看護のための教育学 第2版

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初版同様「看護師を目指す学生」に、教育について考えてもらう本をめざし、状況の変化や著者らの実践経験をふまえて改訂。

リフレクションの技法」の章を新たに加え、また「コーチングの技法」をまとめ直し、「学習の原理を理解する」項目を大幅に改変。どれも、学生が看護師となり現場で教育に携わるようになった時に役立つ部分を強調した。

遠隔授業を余儀なくされた時期を経た、教育の見直しにも対応するように改めた。

編著 中井 俊樹 / 小林 忠資
寺田 佳孝 / 嶋﨑 和代 / 原田 健太郎 / 都島 梨紗 / 上月 翔太
発行 2022年01月判型:B5頁:156
ISBN 978-4-260-04884-2
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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第2版 はじめに

 「教員を目指す学生のための教育学ではなく,看護師を目指す学生のための教育学になっていますね」。『看護のための教育学』の初版に対して,初対面の教員からこのような感想をいただいたことがあります。初版を執筆するときに重視したことが伝わっていることを実感し,刊行してよかったと思いました。このような多数の教員に支えられ,このたび,第2版を刊行することができました。
 第2版の方針は初版から一貫しています。看護師を目指す学生にふさわしく,そして長く活用される教科書を目指して,可能な限り普遍的で重要な内容から構成することを心がけました。初版刊行以降の教育をめぐる環境の変化を踏まえた修正も行いました。しかし,それ以上に第2版の修正に結びついたのは,執筆者らが実際に授業担当者として授業で活用した際の経験です。
 初版刊行以降,私も看護学生を対象とした教育学の授業で教科書として活用しました。2020年以降のコロナ禍においては遠隔授業の教科書として活用してきました。初版も十分に検討した上で執筆したつもりでしたが,実際に5年以上にわたって授業を担当し学生の反応を確認すると,追加や修正したいと考える内容に気づくものです。そのような授業の現場で発見した改善案を今回の改訂に盛り込みました。
 結果として,第2版は初版から大きな変更を行うこととなりました。まずは,新たに「リフレクションの技法」の章を加え,全13章構成としました。リフレクションを扱う章を設けたのは,リフレクションが看護学生の生涯にわたる学習において大切な役割を担っていると考えたからです。また,「コーチングの技法」を1つの章にまとめました。指導の実践のなかで発展したコーチングの技法は,看護現場において活用すべき場面が多いからです。さらに,「学習の原理」の章を大幅に改編しました。改編によって,学習という活動が教室だけでなく職業の現場などにも広がっており,それらを説明する原理がより理解しやすくなったと考えています。その他の章においても,内容を整理し表現などよりわかりやすくなるよう修正を行いました。
 今回改訂できたのは,執筆者らの力だけによるものではありません。執筆者らが担当した授業の学生からのフィードバックや執筆協力者による草稿段階での有益なアドバイスは,執筆する上で役立ちました。また,医学書院の大野学氏には,第2版の作成のきっかけをいただき,編集,イラストなどさまざまな点でお力添えいただきました。多くの方のご協力を得て,第2版の出版にこぎつけることができました。
 今回の改訂によって,『看護のための教育学』という書名に,よりふさわしい内容になったのではないかと自負しています。本書が,看護師を目指す学生の興味を刺激し長い期間にわたって役立つものとなることを願っています。また,本書の内容が,看護師になるために必要な教育学とはどのようなものなのかについての議論の契機になればと期待しています。

 2021年12月
 中井俊樹

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第2版 はじめに
初版 はじめに
本書の構成と使い方

第1部 人の発達と学習
 1章 学ぶことと教えること
  1 生涯学習社会を生きる
  2 なぜ教育が大切なのか
  3 教える準備に取りかかる
 2章 人の発達を理解する
  1 人の発達の特徴
  2 認知能力の発達を理解する
  3 自己の発達を理解する
  4 対人関係の発達を理解する
 3章 学習の原理を理解する
  1 学習とその特徴を理解する
  2 知識を獲得する
  3 経験から学習する
  4 参加を通じて学習する

第2部 指導の基本
 4章 指導者の役割と倫理を理解する
  1 指導者にはさまざまな役割がある
  2 指導者の6つの役割
  3 指導者としての倫理
 5章 指導を設計する
  1 指導の設計を始める
  2 学習目標を設定する
  3 適切な指導方法を選択する
  4 アクティブラーニングを取り入れる
 6章 効果的に指導する
  1 効果的な指導の型を理解する
  2 導入で学習の準備を整える
  3 展開で学習内容を深める
  4 まとめで学習を定着させる
 7章 学習を評価する
  1 評価の特徴を理解する
  2 評価の構成要素を理解する
  3 評価の効果を高める
  4 フィードバックを効果的に与える

第3部 さまざまな指導の技法
 8章 学習意欲を高める技法
  1 学習意欲を理解する
  2 内発的動機づけと外発的動機づけ
  3 さまざまな動機づけの理論
  4 学習意欲を高めるさまざまな技法
 9章 コーチングの技法
  1 コーチングを理解する
  2 コーチングのスキルを理解する
  3 上手に意見を伝える
  4 目標に向けて行動を促す
 10章 ディスカッションの技法
  1 ディスカッションを理解する
  2 ディスカッションを準備する
  3 ディスカッションを導く
  4 ディスカッションを活性化させる工夫
 11章 リフレクションの技法
  1 経験を学びに変える
  2 リフレクティブサイクルを理解する
  3 リフレクションを支援する
  4 集団でのリフレクションを促す

第4部 キャリア開発と学習
 12章 看護師としての学習を理解する
  1 看護師としての学習の特徴
  2 熟達化を理解する
  3 専門職としての学習
  4 主体的な学習者を目指す
 13章 キャリア開発に向けて学習する
  1 看護師のキャリアを理解する
  2 看護師のキャリアの課題
  3 活躍の場を広げる
  4 キャリア開発のための学習

用語集
参考文献
執筆者プロフィール
執筆協力者
索引

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看護師になるために必要な教育学の基礎・基本が確認できる
書評者:三浦都子(玉野総合医療専門学校校長補佐・保健看護学科学科長)

 本書は「看護のための」というタイトルが示すように,看護師,看護学生がなぜ教育学を学ぶ必要があるのかという観点のもと,教育学の内容がわかりやすく書かれている一冊です。

 高齢社会におけるライフスタイルの多様化,慢性疾患患者の増加,入院期間の短縮化,健康意識の高まりなどにより,患者教育や健康教育はますます重要となります。2022年度から適用される看護師3年課程教育カリキュラムでは,今後強化すべき看護師の能力の1つに保健指導能力が掲げられています。本書は教育学を学ぶのに普遍的で重要な内容で構成されているので,看護学生,看護教員はもちろん,現場の看護師,助産師,保健師の方々にも活用できる書籍であると考えます。

 本校では,本書の初版を教育に関する科目のテキストとして採用し,看護師,保健師としての基盤づくりに生かしてきました。そして,後の看護学の専門科目で,特定健康診査・特定保健指導,健康教育,保健指導などの演習,臨地実習での実践においても本書で学んだ内容を生かし,段階的に保健指導能力の育成を進めています。このように関連科目においても,『看護のための教育学』は,常に基礎・基本が確認できる書籍として活用しています。

 今回発行された第2版は,初版より文章がさらにロジカルで,知りたい内容が明確でわかりやすく,読者に愛情をも与えるものになっていると思います。特に,「コーチングの技法」(9章)と「リフレクションの技法」(11章)が新たに加えられたことは感激でした。

 コーチングは看護実践に欠かせない技法ですが,学生にわかりやすく教えるのが難しい現状があります。しかし本書では,具体的な場面を想定して,実際にどのように声かけをしていくとよいのかが会話形式で示されているので,学生でもイメージしやすい内容となっています。また「リフレクションの技法」では,リフレクションの基本的な過程と,学習を促す方法を理解することができます。たとえば実習場面で学生は,「私は患者さんや家族に何もできなかった」と感覚で評価して終わり,その先の分析に進めないことがよくあります。しかし,本章で紹介されたギブスのリフレクティブサイクルに沿ったリフレクションの例では,ある経験をどのような順番で,どのようなことに気をつけながら振り返ればよいかが示されているので,経過のなかで何を感じ考えたかに注目でき,学生にとって活用しやすい内容になっていると思います。看護教員にとっても,学生のリフレクションを支援する指南書となることでしょう。

(「看護教育」63巻3号掲載)

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