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UNICEF/WHO 赤ちゃんとお母さんにやさしい
母乳育児支援ガイド ベーシック・コース
「母乳育児成功のための10ヵ条」の実践

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UNICEF/WHOが世界の衆知を結集してまとめあげた母乳育児支援の集大成。なぜ母乳育児なのか、何が困難にしているのか、どう支援すれば可能となるのか、でも、母乳育児ができない母親にはどうする――限られた時間で最大限の教育効果に導く周到な構成と、かゆいところに手の届く記述で全編を貫徹。母乳育児支援を成功に導く必読書。
BFHI 2009 翻訳編集委員会
発行 2009年11月判型:B5頁:464
ISBN 978-4-260-00790-0
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

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発刊に寄せて(功刀純子)/日本語版 序(ランダ J. サーデー)/まえがき(堀内 勁)

発刊に寄せて
 世界で一番自然なことのひとつであるように見えるかもしれませんが,母乳で育てること,とりわけ母乳だけで育てることは,始めるのも続けるのもなかなかたいへんなことです.それでも,母乳育児は,いくつもの,とても大きな効果をもたらします.乳幼児の健康と栄養状態が向上し,母と子のきずなを強め,ミレニアム開発目標の達成につながります.
 WHO・UNICEFによるBFHI改訂ガイドラインの日本語版である本書が広く行き渡り,よく知られるようになるための関係者の皆様の取り組みを,ユニセフ東京事務所は高く評価します.それによって,日本における母乳育児推進と支援の方法が,より系統的で包括的なものになるであろうと考えられるからです.
 先進工業国では人工栄養が健康や衛生上の大きなリスクを意味するとはいえないかもしれませんし,開発途上国のように家計への大きな負担ではないかもしれませんが,母乳だけで育てることを支持する論拠は証明されており,また,普遍的なものでもあります.
 1990年に,「母乳育児を保護,推進,支援するイノチェンティ宣言」により,国際的な協議項目が提示され,達成すべき行動目標が高く設定されました.イノチェンティ宣言は,その後,第45回世界保健総会およびUNICEFの執行理事会で承認されました.国レベルで母乳育児推進を実行する能力を確立し,さまざまな支援を引き出すために,翌年の1991年にBFHIが始動しました.
 ほかの国と同様に日本でも,BFHIは産科施設とケアの実践において望ましい変化をもたらしているだけでなく,強力なネットワークとパートナーシップの形成につながっています.私たちUNICEF一同は,BFHIの唱道者,専門家,協力者など多くの皆様のたゆみない努力が実りあるものになるように願っています.皆様の働きによってBFHIが広がり,それがすべての子どもがもっている,最適な栄養とケアを受ける権利の実現にとり,大きな力となるのです.そして,そのことによって,どの子も授かった命を生き,その潜在能力を最大限に開花させる可能性が拡大することを願ってやみません.

 2009年10月
 功刀純子 June Kunugi
 国際連合児童基金(ユニセフ)東京事務所代表
 Director, UNICEF Tokyo Office


日本語版 序
 母乳で育てること,とりわけ母乳だけで育てることは,ミレニアム開発目標のうちで,子どもの生存に関する項目を達成するために中心的な役割を担っています.赤ちゃんにやさしい病院運動(Baby-Friendly Hospital Initiative:BFHI)は,病院,保健サービス,そして親が協力して,赤ちゃんが人生の最良のスタートを切れるように保証するための世界規模の運動です.そして,BFHIは,母乳育児を保護,推進,支援するような実践が行われることを目指しています.
 イノチェンティ宣言の呼びかけに応えてBFHIが始動した1990年代のはじめには,国家レベルで母乳育児支援活動に本気で取り組む国はほんの少ししかありませんでした.しかし,19年近くもWHOが支持し,UNICEFが国レベルでの実施を支援してきた結果,今日では,ほとんどの国で母乳育児や乳幼児栄養に関する専門機関やBFHI調整団体ができ,病院のアセスメントを行って,国内で少なくとも1つの「赤ちゃんにやさしい」施設を認定しています.
 2002年にWHO/UNICEFが出した「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」は,更新された支援内容を緊急に呼びかけていますが,その中には,生後6か月間は母乳だけで育てること,月齢に合わせて適切な内容の補完食を与えながら母乳育児を2年かそれ以上続けることが含まれています.「世界的な運動戦略」の9つの実行目標のうち少なくとも6つは,直接にBFHIと結びついているのです.
 BFHIによって母乳だけで育てる割合が増え,それが健康状態と生存率の改善に反映されてきました.この進歩をもとにしつつ,各国の経験によってBFHIが整理され,教材も改訂されました.新しい教材セットは,WHOとUNICEFのすべての教材を1つにまとめたもので,新しい研究や経験を反映し,BFHIの「評価基準」をHIV/AIDSに配慮して再考し,「母乳代用品の使用が許容される医学的理由」を改訂し,「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」を強化し,「お母さんにやさしいケア」のための項目を追加し,そして,モニタリングとアセスメントの詳しい手引きを載せています.

改訂版のBFHI教材セットは,5つのセクションから成っています.

セクション1 背景と実施
 セクション1は,改訂されたプロセスと,持続性,統合性についての手引きです.また,BFHIが広がりを見せ,ある程度の持続性をもって社会に受け入れられなければならないことを認識した上で,国や保健医療施設や地域の状況に応じてさらに加えることのできる複数のオプションについての手引きを提供しています.セクション1は,以下のサブセクションに分かれています.(1)国と病院レベルでの実施;(2)BFHIの「世界共通評価基準」;(3)「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」のコンプライアンス;(4)「赤ちゃんにやさしい」拡大と統合のオプション;(5)情報源,参考文献,ウェブサイト,です.

セクション2 BFHIの強化と維持:方針決定者のためのコース
 セクション2は,WHOの“Protecting breastfeeding in health facilities: a short course for administrators and policy-makers”コースを改編したものです.セクション2は,病院の方針決定者(院長,経営者,部門の責任者など)や政策決定者に,BFHIとそのよい影響に注目してもらうために用いることもできますし,「10ヵ条」を推進し維持することへの公的な支持を得るために使うこともできます.配付資料とパワーポイントのスライドがついた8つのセッションとコースガイドから成りますが,HIV有病率の高い地域で用いるための2つのセッションと教材も含まれています.

セクション3 「赤ちゃんにやさしい病院」における母乳育児の推進と支援
  産科スタッフのための20時間コース
 この「20時間コース」は,施設がそのスタッフの知識とスキルを向上させて,「10ヵ条」と「国際規準」を充分に実行できるようにするための教程です.この「20時間コース」は「18時間コース」に代わるものです.ファシリテーターのためのガイドライン,各セッションのアウトライン,そしてパワーポイントのスライドから成っていますが,臨床スタッフ以外の職員と話し合うための項目や内容も提案されています.

セクション4 病院の自己査定とモニタリング
 セクション4は,病院管理者とスタッフが,はじめは自分たちの施設が外部アセスメントを受ける準備ができているかどうかを決めるのに使うことができます.いったん「赤ちゃんにやさしい」と認定されたら「10ヵ条」を引き続き守っているかどうかをモニタリングするために使います.このセクションには,自己査定ツールとガイドライン,およびモニタリングのためのツールが含まれています.

セクション5 外部アセスメントと再アセスメント
 セクション5は,病院が「世界共通評価基準」を満たし,「10ヵ条」をすべて実行しているかどうかを,外部アセスメント委員がはじめにアセスメントするためのガイドラインとツールです.その後,定期的に必要な水準を維持しているかどうかを再アセスメントするためにも使われます.このセクションには,アセスメント委員のための手引き,その委員が病院を外部アセスメントするためのツール,アセスメント委員をトレーニングするためのパワーポイント,外部からの再アセスメントをするためのガイドラインとツール,および結果を分析するためのコンピュータ・アプリケーションが含まれています.このセクションは一般に配布するためのものではなく,BFHIのアセスメントと再アセスメントを執行するアセスメント委員が入手できるようになっています.

 BFHIは母乳育児の実践に極めて大きな影響をもたらしてきました.今までのBFHIの実施を通して各国が得た経験を生かし,乳児栄養法に関する新しい研究結果と勧告を反映させたツールとコース,つまり,「赤ちゃんにやさしい」と評価される評価基準に沿って病院の実践を変えるためのツールとコースが,ここにできあがったのです.
 各国政府は,保健・栄養・子どもの生存・母親の健康にかかわる全職員が,充分な情報を得て,BFHIの再活性化の助けになるような環境を積極的に活用できるように保証すべきでしょう.また,BFHIを含めた最適な乳幼児の栄養法を保護・推進・支援するための基本的な内容を,施設で働くか地域で働くかの区別なくすべての保健医療従事者のカリキュラムに組み入れるべきです.さらに,BFHIは子どもの生存に主要な役割を演じていること,そして,HIV/AIDSに関してはいっそうその役割が重要であることを認識するべきです.

 WHOとUNICEFは,BFHIの「世界共通評価基準」が確実に,充分に実施されるようになるために,そしてすでに始まっている進歩を続けるために,この新しい教材セットを使っていただくことを強く推奨しています.
 「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」を実行することは乳幼児の健康状態と生存率を改善し,さらに前進するための1つの方法です.ひいてはそれがミレニアム開発目標を達成するための着実な一歩となるのです.

 2009年6月
 ランダ J. サーデー Randa Jarudi Saadeh
 世界保健機関
 World Health Organization
 サイエンティスト,栄養健康開発部門
 Scientist, Nutrition for Health and Development


まえがき
 先進国の経済発展が乳幼児死亡に悪影響を強く及ぼしたものに,人工乳の不必要なマーケティングがあります.その事実がさまざまな調査・報告で確認されてきました.その対策としてWHOが取り組んだのが母乳育児推進です.1989年には,母乳育児の保護と推進にかかわる産科施設の役割として,産科施設が取り組むべき「母乳育児成功のための10ヵ条」が発表されました.わが国でもこの指針に則り母乳育児推進を行っている施設に対して,「赤ちゃんにやさしい病院」の認定がUNICEFとの取り決めにより「日本母乳の会」によりなされており,2009年には61施設となっております.
 その根拠となる「母乳育児成功のための10ヵ条のエビデンス」(1998年)と,実際に産科施設が「10ヵ条」に取り組むための具体的教育内容を示したガイドライン「18時間コース」がUNICEF/WHOにより出されました(1993年).
 今回この18時間コースが大幅に改訂され“Baby-Friendly Hospital Initiative (BFHI): Revised, Updated and Expanded for Integrated Care”として公開されました.UNICEF東京事務所のコーディネートのもとに,さまざまな場で母乳育児推進を行ってきた保健医療従事者が協力してこの内容を翻訳いたしました.広く母子保健担当者に「母乳育児成功のための10ヵ条」に基づく実践を行っていただくことが目的です.実際に厚生労働省の調査では妊婦の9割以上が母乳育児を希望しているのに,出産1か月の時点で,母乳で育てている母親の割合は4割強でしかないことが明らかにされています.「健やか親子21」の課題2でも産後1か月の母乳育児率の向上があげられています.そのための世界共通のシステマティックな取り組み方が本書には示されています.
 今回の改訂でBFHI(赤ちゃんにやさしい病院運動)は次のような構成となりました.第1部(Section1)には,国や行政単位の意思決定を行う上での方策,同様に病院単位での方策,「世界共通評価基準」(BFHIのための世界共通評価基準),「国際規準」(母乳代用品のマーケティングに関する国際規準:WHOコード)の遵守,そして赤ちゃんとお母さんにやさしい社会への取り組みがあげられています.第2部(Section2)は,その地域や病院の意思決定のキーパーソンが具体的にBaby-Friendly Hospitalとなるために何をなすべきかを学ぶコースです.約3日間のコースが示されています.第3部(Section3)は,産科施設の現場で対応する保健医療従事者の教育コースです(通常「20時間コース」と呼ばれています).第4部(Section4)にはBaby-Friendly Hospitalを目指すための各施設が行う前評価(自己査定)のやり方と,自分たちの施設の状態をモニタリングする手段および指標が述べられています.第5部(Section5)は,実際にBaby-Friendly Hospitalを認定する際の評価内容であり,この第5部は非公開です
 これらの内容を大別すると,①地域や施設の現場で,親・家族を直接支援する保健医療従事者のための教育と実践にかかわるもの,②「赤ちゃんとお母さんにやさしい社会」の実現のために保健医療政策者や,病院管理者の教育や意思決定のプロセスへの取り組み方を示す内容,さらに,③「赤ちゃんにやさしい病院」を維持するためのモニタリング,に分けることができそうです.インターネットのウェブサイトでUNICEF,WHOのそれぞれが公開している内容であり,英文のテキストや図表・写真のすべてを誰もが閲覧し,プリントアウトすることもできます.しかし,その枚数の合計はA4判で800ページを越える膨大なものであるため,翻訳編集委員会で討議した結果,2巻に分けて出版することにしました.
 第1巻は,UNICEF/WHO 赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイド ベーシック・コース「母乳育児成功のための10ヵ条」の実践
 第2巻は,UNICEF/WHO 赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイド アドバンス・コース「母乳育児成功のための10ヵ条」の推進
としました.
 母乳育児支援に取り組む医師,助産師,看護師,栄養士,保育士,医学生,看護学生,栄養学科・保育学科の皆さんにはまず本書「ベーシック・コース」を教科書としてお読みになることをおすすめします.そして,その後に「アドバンス・コース」(2010年刊行予定)をお読みになり,赤ちゃんにやさしい病院と,赤ちゃんとお母さんにやさしい社会を策定していく仕組みを理解していただきたいと思います.さらにすべての医療・保健関係者,行政・政策決定者も両編を読んで,21世紀の母子保健はここから始まることの理解を共有していただければと考えます.
 今回の改訂の特色のもう1つは,陣痛・分娩時の「お母さんにやさしいケア」が加わったこと,「母乳で育てない場合の支援」がオプション項目で示されていることです.前述した中に「赤ちゃんとお母さんにやさしい」という言葉が数箇所出てきたことに気づいた方がおられるかもしれませんが,それはこのことを表わしています.さらに,母乳代用品の使用が許容される医学的理由も具体的に示されています.特殊ミルクを使うべき先天性代謝疾患などの絶対的母乳禁忌,極低出生体重児などの母乳だけでは栄養が不足する場合,HIV感染のような恒久的に母乳を避けたほうが妥当かもしれない場合,特殊な感染症や母親の状態,あるいは特殊な薬剤の使用中などの一時的に母乳を避けたほうがよい場合などがあげられています.
 しばしば,先進国では途上国と違って,感染症や栄養障害のリスクが低いという理由から,母乳育児推進の必要性が過小評価され,それほど熱心に取り組まれてきませんでした.しかし,先進国でのメタボリック症候群発症のメカニズム,親子関係のひずみから生じる心の問題などの解明が少しずつすすみ,あらためて母乳育児の意味がクローズアップされつつあります.
 女性の生殖サイクルと母子の健康,受精からはじまるヒトの一生の健康のいしずえをきづくものが母乳育児であることを私たちが深く学び,またわが国の母子保健政策決定者や指導者が強く認識されることを願います.

 2009年9月
 堀内 勁
 BFHI 2009 翻訳編集委員会委員長
 聖マリアンナ医科大学小児科学教室

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 巻頭カラーグラフ

SECTION 3 「赤ちゃんにやさしい病院」における母乳育児の推進と支援
        産科スタッフのための20時間コース
 SECTION 3.1 コースを教えるファシリテーターのためのガイドライン
 SECTION 3.2 各セッションのアウトライン
  welcome session 開会セッション
  SESSION 1 赤ちゃんにやさしい病院運動
        -「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」の一環として
  SESSION 2 コミュニケーション・スキル
  SESSION 3 妊娠中の母乳育児の推進(第3条)
  SESSION 4 母乳育児の保護
  SESSION 5 出産の実践と母乳育児(第4条)
  SESSION 6 赤ちゃんが乳房から乳汁を飲みとる仕組みについて
  SESSION 7 直接授乳を援助する(第5条)
  clinical practice 1 臨床実習1 授乳の観察と援助
  SESSION 8 母乳育児を支援するための具体的な方法(第6・7・8・9条)
  SESSION 9 母乳の分泌
  SESSION 10 特別な援助が必要な赤ちゃん
  SESSION 11 赤ちゃんが直接授乳できない場合(第5条)
  SESSION 12 乳房と乳頭の形状・病変
  clinical practice 2 臨床実習2 妊娠中の女性と話す
  clinical practice 3 臨床実習3 手による搾乳とカップ授乳の観察
  SESSION 13 母体の健康に関することがら
  SESSION 14 母親への継続的な支援(第10条)
  SESSION 15 あなたの病院を「赤ちゃんにやさしく」するには
  closing session 閉会セッション

SECTION 1 背景と実施
 SECTION 1.3 「赤ちゃんにやさしい病院運動」(BFHI)のための世界共通評価基準

SECTION 4 病院の自己査定とモニタリング
 SECTION 4.1 病院の自己査定のためのツール
 SECTION 4.2 「赤ちゃんにやさしい病院」のモニタリングのためのガイドラインとツール



●本書の構成
■本書の原典である“UNICEF/WHO: BABY-FRIENDLY HOSPITAL INITIATIVE (BFHI): Revised, Updated and Expanded for Integrated Care”は次のように構成されている.
 セクション1:背景と実施
 セクション2:BFHIの強化と維持:方針決定者のためのコース
 セクション3:「赤ちゃんにやさしい病院」における母乳育児の推進と支援
         -産科スタッフのための20時間コース
 セクション4:病院の自己査定とモニタリング
 セクション5:外部アセスメントと再アセスメント(非公開)
■日本語版である「ベーシック・コース」(本書)と「アドバンス・コース」(続刊)の目次構成・掲載順序は次の通り.
【ベーシック・コース】
 ・セクション3(全文掲載)
 ・セクション1.3(セクション1の5章のうち1.3のみ重複掲載)
 ・セクション4(全文重複掲載)
【アドバンス・コース】
 ・セクション1(全文掲載.1.3は重複掲載)
 ・セクション2(全文掲載)
 ・セクション4(全文重複掲載)

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母乳育児支援のための効果的なテキスト (雑誌『助産雑誌』より)
書評者: 石黒 和代/児島 京子 (大阪市立十三市民病院)
 本書を紹介する前に,前版である『UNICEF/WHO母乳育児支援ガイド』に触れておきたい。2003年発刊当時,哺乳びんを使うことに何の疑問も持たずにいた私たちスタッフが「母乳育児とは何か」を学んだ,まさに「目から鱗」の衝撃を受けた最初の教科書である。人類の長い歴史の中で継続されてきた当たり前の方法のはずなのに,赤ちゃんを育てることはどうしてこんなに大変なのか。母乳育児支援にかかわった経験があれば一度は感じたことがあると思うが,この本を読んでそんな不安が薄らいでいったことを覚えている。具体的にどのようなケアを行なえば効果的に母乳育児支援ができるかという実践方法がわかりやすく解説されていて,母乳育児支援スキルの基礎となった。

 BFHI(赤ちゃんにやさしい病院推進運動),そして「母乳育児成功のための10ヵ条」の実践に取り組み,当施設は2009年にBFH(赤ちゃんにやさしい病院)の認定を受けた。今後は母乳育児支援の水準を維持,更新していくことに力を注がなくてはならないと責任を感じている。スタッフ1人ひとりがさらに深く「10ヵ条」を理解し,これから新しく母乳育児支援に携わるメンバーは効果的にその方法を学ぶ必要がある。

 本書は,前版がバージョンアップした改訂版で,母乳育児支援に取り組むうえで非常に効果的なテキストになっている。

 まず,学ばなければならない内容が「産科スタッフのための20時間コース」としてまとめられている。スタッフの知識とスキルを向上させ,「10ヵ条」と「母乳代用品のマーケティングに関する国際基準」を十分に実行できるようにするための教程で,具体的な学習方法と3日間コースの時間割モデルも示されている。また,「赤ちゃんとお母さんにやさしい」というタイトルが追加されているように,新たに陣痛・分娩時の「お母さんにやさしいケア」や「母乳で育てない場合の支援」が加えられたことも,今回の改訂の大きな特色である。

 お母さんと赤ちゃんに寄り添うことに何年取り組んでも,母乳育児の奥の深さには計り知れないものがある。どうすることが一番いいのか,迷ったり,スタッフ間で意見が合わなかったりということは日常よくあるものだが,そんな時に本書は確かな指針を示してくれるはずである。細部にわたって具体的な支援方法が記載されているので,困った時には辞書のように使える。また,写真や図を多く配して理解しやすく読みやすい構成になっていることもうれしい。

 スタッフ1人ひとりの努力の積み重ねがチームとしての支援向上につながっていくが,本書がその大きな礎となることを確信し,皆様に紹介できることに感謝している。

(『助産雑誌』2010年4月号掲載)

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