口腔咽頭の臨床』第3版を発刊する運びとなりました.1987年に本学会が設立され,初版は故岡本 健元理事長の呼びかけで学会設立10周年の節目である1998年に発刊され,本邦における口腔咽頭領域のテキストとしてその重責を果たして参りました.当時としては,カラー写真も豊富に,わかりやすい解説をコンパクトにまとめたものであり,今改めて読み返してみても日本口腔・咽頭科学会の総力を挙げて作り上げた内容であることが伝わってきます.その後,2009年には岡本 健先生から学会理事長職を引き継がれた山下敏夫前理事長の企画で第2版が刊行されました.初版はB5判の大きさでしたが,第2版はA4判として,各疾患のより詳細な解説と写真,図も豊富な量に充実させ,本学会の発展と歩調を合わせるように,さらに充実した内容のテキストとして改訂されました.とくに,いびきと睡眠時無呼吸症候群,摂食嚥下障害,構音障害,腫瘍などを新たな章として加えています.
本学会のテーマである口腔咽頭領域の疾患は耳鼻咽喉科医の扱う守備範囲のなかで他科との境界領域に位置し,さらに全身疾患との関連疾患も多く存在しています.したがって第3版では,口腔咽頭における炎症性ならびに良・悪性腫瘍性疾患,味覚障害,シェーグレン症候群を含む口腔乾燥症,アレルギー疾患,睡眠時無呼吸症候群,摂食嚥下障害および構音障害,唾液腺のさまざまな炎症および腫瘍性病変,扁桃および病巣感染症はもちろん,IgA腎症と扁桃摘出術に関する新しい知見やHIV関連唾液腺病変,IgG4関連疾患のような新しい概念,口腔咽頭の悪性腫瘍への新たな手術アプローチ法,sialendoscope(唾液腺内視鏡)を用いた唾石摘出術など新たな手術手技などが数多く紹介されています.
第2版発刊の2009年から6年あまりが経過しましたが,学問の進歩はこれまでの5年,10年と比較にならないほど速くなっています.本学会役員の間で,これまで新しい知識や知見を包括した第3版発刊の必要性が議論されてきており,また学会会員の先生のみならず多くの耳鼻咽喉科の先生方からも改訂版の要望がありました.さらに本書は耳鼻咽喉科医のみならず歯科口腔外科,総合診療内科,膠原病内科などの他科の先生方の日常診療にとっても有用なものに仕上がっていると自負しております.
本書の発刊に際して,各項目の分担執筆にかかわっていただいた多くの先生方,医学書院の担当の方々,編集担当理事および委員の先生方に心より感謝申し上げます.また,将来に向けて本領域の臨床,研究が益々発展していくことを祈念しております.
2015年7月
日本口腔・咽頭科学会理事長 吉原俊雄
このたび,日本口腔・咽頭科学会より『口腔咽頭の臨床』第3版を発刊する運びとなりました.1987年に本学会が設立され,初版は故岡本 健元理事長の呼びかけで学会設立10周年の節目である1998年に発刊され,本邦における口腔咽頭領域のテキストとしてその重責を果たして参りました.当時としては,カラー写真も豊富に,わかりやすい解説をコンパクトにまとめたものであり,今改めて読み返してみても日本口腔・咽頭科学会の総力を挙げて作り上げた内容であることが伝わってきます.その後,2009年には岡本 健先生から学会理事長職を引き継がれた山下敏夫前理事長の企画で第2版が刊行されました.初版はB5判の大きさでしたが,第2版はA4判として,各疾患のより詳細な解説と写真,図も豊富な量に充実させ,本学会の発展と歩調を合わせるように,さらに充実した内容のテキストとして改訂されました.とくに,いびきと睡眠時無呼吸症候群,摂食嚥下障害,構音障害,腫瘍などを新たな章として加えています.
本学会のテーマである口腔咽頭領域の疾患は耳鼻咽喉科医の扱う守備範囲のなかで他科との境界領域に位置し,さらに全身疾患との関連疾患も多く存在しています.したがって第3版では,口腔咽頭における炎症性ならびに良・悪性腫瘍性疾患,味覚障害,シェーグレン症候群を含む口腔乾燥症,アレルギー疾患,睡眠時無呼吸症候群,摂食嚥下障害および構音障害,唾液腺のさまざまな炎症および腫瘍性病変,扁桃および病巣感染症はもちろん,IgA腎症と扁桃摘出術に関する新しい知見やHIV関連唾液腺病変,IgG4関連疾患のような新しい概念,口腔咽頭の悪性腫瘍への新たな手術アプローチ法,sialendoscope(唾液腺内視鏡)を用いた唾石摘出術など新たな手術手技などが数多く紹介されています.
第2版発刊の2009年から6年あまりが経過しましたが,学問の進歩はこれまでの5年,10年と比較にならないほど速くなっています.本学会役員の間で,これまで新しい知識や知見を包括した第3版発刊の必要性が議論されてきており,また学会会員の先生のみならず多くの耳鼻咽喉科の先生方からも改訂版の要望がありました.さらに本書は耳鼻咽喉科医のみならず歯科口腔外科,総合診療内科,膠原病内科などの他科の先生方の日常診療にとっても有用なものに仕上がっていると自負しております.
本書の発刊に際して,各項目の分担執筆にかかわっていただいた多くの先生方,医学書院の担当の方々,編集担当理事および委員の先生方に心より感謝申し上げます.また,将来に向けて本領域の臨床,研究が益々発展していくことを祈念しております.
2015年7月
日本口腔・咽頭科学会理事長 吉原俊雄
目次
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基礎編
第1章 発生・解剖・機能
I 口腔
II 咽頭
III 扁桃
IV 唾液腺
V 周辺領域
第2章 検査法
I 摂食嚥下
II 味覚
III 唾液
IV 構音
V 扁桃
VI 睡眠時無呼吸症候群
臨床編
第3章 口腔疾患
I 舌小帯短縮症
II 口内炎
III 舌炎
IV 口腔アレルギー症候群
V 口腔・咽頭の性感染症
VI 口腔底膿瘍
VII 過長茎状突起症(Eagle症候群)
VIII 舌痛症
IX 口臭症
X 口腔乾燥症
XI 味覚障害
XII 舌・軟口蓋麻痺
XIII 歯に関連する歯肉・歯槽の疾患
第4章 咽頭疾患
I 咽頭炎
II 副咽頭間隙膿瘍
III 咽後膿瘍
IV 口腔・咽頭の難治性潰瘍
V 咽喉頭逆流症
VI 咽喉頭異常感症
VII 舌咽神経痛
VIII 異物
IX 咽頭の狭窄・閉鎖症
第5章 扁桃疾患
I アデノイド
II 口蓋扁桃肥大
III 急性扁桃炎
IV 反復性扁桃炎,慢性扁桃炎
V 全身疾患と扁桃炎
VI 扁桃周囲炎,扁桃周囲膿瘍
VII 扁桃病巣感染症
第6章 唾液腺疾患
I 耳下腺炎
II HIV関連唾液腺疾患
III 唾石症
IV IgG4関連疾患
V 線維素性唾液管炎
VI シェーグレン症候群
VII 木村病
VIII 唾液腺症
IX ガマ腫(ラヌラ)
手術手技 1 唾液腺内視鏡
第7章 いびきと睡眠時無呼吸症候群
I 成人
II 小児
第8章 摂食嚥下障害
I 摂食嚥下の仕組み
II 摂食嚥下障害の診断
III 摂食嚥下障害のリハビリテーション
IV 嚥下障害の手術
第9章 構音障害
I 構音の仕組み
II 構音障害の診断
III 構音障害のリハビリテーション
IV 構音障害の手術
第10章 腫瘍
I 口腔(口唇・口蓋・歯肉・臼後部)の腫瘍
II 舌良性腫瘍
III 舌・口腔底癌
IV 耳下腺腫瘍
V 顎下腺・舌下腺腫瘍
VI 副咽頭間隙の腫瘍
VII 上咽頭癌
VIII 中咽頭癌
IX 下咽頭癌
X 悪性リンパ腫
XI 口腔癌におけるセンチネルリンパ節生検
手術手技 2 口腔・中咽頭の機能的再建外科
手術手技 3 ELPS
手術手技 4 TOVS
手術手技 5 経口的ロボット支援手術
第11章 その他の疾患,周辺疾患
I 唇裂,口蓋裂
II 顎関節症
III 頬骨・上顎骨骨折
IV 下顎骨骨折
V 骨由来腫瘍類似疾患
和文索引
欧文索引
第1章 発生・解剖・機能
I 口腔
II 咽頭
III 扁桃
IV 唾液腺
V 周辺領域
第2章 検査法
I 摂食嚥下
II 味覚
III 唾液
IV 構音
V 扁桃
VI 睡眠時無呼吸症候群
臨床編
第3章 口腔疾患
I 舌小帯短縮症
II 口内炎
III 舌炎
IV 口腔アレルギー症候群
V 口腔・咽頭の性感染症
VI 口腔底膿瘍
VII 過長茎状突起症(Eagle症候群)
VIII 舌痛症
IX 口臭症
X 口腔乾燥症
XI 味覚障害
XII 舌・軟口蓋麻痺
XIII 歯に関連する歯肉・歯槽の疾患
第4章 咽頭疾患
I 咽頭炎
II 副咽頭間隙膿瘍
III 咽後膿瘍
IV 口腔・咽頭の難治性潰瘍
V 咽喉頭逆流症
VI 咽喉頭異常感症
VII 舌咽神経痛
VIII 異物
IX 咽頭の狭窄・閉鎖症
第5章 扁桃疾患
I アデノイド
II 口蓋扁桃肥大
III 急性扁桃炎
IV 反復性扁桃炎,慢性扁桃炎
V 全身疾患と扁桃炎
VI 扁桃周囲炎,扁桃周囲膿瘍
VII 扁桃病巣感染症
第6章 唾液腺疾患
I 耳下腺炎
II HIV関連唾液腺疾患
III 唾石症
IV IgG4関連疾患
V 線維素性唾液管炎
VI シェーグレン症候群
VII 木村病
VIII 唾液腺症
IX ガマ腫(ラヌラ)
手術手技 1 唾液腺内視鏡
第7章 いびきと睡眠時無呼吸症候群
I 成人
II 小児
第8章 摂食嚥下障害
I 摂食嚥下の仕組み
II 摂食嚥下障害の診断
III 摂食嚥下障害のリハビリテーション
IV 嚥下障害の手術
第9章 構音障害
I 構音の仕組み
II 構音障害の診断
III 構音障害のリハビリテーション
IV 構音障害の手術
第10章 腫瘍
I 口腔(口唇・口蓋・歯肉・臼後部)の腫瘍
II 舌良性腫瘍
III 舌・口腔底癌
IV 耳下腺腫瘍
V 顎下腺・舌下腺腫瘍
VI 副咽頭間隙の腫瘍
VII 上咽頭癌
VIII 中咽頭癌
IX 下咽頭癌
X 悪性リンパ腫
XI 口腔癌におけるセンチネルリンパ節生検
手術手技 2 口腔・中咽頭の機能的再建外科
手術手技 3 ELPS
手術手技 4 TOVS
手術手技 5 経口的ロボット支援手術
第11章 その他の疾患,周辺疾患
I 唇裂,口蓋裂
II 顎関節症
III 頬骨・上顎骨骨折
IV 下顎骨骨折
V 骨由来腫瘍類似疾患
和文索引
欧文索引
書評
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口腔咽頭領域の診断・治療を最新の情報にアップデート
書評者: 宇佐美 真一 (信州大教授・耳鼻咽喉科学)
耳鼻咽喉科はカバーする領域が広く,多くのサブスペシャルティ領域から成り立っているのが特徴である。中でも口腔咽頭領域は,耳鼻咽喉科の重要なサブスペシャルティ領域の一つとしてこれまで発展を遂げてきた。口腔咽頭領域の疾患の多くは直接明視できることから,視診がまず診察の第一歩として重要である。日本口腔・咽頭科学会が監修している本書は,1998年の初版発行の際からイラスト,カラー写真をふんだんに使用し,われわれ耳鼻咽喉科医が口腔咽頭領域の診察をするうえで重要な情報を提供してくれる書として好評を博してきた。
この領域は味覚,摂食,嚥下,構音といった生活の質(QOL)を左右する重要な機能を扱っており,われわれ耳鼻咽喉科医にとってこの領域の疾患を正しく診断し,適切な治療をしていくことは重要な責務の一つである。またこの領域は,免疫学,分子腫瘍学とも関連が深く,ここ数年で急速な進歩が見られた分野でもある。今回の改訂第3版では,それぞれの疾患に関して最近明らかになってきた新たな知見を紹介してくれている。例えば,最近腎臓内科からの紹介が増えてきているIgA腎症との関連性,扁桃摘出術の有効性についても詳細にレビューされており,日常臨床で必要なエッセンスがコンパクトにまとめられている。また,最近新たに登場してきたHIV関連唾液腺疾患,IgG4関連疾患などの疾患概念,さらに社会的にも重要視されている睡眠時無呼吸症候群,嚥下障害などについても多くのページを割き,詳細かつ丁寧に解説をしてくれている。この領域の良性腫瘍,悪性腫瘍の取り扱いも耳鼻咽喉科医にとって重要であるが,診断から治療までわかりやすく概説されている。また治療,特に手術に関しては,最近は内視鏡を用いたより低侵襲の手術が主流となってきているが,本書はそういった治療面での情報も過不足なくアップデートされている。
そして何と言っても本書の良さは,まさに本を開くと見開きで疾患のエッセンスが目に飛び込んでくることではないだろうか。各疾患のスペシャリストがそれぞれの診断や治療について非常にわかりやすく解説しており,この領域を専門としていない耳鼻咽喉科医にとっても非常に便利な書となっている。われわれ耳鼻咽喉科を専門とする医師が常に診察の際に座右に置きたい書の一つとして推薦したい。
口腔咽頭領域の臨床における最先端の内容を網羅
書評者: 山岨 達也 (東大大学院教授・耳鼻咽喉科)
このたび,日本口腔・咽頭科学会より『口腔咽頭の臨床 第3版』が発刊された。本書は1998年に初版が,次いで2009年に第2版が刊行されており,今回6年あまりでの改訂である。初版ではB5判だったものが第2版からはA4判となり,各疾患の詳細な解説と写真,豊富な図が充実していたが,今回はこの6年あまりの間の新しい知識や知見が追加され,さらに充実したものとなった。いびきと睡眠時無呼吸症候群,摂食嚥下障害,構音障害,腫瘍などは前版に引き続き独立した章として編集されている。
内容としては,まず基礎編として口腔・咽頭・扁桃・唾液腺などの「発生・解剖・機能」が,また摂食嚥下・味覚・唾液・構音・扁桃・睡眠時無呼吸症候群の「検査法」がそれぞれ取り上げられている。「発生・解剖・機能」ではわかりやすい解剖図や組織写真が多用されており,「検査」では観察のポイント,重症度判定や診断基準,起炎菌の検出頻度や試験の陽性率などが紹介されるとともに検査の実際が写真として提示され,初心者でもよく理解でき,検査を行う際の参考にできるようになっている。
臨床編では,口腔咽頭領域における多くの疾患が網羅されており,口腔咽頭の炎症性および腫瘍性疾患,味覚障害,シェーグレン症候群を含む口腔乾燥症,口腔アレルギー,睡眠時無呼吸症候群,摂食嚥下障害,構音障害,唾液腺疾患,扁桃病巣感染症,IgA腎症,扁桃摘出術などに新しい知見が追加された。また,HIV関連唾液腺疾患,IgG4関連疾患など比較的新しい疾患概念が整理され,ELPS(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery),TOVS(transoral videolaryngoscopic surgery),経口的ロボット支援手術などの口腔咽頭腫瘍に対する先進的な手術アプローチ,sialoendoscopeを用いた唾石摘出術など新たな手術手技も紹介されている。各疾患においては疾患の概要,定義,症状と所見,診断,治療,予後などが簡潔にかつ新しい知見が加わった部位などでは詳細に記載され,また代表的な疾患の写真が多く示されており,普段見ることの少ない疾患も一目でわかるような工夫がなされている。また舌炎,口腔アレルギー,口臭症,味覚障害,軟口蓋麻痺,口腔潰瘍性病変,口腔乾燥症など鑑別診断を要する場合には,そのフローチャートやアルゴリズムが提示されている。
本書は口腔咽頭領域の臨床における最先端の内容を網羅しており,この領域に携わる医療者はぜひ手元に置いておきたい一冊である。
口腔咽頭領域の内科診断学のマージンを大きく広げてくれる良書
書評者: 住田 孝之 (筑波大教授・膠原病内科学)
『口腔咽頭の臨床 第3版』がこのたび出版された。本書はこの領域における揺るぎない良書であり,日本口腔・咽頭科学会が1987年に設立されて以降,1998年に初版が,2009年に第2版が,そして2015年に第3版が上梓されるに至っている。学会が監修している権威ある臨床に役立つテキストが,日本口腔・咽頭科学会理事長の吉原俊雄先生の先導によりさらなる改訂がなされ,パワーアップされている。
本書の第一の特徴は,耳鼻咽喉科のみならず他科との境界領域となる口腔咽頭という極めて複雑かつ多機能な頭頸部の重要な部位を取り扱っており,全身疾患との関連にも焦点を当てていることである。内科,外科,小児科,整形外科,形成外科,皮膚科,歯科などを専門とする医師にとっても有用な書になっている。第二に,構成が簡潔明瞭で,図表・写真の占める割合が大きいことである。基本的に左頁にテキスト,右頁に図表・写真というコンパクトな構成をとっている。項目も疾患の定義,症状と所見,診断,鑑別診断,治療,予後とコンパクトで明解である。第三に,新たな概念・知見・手術手技などが追加提示されていることである。診断推論や臨床推論の力強い助けになる有用な情報が潤沢に盛り込まれており,日々の診療現場での活躍が期待できよう。
また本書は,われわれ内科医にとって口腔咽頭領域の内科診断学のマージンを大きく広げてくれそうである。視診,触診は行わなければ得るものがなく,行っても情報処理が稚拙であると,やはり益が少ないことになる。この書にのっとって診断学のベースアップを図り,治療につなげられることを期待したい。内科のみならず,頭頸部の領域を専門としない他科においても同様なことが言えると思う。
膠原病内科の立場からは,扁桃疾患,唾液腺疾患に関しての貴重な情報が得られる。古典的な疾患の特徴的局所所見は強く印象に残るものである。
新しい疾患概念から抽出されたIgG4関連疾患は,高IgG4血症,IgG4陽性形質細胞浸潤線維化によるものであるが,耳鼻咽喉科的側面からの検査は特に重要であり,涙腺,唾液腺に特徴的な所見が存在する。本書にはIgG4関連疾患包括診断基準の提示があるが,あくまで最低条件を確認する基準であることから,臨床像に加え局所の病理学的所見が重要であることが強調されている。IgG4陽性形質細胞浸潤の存在と著明なリンパ球,形質細胞の浸潤は見逃せないものであるが,さらに花延様線維化,閉塞性静脈炎の合わせて三つの形態学的特徴を呈してくることなど,本書では丁寧に説明がなされている。このあたりは,生検臓器,部位の適切かつ経験的な卓越した標本採取にかかわる専門の書として貴重な表現が多々見受けられ,感慨深く,見事に重責を果たしている書と感服させられる。
書評者: 宇佐美 真一 (信州大教授・耳鼻咽喉科学)
耳鼻咽喉科はカバーする領域が広く,多くのサブスペシャルティ領域から成り立っているのが特徴である。中でも口腔咽頭領域は,耳鼻咽喉科の重要なサブスペシャルティ領域の一つとしてこれまで発展を遂げてきた。口腔咽頭領域の疾患の多くは直接明視できることから,視診がまず診察の第一歩として重要である。日本口腔・咽頭科学会が監修している本書は,1998年の初版発行の際からイラスト,カラー写真をふんだんに使用し,われわれ耳鼻咽喉科医が口腔咽頭領域の診察をするうえで重要な情報を提供してくれる書として好評を博してきた。
この領域は味覚,摂食,嚥下,構音といった生活の質(QOL)を左右する重要な機能を扱っており,われわれ耳鼻咽喉科医にとってこの領域の疾患を正しく診断し,適切な治療をしていくことは重要な責務の一つである。またこの領域は,免疫学,分子腫瘍学とも関連が深く,ここ数年で急速な進歩が見られた分野でもある。今回の改訂第3版では,それぞれの疾患に関して最近明らかになってきた新たな知見を紹介してくれている。例えば,最近腎臓内科からの紹介が増えてきているIgA腎症との関連性,扁桃摘出術の有効性についても詳細にレビューされており,日常臨床で必要なエッセンスがコンパクトにまとめられている。また,最近新たに登場してきたHIV関連唾液腺疾患,IgG4関連疾患などの疾患概念,さらに社会的にも重要視されている睡眠時無呼吸症候群,嚥下障害などについても多くのページを割き,詳細かつ丁寧に解説をしてくれている。この領域の良性腫瘍,悪性腫瘍の取り扱いも耳鼻咽喉科医にとって重要であるが,診断から治療までわかりやすく概説されている。また治療,特に手術に関しては,最近は内視鏡を用いたより低侵襲の手術が主流となってきているが,本書はそういった治療面での情報も過不足なくアップデートされている。
そして何と言っても本書の良さは,まさに本を開くと見開きで疾患のエッセンスが目に飛び込んでくることではないだろうか。各疾患のスペシャリストがそれぞれの診断や治療について非常にわかりやすく解説しており,この領域を専門としていない耳鼻咽喉科医にとっても非常に便利な書となっている。われわれ耳鼻咽喉科を専門とする医師が常に診察の際に座右に置きたい書の一つとして推薦したい。
口腔咽頭領域の臨床における最先端の内容を網羅
書評者: 山岨 達也 (東大大学院教授・耳鼻咽喉科)
このたび,日本口腔・咽頭科学会より『口腔咽頭の臨床 第3版』が発刊された。本書は1998年に初版が,次いで2009年に第2版が刊行されており,今回6年あまりでの改訂である。初版ではB5判だったものが第2版からはA4判となり,各疾患の詳細な解説と写真,豊富な図が充実していたが,今回はこの6年あまりの間の新しい知識や知見が追加され,さらに充実したものとなった。いびきと睡眠時無呼吸症候群,摂食嚥下障害,構音障害,腫瘍などは前版に引き続き独立した章として編集されている。
内容としては,まず基礎編として口腔・咽頭・扁桃・唾液腺などの「発生・解剖・機能」が,また摂食嚥下・味覚・唾液・構音・扁桃・睡眠時無呼吸症候群の「検査法」がそれぞれ取り上げられている。「発生・解剖・機能」ではわかりやすい解剖図や組織写真が多用されており,「検査」では観察のポイント,重症度判定や診断基準,起炎菌の検出頻度や試験の陽性率などが紹介されるとともに検査の実際が写真として提示され,初心者でもよく理解でき,検査を行う際の参考にできるようになっている。
臨床編では,口腔咽頭領域における多くの疾患が網羅されており,口腔咽頭の炎症性および腫瘍性疾患,味覚障害,シェーグレン症候群を含む口腔乾燥症,口腔アレルギー,睡眠時無呼吸症候群,摂食嚥下障害,構音障害,唾液腺疾患,扁桃病巣感染症,IgA腎症,扁桃摘出術などに新しい知見が追加された。また,HIV関連唾液腺疾患,IgG4関連疾患など比較的新しい疾患概念が整理され,ELPS(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery),TOVS(transoral videolaryngoscopic surgery),経口的ロボット支援手術などの口腔咽頭腫瘍に対する先進的な手術アプローチ,sialoendoscopeを用いた唾石摘出術など新たな手術手技も紹介されている。各疾患においては疾患の概要,定義,症状と所見,診断,治療,予後などが簡潔にかつ新しい知見が加わった部位などでは詳細に記載され,また代表的な疾患の写真が多く示されており,普段見ることの少ない疾患も一目でわかるような工夫がなされている。また舌炎,口腔アレルギー,口臭症,味覚障害,軟口蓋麻痺,口腔潰瘍性病変,口腔乾燥症など鑑別診断を要する場合には,そのフローチャートやアルゴリズムが提示されている。
本書は口腔咽頭領域の臨床における最先端の内容を網羅しており,この領域に携わる医療者はぜひ手元に置いておきたい一冊である。
口腔咽頭領域の内科診断学のマージンを大きく広げてくれる良書
書評者: 住田 孝之 (筑波大教授・膠原病内科学)
『口腔咽頭の臨床 第3版』がこのたび出版された。本書はこの領域における揺るぎない良書であり,日本口腔・咽頭科学会が1987年に設立されて以降,1998年に初版が,2009年に第2版が,そして2015年に第3版が上梓されるに至っている。学会が監修している権威ある臨床に役立つテキストが,日本口腔・咽頭科学会理事長の吉原俊雄先生の先導によりさらなる改訂がなされ,パワーアップされている。
本書の第一の特徴は,耳鼻咽喉科のみならず他科との境界領域となる口腔咽頭という極めて複雑かつ多機能な頭頸部の重要な部位を取り扱っており,全身疾患との関連にも焦点を当てていることである。内科,外科,小児科,整形外科,形成外科,皮膚科,歯科などを専門とする医師にとっても有用な書になっている。第二に,構成が簡潔明瞭で,図表・写真の占める割合が大きいことである。基本的に左頁にテキスト,右頁に図表・写真というコンパクトな構成をとっている。項目も疾患の定義,症状と所見,診断,鑑別診断,治療,予後とコンパクトで明解である。第三に,新たな概念・知見・手術手技などが追加提示されていることである。診断推論や臨床推論の力強い助けになる有用な情報が潤沢に盛り込まれており,日々の診療現場での活躍が期待できよう。
また本書は,われわれ内科医にとって口腔咽頭領域の内科診断学のマージンを大きく広げてくれそうである。視診,触診は行わなければ得るものがなく,行っても情報処理が稚拙であると,やはり益が少ないことになる。この書にのっとって診断学のベースアップを図り,治療につなげられることを期待したい。内科のみならず,頭頸部の領域を専門としない他科においても同様なことが言えると思う。
膠原病内科の立場からは,扁桃疾患,唾液腺疾患に関しての貴重な情報が得られる。古典的な疾患の特徴的局所所見は強く印象に残るものである。
新しい疾患概念から抽出されたIgG4関連疾患は,高IgG4血症,IgG4陽性形質細胞浸潤線維化によるものであるが,耳鼻咽喉科的側面からの検査は特に重要であり,涙腺,唾液腺に特徴的な所見が存在する。本書にはIgG4関連疾患包括診断基準の提示があるが,あくまで最低条件を確認する基準であることから,臨床像に加え局所の病理学的所見が重要であることが強調されている。IgG4陽性形質細胞浸潤の存在と著明なリンパ球,形質細胞の浸潤は見逃せないものであるが,さらに花延様線維化,閉塞性静脈炎の合わせて三つの形態学的特徴を呈してくることなど,本書では丁寧に説明がなされている。このあたりは,生検臓器,部位の適切かつ経験的な卓越した標本採取にかかわる専門の書として貴重な表現が多々見受けられ,感慨深く,見事に重責を果たしている書と感服させられる。
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