黄斑疾患診療AtoZ 第2版

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眼科診療のエキスパートを目指すための好評シリーズの1冊。病態理解、診断、治療のいずれにおいても大きな進歩が認められる黄斑疾患について、最新型OCTなどの画像をふんだんに用いて、現時点での最新の知見・診療スタイルを網羅。疾患各論の随所に豊富な症例を盛り込み、実臨床に直結した情報を提示した。Pachychoroid関連疾患や加齢黄斑変性の最新の薬物治療など新項目も加わった待望の改訂版。

シリーズ 眼科臨床エキスパート
シリーズ編集 𠮷村 長久 / 後藤 浩 / 谷原 秀信
編集 岸 章治 / 𠮷村 長久
発行 2022年08月判型:B5頁:496
ISBN 978-4-260-04942-9
定価 18,700円 (本体17,000円+税)

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第2版 序

 本書の初版は2014年4月に刊行され,あれから8年が経った.この間に起こったのは光干渉断層計(OCT)の爆発的な進化であった.OCTは,もはや単なるトモグラフィ(断層撮影)ではない.3次元データを高速で取り込み,それを前額断(en face像)でスライスすることで,硝子体から網膜,そして脈絡膜までを面として捉えることができる.OCTの深達性の向上により,脈絡膜が可視化され,最近ではen face像の画角拡大により,渦静脈は赤道部まで見えるようになった.この結果,中心性漿液性脈絡網膜症からポリープ状脈絡膜血管症(PCV)に至るpachychoroid関連疾患の理解が進んだ.PCVはかつて加齢黄斑変性(AMD)の特殊型と考えられていたが,今は渦静脈のうっ滞が原因であり,ドルーゼンを先駆病変とする典型的AMDとは,別系統の疾患であると考えられるようになった.
 en face画像の中から血球の動きを抽出したのが,OCT angiography(OCTA)である.これはまさしく革命であった.蛍光眼底造影は長らく眼科のゴールドスタンダードであったが,まれに重篤な合併症が起こる.OCTAは急速に進化している.当初は黄斑部の網膜毛細血管網だけの撮影であったのが,広角化が進み赤道部までを1回の撮影で捉えることができるようになった.この結果,増殖糖尿病網膜症では,中間周辺部の無灌流領域と新生血管を蛍光造影より精細に撮影できるようになった.OCTAは特に網膜色素上皮下の脈絡膜新生血管の検出に優れている.OCTAは透過性亢進や漏出を観察できないという限界があるが,非侵襲である利点を考えると,蛍光眼底造影の出番はかなり減っていくだろう.
 最近,我々の世界に黒雲のように湧き上がってきたのは人工知能(AI)である.本書ではAIは画像の精細化に使われているが,社会を変革する潜在力がある.AIは学習するとめきめき成績を上げる秀才のようである.この秀才は人間のように忘れることも感情に支配されることもない.AIはデータの統計処理により冷徹な回答をする.画像診断における正解率は人間を超えるようになっている.本書の第3版が出る頃には,multimodal imagingによるAI眼底診断が普通になっているのではないか.
 本書の編集方針は,その道のエキスパートが自らの経験・哲学とエビデンスに基づいた「新しいスタンダード」をわかりやすく解説する,というものである.新知見の急速な増大により,原稿はほとんど新たに書き直され,読み応えのあるものになっている.このアップデートされた『黄斑疾患診療 A to Z 第2版』を楽しんでいただければ,編集者の幸い,これに勝るものはない.

 2022年6月
 編集者を代表して 岸 章治

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第1章 総説
 黄斑疾患の診療概論

第2章 総論
 I 黄斑の解剖学
 II 網膜硝子体界面の解剖学
 III 診断手技
   A 検眼鏡検査
   B 細隙灯顕微鏡検査
   C 眼底自発蛍光検査
   D 蛍光眼底造影検査
   E 光干渉断層血管撮影(OCTA)
   F 光干渉断層計

第3章 各論
 I 網膜硝子体界面病変
   A 黄斑円孔
   B 黄斑前膜
   C 分層黄斑円孔,黄斑偽円孔
   D 黄斑パッカー
   E 乳頭ピット(小窩)黄斑症
 II 中心性漿液性脈絡網膜症
   A 中心性漿液性脈絡網膜症
   B 多発性後極部色素上皮症
 III 加齢黄斑変性
   A 疫学
   B 病態生理
   C 遺伝子多型
   D ドルーゼン
   E 網膜色素上皮色素異常
   F 網膜色素上皮剝離
   G 網膜色素上皮裂孔
   H 萎縮型加齢黄斑変性
   I 典型加齢黄斑変性
   J ポリープ状脈絡膜血管症
   K 網膜血管腫状増殖
   L 加齢黄斑変性の治療
    1 手術:網膜色素上皮移植術
    2 光凝固術
    3 光線力学療法
    4 抗VEGF薬治療
    5 抗VEGF薬と光線力学療法の併用
    6 萎縮型加齢黄斑変性の治療
 IV Pachychoroid関連疾患
 V Malattia Leventinese(常染色体優性放射状ドルーゼン)
 VI AZOOR complex
 VII 黄斑部毛細血管拡張症
 VIII 近視とその類縁疾患
   A 近視
   B Dome-shaped maculaと inferior staphyloma
   C 傾斜乳頭症候群
 IX 特発性脈絡膜新生血管
 X 網膜色素線条
 XI 炎症性黄斑疾患
   A 点状脈絡膜内層症
   B 地図状脈絡膜炎
 XII 網膜変性症
   A Best病(卵黄様黄斑ジストロフィ)と成人発症卵黄様黄斑ジストロフィ
   B Stargardt病
   C 錐体ジストロフィ
   D 網膜色素変性
   E 白点状眼底
   F クリスタリン網膜症
   G X染色体若年性網膜分離症
   H 腫瘍関連網膜症
   I 小口病
   J オカルト黄斑ジストロフィ(三宅病)

和文索引
欧文索引

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