病院早わかり読本 第6版

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医療に携わるすべての新人スタッフがまず知っておくべきことを、コンパクトかつすぐに理解できるようまとめたベストセラー最新第6版。全体的に新型コロナウイルス禍による社会変動を意識した記述に書き改め、激変を続ける医療制度改革と、それによる状況変化をキャッチアップ。現場に配属された新人に、高い職業意識とモチベーションを向上させる一冊となっている。

編著 飯田 修平
発行 2021年07月判型:B5頁:304
ISBN 978-4-260-04752-4
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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第6版 序

 “医療は医学の社会的適応である”という故武見太郎氏の定義を引用するまでもなく,医療は社会活動の一部です。したがって,社会情勢の変化に適応しなければなりません。
 “あれから40年”の漫談ではありませんが,“あれ(本書第5版増補版出版)から4年”の間に,重大事件・事象が頻発しました。変革を促す極めつけは,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延です。
 周りを見渡すと,良くなったとは思えません。人々は内向きで,目先の損得にとらわれ,筋の通らない言動をし,世知辛く,荒んでいます。東日本大震災後に協力し合った“あの同胞”はどこへ行ったのでしょうか。自分を大事にすることが,結果として周囲に良い影響を与えるという,本書で述べる“自分中心”の意味を理解していただきたいと思います。

 本書の主題は,「医療は特殊ではない,一般企業と同じ部分のほうが多い」と考える「病院職員および患者や国民の意識改革」と,「継続的質向上の実践を通した,医療における信頼の創造」です。継続的質向上には環境への適切な対応が必須です。本書も,社会・医療情勢の変化に対応するために,頻回に大改訂しております。
 本書出版・改訂の経緯を振り返ります。“なぜ「今」意識改革が必要かを認識することが重要である”という趣旨で『病院職員のための病院早わかり読本』を出版しました(1995年)。
 “時間が経過し,環境が激変した現在,意識改革した後の行動,行動による変化,その成果が問われている。議論したり,考えている段階ではない,行動・実践あるのみ”という趣旨で,『病院早わかり読本』を出版しました(1999年)。
 社会情勢の変化や,頻繁な医療制度改正等に対応して,改訂・増補しています。
 2006年の第5次医療法改正を受けて“社会の変化に対応し,変革の流れを作ることに寄与するように”と,第3版として改訂しました(2007年)。その後,医療崩壊,病院崩壊と呼ばれる状況が進みました。2008年10月16日読売新聞朝刊の「医療構造改革・読売提言特集」は医療従事者の意欲低下を食い止め,2010年の診療報酬改定と健康保険法改正は約10年間の医療費削減の流れを止めた点で,意義がありました。流れを良い方向に変える努力の継続が必要です。
 第4版序で,「“医療崩壊”“病院崩壊”と呼ばれる今こそ,構造改革・医療制度改革の好機と捉えるべきです。他組織や他人ではなく,自らが変わること,意識改革することが必要です。そして,組織を挙げた継続的な質向上の努力が必要です」と述べました。予測不可能な社会の変化に対応するには,原理原則に基づいて,現場で現物を現実に実践すること(五ゲン主義)が必要である,という趣旨で改訂しました(2011年3月15日)。出版に合わせたように,東日本大震災が発生し(3月11日),社会が大きく変わらざるを得ませんでした。
 2014年には,消費税増(損税増),診療報酬実質マイナス改定,「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療・介護総合確保推進法)」の成立(2014年6月)があり,医療界は混迷しました。医療事故調査制度への対応がその象徴です。第5版は,次の一歩を踏み出す方策を考えるために,“視点を変え”て,自らの言動を変えることから始めようという趣旨で,改訂しました(2015年)。
 第5版増補版は,社会,医療情勢の変化を受け,第1部を中心に改訂しました(2017年)。
 医療従事者も安心して医療を提供し,患者さんが安心して医療を受けるためには,医療の仕組みを正しく理解し,相互の理解を深める努力が必要です。その実践の過程で,「医療における信頼の創造」が実現できると確信します。
 信頼とは安心です。安心の基本は安全の確保です。事故を起こすべきではない,けしからぬ,誰の責任かなどと考えては解決できません。安全の確保には,質向上,とくに,医療機関の「職員の質」とともに「組織経営の質」向上が必須です。
 情報が錯綜し,先行きが不透明で,意思決定が困難な時期にこそ,基本に立ち返ることが必要です。基本とは質向上であり,質管理の手法が参考になります。質を機軸にした経営であり,総合的質経営(Total Quality Management:TQM)が必要です。質管理関係者をはじめとする他分野との連携が進展し,多くのプロジェクトが成果を挙げています。
 本書の特徴は,第1部「医療の仕組み」で,医療とは何かから説き起こし,医療制度(医療提供のしくみ)と医療保険制度(医療費の報酬と支払いのしくみ)を,第2部「医療の質向上を目指して」で,質とは何か,医療の質とは何か,質重視の経営を解説していることです。他にはない構成です。
 「早わかり」といいながら,複雑かつ難解な医療制度や質管理を,できるだけ正確かつわかりやすく伝えたいという二律背反に,挑戦しています。欄外の用語解説による補足がその一つです。
 医療制度を考え,また,質を向上させるための参考書として活用し,医療従事者と患者さんを含め多くの方々との相互理解に役立てていただければ幸いです。
 ご示唆をいただいた医学書院の大橋尚彦さんに感謝申し上げます。

 2021年3月
 飯田修平

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第1部 医療の仕組み
 第1章 時代背景
 第2章 医療とは
 第3章 社会保障制度としての医療制度・医療保険制度の成立
 第4章 病院とは
 第5章 特殊な医療の問題
 第6章 医療保険制度
 第7章 高齢者医療制度
 第8章 診療報酬制度
 第9章 (公的)介護保険制度
 第10章 病院業務の流れ
 第11章 病院の組織
 第12章 人事
 第13章 病院管理と財務
 第14章 施設・設備管理
 第15章 医療廃棄物・感染管理・環境保全

第2部 医療の質向上を目指して
 第1章 質とは何か
 第2章 良質な医療
 第3章 質管理
 第4章 医療の質管理
 第5章 医療の質向上活動
 第6章 医療機能評価
 第7章 医療の標準化
 第8章 情報技術の活用
 第9章 安全確保
 第10章 組織としての問題への対応
 第11章 職業人としての心得
 第12章 苦情は改善のための情報源である
 第13章 患者の権利
 第14章 信頼の創造

おわりに
参考図書
用語一覧
索引

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