運動療法学 総論 第5版

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理学療法士が運動療法を行ううえで求められる基礎的知識をまとめた「総論」が、編集体制を新たに大改訂。定評がある本書を「初学者がさらに学びやすく、より理解しやすく」という視点から見直し、情報を更新。社会の変化に対応した新しいテーマを盛り込み、理学療法士の中心的テーマの1つである運動療法を概説する必携の1冊。

*「標準理学療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。

シリーズ 標準理学療法学 専門分野
シリーズ監修 奈良 勲
監修 吉尾 雅春
編集 福井 勉
発行 2023年12月判型:B5頁:296
ISBN 978-4-260-05292-4
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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第5版 序

 標準理学療法学シリーズの『運動療法学総論』が4度目の改訂を行うことになった.海外の理学療法を見学すると物理療法の占める割合が日本より大きいと感じることがあるが,わが国において,運動療法は理学療法の中心的存在である.
 今回の改訂にあたっては,執筆者に本書が初学者も読む教科書であることを意識してもらい,専門的な内容はできるだけ他書に譲ることとして,基本的内容をベースとして多くの図表を用いて解説いただくようお願いした.もちろん,章によっては専門的な内容を含んでいることもあり,また各章で内容の重複がみられる箇所もあるが,これらは表現の違いや重要性の観点からあえてそのまま掲載することとした.読者の皆さんには,記述の重複は異なる視点で書かれた重要な論点として,特に深く学んでいただきたい.
 今回,姉妹書である『運動療法学各論』も同時改訂されたが,『各論』と連動する形で「小児」や「女性」「スポーツ選手」に対する運動療法の章を新設した.近年,理学療法士が活躍する領域は多様な広がりをみせており,基本知識の範囲も拡大していることがその理由である.このように運動療法の対象は広範であるが,その一番の理由は「運動」という概念そのものが大変広い範囲にわたることによる.運動器疾患に関しては無論だが,運動は当然,呼吸・循環・代謝系に深くかかわりがあり,また中枢神経とのかかわりから運動学習や運動制御といった概念の理解が必要となる.本書の「第II編運動療法の基礎理論」には,これらの内容を網羅的に収載した.
 本書の読み方として,まず第II編で基礎理論を学び,その理論を背景として「第III編基本的運動療法」へと読み進めていくことが一般的と考えるが,実践的な動機づけも重要であるため,第III編を読み進めながら,第II編を辞書的に用い,第III編の学習を終えたのちに,第II編を通読するという方法も考えられる.本書はどちらの方法にも対応できる構成をとっており,各教育機関のシラバスに沿って学習を進めていき,カリキュラムを修了したのちに本書を読み返せば,さらに理解が進むものと思う.
 先にも述べたとおり,本書には臨床でも活きるような専門的知識が盛り込まれている.このため,高学年になってからの活用も可能である.疾患ベースの学習では,各疾患の医学的知識はもちろんのこと,疾患の特性に合わせた運動を考慮する機会が増える.そのようなときに本書を再び開けば,基本に立ち返りつつ,新たな発見やヒントを得ることができるであろう.
 また,理学療法士の養成課程で解剖学,生理学,病理学などの基礎医学と並行して運動療法を学ぶ場合にも,それらと相互補完的に本書を活用することが可能である.
 本書は運動療法を学ぶ学生の学習しやすさを考慮しつつ,各教育機関のカリキュラムに柔軟に対応できるように構成された,何度でも読み返し,学びを深めることができる教科書である.読者の皆さんには,ぜひ本書をボロボロになるまで読み込んでもらいたい.本書を通じて皆さんの運動療法の理解にかかわることができれば,本書編集者としてこのうえない幸せである.

 2023年10月
 福井 勉

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I 概念
 1 運動と運動療法
  A 運動とは
  B 運動のもたらすもの
  C 運動の法則
  D 運動療法とは
  E 運動療法の種類
  F 運動療法の対象
 2 理学療法のなかの運動療法
  A 従来の運動療法
  B 理学療法のなかの運動療法
  C 運動療法の意義
  D 運動療法をどのように用いるか
  E 評価で運動療法の結果が変わる
  F 運動療法を創造的に展開する
  G 運動学をベースに考える

II 運動療法の基礎理論
 1 関節運動
  A 関節の分類
  B 滑膜性関節の基本構造
  C 関節の機能
  D 関節の運動様式
  E 関節運動の制限
 2 筋と筋収縮
  A 骨格筋の構造
  B 筋収縮のエネルギー
  C 張力からみた収縮特性
 3 随意運動と運動制御の生理
  A 大脳皮質の構造と機能
  B 大脳運動関連領野
  C 小脳
  D 大脳基底核
  E α運動ニューロンの活動調整
  F 脊髄による運動制御
  G 脳からα運動ニューロンへの経路
  H 興奮-収縮連関
  I 運動単位
  J 筋収縮力の調整
 4 運動制御と運動学習
  A 理学療法士に必要な運動制御の理解
  B 身体運動制御はなぜ難しいか
  C 随意運動発現のメカニズム
  D 姿勢制御のメカニズム
  E 運動学習とは
  F 運動学習のメカニズム
  G 運動学習を促進するための“構成”
  H 運動制御・運動学習の臨床応用
 5 運動と神経
  A ヒトの運動機能の獲得(進化と発達)
  B 運動を制御する神経機構(基本的枠組み)
  C 運動にかかわる神経の部位(役割)
  D 運動にかかわる反射作用
  E 運動に重要な下行性の神経機構
  F 運動に重要な姿勢制御と上行性の神経機構
  G 運動の調節にかかわる神経系
  H 立位バランス能力にかかわる運動・姿勢制御
  I 加齢に伴う立位バランス能力と転倒との関係
  J 歩行運動と神経系の役割
 6 運動と呼吸
  A 呼吸の役割
  B 呼吸のメカニズム
  C 運動負荷に伴う正常な呼吸応答とその調節
  D 呼吸機能に影響する要因
  E 呼吸機能からみた運動療法の効果
 7 運動と循環
  A 循環器系の役割
  B 運動時の循環器系の適応
  C 有酸素運動と循環機能
  D 運動の種類と血圧反応
 8 運動と代謝
  A 運動と代謝のメカニズム
  B 運動と代謝調節
  C 代謝からみた運動
  D 運動と代謝の評価
 9 運動の種類
  A 基本的な運動の分類
  B 筋収縮様式による分類
  C 運動形態による分類

III 基本的運動療法
 1 関節可動域運動
  A 関節可動域運動とは
  B 関節可動域運動を実施する事前準備
  C 関節可動域運動の目的と方法
 2 筋力増強運動
  A 臨床で扱う筋力とは
  B 筋力に関係する要因
  C 筋力増強運動の基本的理論
  D 収縮様式別による筋力増強運動
  E 臨床での実際
 3 持久力増強運動
  A 持久力の概念
  B 持久力の評価
  C 持久力増強運動プログラムの立案で考慮すべき事項
  D 高齢者および疾患別の持久力増強運動プログラム
  E 持久力増強運動の方法と効果
 4 協調性運動
  A 協調性運動とは
  B 小脳
  C 協調運動と小脳の関係
  D 運動失調
  E 協調性運動障害に対する運動療法
  F 協調性運動障害に対する運動療法の留意点
 5 バランス運動
  A バランスの概念的な整理と定義
  B バランスを保つための3つの戦略
  C 実際のバランス評価とバランス運動
  D 機能低下に応じた介入

IV 運動療法の対象の広がり
 1 小児
  A 運動発達
  B 運動と発達のかかわり
  C 小児に対する運動療法の考え方
 2 女性
  A ウィメンズヘルス分野の理学療法と女性のライフステージ
  B 妊娠・出産に伴う身体変化
  C マイナートラブル
  D 運動療法の実際
  E おわりに
 3 スポーツ選手① 野球
  A 野球選手における運動療法の基礎
  B 野球選手における運動療法の実際
 4 スポーツ選手② サッカー
  A 外傷・障害予防
  B アスレティックリハビリテーション
  C コンディショニング
  D プロサッカー現場における理学療法士の役割
 5 スポーツ選手③ テニス
  A テニス選手の生きる世界
  B テニス競技の特徴
  C テニス競技における理学療法士のかかわり方とその役割
  D テニス選手に対する運動療法
  E テニス競技のメディカルルール

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