• HOME
  • 書籍
  • ヘイル 薬と母乳 MMM原書第20版 


ヘイル 薬と母乳 MMM原書第20版

もっと見る

授乳期における薬と母乳に関するリファレンスの翻訳。各薬物にリスク分類(Lactation Risk Categories)を掲載し、母親が医薬品を使用した場合に授乳によって乳児へどのくらいの危険性があるかを5段階に分類。薬物の母乳への移行リスクについて徹底的に解説する。

原著 Thomas W. Hale / Kaytlin Krutsch
監訳 林 昌洋 / 笠原 英城
発行 2023年06月判型:B5頁:632
ISBN 978-4-260-05266-5
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評

開く

日本語版の序/今版の変更点

日本語版の序

 「今,授乳中なので薬は飲めませんよね?」
 「ネットで“市販薬でも授乳を中止しないといけない”と書いてありました」
 「インフルエンザにかかったのですが,授乳してもよいですか?」
 授乳期間中に薬の服用が必要な場合,母親の心配は自身のリスクではなく,授乳時へのリスクを懸念するのは至極当然のことである.

 医療用医薬品添付文書の「9.特定の背景を有する患者に関する注意──授乳婦」は「使用上の注意」,つまり安全性情報に関する記述である.例えば「禁忌:授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること.[ヒト母乳中へ移行することがある]」のように明確な記載の場合は答えにたどり着けるが,多くの医薬品では「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し,授乳の継続又は中止を検討する.ヒト乳汁への移行は不明」という記載であり,授乳中に薬物療法が可能か否かを参考にできる情報ではない.特に不眠やうつ,てんかんなどの精神神経疾患では比較的長期間の継続的な服用が重要であり,安易な情報で授乳を優先し,断薬することで薬物治療が一挙に悪化することも散見される.
 海外ではWHOなどの公的機関やHale博士の編集した授乳と医薬品の専門書において,服薬中でも授乳の可否が判断できるデータが記載されている.「Hale's Medications & Mothers' Milk」は世界的に著名なHale博士による,授乳期における薬剤と母乳に関するベストセラー・リファレンスブックであり,約2年ごとに改訂されている.今回出版する日本語版は原書2023年版をもとに,医薬品は日本国内で使用される薬剤に限定し,その他環境物質や病態なども組み入れ翻訳作業を行った.
 授乳と医薬品使用は医療従事者にとって,誰もが遭遇する難問である.
 本書の存在によって,当該患者さんの母乳育児と疾患治療の両立が行われる手助けになることを強く望むとともに,ネット情報に惑わされることなく,適切な情報を医療従事者が提供できるツールとなれば幸いである.
 最後に本書の翻訳に多くの時間と労力を注いでいただいた薬剤師の方々さらに妊婦授乳婦認定・専門薬剤師資格者には,より繊細な作業を実行していただきましたことに深く感謝申し上げるとともに,医学書院の皆様にも深謝申し上げる.

 2023年5月
 翻訳者を代表して
 笠原英城


今版の変更点

 新薬の発売は年々増え続けているようだが,母乳育児について公表されたデータはまだ少ない.今回2023年版では,以下のように多くの重要な更新がなされた.

 新たに追加された薬物:72

 新しいデータで更新された薬物:356

 LRCを更新した薬物:74

 FDAの更新により更新された薬物:3

 新しい情報で更新した薬物:927

 薬物の参考文献の更新:149

 毎年,非常に多くの新しいFDA承認薬があるため,どれを追加するか選ぶのは難しい.いつものように,授乳中の母親が使用する可能性の最も高いものを選択した.われわれの研究室では,多くの新しい母乳育児と薬の研究を発表しており,これらの新しい研究をすべて追加した.最近,承認された新しいモノクローナル抗体が急増している.これらの医薬品に対応するため,母乳育児に関する研究が行われていない医薬品について,モノグラフを統合し,付録の新しい表で確認できるようにした.
 72種類以上の新薬を追加したが,それでも母乳に移行するかどうか,またどの程度の量が移行するかはわかっていない.各薬物の相対的なリスクを評価し,授乳期リスクカテゴリーを提供するようにした.
 毎年,300万人以上の母親が,薬と妊娠・授乳に関する情報を求めてInfantRiskセンターのウェブサイトを訪れている.多くの母乳育児中の母親が薬物研究にボランティアとして参加してくれているが,その全員から収集することはとてもできない.しかし,このような素晴らしいボランティアにより,われわれの研究室から多くの新しい研究が生まれている.
 われわれの研究のために,患者さんの募集にご協力いただいた授乳コンサルタントや医療関係者の皆様に感謝する.母親が,そのすばらしいお子さんたちに母乳育児を続けられるように,われわれは新しい研究を続けていく.

 Thomas W. Hale, Kaytlin Krutsch

開く

日本語版の序
今版の変更点

本書の使用方法

薬物一覧

巻末付録
 授乳中の母親への放射性医薬品の使用
 代表的な放射性物質の半減期
 授乳中の放射性同位元素
 放射性ヨウ素131 の濃厚接触制限
 一般的に使用されている抗うつ薬:授乳中の適合性
 一般的に使用される非定型抗精神病薬:授乳中の適合性
 一般的に使用されるベンゾジアゼピン系薬:授乳中の適合性
 一般的に使用されるオピオイド鎮痛薬:授乳中の適合性
 一般的に使用される麻酔薬:授乳中の適合性
 一般的に使用される片頭痛治療薬:授乳中の適合性
 モノクローナル抗体(非化学療法):授乳中の適合性
 各種天然素材のヨウ素含有量
 母乳の味を変えるかもしれない味の悪い薬
 配合薬

索引

開く

授乳中の薬物治療を検討するための必携書
書評者:武田 泰生(日本病院薬剤師会会長)

 多くの医療従事者が,投薬の際に授乳の有無を確認し,また薬剤服用可否の質問を受けた経験をもつと思う。薬を使用しないで済むのなら,それはそれに越したことはない。しかし,体調維持に薬が不可欠なものとなっている場合,投薬の対象は,治験の被検者となる層だけではなく,授乳中の母親も対象となる。臨床試験がない,添付文書に記載がないというだけで,「わからないから授乳はやめましょう」「薬をやめましょう」と何気なく答えてはいないだろうか。間違ってはいないが正しくもない,そんなジレンマを感じていないだろうか。

 本書は,医薬品集に頻用される授乳婦に対するカテゴリー分類の基となる,Hale博士の原書を翻訳したものである。世界共通で使用されている原書は第20版を迎え,新しい薬剤が追加されるだけでなく,既掲載の薬物のデータが改訂の都度更新されているのも特徴である。これまでの文献報告や学会での提言,わかってきたことなどが簡潔にまとめられ,判断に至った理由がとてもわかりやすく説明されている。また薬剤だけでなく,コロナウイルスに対する見解など,最新の話題があることも臨床に適したツールの一つとなる理由である。

 新しい薬剤についての情報はまだまだ十分でないものも多いが,その際は,古くからある使用歴やデータが蓄積されており,安全性がある程度確立されている薬を選ぶのが基本である。本書には,その際の参考となる代替薬が提示されているため,患者の治療に欠かせない薬剤を考える参考になると思われる。

 さらには,薬品ごとに薬物動態が簡潔にまとめられているのがありがたい。特に薬の情報を扱うことが多い薬剤師にとっては,半減期や蛋白結合率,バイオアベイラビリティなど,薬剤師ならではの観点で薬剤を評価する際の一助となるであろう。また,母乳への移行度の指標となる分子量や薬剤の母乳中/血漿中濃度比の考え方は,薬剤師にとっても通常業務で使用するものではなく,この分野を学ぶきっかけにもなるだろう。

 ただし,授乳時の薬剤については,吸収,分布,代謝,排泄の検討が母親を対象とするだけでなく,乳児においても考える必要がある。乳児の体内動態はわからないことも多いが,一般には臨床的に問題となることはない。しかし本書には,乳児において考えられる副作用やモニタリングすべきことも掲載されており,医療従事者の安心につながるだけでなく,母親の安心につながる情報源となるだろう。

 添付文書「9.6授乳婦」に「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し,授乳の継続又は中止を検討すること」「動物実験で母乳中へ移行することが報告されている」と記載されている場合,薬剤あるいは授乳はやめる! という二択しかないのだろうか。授乳中の薬剤を考えるとき,ぜひ本書を最初に開く本にしてほしい。


自信をもって母乳育児を適切に導くために
書評者:島 義雄(日医大武蔵小杉病院教授・新生児科部長)

 「授乳中のお薬」に関する不安や疑問に,自信をもってお答えするのが難しいのは,信頼に値する情報になかなか辿り着けないからではないでしょうか。本書は,薬剤の母乳移行と授乳のリスク分析に特化したデータや文献を提供し続け,原著で既に20版を重ねる定評あるリファレンスの待望の邦訳です。その場で素早く参照ができるように,一般名で五十音順に掲載された薬剤には,国内で流通する商品名と薬効のカテゴリー,そして何より今すぐ知りたい授乳の危険度がひとめでわかるように手際よくまとめられています。

 「母乳で育てる」は,いまや社会全体の意識となり,たとえ母親に服用治療の必要があっても,授乳を続ける上での影響が小さいと判断できれば,私たち医療者は積極的にそれを励ます立場にあります。「安全性に関する十分なデータがない」という添付文書を盾に,母乳をあきらめることに躊躇のなかった時代とは隔世の感です。実際,ほとんどの薬剤は適正に使用されていれば授乳を控える必要はないのですが,根拠もなく「大丈夫」と言うのも,やはり責任ある態度ではありません。また,母乳に固執するあまり服薬を中断させて,母親が健康を害するようであれば本末転倒というものです。

 本書では,掲載されている薬剤について,母乳移行性の客観的な判断材料となる薬物動態に関する指標(半減期,分子量,蛋白結合率など)が示され,解説と文献を参照することができます。その上で,授乳が安全なものから,明らかな禁忌まで5段階に分類され,中間群についても過去の事例や研究結果に基づいて階層化されているので,説得力があり信頼性の高いリファレンスとなっています。

 本書の代表者であるHale博士は,母乳育児に最高の価値を与えながら,母親の健康がその大前提であり,治療と授乳は両立すべきとの立場を明らかにしています。したがって,一律にリスク分類を適用するのではなく,個々の当事者(母親,医師,薬剤師)が十分な論議で合意を形成し,投薬を受けながら授乳を続けることの利益・不利益を主体的に判断することを求めています。そのために,治療薬に限らず,検査や診断に用いる薬品から,消毒剤,嗜好品,病原体に至るまで,およそ授乳中の母親が曝露される可能性のあるものなら徹底的にデータや文献を蒐集したと宣言しています。私たち医療者が,自信をもって母乳育児を適切に導くことができるように,強い使命感と自負をもって編纂された本書は,必要な薬剤を探し読みするだけではもったいない内容になっています。

 最後に,本書が第一線の病院薬剤師の皆さんの手による翻訳書であることを申し添えなければなりません。あらゆる診療科にまたがる膨大な臨床薬理の知識をもち,日頃から患者さんたちに直接相対している方々のお仕事であるからこそ,臨場感のある,きめの細かい日本語版が出来上がりました。本書が,母乳育児相談に携わる機会のある全ての職種に利用されることが,チーム医療の実践そのものになると信じています。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。