コアカリノート
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臨床医学全分野のエッセンスを一冊に凝縮! 医学生が卒業までに修得すべき事項を示した「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に準拠し、学修目標ごとに見開き2ページで完結する構成。要点を箇条書きのスタイルでまとめた文章(左ページ)と関連図表(右ページ)が、効率的な知識の整理、記憶の定着を促す。“マイノート”として徹底的に使い込んでいただきたい。(本文執筆:安達洋祐)

編集 「コアカリノート」編集委員会
発行 2024年02月判型:A5頁:2016
ISBN 978-4-260-04864-4
定価 19,800円 (本体18,000円+税)

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    2024.02.20

  • 序文
  • 目次
  • 書評
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 この20年間で,日本の医学教育は大きく変わりました.例えば,次の3つです.
(1)文部科学省が「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(以下,コアカリ)を設定
(2)診療参加型臨床実習の知識と技能を患者に保証する共用試験(CBTとOSCE)を導入
(3)日本医学教育評価機構(JACME)が全国医学部の教育内容を世界基準で厳格に評価

 今の学生は,Z世代です.IT機器に囲まれて育ち,デジタルに慣れ親しんでいるため,授業は対面よりオンライン,講義はライブより録画(倍速再生),資料は紙媒体よりデータを好みます.実際,授業で講義を聞いてノートをとる姿は少なく,自宅の机で本を開いて読む学生は少数派です.今回のパンデミックで,このような傾向は顕著になっています.

 医学部の教員は,専門医や研究者です.高度先進医療や医科学研究が得意で,学生教育は苦手かもしれません.最先端の医療や研究を伝えたいために講義は早口でむずかしく,資料は詳細かつ膨大です.予習しろ,復習しろ,教科書を読めと言い,伝統ある教科書や海外の専門書を紹介しますが,厚く重く高い本を買って勉強する学生は例外的です.

 本書は,このような現状を考えて学生のために作りました.特徴を3つ挙げます.
(1)コアカリに沿って目次と項目を作り,1項目を左右2ページの本文と図表で掲載
(2)各項目で覚えてほしいサマリーを四行まとめ(約150字,30秒で読める)に要約
(3)英語や略語の理解を促すため,左ページの下段に医学用語の英語表記を列挙

 コアカリは,大学共通の学習項目です.本書は,コアカリ(平成28年度版)の臨床医学に相当する領域を網羅し,「D 臓器別疾患」569項目,「E 全身性疾患」171項目,「F-1 診療の基本」111項目を解説しました.本文・図表・写真は,医学書院の『標準シリーズ』や『新臨床内科学』を参照し,診断基準と治療方針は診療ガイドラインで確認しました.

 私は学生時代,教室の最後部の座席で講義のノートをとり,試験前には講義のまとめと記述問題の解答例を作り,同級生や後輩は「あだちノート」と呼んで使っていましたが,外科医を卒業し学生教育を支援する立場になって作り上げたこの「コアカリノート」が,臨床医学を1冊で学べる便利な本として,全国の学生に愛用されることを願っています.

 最後に,医学教育の現場で私を刺激してくれた久留米大学の学生に感謝するとともに,教育支援に関わる機会と環境を与えてくださった久留米大学学長の内村直尚先生に謝意を表し,本書の企画に賛同し支援してくださった医学書院の方々にお礼を申し上げます.

 令和5年10月
 安達洋祐

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令和4年度改訂版コア・カリキュラム対応目次

D 人体各器官の正常構造と機能,病態,診断,治療
 D-1 血液・造血器・リンパ系
 D-2 神経系
 D-3 皮膚系
 D-4 運動器(筋骨格)系
 D-5 循環器系
 D-6 呼吸器系
 D-7 消化器系
 D-8 腎・尿路系(体液・電解質バランスを含む)
 D-9 生殖機能
 D-10 妊娠と分娩
 D-11 乳房
 D-12 内分泌・栄養・代謝系
 D-13 眼・視覚系
 D-14 耳鼻・咽喉・口腔系
 D-15 精神系

E 全身に及ぶ生理的変化,病態,診断,治療
 E-1 遺伝医療・ゲノム医療
  1) 遺伝医療・ゲノム医療と情報の特性
 E-2 感染症
  1) 病態
  2) 診断・検査・治療の基本
  3) 症候
  4) 疾患
 E-3 腫瘍
  1) 定義・病態
  2) 診断
  3) 治療
  4) 診療の基本的事項
  5) 各論
 E-4 免疫・アレルギー
  1) 診断と検査の基本
  2) 症候
  3) 病態と疾患
 E-5 物理・化学的因子による疾患
  1) 診断と検査の基本
  2) 症候
  3) 疾患
 E-6 放射線の生体影響と放射線障害
  1) 生体と放射線
  2) 医療放射線と生体影響
  3) 放射線リスクコミュニケーション
  4) 放射線災害医療
 E-7 成長と発達
  1) 胎児・新生児
  2) 乳幼児
  3) 小児期全般
  4) 思春期
 E-8 加齢と老化
  1) 老化と高齢者の特徴
 E-9 人の死
  1) 生物的死と社会的死

F 診療の基本
 F-1 症候・病態からのアプローチ
  1) 発熱
  2) 全身倦怠感
  3) 食思(欲)不振
  4) 体重減少・体重増加
  5) ショック
  6) 心停止
  7) 意識障害・失神
  8) けいれん
  9) めまい
  10) 脱水
  11) 浮腫
  12) 発疹
  13) 咳・痰
  14) 血痰・喀血
  15) 呼吸困難
  16) 胸痛
  17) 動悸
  18) 胸水
  19) 嚥下困難・障害
  20) 腹痛
  21) 悪心・嘔吐
  22) 吐血・下血
  23) 便秘・下痢
  24) 黄疸
  25) 腹部膨隆(腹水を含む)・腫瘤
  26) 貧血
  27) リンパ節腫脹
  28) 尿量・排尿の異常
  29) 血尿・蛋白尿
  30) 月経異常
  31) 不安・抑うつ
  32) もの忘れ
  33) 頭痛
  34) 運動麻痺・筋力低下
  35) 腰背部痛
  36) 関節痛・関節腫脹
  37) 外傷・熱傷
  * チアノーゼ
  * 出血傾向
 F-2 基本的診療知識
  1) 臨床推論
  2) 根拠に基づいた医療〈EBM〉
  3) 臨床検査
  4) 病理診断
  5) 放射線等を用いる診断と治療
  6) 内視鏡を用いる診断と治療
  7) 超音波を用いる診断と治療
  8) 薬物治療の基本原理
  9) 外科的治療と周術期管理
  10) 麻酔
  11) 食事・栄養療法と輸液療法
  12) 医療機器と人工臓器
  13) 輸血と移植
  14) リハビリテーション
  15) 在宅医療と介護
  16) 緩和ケア
 F-3 基本的診療技能
  1) 問題志向型システムと臨床推論
  2) 医療面接
  3) 診療録(カルテ)
  4) 臨床判断
  5) 身体診察
  6) 基本的臨床手技

付録
 大まかにつかむからだの異常 必須110疾患 重要90疾患
 あだち法 症候別9疾患 3×3で覚える鑑別診断
 学生のための医学史年表

後記

図表出典一覧

索引
 欧文索引
 和文索引

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膨大な学修内容から本質をつかむ能力を育む
書評者:森 正樹(東海大副学長・医学部長)

 現在の医学教育は各大学での独自性は残しながらも,多くの部分は文部科学省の設定する医学教育モデル・コア・カリキュラムに基づいて実施されている。それにもかかわらず,モデル・コア・カリキュラムに沿ってまとめられている書籍はほとんど見当たらない。本書は医学生がモデル・コア・カリキュラムに沿って学修するのみならず,医学部の教員がモデル・コア・カリキュラムを理解する上でも重要な一冊と確信する。

 本書の大部分は見開き2ページで完結するように構成されている。左側には,「学修目標」と「四行まとめ」,「本文」と「関連用語」が記されている。「四行まとめ」では学修すべきことがコンパクトにまとめられており,これから学んでいく医学生が概略をつかむのに有用である。また,「関連用語」では各診療科のカンファレンスで多用されがちな英語や略語について触れられており,日々の臨床実習にも役立つ。一方,右側には図表や写真がふんだんに盛り込まれており,医学生の理解を深めるのに役立つ。驚いたことにこれらの図表や写真からは,医学生にとってより良いものを作るためには一切の妥協を許さない著者の姿勢が強く感じられる。

 また,本書には秀逸な付録がついている。「大まかにつかむからだの異常」では,必須の110疾患と重要な90疾患について記載されている。覚えるべき知識量が膨大となってきているが故に,細部にとらわれすぎて疾患イメージを端的に表現することを苦手とする医学生が多いと感じている。本書の「四行まとめ」と同様に疾患や病態の本質を簡潔に説明できる能力は重要であり,この付録はその手助けとなるに違いない。

 次に,「あだち法 症候別9疾患」は特筆すべきものと考える。診療参加型臨床実習後OSCEでは,モデル・コア・カリキュラムに記載された症候・病態から作問されているが,この付録に記載されている50の症候でほぼ全てが網羅されている。このOSCEでは,医療面接と身体診察後に,情報を整理し,指導医への報告が課せられるが,この際に鑑別疾患を頭に思い描く能力が必要となる。この9疾患を3×3という形で整理し,学生の記憶の定着に配慮している点も素晴らしい。

 最後に,「学生のための医学史年表」であるが,医師国家試験で問われるだけでなく,医師が一般常識として知っておくべき内容が過不足なくまとまっている。

 モデル・コア・カリキュラムを理解するだけでなく,臨床医学を学んでいく際にも本書は最適であると思うが,手に取る学生はデジタルに慣れ親しんでいるため電子書籍化は重要で,さらに知識をインプットしていくための学修アプリ開発も検討していただきたい。
本書の余白に各自が学修したことを書き込んでいき,それぞれのコアカリノートが完成した際には,本書が生涯にわたり傍らに置くべき一冊となるだけでなく,臨床医学教育に精通した若手医師が誕生すること請け合いである。最後にこれだけの分量の本をほぼ一人で完成された著者に心から敬意を表する。医学教育への熱意・執念と医学生への深い思慮によるもので,素晴らしいの一語に尽きる。


CBT・国試対策にこんな一冊が欲しかった!
書評者:泉 美貴(昭和大教授・医学教育学)

 何と,医学教育モデル・コア・カリキュラムの臨床医学(D:人体各器官の正常構造と機能,病態,診断,治療/E:全身に及ぶ生理的変化,病態,診断,治療/F:症候・病態からのアプローチ)に記載された全ての学修目標を,たった一人で解説してしまった。細分化された現代の医学界にあり,そんなレオナルド・ダ・ビンチのようなことが可能なものかとわが目を疑った。

 「コア」とは名ばかりで莫大な範囲を包含するモデル・コア・カリキュラムを勉強しようとしたら,いったい何十冊の教科書をひもとかなければならないことか!それが,わずか一冊に全てが収まっているのである。しかも,1項目を,わずか見開き2枚に見事にまとめてある。

 左ページには解説が,右ページには図表が掲載されている。解説のページにはなんとも親切なことに,冒頭にサマリーが4行でまとめてある。解説文は必ず1ページ以内である。左下には,英語の略語まで付けてある。何という潔さ,気持ち良さ,読みやすさであることか!私は常々,教育者(医師)の資質は,「授業・記述の長さに反比例」と説いている。物事がわかった人は,人に簡単に教えることができる。わかっていない人の話は長い。この点についても安達先生は,超人,天才,化け物に分類される。

 右ページの図表には,医学書院の「標準シリーズ」や『新臨床内科学』のみならず,各種の教科書や診療ガイドラインなどから,肉眼解剖像,病理画像,臨床像,放射線画像など,あまたの画像が惜しみなく掲載されている。最高の図表を選び,許可を取り,これだけ完璧に転載できたことは奇跡である〔図表の「出典一覧」だけで何と47ページ(!)に及ぶ〕。通常は転載許可を得るのが面倒なのでしない。その点,編集者の気骨も凄い。

 付録がまた面白い。重要疾患を,臓器ごとに10に絞り,わずか1行で解説してある。とにかく疾患の全体像を,端的に掴みたい学修者にはうってつけである。もう一つの付録は,「あだち法 症候別9疾患」と題し,症候をわずか3種類に分類し,それぞれに3疾患ずつ挙げてある。3×3で,すこぶる覚えやすい。

 評者はモデル・コア・カリキュラムの委員として,初回から2度の改訂まで携わった。学生がこの膨大な項目をどうやって勉強するのかと,内心心配になった。本書により贖罪された気分である。

 安達洋祐先生,あっぱれ!!

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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